「え・・・正気ですか、クロエさん!?」
思わぬクロエの言葉にタマモは驚いた。
アナをパイオニア2に送り返した後、クロエから話があると呼び止められたのだが・・・。
アナの代わりにブラックペーパーに潜り込み、アナをそそのかした人物を捕まえると言うのだ。
確かに瓜二つのクロエならば騙す事も出来るかもしれないが行動には無茶があると思った。
相手は人身売買や武器の横流しをするような裏組織。
はっきり言って、ばれればクロエの命が危険だった。
「ええ、アナの話では明日にでも何かの取引があるそうですから・・・そこで」
クロエはタマモ達を見据える。
「タマモさん達に彼らを追い詰める手助けをしてもらいたいのです」
クロエはそう言って自分の計画を話す。
まず、クロエが組織に潜り込み、メールで状況を知らせる。
そして、タマモ達が組織の集団を追う。
追うにしても、一気に距離を詰めればそれだけたくさんの敵を相手にしなければならないので徐々に、と言う事になるが。
最終的に取引の現場で取引相手共々に捕縛するのが目的である。
「あたし達は別に構わないけど本当に潜り込めるの?」
あのルイから情報が渡っていれば危険な事この上ない。
「大丈夫だと思います、それに私もハンターです、いざとなったら自力で脱出しますよ」
そう言ってにっこりと微笑んだ。
「・・・俺が力になろう」
不意に後ろの方から声がした。
振り向くとそこにはミカヅキが立っていた。
「ミカ・・・ヅキ」
「お主を信用できると思うのか?」
タマモは思わず目をそむけ、葛丸はミカヅキを否定した。
だがミカヅキは退かなかった。
「信用しろとは言わない。だがジュンが死んだのは奴らのせいだ」
そう言って俯いた。
「・・・分かりました、お願いします」
クロエは思い切った行動にでた。
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第12話「壊滅」
「本当に大丈夫かなぁ・・・」
シルキーはトランスポートの前でポツリと呟いた。
今はクロエからのメール待ちで待機している。
昨日の夜にクロエとミカヅキは組織と合流するために地表に降りていった。
正直なところ、ミカヅキは信用できない。
クロエがいいというのだから何も言わなかったが・・・。
「今は信じる事しかできませんな・・・時にシルキー殿」
葛丸がふと、シルキーとタマモの手にあるものを見る。
「何故シュークリームを食べているので・・・? 姫様も」
「ん・・・? カズも欲しいの?」
「いや、そうでなく・・・」
仕事前に心配と言っておきながら何故のんびりとお菓子を食べているのか・・・。
「何か昨日出たばかりの新製品らしくてさ、朝に見かけたから少し買ってきたの」
そう言って平然とシュークリームをぱくつく。
「これ、美味しいね・・・他にも種類あったの?」
タマモがいやにのんびりと聞く。
「んー、ケーキとかもあったよ、何でもパイオニア1でしか作られた事のないものらしくって・・・」
シルキーの言葉に、タマモはふぅん、と頷いた。
「ご馳走様・・・帰りにケーキ屋寄っていこうかな・・・」
「そだね、結構色々あったから後でゆっくり見にいこっか」
あくまでものんびりした二人に葛丸は何も言えなかった。
甘いもの一つでここまでリラックスできるのだから大したものだ。
「姫様もシルキー殿も甘いものはお好きで?」
葛丸が聞く。
アンドロイドには味覚がないので甘いものと言ってもピンと来ないのだが・・・。
「そだね〜、結構好きかな・・・あまり食べ過ぎるとあれだけどね・・・」
「うん・・・食べてる時はいいんだけどその後がちょっと怖いかなぁ、やっぱり・・・」
二人がそう言って顔を見合わせて頷く。
葛丸にはどういうことか分かりかねた。
外見が変わらないアンドロイドには到底理解できないことだったが。
「ふぅ・・・ごちそうさま〜、クロエさんからのメールまだかな・・・」
シルキーがそう呟いた時、タマモの元へメールの着信音が入る。
「あ・・・きたみたい・・・えっと、今は滝のある部屋だって・・・」
一緒に送られてきたマップによって、どうのような道順でいけばいいかも分かる。
3人は早いところクロエに追いつくためにすぐに洞窟エリアへと降りていった。
