11月30日 『ぼくと未来屋の夏』 はやみね かおる

「未来を知りたくないかい?」
一学期の終業式の帰り、
風太は“未来屋”の猫柳に声を掛けられた。
100円で未来を売るという、怪しげな猫柳は、
SF作家の父と妙に意気投合し、
なぜか風太の家に住み着いてしまう。
夏休みの自由研究に悩んでいた風太は、
猫柳の助言により、
神隠しの森を調べることになったのだが・・・

ミステリーランドの第二回配本作品。
「子供向けのミステリはこうあるべき」という感じがする物語。
猫柳さんの“変な人”加減といい、
風太の町に伝わる不思議な言い伝えといい、
ちょっと怖くて、面白くて、それがとてもほど良く心地いい。
どこかで、懐かしさを感じながら、楽しんで読みました。

11月29日 『FINE DAYS』 本多 孝好

ガンで余命わずかな父親に、
若い頃に付き合っていた彼女を探して欲しい、と頼まれた僕。
わずかな手がかりをもとに、
当時彼女が住んでいたアパートの部屋を訪ねた僕が、
そこで出会ったのは・・・(『イエスタデイズ』)

他に表題作『FINE DAYS』『眠りのための暖かな場所』『シェード』を収録。
いずれも、不思議な出来事をからめた、やさしい物語。
淡々とした中に、少しホラーっぽい味わいもあり、
そこがこれまでの本多作品とは、少し違う気がします。
1番好きなのは、上に書いた『イエスタデイズ』ですが、
書き下ろしの『シェード』も、結末はありきたり、という感じではありますが、
本多さんらしい、あたたかい作品で、よかったです。

11月25日 『脳男』 首藤 瓜於

爆弾犯のアジトに踏み込んだ茶屋は、
そこで犯人ともみ合う鈴木一郎なる男を捕らえた。
彼は犯人の一味なのか、それとも・・・?
鈴木の精神鑑定を依頼された真梨子は、
彼に感情がない、ということに気付く。
彼の病気は?彼の正体は?
真梨子は彼の本質に迫るべく、奔走するのだが・・・

表題を読んで、想像していたのとは、
まったく違うストーリーでした。
(もっと、グロテスクな想像をしていたので)
自称鈴木は、病気ではあるのだけど、
ある意味、スーパーマンのような、不思議な男。
痛々しくもあり、頼もしくもあり、
彼がこれからも、そうして生きてゆくのなら、
彼の仕出かす事件を、また読む機会もあるかしらと、
そんな期待もしてしまいます。
とにかく、面白かった!

11月22日 『魔女の死んだ家』 篠田 真由美

子供の頃。
あたしはとても大きな家に、
おかあさまと、ばあやとねえやの4人で住んでいた。
お客様のない日がめずらしいくらい、
家には、来る日も来る日も男の人たちが集まってきていた。
(その人たちは、おかあさまの“すうはい者”なのだそうだ)
そんなある日、鍵の掛かった部屋の中で、
おかあさまがピストルで撃たれて死んでしまう。
その部屋の中に一緒に居た男の人が犯人として逮捕されたのだが・・・

ミステリーランドの第二回配本作品。
とても妖しい雰囲気のある、ミステリです。
あまり、少年少女向け、という感じではないかもしれません。
桜や母親の描写も、挿絵も、とても美しく、
絡み合った謎が解き明かされる様は、非常に鮮やかです。

11月20日 『蛇行する川のほとり 2』 恩田 陸

暁臣に恐ろしい事実を告げられ、
混乱する毬子は、
体調を崩し、寝込んでしまう。
途切れ途切れで、曖昧な記憶。
あの夏、この川のほとりで、何があったのか。
全てを知っているのは、香澄ひとりだったが、
その香澄が・・・

1巻目は、毬子が語り手でしたが、
この2巻目は、芳野の視点で描かれています。
新しい事実がひとつ、またひとつ、語られて、
けれど、謎は深まるばかり。
1巻目以上にラストが衝撃的です。
もう、早く最後まで読みたい!

