5月31日 『うつくしい子ども』 石田 衣良

ニュータウンで起こった異常な殺人事件。
被害者はぼくの9歳の妹の同級生。
そして捕まった犯人は、ぼくの13歳の弟・和枝だった。

押し寄せるマスコミ。
ばらばらになってゆく家族。
そんな中、14歳の幹生は自分に何が出来るかを考えた。
弟がなぜ殺人を犯さなければならなかったのか、
その真実を知りたいと思ったのだ。

二人の仲間の協力を得て、調査を始めた幹生が
辿り着いた真相とは・・・


これで、いいのだろうか?
読み終えて、そんな気持ちで一杯になりました。

この14歳のお兄ちゃん、ほんとにいい子なんですよね。
家族思いで、やさしくて、正義感が強くて、
いろいろ経験する中で、精神的にも逞しくなってゆく。
ちょっと出来すぎなのでは?と思ってしまうほどなのです。
一方から見ると、この作品は、
爽やかで感動的な印象さえ持ってしまいそうになるのですが、
事件そのものは、とんでもない結末を迎えます。

幹生の選択した事件の終え方を、
あとで後悔したり、しないのかしら。
事件後の和枝の変化も、
それが本当にいい方向、なのでしょうか・・・?

また別の面から見ると、少年犯罪の扱いの難しさはもちろん、
親子の関係、いじめ問題、マスコミの横暴さ等々、
問題点が山積みなのです。
もっともこれらは、以前から何か事件が起きるたびに、
くり返し取り上げられていた問題であり、
けれども、喉元過ぎればすぐに薄れてしまっていた事柄で。

物語は(この事件は)結末を迎えても、
結局何も、根本的に解決はしていないのですよね。
(解決することが可能なのかどうかはわかりませんが)


同じ年頃の子どもを持つ親としては、
それぞれの親の気持ちが、それぞれにわかり、
だからこそ、身勝手かもしれませんが、
こういう事件が自分たちの上に降りかかりませんように、と、
強く願ってしまいます。

5月27日 『クレシェンド』 竹本 健治

ソフト会社でゲーム制作に携わる矢木沢は、
ある日、資料を探して、地下二階に降りた。
そこで彼は不思議な体験をする。
まさに百鬼夜行というべき幻覚に陥り、
その後しばらくの記憶を無くしてしまったのだ。

ちょうどその日、行きつけのサロンで知り合った、
浪人生の岬とともに、
彼の異常体験の原因を調査することになったのだが・・・

よく挫折本にならなかったと思うくらい、
よくわからない作品でした・・・

前半は、まだ面白かったんですけど。。。
日本人のルーツ、
日本語は、どの言語から生まれたのか、
そして、神話は?
世界各地との比較、分析、
全く興味がない、という話ではないですが、
ここまで詳細に語られてもなぁ、という感じです。

そして、まさか、最後までこの話題に終始するとは・・・
結局何が言いたいのか、私には読み取れなかったです。

5月24日 『ノーカット版 密閉教室』 法月 綸太郎

密室状態の教室に、男子生徒の死体が。
さらに、48組の机と椅子が、
教室から消えていた。
彼は自殺なのか、殺されたのか。
僕(工藤順也)は刑事に依頼されて、
捜査に協力する事になったのだが・・・

法月綸太郎のデビュー作「密閉教室」のオリジナル版。
本書(7百ページ)を5百ページに削ったものが、
デビュー作品となった。

実際、「密閉教室」は未読なので、
比較する事は出来ないのですが、
作者が前書きで書いているように、
理解不能な例え文や言い回しは、確かにありました。
けれども、学園ドラマに欠かせない郷愁は保ちつつ、
謎は本格的だし、
事実がわかってみればかなり重い話を、
終始軽快なテンポで綴っている。
単純に、とても好きな作品でした。楽しめました。

5月21日 『千里眼 岬美由紀』 松岡 圭祐

『千里眼』シリーズの第六作。
『メフィストの逆襲』の後編(完結編)にあたります。

拉致されたと思われていた少女・亜希子から
蒲生に突然の連絡があった。
実は新潟の歯科医の家に監禁されていた彼女を、
李秀卿が救い出したのだ。
記憶を無くしている亜希子を、
嵯峨は必死の思いで治療する。

一方、アメリカに渡った李を追って、
岬も単身渡米。
果たして、李たちの目的は・・・?
そして、ついに全貌を現す、
メフィスト・コンサルティングの陰謀とは?

北朝鮮の拉致問題に、
NY同時多発テロ。
あまりにも、生々しい展開に、
読みながら、ゾーッとする感じがしました。

北朝鮮の人民思想省の活動員とはいっても、
同じ人間同士、話せば分かり合える、というのが、
作者の考えなのか、願望なのか。
いずれにしても、この作品では、
岬美由紀以上に李が魅力的に描かれており、
彼女たち二人の気持ちの交流も、
見どころ(読みどころ?)の一つになっています。

ちなみに、ハードカバー版『千里眼の瞳』に
大幅に加筆訂正し、2冊に分冊したものが、
この『メフィストの逆襲』と『岬美由紀』(文庫版)。
内容的には、かなりの違いがある、ということなので、
『千里眼の瞳』も、読んでみなくちゃ、だな。

5月20日 『千里眼 メフィストの逆襲』 松岡 圭祐

『千里眼』シリーズの第五作。

新潟市の海岸で、父親の目の前で、
13歳の少女が姿を消した。
ちょうどその頃、海上で、
北朝鮮の不審船が発見され、
拉致した少女を連れ去る船だと判断した美由紀は、
不審船を追うが、領海外に逃れられてしまう。

それから4年後。
美由紀は、拉致されたと見られる少女の父親から、
少女の行方を探ってほしいと依頼される。
そして、李秀卿という、北朝鮮工作員の出現。
嵯峨もかつて、李とは不思議な出会いをしていた。
工作員・李の目的とは・・・?

