Helen Sachs/How My Heart Sings
インドネシア生まれの女性ジャズシンガーがオランダのジャズピアニスト、レックス・ジャスパーのトリオをバックに吹き込んだ傑作ジャズボーカル盤。"Waltz For Debby"や"A Child Is Born"などのスタンダード主体の選曲を時に軽快に、時に情感を込めて歌い上げています。そんな中で特に素晴らしいのがブロッサム・ディアリーも取り上げていた"Soon It's Gonna Rain"とチック・コリアの"You're Everything"。前者は躍動感溢れるピアノが弾むフロアライクなカヴァー、後者は透明感溢れるボッサジャズの前半から一気に高速4ビートジャズに変わるアレンジが素晴らしい1曲です。透明感ジャズ倶楽部御用達(笑)。
Jack Donahue/Strange Weather
甘いルックスの新世代ジャズシンガー、ジャック・ドナヒュのセカンドアルバム。このアルバムの収録曲の目玉はなんと言ってもケニー・ランキン"Haven't We Met"のカヴァー。最後のスキャットまでオリジナルにほぼ忠実なアレンジで歌われる同曲は、この曲が好きな人なら無視することは出来ない良いカヴァーです。他にもボッサジャズの"Strange Weather"も自分好みの透明感溢れる1曲で好きです。秋の紅葉が色づいて来たこの季節、こんな感じのゆったりした音楽が聴きたいですね。

Dominguinhos/Domingo Enino Dominguinhos
ブラジルを代表するサンフォーナ(アコーディオン)奏者ドミンギーニョスの最高傑作として名高い76年のアルバム。このアルバムに収録されている"O Babulina"がクラブDJの間で人気ですが、この曲以外にも今の季節にピッタリな穏やかな曲が並ぶ素晴らしい1枚です。特に"Quero um Xamego"や"Gracioso"などは夢見心地な気持ち良さです。ちなみにこのアルバムの主要な曲はユニヴァーサルから発売されているドミンギーニョスの"Philips Years"というコンピ(最高の選曲です!)に入っているのでCD派の方はそちらをどうぞ。
伊藤君子/Birdland
今も現役で活躍中の女性ジャズシンガー伊藤君子さんのファーストアルバム。佐藤允彦トリオをバックに"My Romance"や"Round Midnight"などのスタンダードをオーソドックスに聴かせるスタイルですが、おもしろいのがジョアン・ジルベルトの"No More Blues"の高速ジャズでカヴァーです。ボサノヴァの名曲だけあって無数のカヴァーが存在する同曲ですが、完全に4ビートにリズムを変え速いテンポで歌われる異色のカヴァーでこれだけを聴くとジョアンのオリジナルは全く頭に思い浮かびません。他にも"You Are the Sunshine Of My Life"のスウィンギーなカヴァーやスキャットで歌われる"Confirmation"なども素晴らしいです。
Jam Today/Stereotyping
反コマーシャルを掲げ優れた女性ミュージシャンの為のレコードレーベルというコンセプトを掲げたStroppy Cow Recordsから81年に発売された女性5人組グループの7インチ盤。ガリ勉からヤンキーまで個性豊かなメンバーが繰り出す音はメチャメチャ格好いい!特に切れ味鋭いカッティングギターに激渋サックスが絡むタイトル曲のクールさは"Kind Of Blue"を作ったマイルスやデビュー前のセックスピストルズに勝るとも劣らない、奇蹟が起こった瞬間をとらえた1曲のようです。
Paul Horn/Profile Of A Jazz Musician
ウェストコーストジャズを代表する名バイプレイヤーの傑作盤。後にコーラスなどが入ったポップな作品やアヴァンギャルドで難解なアルバムを残している奇才としても有名です。そんな彼のこのアルバムはマイルスによって作り出された当時最先端のモード手法を取り入れた1枚。特に12分にも渡る"Abstruction"はタイトル通りアブストラクトなパートと美しいワルツパートが交互に出てくる、明と暗を音で表した様な作風のモーダルジャズ。曲のテンポが目まぐるしく変化するので12分もの大作ながらまったく飽きさせることなく聴かせてくれる名曲です。
O.S.T./Hits from Anne Of Green Gables
赤毛のアン」などカナダの人気ミュージカル6作品の主題歌をアル・バクリスシンガーズがカヴァーした1枚。アレンジはアル・バクリスとジョン・フェンウィックがそれぞれ6曲ずつ担当しています。すべての曲でアル・バクリスシンガーズがフィーチャーされており、高速ジャズの"Open the Window"、洒落たボッサの"Wondrin'"、可愛らしいワルツ"Bosom Friends"など、彼らのアルバムが好きな方なら完璧にストライクなカナディアンソフトロックの好盤です。
Marilyn Pupo/Amor Es
映画等にも出演していることから女優が本業だと思われるメキシコのマリリン・プポという女性シンガーのアルバム。ラテン系のポップなナンバーが詰まった典型的な歌謡テイストのアルバムですが、2曲とても素晴らしい曲を収録しています。ひとつはカテリナ・ヴァレンテもフランス録音盤で歌っていたボサノヴァ調のワルツ"La Bikina"のカヴァー、そしてもう1曲が様々なカヴァーが存在するアントニオ・アドルフォの"Pretty World"のグルーヴィーなカヴァーです。特に後者はこの曲のカヴァーとしては珍しいアップテンポなアレンジでソフトロック好きには堪らない名カヴァーです。
Laurence Saltiel/Entree d'Scene
現代のクリスチャンヌ・ルグランという形容がピッタリのフランスのジャズシンガー、ローレンス・サルティエル。スキャットを多用し多重録音で驚異のボイスパフォーマンスを聴かせる彼女の歌唱はまさにクリスチャンヌ・ルグランそのもの。フランスのエスプリが息づく彼女の歌唱は我々日本人が憧れるフランスの姿を見事に表現してくれている、今のフランスでは貴重なシンガーの一人ではないでしょうか。
ザ・ピーナッツ/世界の女たち
ザ・ピーナッツ72年のオリジナルアルバム。A面はいつものオリジナル歌謡、B面は当時流行っていた外国の曲のカヴァー集という内容。「華麗なるザ・ピーナッツ」の翌年のアルバムという期待には肩すかしを喰わされるような曲が大半を占める中、驚かされたのがビートルズ"Norwegian Woods"のフリーキーなジャズカヴァーです。リズムをワルツに変え、途中のサイケなギターソロが時代を感じさせる、彼女らの曲なかでもかなり異質なナンバー。他にもソフトロック調の"オー・シャンゼリゼ"のカヴァーもなかなかの佳曲です。ちなみにアレンジは「華麗なるザ・ピーナッツ」と同じく宮川泰。