北の川から 2003 夏 その3
                 

水面が炸裂し、ドライフライが水中に消えた。足元のラインが一気に飛んでいく。ものすごいパワフルな奴だ。
大物に備えてティペットは3Xにしてあるので、まず切れる心配はない。
問題はフックだ。バーブレスなので一瞬たりともラインのテンションを緩めてはいけない。
 
そして・・・
ヘラブナのように体高がある37cmの♀だった。重量も1kgはゆうに超えている。
恥ずかしい話ですが、これでまた私の国内のレインボーの記録を2年ぶりに更新してしまいました。
 
 
この鱒を仕留めたのは、スティミュレーター・オリジナル。サイズは#9。良く浮いて視認性も抜群。
「でかい鱒にはでかいフライを」が北海道での釣りのセオリー。
こいつは前日のイブニングライズでも大活躍。何度も鱒の攻撃を受けたため、ボロボロになってしまった。
STIMULATOR  ORIGINAL
hook ・・・・・    TMC 109BL #9
thread ・・・・    8/0  light Cahill
tail  ・・・・       calf tail
body  ・・・・     TMC aero dry wing
hackle ・・・・   cock hackle grizzly & darkbrown
wing ・・・・      deer hair natural
 
 
こいつをヒットさせた同じポイントで、親父のドライフライにアタックしてきた奴がいたが、姿を拝むこともないままラインブレイクされてしまった。
親父は念には念を入れて、リーダーを新品に交換し、次のポイントに進む。
 
私は記念撮影を終え、鱒をリリースして立ち上がった直後、異変に気が付いた。
 
親父のロッドがバット部分から大きくひん曲がっており、ドラッグがギィギィ鳴っている。突然、魚が水面を割って、空中で1回転ジャンプをした。
親父は反動でバランスを崩し、後ろに引っくり返ってしまった。
デカイ!!!!!!!!!!!! 昨日の死骸と同じくらい、いや、それ以上か!!  口は鮭のように大きく裂け、側面には虹模様がはっきりと確認
できる。
 
信じられ鱒??  60cmオーバーの奴がドライに出て、空中で1回転ジャンプですよ!! テールウォークなんてもんじゃない。 本当に心臓が止まるか
と思った。
 
私は自分のロッドを投げ捨て、ランディングネットを片手に魚めがけて走り出した。こんな小さいネットじゃ無理かな。いざとなったら、親父のネットと
前後から挟み撃ちするしかない。一瞬でそんな考えが脳裏をよぎったが、近いづいてみて、魚の大きさとパワーに圧倒されてしまった。本当にでかい。
70cmはあるんじゃないか。 「無理しないで! ラインを出してもいいから!」気が付くと大声で叫んでいた。1番怖いのは、一気に下流に走られてライン
にものすごい力が加わることだ。
 
その間、僅か十数秒だったろう。魚はもう1度派手なジャンプをすると、下流の深みの中に消えて行った。「バレた!!」  ラインは切れた凧糸のように
親父の手元に戻る。なんと、リーダーがフライラインからすっぽ抜けたという。こんなことがあるのか??  さっき交換したばかりなのに。
 
私はしばらくその場で動けなくなり、奴が消えて行った方向を呆然と見つめるだけだった。気が付くとひざがガクガク震えている。
親父は、「あんな魚、気持ち悪い。化け物みたいだった。本当に気持ち悪い」と、しきりに「気持ち悪い」を連発していた。
 
・・・我々はランディングできなかった悔しさは不思議となかった。むしろ清清しい気分になったのである。あんな大物が真昼間にドライに出てくれた。
それだけで十分満足だったのだ。(使用フライはホワイトウルフ系の#10だったらしい)
 
興奮さめやらぬうちに、そのときの見たままの光景をイラストにしてみました。
特に何の変哲もないポイント。こんなところにあんな化け物が潜んでいるなんて誰も思わなかったでしょう。
 
後日、聞いて分かったのだが、親父はいつもフライラインとリーダーを直結するネイルノットを二重巻きにしかしていないそうだ!!!!
・・・・もったいない。
「2回巻いておけば十分だと思ってた。それで今まで困ったこともないしね」と、涼しい顔で言っておりました。
 
 
 
 
北の川から  2003  夏
 
 
 
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<エピローグ>
 
「北海道でニジマスのフィッシングガイドをしてくれ」と、言われたら、私は間違いなくこの川を案内するでしょう。それほど素晴らしい川です。
どなたか、機会があれば是非ご一緒しましょう。
 
私の知る限り、正式な放流事業は行われておらず、いわば野放しの川です。だから今回釣れた魚は全て自然交配を繰返してきた個体です。
これだけの環境が保たれているのは、綺麗な水、河畔林と水生昆虫が豊富なこと等があげられます。ヒグマの生息域であり、釣り人が少ないことも
要因でしょう。付近にはあちこちに離農した農家の廃屋があり、寂寥の感があります。
 
因みに、渚滑川ではありません。親父によれば、全国で初めてキャッチ&リリース区間が設定され全国的に有名になった渚滑川は、釣り人が大勢
押し寄せたため、今では川底にゴミも多く、魚も小型化しているそうです。
 
 
私の今シーズンは、多分これで終了です。
毎年のことなんですが、こういう体験をしてしまうと、こちら(本州)に戻ってきてから、とても釣りに行こうという気は起きなくなるのです。
というよりは、この暑さでは、何もする気が起きません。
 
ということで、皆様からの熱いレポートをお待ちしております!!