13.なにはともあれ春原


 渚に怖がられながらも学校に辿り着き教室。
 授業前のホームルーム、教師の連絡事項をいつもの如く半寝で聞き流している。
 俺の三倍大物の春原は、これまたいつものように熟睡。

 「――というわけで、全員受験へ向けて気合を入れるように」

 入ってないヤツも二人ぐらい居るけどな。

 「あー、話は変わるが今日の朝方職員会議があって、春原に対する処遇が決まった。おい、起きろ春原」

 あ?

 「幸村先生がいたくボウズを支持してな」

 さっぱり話の流れが見えないのですが。
 どよどよと騒がしくなる教室。俺達以外のやつらは理解できているらしい。

 「これを機会に、男子生徒はボウズ、女子生徒はオカッパを校則にしてみては、という案も出た」

 さらに騒音の増す教室。

 「――が、さすがに反対派も多く、成立は困難を極め」

 こいつはどちらについたのだろうか。

 「しかしながら、最近うちの高校はたるみが出ている。ここでひとつ気合を入れるような行事を行ってみてはどうかという流れになり……」

 もう、なにがなんだか。

 「来週始めに球技大会を行う。以上、詳細は帰り」

 どっと教室が沸きあがる。
 置いてけぼりにされている俺と春原が入る余地はこれっぱかしもないようだ。

 「……智代に何が起こってるんだか聞きにいくか」

 大物春原は全く動じずに睡眠を取り続けている。

 「おい、起きろ春原」

 ゆさゆさと体を揺らしてみた。

 「んー、うるさいなあ。今、ナポレオンのフラグ立ててピーマン食べさせるのに精一杯なんだよ……」

 いつもながらこいつの見る夢はファンキーである。
 寝言なのか何なのか、春原はぶつぶつとつぶやく。

 「こら、ナポレオン……いくら好きだからって、イナゴの佃煮ばっかり食べてたら駄目だろ……」

 こいつの脳みそはイナゴに食われてしまったのだろうか。
 なんだかあんまり触れたくないのだが、仕方ない、もう一度耳元へと話し掛ける。

 「おい、春原起きろ。なんかすごい事になってるぞ。お前がMVP臭いぞ」
 「フランス遠征してる暇があったら国民からベルマークを集めなさい……ん」

 ふと目を覚ます春原。

 「よう、おはよう岡崎」
 「ああ、おはよう色男。今から智代に会いに行くから遠征の準備しとけ」
 「はははは、今日の岡崎は意味不明だねえ」

 智代に蹴り飛ばしておくよう頼むと心に決めた。




2004/10/17


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