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バタバタバタッ!! バタン!! ――どさっ 「はっはっはっ……はぁ……はっ」 今見た物が、……信じられない? 「なに、今の」 後ろを窺って、やっぱり前を見る。 「……でも」 思い出してしまった。はっきりとつながってしまった。すべてが。――どうして? 「何が“どうして”なのよ!」 ダァンと、左の手が床を打った。 「お父様はどこ! 案内して!!」 知っていた。この城を出たときについてきた気配を。そして、真夜中に部屋を出た私のあとをつけていた気配を。今日は、シギがいない日だから、か。それとも。 彼はただ先を歩いてくれた。小さな灯火は足下を照らしているだけで、私の顔も彼の顔も見えなかった。 それでよかった。だって私には、もう泣く事しか残されていなかったから。 かつっ 「入れ」 ノックもうまくできなくて、扉を爪弾いた。聞こえないのではと思って、聞こえなければいいなとどこかで思う気持ちはすぐに、その扉を開けることに戸惑う。 ギィイ―― 案内した男の人が開けてくれて、中に入るように促す。部屋に入れば、後ろでその男の人が頭を垂れながら扉を閉めていた。 「ミルファネーゼ? まだ寝ていなかったのか?」 お父様も寝ていなかったのだろう。少しだけ、驚いたようだった。 部屋の真ん中まで進んでいって、立ち尽くす。もう限界だった。 その言葉も、態度も、全部、すべて私のために惜しまなかったのに。 私は―― 「……ぁ……の……」 「自分を、責めなくていい」 「――ぁ……ぇ……うわぁぁあん!」 抱きついたのか抱きつかれたのかわからない。ただその服の皴が消えなくなるのではないかと心配するくらい。私はお父様の腕の中できつくきつくお父様の服を握り締めた。 ここには二人だった。例え誰もいなくてもカーテンの裏から窺う気配や、王座のすぐ裏にいる気配はない。 「ぅわあ〜〜ん!!」 ここに来て何度泣いた事だろう。悲しく悲しくて。でも、今は、寂しくはなかった。――たった独りでは、なかったから。なくなったから。 「陛下!!」 「どうした、シルク」 「なぜミルファネーゼ様が部屋にいらっしゃらないのですか!!」 「ぁあ、私の寝室で寝ているが」 「ななっ何をなさっておいでですか!!」 「何といわれても……一緒に眠っただけだが……」 そうあっけらかんと国王に言われて、シルクはふらりと倒れたくなるのをこらえた。 「陛下!! 仮にも国王がっ」 「父親だ」 あのミルファネーゼ(むすめ)の。 「ぅぐっ。――ですが、一応ミルファネーゼ様のお歳をお考えに……なりませんと」 「実の娘だぞ?」 彼女が、どう思っていようと。 「……起こしにいってまいります」 「必要ない」 「陛下! もう時間がないのですよ!!」 「それは、仮にミルファネーゼが失態をした時に責任の矛先が自分に向かってくるのを避けるためか?」 「そんなっ!? 違います陛下!!」 顔を赤くして言うシルク。 「ならば黙れ。眠りを邪魔することは許さん」 ざわざわと、木々がざわめく音がする。森の真ん中。風に髪がなびいて項(うなじ)をくすぐる。 『どこ?』 木々に囲まれて、森の中。視線が上を向きながら周りを一周する。木々が左右に振れ、葉のなる音。 ここがどこだかわからない。 これは、夢? さわさわと木々が揺れる――そして、大樹への道が開いた。 バァン!! 「「「!?」」」 「おはよう。ミルファネーゼ」 「ぉ、はよう……ございます」 突然、息を切らせたミルファネーゼが部屋に飛び込んでくる。昨日の服のまま。髪も乱したまま。しかしその目は、眠気などとうに吹き飛んだと物語る。 「着替えておいで。すぐに朝食にしよう」 朝議には遅刻するだろうが。 「ぁ……でも朝議、は?」 「……それはもう……」 そう聞かれてしまってはしかたない。 「なら昼食を共にしよう。今日は天気がいいから外でもいい」 「そっか……」 ミルファネーゼは、安心したように床に座り込んでしまった。 「ミッミルッ」 シルクなど、今にも叫びだしそうだ。 「それまで、もう少し休んだらどうだ? ――あの大樹の下で」 「……そうします」 安堵に再び眠気を思い出したかのように、小さくあくびをしながらミルファネーゼは部屋を後にした。 シルクをなだめるほうが大変だった。 「おやすみ〜〜シェーネ、ジュア……」 目覚めて、寝台にいることに驚いた。だけど何より――独りでいることに驚いた。 怖くて、走った。 でも独りではなかった。 再び、木々は揺れる。ミルファネーゼを深い眠りへと誘(いざな)う。 おやすみ、ミルファネーゼ だから、言ったでしょう? みんなで、待っていたんだよ―― |
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