11月19日 『スイス時計の謎』 有栖川 有栖

“国名シリーズ”の短編集です。

『スイス時計の謎』
高校時代、エリート意識を持つ優等生で作ったサークルのメンバー6人は、
卒業後も、2年に一度は同窓会を開いていた。
同窓会には、揃いのスイス製の時計をつけて行くのが決まりになっていた。
その同窓会の夜、出席するはずだった村越が、
自分のオフィスで殺害される。
そして、身に着けていたはずのスイス時計が消えていた。
彼らと同級生だった有栖は、火村に頼まれて、
他のメンバーに探りを入れるのだが・・・

火村の、非常に繊細で論理的な推理が見事な作品。
有栖の高校時代がちらりと垣間見えて、面白かった。

他に『あるYの悲劇』 『女彫刻家の首』 『シャイロックの密室』を収録。

11月13日 『鳥人計画』 東野 圭吾

日本ジャンプ界のエース・楡井がジャンプ台で死んだ。
自殺か、他殺か?
捜査は難航したが、警察に密告状が届き、
楡井のコーチ・峰岸が犯人として逮捕される。
完璧なはずの犯行計画を見破って、
密告したのは誰なのか?
そして、なぜ、峰岸は楡井を殺さなければならなかったのか?
調べるにつれ、次第に恐るべき“計画”が明らかになって・・・

早いうちに、犯人がわかってしまうのだけど、
“何があったのか”を、読者は、
警察の捜査と犯人(峰岸)の推理から知ることになる。
特に、捜査の過程で明らかになる“計画”は、
こんなことができるのか?
ここまでやるか?という感じで、予想以上にすごいです。
また、最後のひとひねりが、非常に効いていますね。
もともと、ジャンプ競技には興味を持っていたので、
とても面白く読みました。

11月12日 『蛇行する川のほとり 1』 恩田 陸

高校1年、美術部の毬子は、
芳野と香澄、二人の先輩とともに、
演劇部の舞台背景を描くことになる。
夏休みの9日間、香澄の家で合宿をしようと誘われ、
毬子は有頂天になった。
香澄の家・・・過去に不幸な事件があり、
長い間空き家になっていた、
船着場のあるその家は、
毬子も子供の頃、よく遊びに来ていた場所だった。
香澄のいとこ・月彦とその友人の暁臣も加わって、
5人の合宿生活が始まる。。。

この、雰囲気。
恩田さんが学園ものというか、少年少女を描く時、
どこからともなくにじみ出て来る、
懐かしく、切なく、愛しい、この感じ。
(思い込み、もいくらかあるのかもしれませんが)
・・・ほんと、好きです。浸れます。
ラストがとても衝撃的だったので、
ますます、2巻目が楽しみになりました。

11月10日 『クレオパトラの夢』 恩田 陸

不倫相手を追って北海道に移り住んだ双子の妹・和見を
東京に連れ戻すために、
神原恵弥は北海道を訪れた。
着いてすぐ、和見に連れて行かれたのは、
和見の不倫相手・慧の葬式だった。
恵弥の目的は簡単に達せられるかに思えたのだが・・・
姿を消した和見。
恵弥の周囲に見え隠れする、怪しい人々。
“クレオパトラ”とは何なのか?
そして、恵弥が北海道を訪れた本当の理由とは・・・?

MAZEに続くシリーズ2作目、ということです。
確かに、精悍な顔つきに似合わない女言葉を使う恵弥が、
両作品に登場しますが、
MAZEの方では、恵弥は主人公というわけでもなく、
恵弥の年齢も、物語の傾向も全く違うので、
シリーズと言われても、いまひとつピンとこない感じでした。

恵弥を含めて登場人物がみんな、何かを隠している。
会話もどれも、駆け引き合戦といった感じで、
謎が謎を呼び、一気読みでしたが、
結果明らかになった真相には、少し物足りない気も。
MAZEよりは、読みやすく、好きな作品でした。

11月9日 『虹果て村の秘密』 有栖川 有栖

刑事の息子で推理作家になりたい秀介と、
推理作家の母を持ち、刑事にあこがれる優希の二人は、
優希の別荘のある虹果て村に遊びに行った。
高速道路の計画をめぐって賛成派と反対派が対立する村で、
殺人事件が起きる。
折しもがけ崩れのため、村への道路が通れなくなってしまった。
秀介と優希は、警察が到着するまでの間に、
事件を解決しようと、調査を始めたのだが・・・