「・・・と、いうことだ、よろしく頼む」
「ああ、では後々その場所でな」
今、クロエ達の目の前ではブラックペーパーの幹部とおぼしき人物同士が話をしている。
どうやら取引に際しての細かい点を話しているようだ。
今回は武器の密輸。
彼らの話を聞く限りどこかの組織に武器を提供するようだった。
ただの武器の受け渡しならまだしも、彼らの搬入リストの中には非常に珍しいものも入っている。
その中でクロエが目を引いたのは、鞘のない一本の刀だった。
最初見たときから立派なものだとは思っていたが、その刀の名称を聞いて驚いた。
オロチアギト。
四天と呼ばれる刀鍛冶のうちの一人、ドウセツの最高傑作。
オロチアギトは四刀と呼ばれる名刀の一つ。
話では正式にオロチアギトの所有者は決まったと聞いていたのだが。
元の所持者の手を何らかの形で離れてしまったようだ。
この組織のことだからどのような経路で手に入れたのかは容易に想像がついた。
しばらくして、話していた片方の男が去っていく
「さてと、ではしばらくここで待機だ・・・しっかりと護衛を頼むぞ」
「はーい、任せてください!」
男の言葉にクロエが無邪気そうに笑う。
はっきり言ってアナの振りもかなり疲れる。
ミカヅキの話ではいつも一人だけ元気に受け答えしていてまるで子供みたいだと聞いた。
まぁ、姉の性格なら分かるのだがクロエにはきつい。
周りにはクロエ以外にもハンター達が7,8人いる。
ミカヅキも勿論その場所にいた。
ミカヅキは言葉通り、ちゃんと手を貸してくれていて裏切るような事は今のところしていない。
それどころかアナを見てきた分、彼女の行動に対してアドバイスしてくれていた。
今は問題がないがクロエには一つだけ気になる点があった。
ここにいるハンター達のうちの一人。
シノビと言う名のレイマーからとてつもない力が感じられる。
はっきり言ってこの中で一番実力を持っているハンターだろう。
あの人に見られると全てが見透かされているようで怖い。
ひょっとしたらばれているのでは、とも思う。
そういう動きがないのだから大丈夫なのだろうが。
そんな折、シノビが男に向かって耳打ちをする。
すると近くのハンターを二人ほど呼んで、扉の前に配置する。
「よし、では行くぞ・・・」
男はそのハンター達をそこに配置したまま動き出した。
何故だか分からなかったがその内クロエの五感が、近付いてきている気配を察知する。
時間的に恐らくタマモ達であろう。
すでに待ち伏せとは用意がいい。
クロエは少し心配になりながらも皆についていった。
そして間もなく、そこには残された二人のハンターのみとなる。
「ちっ、何で俺らがこんな所に残されなくちゃなんねーんだよ」
皆がいなくなった途端に愚痴をこぼしだす。
「そうだよなー、あのアナとかいう五月蝿い女を残していきゃあいいのによ」
「ああ、そりゃ無理だ・・・あの上司、あの女の事気に入ってるからな」
「なんだよそりゃ・・・年離れすぎてんじゃん、やってらんねーな」
ハンター二人はぶつくさ言いながらそこらへんをうろうろする。
「はぁ・・・なぁ、一つ聞いていいか?」
片方のハンターが呟く。
だが、彼に対しての返事はなかった。
「おい、聞いてんのか? おい・・・」
少しいらいらしながら後ろを振り向くと、そこにはぐでーっと地に伏しているハンターの姿があった。
遅いながらも気付いたハンターは何事かと辺りを見回す。
「・・・遅い」
不意に耳元で声がしたかと思うと、脇腹に激痛が走る。
「・・・うぉ」
ハンターはそのまま意識を失って倒れる。
「・・・・・・・かなりザコだね〜」
そう言いながらシルキーとタマモが物陰から出てくる。
「この位の敵であれば取るに足らんな」
葛丸が刀を降ろして言った。
そんな中、シルキーだけが辺りに漂う気を感じ取る。
何回も感じた事のある気。
ついさっきまでここに知り合いがいたようだ。
(シノビ・・・か、どうやら潜入してるみたいだけど・・・)
一つだけ嫌な予感がした。
シノビの性格上、もし敵として鉢合わせしてしまった場合、本気で攻撃してくるだろう。
そうなったら下手をすると軽い怪我では済まないかもしれない。
「ん?どうかしたの、シルキー?」
考え込んでいるシルキーに、タマモが不思議そうな顔で聞く。
