12月29日 『天然日和』 石田 ゆり子

女優・石田ゆり子さんが、
Webマガジン幻冬舎で連載していた日記に、
書き下ろしエッセイを加えた1冊。
ゆり子さんの日常が、そして、
その時々の彼女の心の動きが、
非常にシンプルに、真っ正直に綴られています。

読み始めた当初、
このくらいの文章なら、自分にも書けるわ、なんて、
大それた事を思ったりもしたのですが、
次第に、彼女の、肩の力が抜けていて、
それでいて、けして逃げずに物事に取り組む様子に、
感動している自分がいました。
少しずつ、少しずつ味わって、また戻ってみたりして、
私にしては珍しく、
2か月もの時間を掛けてじっくり読み終えました。
常に傍らに置いておきたい、素敵な作品です。

12月28日 『半落ち』 横山 秀夫

現役の警察官・梶が妻を殺害し自首してきた。
アルツハイマーに侵され、
次第に記憶が消えてゆくことに絶望した妻に、
懇願されての、嘱託殺人。
しかし、妻を殺した後、自首するまでの空白の2日間について、
彼は黙して語ろうとはしなかった。

担当刑事、検事、新聞記者、弁護士、裁判官、
そして、刑務官。
梶を取り巻く人々がそれぞれの視点から、
この事件を、その背景に隠されたものを、追い求める。
「人生五十年」と書き残した梶が、
命より大切に守ろうとしているのは、果たして何なのだろうか・・・?

横山作品、初読みです。
正直、もっとガチガチの警察小説なのだと思っていたので、
こういうオチだとは、思いもしませんでした。
意外でしたが、非常に面白かった。
他の作品もぜひ、読んでみたいです。

12月27日 『蒼い瞳とニュアージュ』 松岡 圭祐

歌舞伎町雑居ビル火災の捜査状況を調査するために、
警視庁を訪れた内閣情報調査室の宇崎は、
臨床心理士:一ノ瀬恵梨香と出会う。
ギャル系の服装に身を包んだ彼女が、
刑事達には心を開かなかった被害者女性達と、
瞬く間に意気投合したばかりか、
重要な証言を引き出したことに、宇崎は驚く。

1ヶ月前に自殺した男性が、
“手製爆弾を仕掛けた”というビデオを残していたことがわかり、
騒然とする内調にあって、
宇崎は、解決には恵梨香の能力が必要だと判断し、
彼女に協力を依頼するのだったが・・・

第3のカウンセラー登場、ということですが、
彼女も、シリーズ化されるのかしら。
確かに面白かったですが、
これまでのカウンセラーものに比べると、
地味、というか、スケールが小さいというか。
単純に好みで言っても、恵梨香よりも、
岬美由紀の方が、好きでした。

12月26日 『イリュージョン:マジシャン第U幕』 松岡 圭祐

上手くもない紙芝居屋を続ける父。
そんな父に代わってスナック経営で家計を支える母。
中学生の彬は、友達と上手く付き合えず、
唯一の拠り所は、マジックだった。
ある時、母が趣味にしていた庭の樹木が、盗品であったこと、
母がギャンブルに手を出して借金がかさんでいること、
そして、父と母の離婚の原因が自分がくすねた4万円だったことを
知った彬は、一人、家を出る。
年齢を偽り、勤め始めた彬は、
マジックの知識を生かし、万引きGメンとして一躍有名になるが、
その一方で、自ら万引きにより、財を成していった。
そんな彬に、舛城は疑いの目を向けたのだが・・・

現実には、こんな風に事が運ぶことはないだろうと、
そう、思いながらも、
テンポよく展開する物語に、ひきつけられて読みました。
けれども、犯罪を重ねながら、
危うくなると、積み重ねてきたものをあっさり捨て去る、
彬の刹那的な生き方。
まだ、子どもなのに、
いろんなものをあきらめて、たまらなく孤独で、
何をもってしても埋められない空虚を抱えた彼が、
哀れで、そして、腹立たしかった。
沙希と彬が出会ったラスト、に救われた感じです。

12月21日 『廃用身』 久坂部 羊

デイケアを併設したクリニックで老人医療に取り組む医師・漆原は、
麻痺し、回復の見込みのない手足(廃用身)を切断する“Aケア”により、
老人の苦痛を減らし、介護者の負担を減少させられるのでは、と考えた。
実際に行ってみると、予想以上の効果があるらしいとわかり、
自ら“Aケア”を希望する老人が、相次ぐ。
ところが、ある事件をきっかけに、
“Aケア”がマスコミに批判されるようになり・・・

