研究本(雑誌)
・雑誌名、出版社、発行年、簡単な紹介文の順に記載。
・紹介文を書くために参考にした本(またはHP)は、紹介文末に記載した。
・ネタバレはなるべく少なくするようにしているが、予備知識一切なしで読みたいという方は「関連資料(事務的羅列)」の方をどうぞ。
・雑誌名でアイウエオ順。
『江戸文学 第11号』(ぺりかん社、1993年10月) 雑誌
石川秀巳(いしかわひでみ)「関八州秩序の光源−『南総里見八犬伝』ノート−」、小谷野敦(こやのあつし)「『八犬伝』の海防思想」収録。前者は、結城法要での団円予定を変更し〈付加〉された対管領戦で描かれる、敵将と犬士の因縁の決着や信乃の報恩等のエピソードはもともと意図されてなかったこと、ストーリー構成の変更は里見王権による「関八州秩序の再編」構想に拠っていることを論じる。後者はのちに若干の修正を加えて『新編八犬伝綺想』に収載。
『演劇界増刊(27巻第15号) 歌舞伎狂言の鑑賞』(演劇出版社、1969年) 雑誌
渥美清太郎脚本による歌舞伎版のストーリーの説明と、実際の(複数の)舞台写真を紹介。また「ポイント」として中村哲郎氏が原作と歌舞伎版それぞれの特色を述べている。「馬琴伝奇にみる観念と意志の体制的で頑固な建築学は、細部の洗練と刹那の感情にのめり流れ込む無頼の歌舞伎と実は体質を異にしてもいる。」という指摘は新鮮。
東京大学国語国文学会『國語と國文學』55−11(昭和五十三年十一月号曲亭馬琴特集号、至文堂) 雑誌
直接『八犬伝』をとりあげたもの一編(☆印)、『八犬伝』周辺に関するもの二編(★印)、馬琴の他作品を論じるもの二編(○印)、作家馬琴に関するもの七編(●印)からなる(あとは書評など)、ほぼ馬琴づくしの嬉しい一冊。内容は以下の通り。
●内田保廣(うちだやすひろ)「馬琴と郷士」−明治期の実業家渋沢栄一の少年・青年期に多大な影響を与えた『八犬伝』『侠客伝』などの郷士像を読みとく。
●鈴木丹士郎(すずきたんじろう)「読本から見た馬琴の文語と文体」−馬琴の諸作品における文語の用法(活用形別)と語彙を他の近世文学と比較する、国語学からのアプローチ。
●服部仁(はっとりひとし)「曲亭馬琴、その文体の確立−初期の戯曲性より−」−馬琴の、とくに初期の著作における「演劇的作風」に対する馬琴自身の見解を、作品の序や巻末、書簡などでの発言から実証的に解明。のちに『曲亭馬琴の文学域』に収録。
●浜田啓介(はまだけいすけ)「寛政享和期の曲亭馬琴に関する諸問題」−狂歌を通じての宿屋飯盛や鹿都部真顔との交流、狂歌のアンソロジー『狂歌上段集』、門人と称する名古屋の戯作者・椒芽田楽、上方旅行での馬田昌調との出会い、『月氷奇縁』の成立、といった馬琴周辺のあれこれについての小論集。
○大高洋司(おおたかようじ)「『石言遺響』論」−『石言遺響』に対する『東海道名所図会』の影響と、元ネタである『小夜中山霊鐘記』との相違点について論じる。
○徳田武(とくだたけし)「『椿説弓張月』と『狄青演義』」−宋代の演義小説『狄青演義』の趣向や設定が『弓張月』にどのように組み込まれたかを細かく検証。この論考はのちに『日本近世小説と中国小説』に収録。
●板坂則子(いたさかのりこ)「「稗史七則」の発表を巡って」−馬琴の創作における有名な技法「稗史七則」が〈なぜ存在するのか〉という、盲点ともいえる疑問を実証的にさぐる。
☆高田衛(たかだまもる)「馬琴・その伝奇主題の一考察−『南総里見八犬伝』の場合−」−『八犬伝』における聖数「八」の強調や「騎乗の神性」、原イメージとしての八字文殊曼陀羅など、のちの『八犬伝の世界』の原型となった論文。
●柴田光彦(しばたみつひこ)「馬琴書簡四通をめぐって」−殿村篠斎あての三通と、お路代筆による小津桂窓あての一通の文面紹介と、それぞれに対する付記。