「あ、いや・・・なんでもないよ、とりあえずクロエさんからのメールを待ちつつゆっくり進もうか」
シルキーは笑顔を作って進みだす。
心の中では絶対にシノビと鉢合わせしないように、と願っていた。
「たあっ!」
クロエの一撃が目の前のシャークを切り裂く。
最後の一匹を仕留めた一行はふうっと肩を落とす。
例え闇組織とはいえども、ラグオルに住む生物には全く関係無い。
全てが敵。
そうなれば現れたものを倒すしかなかった。
「ご苦労だったな、では先に進むとするか」
傍観していた幹部が周囲に何もいないことを確認するとハンター達を促した。
ハンターはクロエ、ミカヅキを入れてあと6人。
安全性を求めるためにあと二人は減らしておきたい。
取引相手も恐らくは護衛のハンターを雇っているだろうから。
中でも問題なのはシノビというレイマー。
はっきり言って実力的にクロエ、ミカヅキを軽く超えているだろう。
さすがにタマモら3人がいれば倒すことは不可能ではないが・・・。
レンジャーという職業柄、味方が多いほうが援護射撃が強さを発揮する。
数的に考えても何とかして数人減らしたいところ。
そんな折、シノビが再び耳打ちする。
すると、また手近なハンターにその場に残るように指示する。
後ろからタマモ達が来ている事はメールの返信等で分かっているが、気配は無い。
それなのにハンターを残していくことは理解できなかった。
シノビが気配を察知しているにしろ、タマモ達3人に対して2人。
どう見ても捨て駒でしかない。
だがこちらからしてみれば好都合である。
これで敵となるハンターは現時点で二人。
後は合流先にいるハンター達の数次第である。
一応安心できる数になったクロエはほっとため息をつく。
「おい、アナ、ちょっと来てくれ」
「?・・・どうしたのーおじさん」
クロエはアナの真似をしつつ幹部の元へと走る。
名前は知らないがアナ曰く、“おじさん”でいいらしい。
「実は頼みがあるんだが・・・」
「なになに?」
クロエはおじさんの顔を見上げながら言う。
下手をしたらクロエ自身がここで待機という可能性もある。
まぁ、ミカヅキが裏切らない限り自分が残っても大丈夫だろうが。
「おじさん達の売上げに貢献してほしいんだ」
「え・・・あぅっ!!」
予想外の言葉を聞いた瞬間、首筋に激痛が走る。
シノビの手刀が落とされたようだ。
「君のような娘は高く売れるんだ、身寄りもないし丁度いい」
クロエは昏倒していく意識の中、自分の不覚を悔いた。
「っ・・・まずいな」
一部始終を見ていたミカヅキは誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。
クロエがいなくてはタマモ達との連絡手段が無いのだ。
かといってここで行動を起こすには無茶がある。
シノビに勝てる見込みが無い上に、仮に勝てたとしても取引相手を抑えることができなくなる。
人身売買もしているとは聞いていたが、まさか自分で雇ったものまでもその手にかけるとは思わなかった。
今はミカヅキに出来ることは何も無い。
ただ、時が過ぎるのを待つだけだった。
「・・・またまた雑魚でした、っと」
シルキーは気絶しているハンターを見下ろしながら張り合いの無さにがっかりしていた。
葛丸は少し先の様子をうかがうと言って歩いていった。
ここの生物達は既に片付けられている上に、取るに足らない相手とあってやることが少なすぎた。
まぁ、このハンター達も弱くは無いのだがシルキーと葛丸にとって手応えのある相手とはもう1ランク程上の者達。
戦い慣れの面から言ってみればタマモには丁度いい相手かもしれないが。
「さて・・・と、クロエさんからのメールは・・・きゃあっ!」
メールを確認しようとしたタマモの動きが急に止まる。
「タマモ!!」
シルキーが叫ぶ。
新たな生物の気配を悟れなかった自分に苛立つ。
今、タマモの身体は水色の液体のようなものに絡め取られていた。
手足は勿論、体中が液体に締め付けられ全く身動きができない。
少し動けばするりと抜け落ちそうなのだが、もがけばその分締め付けられ、抜け出せなくなる。
「これって・・・スライムって奴じゃないの!?」
母星にもいたモンスターで、ねばねばした液体で構成される軟体物。
