北の川から 2000年 夏 (その4:北海道の可能性)  
3日目 最終日 S川                                  
 
途中、山間部のとある川でロッドを出してみたが、釣れるニジマスは全て20cm以下だったので、大型魚がいないと判断して早々に引き上げ、このS川にやって来た。
 
あえて実名は伏せるが、S川は道内のフライ フィッシャーの間では、かなり知られた川である。
なぜなら、ここは北海道では渚滑川に次いで2番目にキャッチ アンド リリース区間が設置されたからである。渚滑川は滝上町という行政指導によるものだったが、S川は地元の愛好家団体が行政に呼びかけた形で実現したという点で大きく異なる。主な入渓地点はもちろん、近郊のコンビニにもC&Rを呼びかける掲示がある。
フライを流してみると、なるほど、かなり魚影は濃いようだ。30cm近いニジがコンスタントにアタックしてくる。C&Rの効果だろう。国道から農道を走ってわずかのところから入渓したのにも関わらずである(但し、我々の入渓地点にC&Rの掲示はなかった)。
 
S川のニジマスは体高があって、ファイトが素晴らしいのが特徴
 
S川の流れ。豊富な河畔林は水量を一定に保つと同時に鱒の餌となる多くの陸生昆虫を落下させる。また、水面に張出した枝葉が釣り人からのアプローチを困難にさせる等、魚達にとって最適な環境を形成する。
  
30cmほどのレインボーをランディングしたところでタイムアップ。
素晴らしい流れに感謝してこの地を離れた。北海道にはこういう釣り場がもっと増えてほしい。
C&Rが当たり前という時代が来るのはいつのことだろう・・・。
 
我々は、わずか3日間の釣行で数えきれないレインボーをキャッチし、その全てをリリースした。
また、バーブレス フックやファイン メッシュ ネットを使用し、やむを得ず魚に触れる時は、川の水で十分手を冷やす等、魚へのダメージを最低限に抑えた。今後も長く釣りを続けたいと思うならば、当然の行為だろう。
 
今回、訪れた場所は、親父が密かに教えてくれたスポット的な釣り場ということもあって、総じて恵まれた環境にあったといえる。
だが、冒頭でも述べたとおり、北海道全体の河川環境の未来は決して明るくない。
破壊局(注:親父は「北海道開発局」を揶揄していつもこう呼んでいる)は、開発という美名のもと行われている無意味な公共事業を即刻見直すと同時に、釣り人にも節度ある行動が求められるのは言うまでもない。
「このままでは将来はない。ただ、今ならまだ何とか間に合う」 ここ数年の北海道を見ていると、このような危機感と期待感が交錯する感傷を禁じえないのである。
 
とにかく、これだけ素晴らしい3日間を過ごした私は、長野に帰って来て、釣りに行きたいとそれほど思わなくなってしまった。
旭川のショップで衝動買いしたEUFLEXのロッドも今年はもう出番がないのかもしれない。
  
北の川から 2000年 夏 (完)
 
 
<おまけ>
河原で発見した水生甲虫(体長約35mm)
ゲンゴロウにしては後足の体毛が短く、甲の縦線があるのもおかしい。
ガムシかと思ったが、ガムシには黄色い縁線はない。家に戻って徹底的に昆虫図鑑を調べた結果、シャープゲンゴロウモドキというやつに酷似していた。
ところが、シャープゲンゴロウモドキはレッドデータブック記載の絶滅危惧種に指定されており、しかも関東周辺の生息しか確認されていないという。私はもしかしてとんでもない発見をしてしまったのかもしれない。ところが不幸にも、この虫は、その辺を歩き回っていた愛犬クロに踏まれて、歩行不能になってしまった。
どなたか、昆虫の専門家に知合いがいたら、鑑定をお願いします。
 
 
今回大活躍の愛犬クロ。
藪こぎもなんのそのだが、たまに釣り人より先に上流に行ってしまう。
だが、親父曰く、クロが釣果に影響を与えることはまずない。色が黒く目立たないのと、人間等に比べると体高が低いから、魚が気付きづらいからだそうだ。