●高橋実(たかはしみのる)「馬琴と『越後雪譜』」−馬琴が越後在住の友人・鈴木牧之から出版を依頼された『越後雪譜』が、結局山東京山(京伝の弟)の校訂で『北越雪譜』として出版されるまでの諸々の事情を追う。
★横山邦治(よこやまくにはる)「春水の読本観と馬琴−「増補外題鑑」を通して−」−為永春水の「増補外題鑑」が『八犬伝』や『俊寛嶋物語』を誉めちぎっているにも関わらず、馬琴とその友人(というかファン)の木村黙老がこの評を全否定・笑殺したことを通して、馬琴、春水それぞれの読本観を論じる。
★向井信夫「嘉永五年「里見八犬伝」上演の周辺」−春狂言「里見八犬伝」成功の背景である、笠亭仙果(後の二世柳亭種彦)の『雪梅芳譚犬の草紙』、為永春笑(二世春水)による『仮名読八犬伝』の販売競争について。
『國文學 九月臨時増刊号 第27巻13号 古典の中の女・一〇〇人』(學燈社、1982年) 雑誌
「近世」の項で浅野三平「南総里見八犬伝の伏姫 命運の女性」、同「南総里見八犬伝の船虫 獰猛、奸悪の毒婦」を載せる。「伏姫」では彼女の完全無欠ぶりをストーリーにそって紹介し、馬琴の実母・門が彼女のキャラクターに反映してるのではないかと指摘。「船虫」では『八犬伝』前半の後半部を彩る船虫の魅力をその美しさと生活力から分析している。
『國文學 61年2月号 馬琴と南北・異界へのワープ』(學燈社、1986年) 雑誌
馬琴と南北それぞれまたは両方についての研究者の論、対談、データ集など。馬琴に関するものは以下の通り。
・「馬琴、幻想と伝奇の物語」−川村二郎(かわむらじろう)・前田愛(まえだあい)両氏の対談。それぞれの『八犬伝』体験、近代・戦後の馬琴論、『八犬伝』の地理などを語っている。
・高田衛「馬琴の秘儀空間−ユートピア志向その他」−『八犬伝』に対する『封神演義』の影響(『江戸幻想文学誌』参照)のほか、『弓張月』『石魂録』を論じる。
・徳田武「馬琴における〈中国〉−「隠微」の摂取」−馬琴の言う「隠微」に陰陽二元論が含まれていることを『八犬伝』中の文章をひいて立証する。
・柴田光彦「批評する馬琴−八犬伝八輯下帙答評と稗史七則」−馬琴と殿村篠斎・木村黙老・小津桂窓ら三人の愛読者との間の書簡にあらわれる、読者の『八犬伝』評とそれに対する馬琴の評価。
・宮田登(みやたのぼる)「妹の力−馬琴における女性原理」−『弓張月』の八丈島(女護島)における懐妊・出産と伏姫物語の背後にある〈男性不在の妊娠〉と女護島の伝承について。←3/1追記 『民俗神道論−民間信仰のダイナミズム』(春秋社、1996年)に収録
・荒俣宏(あらまたひろし)「八犬伝の妖と怪−前世と現世の構造」−八犬士が「母に望まれぬ」子であったこと、雛衣の自害、九尾狐についての考察。
・田中英道(たなかひでみち)「北斎と馬琴−その出会いと別れ」−馬琴と北斎の共作関係が終わった理由を、『北斎漫画』とそれ以降の北斎の浮世絵に見られる「人情」重視の方向性に見る。
・板坂則子「曲亭馬琴主要作品紹介」「曲亭馬琴研究の現在と課題」−前者は『八犬伝』『弓張月』『美少年録』『南柯夢』のあらすじと簡単な解説、後者は昭和50年代を中心に馬琴著作の翻刻・影印本と研究論文の紹介。
・国領不二男(こくりょうふじお)「曲亭馬琴主要研究文献紹介」−やはり50年代を中心にした論文紹介。板坂氏の紹介と一部ダブる。
・松田修(まつだおさむ)「異界の神話学」−南北における民谷伊右衛門(『四谷怪談』)と『八犬伝』の網干左母二郎を、「色悪」として比較。
・諏訪春雄(すわはるお)「馬琴と南北−そのアイデンティティー」−南北の「隅田川花御所染」、馬琴の『姥桜女清玄』の二つの清玄桜姫ものの類似点の比較。
