| 士郎くん乱心 |
「せいばぁー」 和室にシロウの声が響き渡る。 さっきまで昼寝でもしていたのだろうか。聞こえてくる言葉はふにゃふにゃとしていて、どうにも聞き取りづらい。 「どうしたのですか、シロウ」 「ん〜」 まさか寝言で私の名を呼んだわけではあるまいか。 それはそれで嬉しくもあるのですが。 「今日の食事当番って誰だったっけー?」 「はい、確か今日はリンの番でした」 「ん〜」 先ほどと同じ言葉を繰り返すと、シロウは気だるそうに言う。 「じゃあ、今日はセイバーが当番やってくれ」 「はい。……は? ……えぇ!?」 |
私はゆっくりとシロウの言葉を反芻する。 『じゃあ、今日はセイバーが当番やってくれ』 いまいち理解しきれない。 何故私が? 「シロウ、何故私がそのようなことをする必要があるのですか。リンの料理の腕前は貴方も知っているでしょう。まったくの素人である私がいても、足手まといになるだけです」 「だからそれだよ」 「は?」 「何が良いって」 「面白い」 |
「それで貴方は、のこのこ私のところへやってきたわけ?」 「……はい」 リンは台所で夕飯の準備に勤しんでいた。 私に詳しいことは知りえないが、かなり力を入れている、といった様子が感じ取れる。 「セイバー、貴方、料理の経験は?」 「全くありません」 ふふーん、とリンは鼻を鳴らす。 「衛宮くんの意図は大体わかるわ。大丈夫。私は貴方に絶対失敗させないから」 「は、はい! お願いします、リン!」 良かった、教え好きの彼女なら丁寧にやってくれそうだ。 |
「一から手順を教えるからね。どんなずぶの素人でも間違わないくらい丁寧に。よーく聞いていてね」 「はい。どうぞ」 リンは私に絶対失敗させないと言った。 いったいどんな風に私に料理を教えるのだろう。 ちょっとどきどきする。 だってこれが初めての料理経験なのだから。 「まず心得」 「はい」 「食材は包丁で切ります。エクスカリバーは使っちゃ駄目よ」 「それぐらいは分かります」 |