北の川から 2002 夏 その2(新子達の猛襲)  
            

8/16(金) 快晴
 
今日と明日は親父と犬のガイドによる釣りだ。ターゲットは天然ヤマメである。
ヤマメ釣りの醍醐味はその繊細さにある。今日は3番タックルで十分にそれを堪能させてもらおう。
 
実家から2時間程かけて目的地に到着。親父の案内で早速実績のある川に数本入ってみるが、釣れてくるのは新子ばかり。
 
ここで、新子(しんこ)という言葉が聞き慣れない方のために、北海道のヤマメの生態について、若干触れておこう。
北海道のヤマメはサクラマスの河川残留型である。一般にマスと呼ばれる魚はこのサクラマスのことであり、サクラマスの子供がヤマメという訳である。サクラマスの名の由来は桜の花が咲く頃に大海から遡上してくるからだ。
遡上の間、河川では餌を取らないと言われている。秋深まる頃産卵を終え、産み落とされた卵は早春に孵化する。水温む4〜5月頃から稚魚は元気に泳ぎ始め、活発に水棲昆虫などを飽食して急速に成長し、秋近くには10数センチの美しいヤマメとなる。これが新子ヤマメと呼ばれるものだが、次の3つのグループに大別される。
 
ひとつは銀毛(スモルト)現象を起こして翌春に降海し、更に翌年の春に、最大60センチを超えるサクラマスとなって母川へ回帰するもの。メスの大部分がこのグループに入り、一部成長の遅いオスも含まれる。

2つめは、成熟の早いオスがそのまま河川に残留するパターン。最大30センチ前後のヤマメとなり全生涯を生まれた河川で生活する。
3つめは、成長の悪い個体が、更にもう1年河川生活を送り、翌年の春に降海するか、または河川に残留するか、のグループである。
 
この生活史をチャートにすると次のようになる。
なぜこんな複雑なサイクルを持つのか謎が多く、詳しいことは不明である。
私は東北の小渓で、河川残留型の抱卵したヤマメを釣ったことがある。学術的な価値はよく分からないが、とにかく、その生態1つとっても実に神秘的な魚である。
 
 
我々がターゲットとするのは、ヤマメとして一冬越えて大型に成長した個体。釣り人の間では、「越年(おつねん)ヤマメ」と呼ばれるが、私は一般的に、「2年魚」と呼んでいる。もちろん、大型のヤマメの中には、一部「3年魚」も含まれる。できれば、30センチ級の尺ヤマメを釣りたい。
しかし、冒頭に述べたとおり、今日の川は、フライを流せば至るところから反応があるものの、10センチ前後の新子ばかりだ。
新子は体が小さく、ダメージにも弱いため、釣れたら即リリースが基本であると考える。
だがしかし、この新子を専門に狙う釣り人が大勢いるのだ。いわゆる「新子釣り」と呼ばれるもので、主に年配の餌釣り師に多いのだが、ワカサギ釣りと同じようにその釣果を競うのだ。中には100匹以上を目標する輩もおり、北海道の釣りの風物詩の1つとさえ言われる。
確かにこの川の魚影であれば、時間はかかるが100匹釣ることは造作もないことだろうが・・。
そして未だに新聞や釣り雑誌では、「○○川で何十匹」といったような見出しやその写真が載っている。これは、資源減少に拍車をかけるマスコミの大罪である。時代錯誤も甚だしいと言いたい。
また、本州に比べ、尺ヤマメが少ないと言われるのは、北海道では成魚放流がない上、この新子釣りにより大型に成長する個体が限定されるのが遠因である、という説があるが、その真偽のほどは不明である。
それにしても、「釣れたらリリース」が当然の人と、「釣れたら持ち帰る」が当然の人との溝は永遠に埋められないのだろうか?
 
日本が世界に誇るネイティブ トラウト ヤマメ。パーマークが美しい。
よく「渓流の女王」と形容されるが、前述のとおり、一生涯を河川で生活する個体のほとんどはオスである。
ヤマメの名の由来がヤモメだとする説の根拠となっているのもこのためだ。
 
 私はもう少し釣りがしたかったが、ガイドの提案で早めに切り上げることにした。
クルマのラゲッジルームでは、愛犬クロがのんびり水を飲んでいる。
 今日の宿は、牧場に囲まれた展望台にある無人の監視小屋だ。
「そんなところに泊まって怖くないか?」って?
全〜然。むしろ普段社宅での生活の方が「監視」されているようで、よっぽど怖い。
 
日没直前の風景。私が1番好きな瞬間だ。
ゆっくりと時間が流れる。
夜は満天の星空を拝み、しばし、現実を忘れることができた。
 
しかし、釣りの方は不満足。北海道釣行も明日の最終日を残すのみ。
このまま不発に終わってしまうのか?!
  
(その3)に続く・・・