獲物を捕まえて溶かすという性質を持っている。
ここの生物もそれと同じであればタマモの体が危ない。
何とか倒したいが、ほとんどの部分がタマモの体と密接しているので怪我をさせかねない。
しかも、母星と同じならば焼かないとまともに倒せない。
焼き殺せばタマモの体もただでは済まない。
「う・・・あうっ!」
悩んでる間にもスライムはタマモの身体を締め付ける。
「姫様!」
先に行っていた葛丸が戻ってくる。
そしてアギトを構え、走る。
「カズ!? 何をする気なの!!」
スライムとタマモはほとんど一体化している状態で狙いをつけるのは無理に等しい。
刃を下ろせばスライムごとタマモを斬ってしまうだろう。
葛丸が跳び、刀を突き立てる・・・地面に。
すると、金属のきしむような音が響きタマモの身体を取っていた液体が霧散する。
「あ、はあっ、はあっ・・・」
解放されたタマモは膝をついて大きく息を乱す。
圧迫されていたためかなり苦しかったようだ。
「大丈夫ですか、姫様・・・」
葛丸がタマモの背をさすりながら言う。
「うん・・・何とか・・・大丈夫みたい、ありがとう、葛丸」
「勿体無きお言葉・・・」
息を整えて、タマモはゆっくりと立ち上がる。
「カズ・・・どういうことなの?」
何がどうなっているのか分からないシルキーは葛丸に聞く。
「先程の魔物はプフィスライムという亜種・・・」
葛丸の話ではこのスライムは何かを溶かす能力はなく、基本的に締めることや液体の刃で攻撃してくるらしい。
いかなる場合にも弱点部分は地面に浸らせているらしく、そこを見抜けば取るに足らない相手だとか。
但し、一人の場合は締め付けられないことが大前提だが。
「前に戦ったことがあります故・・・」
葛丸の言葉を聞いて、ほっとため息をつく。
「本当にありがとうね、葛丸がいなかったらどうなってたか・・・」
タマモが微笑む。
「確かにね・・・ぞっとするよ」
「お気になさらずに・・・それよりもクロエ殿からの連絡のほうは?」
葛丸に言われて、タマモはさっき見ようとしたメールに目を通す。
そのメールには取引場所までの地図が添付されてあった。
ただ、いつもあったクロエからのメッセージがないのが気がかりだった。
「時間がなかったのかな・・・シルキー、葛丸・・・急ぎましょう」
タマモ達3人は何事もないように祈りながら早足で進み出した。
「ん・・・」
クロエが目を覚ます。
身体の自由がまるで効かない。
どうやら後ろ手で縛られているだけでなく、何かしら薬が投与されているようだ。
視界には幹部だけでなく、数人のハンター達が見える。
既に取引現場までついているらしい。
(ここまで・・・かぁ、アナ・・・)
タマモ達に何も連絡が出来ていない以上、彼女らがここまで来ることは出来ないだろう。
そうなればミカヅキ一人では無茶だった。
最愛の姉の代わりになれるのなら安いものだとクロエは思う。
本来ならここで売られるのはクロエではなくアナだったのだから。
ただ、最後に姉の姿を一目だけでも見たかったのが本音だったが。
「ああ、その値段でいい・・・よし、全部受け取ってくれ」
取引は成立したようだ。
これでクロエは自由ではなく所有物となる。
元々孤児だったクロエのとって所有者という存在は何人いただろう。
再び昔と同じ生活に戻る。
そう考える。
クロエの身体に人の手が触れる。
視界にはシノビが映っていた。
思えばこのレイマーがいなければもっと上手く進んでいたかもしれなかった。
そう思ったとき、シノビの呟く声が聞こえる。
その瞬間、クロエの手が自由になり、身体の痺れもなくなっていた。
「・・・奴らは油断している・・・一気に畳み掛ける」
シノビはそう言ってクロエの目の前にダガーを置く。
クロエには何が起こっているのか分からなかった。
そんな中、シノビが動き出し、銃口をハンター達に向ける。
「!?・・・シノビ!どういうつもりだ!!」
「・・・任務を遂行する」
相手の怒声など全く気にせずにシノビはトリガーを引く。
いきなりの不意打ちにハンター達は慌てふためく。
「・・・お前の仕事も同じようなモノだろう・・・やるべきことをやれ」
呆然と見ていたクロエにシノビが語りかける。
