環八の渋滞、助手席の酔っ払い、数えきれない程の缶ビール、霧雨、崩れ落ちた岩石、なぎ倒れ道路に覆いかぶさった樹木等、
数々の試練を乗り越えてくれたフォレスター号。
しかし、目的地を目の前にして、超えられないものが待ち構えていた。
前回、工事中で開いていた鋼鉄のゲートがしまっていたのだ。
むっつら押してもびくともしない。
やむなく、このゲート前で車中泊。
翌朝も引き続き雨。
待ち構えている数キロの徒歩にむっつら気が重く、ゆっくりと朝支度。
車の音が聞こえてきた。こんな山奥に雨の中来るなんて山菜取りだろうか。
などと思っていると、白い軽トラが分かれ道をこちらに向かってきた。
荷台にはポリタンクが数個。釣り人ではなくてホッとする。
我々に「釣りですか」とにこやかに声をかけてゲートに向かっていった。
何やらごそごそやってゲートを開けて、中に入り、そしてまたごそごそとゲートを閉めて去っていった。
車の陰から、ゲートの開け閉めの動作をじっと見ていた我々は軽トラが
見えなくなったのを確認してすぐさまゲートに向かった。
「なんか回してたよな」「そうですね。道具は何も使ってませんでしたね」
「これか」「向きはこっちですか」「いや反対。普通のネジと同じじゃないか」
「おー、開いてきた」「やったー」
はじめは手が滑ってダメだったが、ついにゲートの開け方がわかったのだった。
前回の合宿でも行く先々でその行く手を阻んだこの鋼鉄パイプ方式のゲートを
開けることができ、ひとときの歓喜をむっつら味わった。
早速車に戻り、ゲートの先へと進んだ。
前回同様、路面は結構荒れていた。
また、霧で視界が悪く、目標の堰堤の場所もわからず仕舞いだった。
前回入渓した場所はくずれた林道の工事をしている所だったが、
今回はその手前で道が半分崩れていた。無理すれば通れないこともないが
ここは安全第一。雨だって降っているし。
ということでこの崩れた細流を伝わって沢に降りた。
最後の足場の岩をふと見るとクワガタがじっとしている。
流されたらかわいそうなので近くの木の枝にとまらせた。
釣り開始。
間もなく当たりがあり、フッキング。しかしすぐにはずれた。
無理に合わせずゆっくり引き上げたのが悪かったか。
前回の無警戒ないわなのイメージがあったので、ゆっくり食わせてからで大丈夫だろうと思っていたし、
どうせこれからいくらでも釣れるだろうしと甘く考えていた。
しかし、天候のせいか、川原にその跡が残っていた増水のせいか岩魚の出は悪く、
水量が少なくなるぐらいまで上流へ釣り上ったがキャッチはゼロ。
昼食を取り、引き返すことにした。
林道を引き返し下流へ向かった。
霧が晴れて堰堤が見えた。水はほとんど溜まっていない。
堰堤工事の道路跡を見つけて降りていった。
しかし、またも思わぬ困難が待っていた。
堰堤を埋めた泥にむっつらぬかるんで進めなくなってしまった。
横浜支部は両足が埋まり、無理に抜くとウェイディングシューズが脱げて泥の中に残ってしまう状態
となった。
結局は足を引き上げ、深く埋まったシューズを掻き出すこととなったため、かなりの労力を使い、
全身泥まみれでにおいもひどかった。
その後、泥の上の倒れ木を恐る恐る伝って砂地までたどり着いたが、木からすべり落ちて、
また泥にはまらないかとむっつら恐かった。
泥の洗濯をしてやっと釣り開始。
そして下の写真のポイントで今回唯一のいわなと出会うことができた。
ニンフで釣っていた横浜支部が
「マーカーにアタックしてきました。ドライでやってみて下さい」
と私にポイントを譲ってくれた。
第1投目でちゃんと出てきました。
そしてヒット。グリグリとした確かな手ごたえ。
写真でも中央に見える枝にからまる場面もあったが
最後には横浜支部にランディングしてもらい事なきを得た。
思ったより若干小ぶりだが、苦労の末の1ぴきにむっつらうれしかった。
その後は出が悪く好ポイントのみを拾うように釣りあがった。
数回の当たりはあったもののヒットはない。
クワガタが目印となって、朝の入渓地点まで釣りあがったことがわかり、釣り終了。
霧雨もふってるので早めに設営開始。
広大な快適スペースを提供してくれた横浜支部の6m巨大むっつらタープは感動ものでした。
疲れと傷心をいやす最高のセット。
飲み放題、焼き放題、物思いにもふけり放題。
何を食べても何を飲んでもむっつらうまい。
夜中、雨は激しく降るようになり、タープに水が溜まり倒れるという事件もあったが横浜支部が対処してくれた。
私はむっつら寒くて目が覚めたが、フォレスター号のバゲッジルームにひいてあった分厚い布地をかぶってなんとか寝ることができた。
7月の合宿ではテントの外でごろ寝しても寒くなかったが、もうじき禁漁のこの時期そう甘くはない。
翌朝もむっつら雨。
もう釣りどころではなく、やっとのこと撤収し帰路に着く。
林道出入り口のゲートを開けて閉めて
もう二度と来ないかもしれない川に別れを告げた。
湯沢では温泉につかり、
もう二度とこないかもしれない湯沢ICを後にした。
終わり。
※注記
「むっつら」
本当の意味はよくわかりませんが
塩沢から清津峡に抜ける別れ道の酒屋に「むっつら安い」と書いてある看板があります。
多分新潟弁で「とてつもなく」とか「思いっきり」とか「はげしく」という意味ではないかと思います。