『国文学 解釈と鑑賞 第44巻13号 特集 現代文学総論』(至文堂、1979年) 雑誌
「第二特集 近代のブラック・ホール 馬琴の影」として馬琴と、彼の影響を受けた作家(坪内逍遥、泉鏡花、芥川龍之介、中里介山)についての小論数編を収録。『八犬伝』論ではなく馬琴総論だが、いずれも『八犬伝』について軽く言及している。
『國文學 解釈と教材の研究 35−9』(學燈社、1990年8月) 雑誌
池内紀(いけうちおさむ)「珠の話−馬琴の小説」と百川敬仁「〈江戸周辺〉曲亭馬琴『南総里見八犬伝』」を載せる。前者は『兎園小説』『椿説弓張月』『八犬伝』などに頻出する〈珠〉というモチーフと、『八犬伝』における光と闇、聖と俗といった対立・対極の構図について。後者は「西欧型都市社会の生み出した文学論を無媒介にあてはめる」『八犬伝』論への危惧を表明、『八犬伝』の後半の「尊皇」のモチーフを指摘し、それを核とする江戸都市論としての『八犬伝』を語る。余談だが、学術書の参考文献などで『国文学』と書かれているのはたいてい『國文學』ではなく、この『國文學 解釈と教材の研究』のことだと図書館員さんに教えられた。「ただ『国文学』と書くのが慣例らしくて、間違う方多いんですよー」とのこと(私も二度間違えた)。参考までに。
『週刊朝日百科 世界の文学88 山東京伝、曲亭馬琴ほか』(朝日新聞社、2001年) ?
京伝と馬琴を中心に江戸の戯作者と出版文化について取りあげている。馬琴作品では板坂則子氏が『八犬伝』と『弓張月』のあらすじを述べ、八犬士の女々しさと馬琴世界の闇の魅力を指摘。また青木稔弥(あおきとしひろ)氏が「明治の曲亭馬琴」で『小説神髄』前後の馬琴の評価について述べている。図版も充実のリーズナブルな一冊。
『東京人 特集「大江戸出版繁昌記」 八百八町は夜も眠れず』(都市出版、2007年11月号)
戯作・浮世絵・句集など江戸の出版物を、さまざまな角度から作家、研究者らが語る。海野弘「江戸のアンダーワールドにうごめく「秘密結社小説」」が『八犬伝』は「秘密結社小説」であるとして、八犬士の痣や、徳川に取り潰された里見家の(先祖の代とはいえ)復興をテーマにしていること、『八犬伝』背後の法華経思想などにその証左を求めている。「江戸の戯作者列伝」ほかの項にも馬琴や『八犬伝』が登場している。現在書店にて発売中。
『文学 第5巻第3号 特集=曲亭馬琴の遺産』(岩波書店、2004年5・6月号)
柏木隆雄、高木元、山田俊治、神田龍身の四氏による座談会「『八犬伝』再読」他馬琴に関する論文十編を載せる。うち『八犬伝』を扱うものは以下の通り。
・高田衛「回外随筆『八犬伝』−母子神の物語」−『八犬伝』と『北条五代記』における里見家記述とのずれ、八犬士はみな対等の位置にあること、伏姫と親兵衛の母子神イメージ、〈子神〉親兵衛が本来持つべき残虐性を毛野が肩代わりしていることなど指摘。
・石川秀巳「蕩児出奔−馬琴稗史作法の一斑」−『八犬伝』の親兵衛をはじめ馬琴読本に多く見られる〈出奔〉のモチーフについて検証。
・播本眞一「馬琴の立場−儒・仏・老・神をめぐって」−『胡蝶物語』などにみられる馬琴の老荘・仏教批判や朱子学の捉え方を前提に『八犬伝』ラストの犬士昇仙を考える。
・内田保廣「刺客の本望」−道節ほか馬琴作品にあらわれる〈刺客〉の形象と、それが皮肉にして後世の少年らのテロリスト化を助長したのではないかとの指摘。
・高山宏「青い目のキョクテイ」−『八犬伝』の文体と平賀源内の文体の比較評価や『八犬伝』の名詮自性など言葉遊び要素への言及。
・服部仁「馬琴の流行、「八犬伝」の流行」−江戸期の『八犬伝』の二次作品を凧の絵柄についてまで細かく紹介。
