平成11年6月30日(水) 曇のち晴れ
0630起床。昨日は大して歩かず休養日みたいなもんなので、足はそれほど痛くない。
朝食まで、出発準備を整える。早速、昨日平さんから拝領したシャツに袖を通す。
0730朝食。再び平さんとS夫妻とご相伴する。
昨夜の礼を述べる。今日は、是非とも平さんと一緒の所を写真に収めたいので、その旨お頼みする。
平さんは快諾して下さり、出発の時に撮影する事に。
朝食を終え、準備万端整え、平さんのことを待つ。いよいよ出発の時が近付き、外へ。
そこには、ワインレッドカラーのBMWがどーんと待機していた。
早速、写真をお願いする。ここでも昨晩に引き続き、感激の嵐が。なんとバイクに跨って良いと。
感激に手を振るわせながら、いざ。
それにしても、間抜けじゃった。背中の荷物降ろすの忘れとったわ。
こうして、昨夜からの感激の嵐に耐えることは、遂に終わりに近付いた。出発の時が来たんじゃ。
方向は知床峠でいっしょじゃが、こちらは歩き。平さん達は、バイク。
先に出発して、途中で平さんの走っている姿を、是非ともこの目で確認したかった。
様々なご厚情に感謝し、丁重に礼を述べ、0910出発す。
すぐに追い付かれるじゃろう。その一瞬のチャンスに備え、右手にはカメラを待機させた。
まもなく後方から低いエンジン音が近付いてきた。クラクションの音に振り向き、英姿を撮影。
バイクは、あっという間に過ぎ去り、その姿は彼方へと消えてしまった。
しかし、すぐに戻って来た。知床自然ビジターセンターに行かれるとのことで、場所を聞きに戻られた。
ビジターセンターは、もっと下の方なので、場所を説明。またまた、あっという間に去ってしまった。
またいつもの一人に戻った。本日踏破する知床峠は、標高738m。出発以来最大の難関である。
足の調子は、今日はたいして悪くないので順調に歩を進める。
しばし歩むと、背後からクラクションが。平さん達が走り去って行った。おもわず、敬礼。
これでお別れです。本当にありがとうございました。素志を必ず完遂し、浜松に行きます。
そして、道程はいよいよ峠の様相を現わしてきた。これより、峠踏破の実況中継。

<峠への道> <知床峠1合目付近>
1015、1合目(標高280m)突破。1035、2合目(標高380m)突破。1055、3合目(標高450m)突破。
当然歩行中は、ヒグマ除けの為にラジオをかけたり、大声で歌を歌う(軍歌)。歌うのに疲れると手を叩いた。
3合目突破後に、ヒグマが怖いので見晴らしの良い場所で、第1回目の休憩を取る。
1120、4合目(標高520m)突破。1135、5合目(標高580m)突破。1150、6合目(標高640m)突破。
第2回目の休憩も、前回同様見晴らしのよい場所で取る。目前に知床連山が続く。

<第2回目休憩> <休憩場所の眺望>
1240、7合目(標高670m)突破。なぜかこの後、表示板が無くなる。(工事中じゃからかのう)
7合目から頂上までは、所々に残雪が残っており、気温も急激に下がった。
<残雪>
試しに残雪の融けた水を触ってみると、そりゃ、冷たい通り越して痛かったよ。
そして遂に、ヒグマ出現の恐怖と急勾配と闘いながら、1255知床峠頂上到着。
峠頂上は、羅臼方向からの強冷風が吹きぬけていた。寒くてたまらんわい。(この直後、ヤッケ装着)
それに、ヒグマ出現の恐怖のため、休憩中は一切食物を摂っていないので腹も減った。
その辺りを見渡すと、トラックを改造した売店が目に入った。早速接近する。じゃがバターを食おう。
売店の兄さんは、「歩いて来たの。」と、驚いていた。この兄さんが中々面白い人で、すぐに話しが盛り上った。
兄さんは、陸上自衛隊のレンジャー(特殊部隊員)じゃったらしい。話は面白かった。
ここで、栃木から来ていた年配の夫婦も話しに参加して、更に盛り上った。
これからウトロまでの下り道の途中で、今朝0630頃、国道にヒグマが出たらしいと言う情報も教えてくれた。
「今の時間なら大丈夫だよ。」そう言われても、びびるはなあ。脅かすなよ。
何はともあれ、日の高いうちに早く安全圏に逃げよう。兄さんとご夫妻に別れを告げ、出発じゃ。

<峠の売店> <羅臼岳>
先程まで雲に覆われていた羅臼岳が、その全容をようやく現わした。羅臼岳を右手に見ながら、さあ、下りじゃ。
登りに反して、下りはゆるやかな道が続く。しばし歩むと、遥か遠くにオホーツクの海が姿を現わした。
<オホーツクへの道>
下りも登り同様ラジオをかけ、手を叩き恐怖を紛らわせながら、一路安全圏を目指す。
ゆるやかな下り坂の原生林の中を抜け、知床自然センター(標高149m)に到着。もう安全圏じゃろう。
一安心して進むことしばし、衝撃的な看板が。
<ヒグマ生息地域 厳禁!餌やり・接近>
バカもん、誰がヒグマに餌やりに接近するかい。再び緊張しながら進む。
やっとこ恐怖から開放されたのは、オホーツク海を見渡せる見晴橋に到着してからじゃ。
<見晴橋から、ウトロの町を望む>
ようやくヒグマの棲む所から、人の住む所にやって来れた。助かった。
この辺りに来ると、先程の峠頂上付近の寒さが嘘のような暑さである。体調維持が大変じゃ。
オホーツク海には、まだ燦燦と太陽が輝き、久し振りに暑さを感じたわ。
<オホーツク海>
何はともあれ、峠の兄さんに教えてもらった宿に急行する。1700宿着。宿所確保也。
温泉に浸かり、夕食を摂りに食堂へ。自分の席に座ろうとすると、隣は、なんと峠で出会った栃木のご夫妻。
奇遇ですね〜、から会話は始まり、いつも通りに我が愚挙で話が盛り上り、おばちゃんにはおかずまで頂戴した。
なんでも、自分の子供と歳が変わらんので、人ごととは思えんと、えらく心配されてしもうた。
ご厚情に感謝し、退散する。峠越えの疲れのため、すぐに寝に付く。
足の方は、何とか痛みが再発せずにすんでいる。このままの調子で行って欲しいもんじゃのう。
こうして、狂歩録第54日目は、疲労困憊じゃが中々楽しい日にて、終了。