平成11年6月23日(水) 晴れのち曇
0600起床。本日からは、北太平洋沿いに東進し、東の果て納沙布岬を目指す道程が始まる。
早々に準備を済まし、0635出発。天気は、快晴。今日も雨の心配は無さそうじゃ。
広尾の町を抜け、国道336号線を北上する。
336号線“ナウマン国道”は、豊似で帯広に向かう国道236号線と別れる。
ここから先は、地図上ではほとんど何も無い空白地帯となる。
念のため、豊似の町で飲み物と食料(ビスケット・チョコレート等)を購入しておく。
<十勝原野>
豊似からは、延々と原野の中を道は進む。この頃から、天気は雲が多くなる。
この辺りのいわゆる十勝原野は、日高とは異なり牛の牧場が多い。
そこらじゅうに牛ちゃんの牧場があり、その臭いと言ったら、呼吸困難になる程の強烈さじゃ。
本当に糞ったれの状態じゃ。あ〜、たまらんわい。

<牧場> <牛横断注意>
それから、道路には“牛横断注意”の看板が。よほど、牛が多いんじゃろう。
しばし進むと、336号線から少し入った所にナウマン象発掘遺跡があった。
<ナウマン象発掘の地>
336号線が、ナウマン国道と呼ばれる由縁がやっと分かったわい。
ナウマン国道を突き進むが、辺りはいよいよ白樺林と動物しか生息しない地帯になってしまった。
<白樺原生林> <動物(シカ)注意>
おそらくこの付近は、人間よりもシカの数のほうが多いのじゃろう。
車の交通量も激減し、1時間あたり1〜2台通るぐらいかのう。まあ、熊出没の心配が無いのが救いじゃ。
午後には、霧も発生してきて、不気味に森林の上を覆っている。
湧洞沼辺りを通過する時は、原生林の中に湿地帯が現れ、更に霧が濃くなっている。
<湿地帯>
この頃、ある大きな誤りに気が付く。日はとうに傾き出し、霧は深くなるし、かなり肌寒い。
しかし、一向に目的地の浦幌に近づいておらん。
ちょっと待てよ、と地図を開いて再計算してみると、広尾から浦幌までは70km余り。
ん!1日にそんなに歩ける訳はなか。計算間違いしてしもうた。
浦幌までは、現地点からでも20km近くある。周りには、町らしいものどころか人家さえ見当たらん。
携帯電話は、完璧に圏外。助けを求めようにも術が無い。
こりゃ、この原野の真っ只中で野宿かよ。テントは、自宅に置いてあるので、屋根のあるとこ捜さにゃいかんのう。
しかし、この原野のどこにそんなもんあるんじゃ。周りは、林林林・・・・。
こりゃ、仕方あるまい。ともかく人気のある所まで前進あるのみじゃ。そうすりゃ、なんとかなるじゃろう。
霧が深くなって、更に薄暗くなりだしたが、道は無情にも相変わらずの光景じゃ。
0730頃、遂に辺りは漆黒の闇へと変貌した。まったく光と音の無い世界に突入じゃ。
こりゃ、歌でも歌って前進するかのう。思わず口ずさんでしまったのが、軍歌じゃった。
この状態では軍歌でも歌って、意気を高揚せんとやっとられんわい。
それにしても、どれ位歩いたかのう。突然、車の音と光が現れ、我が目前に急停止した。
車内のおじいさんは、非常に驚いた顔でこちらを眺めちょる。
「今時分、こんな所で何しとるんじゃ。」
と言うので、事情を話すと、良く呑みこめていなかったが、まずは車に乗りなさいとドアを開けてくれた。
た、助かった。早速、車は快調(じいさん、飛ばし過ぎじゃ)に進んだ。
車内で、おじいさんに色々話をしたが、どうも理解してないようじゃ。
浦幌の駅に行けば、まだ帯広行きの汽車があるからそれに乗りなさいとか、意味不明じゃった。
車で快走すること数十分、JR浦幌駅に到着。
命の恩人おじいさんに丁重に礼を述べると、早くしないと汽車が無くなるぞ、と最後まで分かってもらえんかった。
何はともあれ、おじいさん、本当に助かりました。ありがとう。
既に時刻は、2100近く。早く宿を手配せにゃならん。宿が無ければ、駅ででも寝るかのう。
タウンページで調べると、浦幌には宿が2軒しかない。こりゃ、確率低いのう。
早速電話をすると、1軒目ですんなり交渉成立。
2105宿着。そう言えば、飯食っとらんのう。しかし、周りはとうに店は閉まっとる。
宿の人に頼むのも気が引けるしのう。(もう、寝る準備してたからのう)
仕方あるまい、今夜の晩食はビスケットとチョコレートじゃ。野宿してたら、どうせこのメニューじゃからのう。
それにしても、本日は大反省じゃ。最も基本的な距離の計算を間違えたら、蝦夷地では命取りじゃ。
今日は助かったが、明日からは細心の注意を払わにゃいかんのう。あ〜、屋根の下で眠れて良かったわい。
こうして、狂歩録第47日目は、波乱万丈終了した。