なおこのほかに「文・学・の・ひ・ろ・ば」というコーナーで井波律子「引用曼荼羅の世界−『南総里見八犬伝』と中国白話小説」を載せる。これは2004年7月10日現在『文学』のホームページで閲覧可能。
参考:『文学』ホームページ(http://www.iwanami.co.jp/bungaku/0503/toc.html)
『文芸と批評 6巻9号』(文芸と批評の会、1989年4月) 雑誌
『八犬伝』に関するものは以下の通り。
・山田俊治「『南総里見八犬伝』という鏡−坪内逍遥・模写説の成立−」−「言語を根拠として自己増殖するような言語世界」である『八犬伝』における語り手の視点や手法と、『八犬伝』世界の非写実性を批判した逍遥の、『当世書生気質』などでの姿勢を、両者を比較しつつ示す。
・「公開シンポジウム『南総里見八犬伝』をめぐって」−先に行われた『八犬伝』シンポジウムの出席者によるコメントと小論。具体的には、
○川村湊(かわむらみなと)「馬琴の「島」」−『弓張月』『八犬伝』『巡嶋記』に共通する〈島の王〉というモチーフの背後に、清王朝の成立と鄭成功(国性爺)の明再興計画の影響を見る。のちに『近世狂言綺語列伝』に収録。
○中村良衛「『八犬伝』論序説−列伝を中心に−」−列伝部の時間経過(時系列)と、その中で犬士たちの個性がうすらぎ、〈八犬士〉という集団を形成する過程を構造論的に読み解く。
○梅澤宣夫「馬琴と明治文学」−明治の文学者である坪内逍遥と幸田露伴それぞれの馬琴と『八犬伝』への関心について。
○佐藤深雪(さとうみゆき)「『南総里見八犬伝』における英雄伝説と王国幻想」−信多純一「馬琴『里見八犬伝』における一大秘鍵」(近世学会での発表)に対する感銘と、それを踏まえての今回のシンポでの各発表に対するコメント。なぜか発表者名が「犬田小文吾氏」や「犬村大角氏」など八犬士の仮名になっているのが可笑しい。
○中村裕「シンポジウムによせて」−『新八犬伝』の思い出と『八犬伝』前半と後半での「物語の論理」の相違などについて。
○中沢弥「ユートピアと神聖受胎」−『八犬伝』の影響を受けた作品、『大菩薩峠』と『押絵の奇蹟』について。
○神田龍身(かんだたつみ)「シンポジウムに出席して」、大井田義彰「七月十六日の午後のこと」は、それぞれシンポの感想のみ述べる。
の八編から成っている。
『読本研究 初輯』(渓水社、1987年4月) 雑誌
浜田啓介「八犬伝依拠小攷」を収録。道節の円塚山火定、小文吾と房八の争い、扇谷定正が在城した白井の位置、浜路姫の設定等について、「今昔物語」ほかの文学作品や実際の事件などのネタ元を具体的に指摘する。『八犬伝』以外の馬琴作品を扱ったものは、大高洋司「『優曇華物語』と『月氷奇縁』−江戸読本形成期における京伝、馬琴−」、石川秀巳「『頼豪阿闍梨怪鼠伝』論−稗史的世界の構造」がある。
参考:『板坂教授と板坂ゼミ』内「曲亭馬琴研究文献目録(1988―1997)」
『読本研究 三輯上』(渓水社、1989年6月) 雑誌
河合眞澄(かわいますみ)「再説『八犬伝』と演劇」収録。『八犬伝』のエピソードに対する『仮名手本忠臣蔵』や『摂州合邦辻』『菅原伝授手習鑑』などの歌舞伎の影響を指摘。その他馬琴作品・馬琴全般を扱ったものに、服部仁「馬琴における読本の口画・挿画の位相」(のちに『曲亭馬琴の文学域』収録)、大高洋司「京伝と馬琴−文化三、四年刊の読本における構成の差違について」、高木元「『出像稗史外題鑑』について−文化期江戸読本書目年表稿−」(のちに『江戸読本の研究』収録)がある。
参考:『板坂教授と板坂ゼミ』内「曲亭馬琴研究文献目録(1988―1997)」
『読本研究 四輯上』(渓水社、1990年6月) 雑誌
『八犬伝』を直接扱うのは、次の二つ。