この作品と次の『岬美由紀』で、前編・後編構成になっています。

今回は、前作よりさらに、現実寄り、という感じがあります。
美由紀も、大人になった分、悩みこむことが多く、
以前のような破天荒で、瞬間湯沸かし器的な部分が、
影を潜めてしまっています。
ちょっと、ものたりない、といえば、ものたりないかな〜

5月15日 『千里眼 洗脳試験』 松岡 圭祐

『千里眼』シリーズの第四作。

東京・奥多摩に拠点を置く、
謎の自己啓発セミナー「デーヴァ瞑想チーム」。
再びカウンセラーとして働き出した美由紀は、
その建物に、4000人もの人質が捕らわれ、
爆弾テロの危機にさらされていることに気づく。

首謀者は友里佐知子。彼女は生きていたのだ!
美由紀は人質を救うべく、
建物に侵入するが、
逆に友里の罠にかかり、人質の命は風前の灯火に・・・

友里の、美由紀いじめ(?)の場面は、
あまりに執拗で、陰湿で、
ちょっと読んでいて、イライラ・・・
そんな中、涼平くんの存在に救われた気がします。
(実際、救われたんですけどね)

前作に比べて、地味、というか、多少現実寄りの物語。
それでも、美由紀の新たな魅力が、表現されており、
もちろん、手に汗握るアクションシーンも、用意されています。

それにしても、御船千鶴子って、実在の人物だったんですね〜

5月8日 『千里眼 運命の暗示』 松岡 圭祐

『千里眼』シリーズ、第三作。
『ミドリの猿』の続編(完結編)です。

捕らわれた岬美由紀を助けるべく、
美由紀を追う蒲生と嵯峨。
しかし、メフィスト・コンサルティングの策略により、
3人ともヘリで中国本土に移送されてしまう。
日本を、そして岬美由紀を異常に憎悪する中国の人々。
果たして、彼等は日本と中国の戦争を止められるのか。
そして、“ミドリの猿”の正体とは・・・?

これまで以上にスケールの大きな物語。
ますます、ありえないストーリーなのですが、
まあ、そこがこの作品の面白さなのでしょうね。
美由紀の意志の強さ、無鉄砲さ、
そして“千里眼”としての能力が、
遺憾なく発揮されている作品です。
まさに、エンターテインメントと呼ぶにふさわしい、
贅沢さ、ですね。

『催眠』から登場していた“ミドリの猿”の正体が、
この作品中で明らかになります。
そして、ミドリの猿と同時に、
このシリーズの重要人物の一人も死んでしまう・・・
けれども、ラスト近くで、
とんでもないどんでん返しが待っています。
たしか、この部分は、文庫化のときに付け加えられたらしいですよ。
ハードカバーで読んでいたら、
次作を読んだときに、さぞびっくりしただろうなぁ。。。

5月5日 『千里眼 ミドリの猿』 松岡 圭祐

『千里眼』シリーズ、第二作。

メフィスト・コンサルティング。
全く痕跡を残さず、思いのままに歴史を操る集団。
今回の敵は、このマインドコントロール組織だ。

須田知美という少女を助けた嵯峨は、
岬美由紀を頼るよう少女に言って姿を消す。
一方、国家公務員となった美由紀は、
メフィスト・コンサルティングの策略で、
中国国民から敵視されることになる。

「恒星天球教」から逃れた『催眠』の嵯峨と、
友里に替わって、千里眼と呼ばれるようになった美由紀が、
メフィスト・コンサルティングの陰謀に挑む。

実は、『催眠』は未読なんです。
映画の『催眠』も見ていないし、
かろうじて、TVドラマだけ、見たのですが。
(なので、嵯峨は、最初から稲垣五郎でした)
ここで、こんなふうに嵯峨が主役級の登場をするとは、
思いもしなかった。。。
『催眠』から順番に読めばよかったかな〜

この作品は、いいところで、
“つづく”という感じの終わり方をします。
『ミドリの猿』が前編、次の『運命の暗示』が後編、
といったところでしょうか。

5月2日 『千里眼』 松岡 圭祐

横須賀米軍基地に侵入した男が、
首相官邸に向けてミサイルを発射した。
着弾を止めるには、男が指定した暗証番号が必要だった。
カウンセラーの千里眼こと友里佐知子と岬美由紀が呼ばれ、
男から暗証番号を聞きだすことになったのだが・・・

一方、美由紀の担当する小2の女の子は、
なぜか一人で、毎日東京湾観音に通っていた。
「恒星天球教」の教典を隠し持つ彼女の身に何が・・・?

元自衛官でF15パイロット、
現在はカウンセラーを務める、岬美由紀の活躍を描く
『千里眼』シリーズの第一作。

「千里眼」というタイトルから、
超常現象を扱った物語かと思っていたのですが、
全くのカン違いでした。
カウンセリングに用いる技術、というのは、
あくまでも科学的に証明されるものだということですが、
いくら熟練しているとはいえ、
友里や美由紀の洞察力は、まるで魔法を見ているかのようです。

また、そういう微妙な場面があるかと思えば、
アクションシーン、F15での戦闘シーン等々、
手に汗握る場面も続出で、
ほんとうに、盛りだくさんな内容。
確かに荒唐無稽、ではありますが、
そこは作者のサービス精神の現れと受け取って、
素直に楽しませていただきました。