8.イメチェン春原
――シャキン、シャキン
資料室に響き渡る、不気味な刃物の音。
――シャキン、シャキン
エモノは大衆的殺人道具、はさみ。
「開始なの」
「開始だそうだ」
「待て! ちょっと待てーーー!!!」
その音に取り代わるようにして叫ぶ春原。
「何だ。観念しろよ」
「説明を! 説明をもっとしろよっ!! わけわからんだろうが!!」
「ああ、そうか。じゃあな、よーく聞いていろよ」
俺はその場にいる人間、宮沢とことみ、の方を振り返って話す。
「さて、俺達は、どうしたら春原を優等生に出来るのかを考えていたはずだ」
うんうんと頷く三人。
「ことみのイメージソング作戦は、予想通りというか、ものの見事に花火の如く鮮やかに飛び散っていった」
再び頷く三人。
「で、次に宮沢に意見を募った所、『まず初めに、外見をあらためてみてはどうでしょうか』、という非常に模範的、かつ、まっとうな意見を頂いた。……うん、そこで質問だ」
俺はきっと三人を見据える。
「ぱっと見、春原のどこが悪い?」
総員顔を見合わせ、少し間を置いてから口を揃えて言った。
「金髪なの」
「金髪ですねー」
「ヒヨコ頭だよな」
「いまヒヨコっつったヤツ前でろ、コラァーー!!!!」
「というわけで」
――シャキン、シャキン
「マジカルエステティッシャンことみが春原の髪を切ることにした」
ことみは、常時装備している例のはさみを振りかざし、びっとポーズをとってから一回転、刃先を春原へ向ける。
「ことみちゃん全力なの」
「全力だそうだ」
「駄目! ことみちゃん全力は駄目ぇーーーー!!」
馬鹿野郎、何言ってるんだ。
ことみが春原の髪を切るなんて、考えただけでも最高に面白いじゃないか。
「やれ、ことみ」
「らじゃーなの」
「腕は!? 腕の保証はーーー!!??」
まったく持って往生際の悪いやつである。
「安心しろ。ことみはいままで、何百枚もの両親の紙を、そのはさみと共に切ってきた。保証付きだ」
「切ってきたの」
「漢字が違うだろうが、漢字がっっ!!!!」
よく分かったなこいつ。エスパーか。
「いけ、ことみ。五厘刈りだ」
「五厘なの」
「ボウズは嫌ぁー――――――――!!!!!!!!」
この期に及んでまだ抵抗するか。
「バリカン! せめてバリカンでやってよ!! 『ことみちゃん』が『はさみ』で『ボウズ』なんて危険すぎだろうが!!!」
だから面白いんだろうが。
「ああ……まあ、ことみがバリカンで親父さんの記事を切り抜けるようになったらな」
「バリカンで切ったらシュレッダーにみたいになりそうっスよ!!!!!」
「やれ、ことみ。躊躇は敵だ」
「ごーごーなの」
――シャキーン
「ヒィィィィィーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
合掌。
2004/7/1
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