・得丸智子(とくまるさとこ)「勧懲ならざる」源氏−馬琴の『源氏物語』摂取について」−『美少年録』と『八犬伝』における「源氏」のエピソードの転用について。浜路姫・親兵衛の〈密通〉は「賢木」の源氏と朧月夜に材を得たと指摘。
・河合眞澄「『花魁莟八総』」−『八犬伝』を歌舞伎化した『花魁莟八総』(はなのあにつぼみのやつぶさ、天保七年正月初演)のあらすじを紹介。原作を改変した部分に先行の歌舞伎・浄瑠璃をいかに取りこんだかを検証する過程で、原作が歌舞伎・浄瑠璃から受けた影響と挿絵の普遍的人気を明らかにしてゆく。
その他馬琴関連では服部仁「再説、馬琴の文章意識−同時代の諸相、三馬と国学と」(のちに『曲亭馬琴の文学域』収録)、浜田啓介「『水滸伝発揮略評』と『水滸後伝国字評第六則』」を載せる。
参考:『板坂教授と板坂ゼミ』内「曲亭馬琴研究文献目録(1988―1997)」
『読本研究 四輯下』(渓水社、1990年6月) 雑誌
青木稔弥「馬琴研究の黎明期」、同「曲亭馬琴テキスト目録稿−明治篇(一)」収録。前者は坪内逍遥『小説神髄』を核とする、明治二十年以前の馬琴の受容と『神髄』以降の逍遥の馬琴評価について。後者は明治期に発表された馬琴研究論文や翻刻本のリスト。のちに『読本研究文献目録』として刊行されたものの一部分。
参考:『板坂教授と板坂ゼミ』内「曲亭馬琴研究文献目録(1988―1997)」
『読本研究 五輯上』(渓水社、1991年9月) 雑誌
直接『八犬伝』に関するものは次の二つ。
・河合眞澄「『八犬伝』と演劇・補遺」−音音の不義の顛末における『恋女房染分手綱』と『一谷嫩軍記』ほか、『八犬伝』のさまざまなシーンに対する演劇(歌舞伎)の影響を具体的に述べる。
・須田千里(すだちさと)「八雲・馬琴・『諧鐸』−『八犬伝』伏姫譚への視座」−沈起鳳『諧鐸』中の「鮫奴」が『戯聞鹽梅〓(余)史』の「鮫人」の典拠であること、同じく「両婦換魂」が『諧鐸』巻七の「鬼婦持家」に拠っていることを述べる。また『諧鐸』の「虎癡」と伏姫物語の類似点をあげ、元ネタの一つである可能性を呈示する。
その他馬琴に関するものは、高木元(たかぎげん)「馬琴の中本型読本−改題本再刻本をめぐって」(『江戸読本の研究』収録)、丹羽謙治「馬琴読本における『水滸伝』受容の一齣」、稲田篤信(いなだあつのぶ)「『墨田川梅柳新書』試論」、服部仁「読本鈔録合巻の実相(上)−読本『墨田川梅柳新書』変じて『花蓑笠梅雅物語』となる」(『八犬伝』の合巻作品『犬の草紙』にもちょっと触れる)、大高洋司(おおたかようじ)「文化五、六年の馬琴読本」、徳田武「『雲妙間雨夜月』の雷雨譚典拠考」、同じく徳田氏「曲亭馬琴と鈴木桃野における『諧鐸』」(「鹽梅〓(余)史」に対する「鮫奴」「鬼婦持家」の影響と、同じく『諧鐸』を翻案した鈴木桃野『反古のうらがき』について。当時『諧鐸』ブームだったのか?)。
『読本研究 六輯上』(渓水社、1992年9月) 雑誌
信多純一(しのだじゅんいち)「研究ノート『里見八犬伝』と北斎」、内田保廣「いまどきの八犬士」収録。前者は初代柳川重信の描く『八犬伝』の挿絵と(主として)後発の北斎の絵(『唐詩選画本』など)の構図の類似を図版の比較から検討し、北斎が『八犬伝』の挿絵に関与していた可能性を示唆。後者は同人誌を中心に、現代のメディアによる『八犬伝』の摂取(二次作品)を考察。その他馬琴関連は、佐藤悟「読本の検閲−名主改と『名目集』」、松下静恵「『墨田川梅柳新書』論−松稚丸を通して見る後鳥羽院の描かれ方」、服部仁「読本鈔録合巻の実相(下)−読本『墨田川梅柳新書』変じて『花蓑笠梅雅物語』となる」、大高洋司「『椿説弓張月』論−構想と考証」の四本。
『読本研究 六輯下』(渓水社、1992年9月) 雑誌