前半は、この漆原医師の手記、
後半は、手記を出版しようと企画していた編集者によって書かれています。

いったいこれは、ノンフィクションなのか?
そんな疑問をずっと感じながら、読みました。
(現実なら、話題になっていないはずはないだろうとは思いながら)
恐らく、介護の問題というのは、
今後ますます切実なものになってくるのだろうと思いますが、
だからといって、ここにあるような方法は、
私には受け入れられそうにありません。
多分、世間一般的にいってもそうだと思うのですが、
それでも、介護、ということについて、
もっと、考えてゆく必要はあるんですよね。
この本に書かれているのは、極端な例だとしても。

12月19日 『くらのかみ』 小野 不由美

跡継ぎ問題を話し合うため、本家に呼ばれ、
親戚一同が集まった。
大人たちが話し合いをしている間に、
子ども達は蔵の中で「四人ゲーム」をする。
途中で続かなくなるはずの「四人ゲーム」が、
なぜかちゃんと続いて、気付くと、
4人だったはずの子どもが、5人に増えていた。
最初からいなかったのは、誰なのか?
その後も、不思議な事件が続く。
食事に毒が混じっていたり、
井戸の周りに仕掛けがしてあったり・・・
次々起きる怪しい事件を、子ども達は推理するのだが・・・

座敷童子、行者の呪い、お地蔵さんに、井戸に・・・
なんとも、雰囲気たっぷりの小道具が満載の物語。
子どもがいつの間にか一人増えてしまって、
それが実は、<お蔵さま>だったという、
ファンタジー(ホラー?)っぽい部分の反面、
大人たちの相続を巡る争いの顛末は、
しっかり、ミステリしてます。

12月18日 『蛇行する川のほとり 3』 恩田 陸
真魚子が語り手となる、最終話。
香澄は亡くなり、
毬子は、大怪我をして入院。
代わりに真魚子が加わって、
舞台の絵を仕上げることになった。
川のほとりの、船着場のある家で。
そうして、過去の事件の真の姿が明らかになる。。。

1話、2話のエンディングがあまりにも衝撃的で、
この最終話への期待が非常に高まっていたので、
事実が分ってみると、ちょっと拍子抜け、というか、
なあんだ、という感じがしなくもなく。
それでも、風景描写の繊細さや、
あの年頃の少女達の持つ脆さ、美しさ、
どことなく漂う懐かしさも含めて、そういう独特の雰囲気は、
最終巻まで、変わることなく貫かれています。
エンディングも、すっきりしていて、
読後感がとてもよいですね。

12月18日 『散りしかたみに』 近藤 史恵

歌舞伎座での「本朝廿四孝」の公演中、
毎日1枚、どこからともなく花びらが舞うという。
師匠に頼まれて、小菊は、友人の探偵今泉に話を持ちかけたのだが、
今泉は、この事件には関わりたくないと言い出して・・・

歌舞伎ミステリの第二弾です。
花びらが散るからくりは、わかってみれば簡単なことですが、
なるほど・・・と感心しました。
物語の結末は、あまりにも悲しく、
痛々しかった。。。

12月16日 『迷宮百年の睡魔』 森 博嗣
『女王の百年密室』の続編です。
ジャーナリストのサエバ・ミチルとパートナーのロイディは、
イル・サン・ジャックという城塞都市を訪れる。
ここは、一夜にして森が消え、
周囲を海に囲まれてしまった、という伝説の島で、
これまで頑なに取材を拒否していたのだが、
なぜかサエバを指名して、取材の許可が下りたのだった。

サエバたちが島の宮殿モン・ロゼを訪れた、その日、
曼荼羅の中で、僧侶の首なし死体が見つかる。
誰がどうやって、首を持ち去ったのか?
そして、この不思議な島の謎とは・・・

『女王の百年密室』よりは、
いくらも読みやすく、面白く感じました。
殺人事件の謎解きも、もちろんあるのですが、
ミステリというよりは、
SFあるいはファンタジーとして、楽しめる感じ。
さらなる続編も期待できそうです。
12月14日 『疾走』 重松 清