はっとしたクロエはダガーを手にハンター達の中へ斬り込んでいく。
ミカヅキも訳が分からなかったがクロエが飛び出したのを合図にパルチザンを振るう。
「くそっ!シノビにアナ・・・ミカヅキまでも裏切ったというのか!!」
そう言って、ハンター達を壁にしつつ取引相手の男達と後ろに逃げる。
「はい、残念だけどこっちには逃げられないよ」
急に逃げた方向から声がしたと思うと3人のハンターが姿を現す。
「タマモさん!シルキーさん!葛丸さん!」
クロエは、もう来ないとばかり思っていた者達を見て歓喜の声を上げる。
「クロエさん、大丈夫ですか!?」
「はい!その人達を捕まえて下さい!」
「承知!・・・観念するがいい!」
葛丸が逃げようとした者の退路を塞ぐ。
それに対して数人のハンターが掛かってくるが、葛丸の斬撃を浴び、更にはシノビの正確な射撃も追い討ちでかかる。
「くそ・・・何ということだ!!」
男が舌打ちするが時は既に遅い。
「ここまでですね・・・」
タマモのハルベルトが男の首筋に添えられた。
「く・・・」
男は力なく膝をついた・・・。
「一件落着だね・・・クロエさんが無事でよかった・・・」
依頼を終えた後、クロエに一連の話を聞いて、心底無事でよかったと思った。
シノビというレイマーはパイオニア2に帰る前に忽然と消えていた。
おかげで最後までどのような人物かは分からなかった。
シルキーはクロエから話を聞いたあとに、用事があるといって先に帰ってしまった。
「それにしても・・・葛丸もよかったね」
タマモが葛丸の腰に差している刀を見て微笑む。
彼らが取引しようとしていたオロチアギト。
それは元々葛丸の物だったのだ。
タマモと出会う直前に奪われたらしいが・・・。
何故それがこんな形で戻ってきたのかは分からない。
少なくとも葛丸が戦った相手とブラックペーパーは関わりがあるということだ。
「でも・・・葛丸がアギトの正当伝承者だったなんて知らなかったな・・・」
「拙者はまだ未熟ゆえアギトを受け継ぐには早いと思ったのですが・・・」
葛丸が言う。
タマモにしてみれば葛丸ほどの実力があれば当然だと思ったが・・・。
「これは拙者の大切な者から譲り受けたもの・・・再び我が手に戻ってきたことを嬉しく思います」
「ふふ・・・よかったね、葛丸・・・よかったら今度その大切な人の話・・・聞かせてくれない?」
上目遣いにそう言った。
「はっ、時間がある時にでも昔の話をしましょうか・・・」
「うん・・・じゃあ葛丸、またね」
タマモは自分の家の前で葛丸に別れを告げる。
「姫様、今日は存分にお休みください・・・では拙者はこれにて」
葛丸はタマモに一礼をすると自宅のほうへと歩いていく。
タマモは葛丸の姿が見えなくなるまで家の前で見送っていた。
「・・・何でアンタがあんな所にいたの?」
「・・・フォーゲルの依頼だ」
シルキーはタマモと別れた後、シノビがいつもいる鍛錬場へと向かった。
案の定、そこにいたシノビに問い詰める。
だが、答えも予想通りのものだった。
「う〜・・・まぁ成功したからよかったけど・・・」
シルキーが気に掛けているのが、シノビがクロエにしたことだった。
油断させるには最適な行動だったが、もしクロエが動けず、タマモ達が間に合わなかった時にシノビだけで戦闘になればどうなっていたか。
「・・・問題は無い、あの娘への治療も怠ってはいない」
「むう・・・やっぱりアンタとは話にくいわ・・・」
「そうか」
はっきり言ってこれ以上の問答はまるで無用だと感じる。
「はぁ・・・まあいいわ、とりあえずお疲れ様」
「ああ、ゆっくり休むといい」
シルキーはシノビに軽く挨拶をしてその場を去っていった。
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第13話「ダイエット大作戦」
あとがき
洞窟も着々と進んできております。
どさくさにまぎれてアギトをカズに返しましたがもうちょっと引っ張ったほうがよかったかなーとか思いつつ・・・。
その場しのぎにスライム出しましたがゲームと攻撃方法が全く違いますね。
まぁスライムといえば神出鬼没で案外強い、と。
カズに一瞬でやられたけど・・・。
シノビはやっぱりセリフ少なくて描きにくいなあと思いつつ次回!!