“ミステリーランド”のために書き下ろされた作品。
本格的な謎が、とてもわかりやすく書かれていて、
すいすい、おもしろく読みました。
本文も、もちろんですが、
「わたしが子どもだったころ」と題されたあとがきも、
大変面白かったです。
自分が子どもだった頃のことなんかも
しみじみ、思い出したり。。。

この“ミステリーランド”は、執筆陣がめちゃくちゃ豪華なので、
今後の作品も、非常に楽しみです。

11月8日 『観覧車』 柴田 よしき

突然失踪した夫の事務所を守るため、、
素人ながら、探偵業を始めた唯。
ある時、行方不明の夫を探してほしいという依頼を受ける。
手がかりとなるのは、愛人の女性。
彼女は、毎日毎日遊園地の観覧車に乗りに行くばかり。
果たして彼女は、何のために観覧車に乗るのだろうか・・・?

私立探偵・唯のかかわった事件と、
唯の夫探しを描いた、連作短編集です。

柴田さんがプロとなって初めて書いた作品が、
この表題作「観覧車」だそうで、
以降7年の間に、書かれた作品をまとめたものが本書。
最初の頃は、事件そのものに重点を置いた書き方をされていますが、
途中、事件と、夫探しが、うまくかみ合わず、
落ち着きの悪い作品もあり、
後半は、ぐっと夫探しの方に、焦点があってきます。
が、本書の中では、
夫の行方は結局わからないままなので、
読後は欲求不満で、悶々としてしまいました。

夫は元気で生きているにもかかわらず、
唯の前に姿を見せない・・・これは、何を意味するのか?
それがわかっていながら、探さずにはいられない。

まっすぐ事実と向き合おうとする唯の姿に、
胸をしめつけられる思いです。

11月5日 『夏と花火と私の死体』 乙 一

『夏と花火と私の死体』
木の上から突き落とされて、わたし(五月)は死んだ。
わたしを押した弥生ちゃんと、
弥生ちゃんのお兄ちゃん(健くん)はわたしの死体を隠すことにした。
大人たちに見つからないように、
あちこち、隠し場所は変えられ、運ばれるわたしの死体。
健くんは、絶対に見つからない隠し場所を思いついたのだが・・・

乙一のデビュー作。
五月は死んでしまったのだけど、その死体の五月が語るという、
一風変わった物語。
五月が死んだというのに、隠しているのは死体なのに、
淡々とこの騒ぎを楽しんでいるような健くんが不気味です。
不気味に思いながらも、
今にも大人に見つかるのではないかと、
ドキドキハラハラしながら、一気読みしました。
怖いのだけど、決しておどろおどろした怖さではなく、
逆にどこかコメディタッチの可笑しさも持っていて、
そしてラストで本当に、ぞーっとさせてくれます。

他に『優子』を収録。

11月4日 『さみしさの周波数』 乙 一

『未来予報  あした、晴れればいい。』
古寺くんには絶対確実ではないが、未来が見えるという。
ある日、加奈と二人で古寺くんの家を訪ねた僕たちは、
「どちらかが死ななければ、いつか結婚するぜ」と言われた。
それ以来、気恥ずかしさからか、僕は彼女を避けるようになる。
けれども、ずっと彼女のことが気になり続けたのだった。
何年も。
ある時、彼女が入院していると聞かされた僕は・・・

なんとなく気になる相手との仲をからかわれたりして、
逆に意識して、避けてしまう・・・
そういう経験、持っている人は多いのじゃないでしょうか?
この物語には、そういう「ああ、わかるなぁ」っていう部分が沢山あって、
だから余計に、二人の想いが、胸に沁みる気がします。
結婚することはできなかったけれど、
お互いにとって、ずっと大切な存在だった二人。
古寺くんの“未来予報”がなかったら、どうなっていたのかな。。。

他に『手を握る泥棒の物語』『フィルムの中の少女』
『失はれた物語』の3編が収録されています。