朝倉留美子「『南総里見八犬伝』諸本考(前編)」、上野洋三(うえのようぞう)「『狗子草』」収録。前者は板坂則子氏の先行研究が〈各機関所蔵本を初版本中心に一括一本〉として調査しているのに対し、後刷本各種の書誌研究に則して行った研究。書誌学のみならず、馬琴日記と照らし合わせての馬琴研究ともなっている。後者は文久三年初秋に編まれた(序文の日付による私の判断)俳諧集。前半部は『八犬伝』の初輯〜九輯百三回までの主要人物に関する寸評と句、後半は『八犬伝』に関係ない普通の句集になっている。他に馬琴を扱ったものは藤沢毅「読本書誌の実践(1)−『近世説美少年録』諸本比較書誌データ」がある。
『読本研究 七輯上』(渓水社、1993年9月) 雑誌
直接『八犬伝』を扱うのは、以下の通り。
・浜田啓介「八犬伝依拠二攷」−犬飼現八の師匠・二階松山城介の名前のルーツや妙義山・庚申山の描写の資料、神余光弘誤殺や義実の対山下挙兵などのエピソードのモデルとなった先行作品・実話などの指摘。
・徳田武「『八犬伝』の戦闘叙述−『三国演義』『水滸伝』の利用法」−なにかと低く評価されがちな対管領戦の戦闘描写を『水滸伝』『三国演義』の類似個所と比較しつつ再評価。
・中川由美子「『南房里見八犬伝』の構想−稗史家馬琴の終焉」−板坂則子「『八犬伝』−構想よりの接近」や石川秀巳「八犬士列伝の新構想−『南房里見八犬伝』ノート」が述べる〈『八犬伝』起筆当初馬琴が筋を決めていたのは四輯まで〉という説を否定して五輯までを“原八犬伝”とし、六輯以降の新構想や対管領戦のが当初からの構想であったことなどを、テキスト・書簡の精査によって読み解く。
・高田衛「孤児小説としての『八犬伝』」−随筆。『八犬伝の世界』でも言及された、信乃と額蔵の少年期の「孤児的境遇」と「反成人社会としての「少年」の世界」について。
・内田保廣「親兵衛の左手」−随筆。『八犬伝の世界』や『八犬伝綺想』の解釈を参考にしつつ、〈「個性」に乏しい〉親兵衛の「荒ぶる美少年」としての性格を、原作の描写から見出す。
・佐藤悟(さとうさとる)「柳亭種彦の『南房里見八犬伝』評について」−殿村篠斎あての馬琴書簡に現れる、種彦の『八犬伝』評を引用し、その内容の信頼性を種彦の書簡から検証する。
・柴田光彦「桜井鴎村の八犬伝校略」−明治四十四年刊の鴎村による抄訳『校訂略本八犬伝』を白井喬二訳と比較しつつ書誌学的に紹介。
・青木稔弥「『八犬伝』と近代」−明治・大正期の作家・文学者による『八犬伝』および馬琴への評価と、その土壌である当時の文学観について。
・河合眞澄「菅原の世界と『八犬伝』」−西沢一鳳『伝奇作書』続編下の巻きで触れられている、幻に終わった〈菅原道真ものの『八犬伝』バージョン〉(キャラは菅原ベース、ストーリーは八犬伝ベースの歌舞伎)の内容を説明を加えつつ紹介。
・板坂則子「馬琴の短編合巻と読本の趣向について−『八犬伝』『弓張月』ノート」−馬琴の短編合巻各作品のあらすじとコメント。『八犬伝』との共通点にふれるものも多い。
その他馬琴に関するものは、井上啓治「『本朝酔菩提』『忠義伝』『桜姫全伝』における〈地獄絵・地獄信仰〉〈女人堕獄・救済〉と《昔話・説話》−京伝と馬琴の差異」、藤沢毅「『美少年録』の板本をめぐって−読本書誌の実践(2)」の二編。
参考:『板坂教授と板坂ゼミ』内「曲亭馬琴研究文献目録(1988―1997)」
『読本研究 七輯下』(渓水社、1993年9月) 雑誌
朝倉留美子「『南総里見八犬伝』諸本考(後編)」と、服部仁「『南総里見八犬伝』登場人物等一覧稿」を掲載。前者は『読本研究 六輯下』所収の同名論文の続編、「あとがき」で『八犬伝』書誌研究をはじめた契機を熱くつづっている。後者は『八犬伝』全キャラ(一部動物含む)の名前の読み、肩書き、初登場のページと行(岩波文庫版にそくす)の羅列。
