屈斜路湖。
日本最大のカルデラ湖(火山の噴火によってできた湖)で面積は79.7u。
30年程前、怪物クッシーで話題となった湖といった方が分かりやすいだろうか。
この湖はかつて魚が棲息しない湖として、釣り人からは縁遠い存在であった。
1938年の屈斜路湖大地震によって、それまで豊富に棲息していた魚類は壊滅的な打撃を受け、さらにその後の温泉水の
流入により湖全体が酸性化したことが追討ちをかけ、魚類の棲息は不可能となってしまったのだ。
しかし、平成に入ってから、この湖に魚が復活していることが明らかになり、特に50cmを超える大型のニジマスが数多く
キャッチされるようになったのである。
この程度の情報は、大体頭の中に入っていたが、まさかそこに訪れることになるとは。もちろん、釣りを目的に来るのは私も
初めてである。私は湖の釣りからはしばらく遠ざかっていた。ポイントがはっきりしている川の方が面白いと考えているからだ。
しかし考えてみれば、一発大物を狙うのであれば、北海道の湖こそ有望なフィールドだ。また、大物とのやりとりは、流水より
止水の方が、釣り人にとっては有利である。
湖を約一周し、人気のないポイントを見つけ到着。湖面はすぐそばだが、この宿営地までは、ロードクリアランスのある4WDで、
かつ覆い茂る熊笹で傷だらけになっても構わないクルマでなければ辿り着けない。
時刻は午後5時半を過ぎている。ガイドは既に缶ビールを何本か飲み干し、今日はもう釣りをするつもりはないらしいが、
イブニングライズを狙うにはちょうどいいタイミングだ。
但し、今回は湖用のタックルは一切持ち合わせてない。ルアーロッドもなければ、ゾンカーやマラブーなどのパターンもないし、
シンキングラインさえない。さっき川で使っていたタックルをそのまま流用する。5番ロッドにマーカー付ニンフ。3Xのティペット、
リーダー全体で約15フィートのシステム。条件次第では、これで十分通用するはずだ。かつて支笏湖や新冠ダムに通っていた
頃を思い出しながら戦略を練る。
まず水温をチェック。生ぬるい。15度以上はあるだろう。湖周辺は各地から温泉が噴出しているため、場所によってかなりの
温度差があるらしい。これだけの高水温だと、冷水性のマスは通常深場にいるか、岸辺を回遊するのは水温が低い朝夕に
限られる。だが、そんな湖でも、第一級のポイントがあるのだ。
小河川のインレット。常に冷たい水が供給され、養分や餌を運んできてくれる。宿営地をここに選んだのも、このインレットが
あったからだ。見渡す限り他に釣り人はいない。まさに貸切状態。いや、実際はいるのだが、湖が広すぎて見えないだけだ。
時折ライズリングが確認できる。明らかに小物と思われるピシャッというライズが大半だが、不気味に大きく広がるのもある。
こういったライズの主は大物であることが多い。
早速、インレット付近でキャストを開始するが、しばらくはマーカーに何の変化も見られない。湖で釣れないと、魚のいない
だだっ広い水たまりを相手にしているようで、空しくなってくる。
日もだいぶ傾きかけてきた。そろそろクルマに戻ろうかと、ロッドを軽く立てようとした時、根掛かりのような感触が伝わってきた。
根掛かりと違ったのは、針先に引っ掛っている奴が動きだしたことだ。魚だ!と思った瞬間、ふとテンションがなくなってしまった。
フッキングが浅く、フライは足元に戻ってきた。魚体は確認できなかったが、40cm前後のニジマスだろう。
この日はこれで時間切れ。明朝の僅かな時間に全てを託すことにする。
8月14日(日)最終日。
昨日と同じポイントに降り立つ。午前中には帰路につかなければならない。何としてもモンスタートラウトをキャッチしたい。
昨日同様、流心の手前を何度も丁寧にフライを流す。ライズは時折あるが、相変わらずニンフでの釣りだ。しばらくしても反応が
ないため、何度かライズがあった流心の向こう側にキャストした、その第1投目。着水と同時にマーカーが一瞬にして水中に引き
込まれた。来た!ロッドを立てると同時、いや立てる前か、バシッという鈍い音と共にラインのテンションがなくなった。
しまった! しまった! しまった! と悔やんだが、あとの祭り。
今まで、フライとティペットの結び目は念入りにチェックしてきたが・・。
ティペットとリーダーの結び目をやられてしまった。こんなことが・・・。ブラッドノットも結び目である以上、完璧ではなかった。
3Xのラインを一瞬でブレイクさせる魚って一体どんな奴だろう。私はしばらくは何が起こったか分からず、呆然と立ち尽くしていた。
私と魚がつながっていたのは、僅か2秒ほどだろう。
ふと後ろを振返ると、ガイドがこちらを見て微笑んでいる。私がバラした瞬間は見てなかったようだが、「さっきこれくらいの奴が
水面から体全部を出して、ライズしてたぞ」と言って、両手を1m近く広げてみせた。
もちろんその魚が私がバラした奴かどうかは分からないが・・・。
年1回の北海道遠征でモンスタートラウトを仕留めようというのは、虫のいい話かもしれないが、年1回だからこそ、万全の態勢で
挑まなければ、と固く誓うのであった。
今回の成果。
屈斜路湖産のザリガニと湖面で溺れかけてたミヤマクワガタ♂2匹のみ。
しかもピンボケ。意気消沈していたことがうかがえる。
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帰路の途中、不完全燃焼だった私の気持ちを察してか、ガイドの提案で、初日に訪れた「国道沿いの川」に行ってみた。
初日と同様、20〜30cmのニジやオショロコマが面白いように釣れたのだった。