一家の誇りだった兄が、実は放火魔だった。
壊れてしまった兄、行方をくらました父、
母はギャンブルに手を出し、
シュウジは犯罪者の家族として、
世間の冷たい目にさらされる。
ついに、家を出たシュウジだったが、
一人で生きてゆこうとする彼を、
次々と過酷な出来事が待ち受ける。

ひたすらに、孤独で、
孤独であることを、そして様々な不幸を、
痛みに感じない自分でありたいと思う反面、
誰かとつながりたい、と願い続けるシュウジ。
まだ、子どもなのに、彼は、
なぜこれほどまで傷つかなければならなかったのか。。。
あまりにも、残酷で哀しい物語でした。

12月11日 『千里眼のマジシャン』 松岡 圭祐
お台場に、建設された巨大カジノのオープン前興行で、
要人達が集まったところで、事件は起きた。
里見沙希のマジックショーが開かれる劇場が、
完全武装のゲリラに占拠されたのだ。
彼らはVIPを人質に、四百億の現金と、
海上自衛隊の最新鋭原潜を要求する。
ゲリラの正体は?
そして、現金と原潜の行方は・・・?

『千里眼』の岬美由紀と、
『マジシャン』の里見沙希が登場する、
贅沢な作品。
スケールも大きいし、
びっくりする仕掛けもあるしで、
楽しめる作品には、違いないのですが、
あまりにもお祭騒ぎになってしまった感じも。
文庫化にあたり、『千里眼 マジシャンの少女』と改題され、
内容も大幅に変わっているということなので、
そちらも、ぜひ読んでみたいと思います。

12月8日 『永遠の出口』 森 絵都

紀子という、ごく普通の少女の、小学生から高校生までを、
9つのお話しに綴った連作短編集です。

描かれているエピソード自体が、
それほど、特別なわけではありません。
物語のそこここに、
子どもの頃の自分が、友達が、クラスメイトが、
ちゃんと顔を覗かせていて、
苦しいくらいなつかしく、
泣きたいほどいとおしい気持ちにさせてくれました。

けれど、それだけでなく、
自分にちゃんと向き合って、沢山傷ついて、
そうして成長してゆく紀子の姿を、
いつの間にかうらやましく思っている自分がいました。
どんな自分にもなりうる、どんな未来もありうる、その大切な時代に、
私は自分から目をそらさずにいられたのだろうか。
臆病な私は、傷つくことから逃げてきたのではないだろうか。
そんなふうに、改めて考えさせられました。

12月6日 『龍時 02−03』 野沢 尚

スペイン1部リーグデビューを果たしたリュウジは、
セビリアのベティスにレンタル移籍。
新しいチームでのリュウジの活躍と、
フラメンコダンサーを目指すマリアとの恋を中心に描く、
『龍時01−02』の続編です。

もしかしたら、著者は、この作品で、
もっといろいろなことを語りたかったのかもしれませんが、
ひたすら、私は、
リュウジがサッカーに打ち込む姿を、
そしてグラウンドで彼の中の龍が目覚める瞬間を、
目にしたくて、息を詰めてゲームを見守っている。
そんな風に、この物語を読みました。

この後、まだ続編があるそうなので、
それもとても楽しみです。

12月2日 『龍時 01−02』 野沢 尚

スペインU−17との親善試合に
日本選抜として出場した志野リュウジ。
力の差、スペインと日本のサッカーの違いを、
まざまざと思い知らされたリュウジに、
スペインのユースチームから声が掛かる。

16歳で単身スペインに渡ったリュウジが、
国籍問題や家族関係など、
数々の悩みを抱えながらサッカーに打ち込み、
成長してゆく姿を描いた物語です。

正直、サッカーにはそんなに詳しくないので、
ゲームの場面は、わからない部分もあったりするのですが、
それでも、迫力あるゲーム描写に、夢中になって読み進んでしまいます。
だから、サッカーに詳しい人なら、もっと、楽しめるのかもしれませんね。
もしかしたら、
これでも十分、夢のような話だと、言われるかもしれませんが、
私は、リュウジがスーパーマンでなく、
失敗したり、悩んだりしながら少しずつ実績を積み上げていく姿が、
非常にリアルに感じられ、声援を送りたくなります。
また、今更、と言われそうですが、
サッカーという競技は(足でボールをコントロールするということは)
なんて難しいのだろうと、改めて思ったりしました。