『読本研究 八輯下』(渓水社、1994年9月) 雑誌
朝倉留美子「『南総里見八犬伝』の袋−比治山大本を中心として」、雲英末雄(きらすえお)「『八犬伝見立句合』」収録。前者は『読本研究 七輯下』の編集後記で触れられてる『八犬伝』全輯分の袋についての書誌学的研究。後者は「月並句合の秀逸披露の小冊」、要は俳句コンクールの入選者を「孝 寒菊」のように玉の字と犬士の似顔絵(といっても歌舞伎役者に似せている)で、作品とともに紹介するという企画で、直接『八犬伝』に関係なし。
『読本研究 九輯』(渓水社、1995年10月) 雑誌
・浜田啓介「読本研究五十年の歩みと展望」−『八犬伝』ほか主要な馬琴作品と馬琴自身についての研究(戦後)の重要なものを紹介説明。
・石川秀巳「『南総里見八犬伝』構想論への視座」−「『南総里見八犬伝』の構想」が構成論と構想論を混同していることなどを批判、馬琴の初期構想は四輯まで、『八犬伝』は当初八犬具足で団円予定だった、という見解を改めて打ちだし、列伝部後半(第六輯〜第八輯)の「毛野−縁連葛藤」「船虫−媼内連合の並行・交叉」のモチーフを指摘。
・河合眞澄「『花魁莟八總物まねぶたいことば』−翻刻ならびに台帳との関係」−『花魁莟八總』の台詞抜き書き集『まねぶたいことば』の内容と紹介および、実際の台本と台詞が変えられている理由の考察。
このほか、「読本研究の現況と提言」の総合タイトルで諸氏の小論を載せているが、そのほとんどが馬琴とその作品について触れている。
参考:『板坂教授と板坂ゼミ』内「曲亭馬琴研究文献目録(1988―1997)」
『読本研究 十輯下』(渓水社、1996年11月) 雑誌
『読本研究』最終号。播本眞一(はりもとしんいち)「曲亭馬琴旧蔵『房総志料』について−『南総里見八犬伝』との関連を中心に」、朝倉瑠嶺子「馬琴と水戸学−告志篇をめぐって」収録。前者は、『八犬伝』中の里見家の史実に関する元ネタとして著名な『房総志料』の多和文庫本(実際に馬琴の蔵書だった本)の馬琴による書きこみ部分の紹介、馬琴の『志料』に対する信用、『著作堂雑記抄』「里見記」などとの関係を考察。後者は、勤皇家で知られる水戸藩九代藩主徳川斉昭が著した「告志篇」への馬琴の傾倒について考察、その中で八犬士の造型に対する水戸学の影響にも少々ふれる。その他馬琴関係論文は、徳田武「『月氷奇縁』の隠微」、服部仁「『蓑笠雨談』諸板出版の顛末とその周辺」、板坂則子「『占夢南柯後記』の成立」の三つ。
『週刊歴史のミステリー 第21号』(デアゴスティーニ、2008年6月10日号) ムック本?
公式サイトのアオリを借りれば、「歴史の謎にせまるビジュアルマガジン」。写真や図版をふんだんに使い、和洋を問わず歴史上の事件を検証してゆく。「語り継がれる伝説」というコラムの第21号掲載分で人魚伝説を扱っているが、その中で『八犬伝』中の人魚の話に(人魚ネタでよく用いられる)口絵の引用付きで触れている。
↑この作品については平次様より存在を教えていただきました。いつもありがとうございます!
参考:http://www.de-club.net/rms/
『週刊歴史のミステリー 第82号』(デアゴスティーニ、2009年8月18日号) ムック本?
上で紹介した分と同じく、コラム「語り継がれる伝説」で八百比丘尼をとりあげ、『八犬伝』中の八百比丘尼妙椿にふれる。このコラムの執筆者は八犬伝びいきなのかも。今後も『八犬伝』ネタが登場するかしらとちょっと期待。
↑この作品については平次様より存在を教えていただきました。いつもありがとうございます!
参考:http://www.de-club.net/rms/
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