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■ コンクリート強度推定

次は実際のコンクリート強度の値を得られたデータをもとに推定してみましょう。推定強度の計算式はシュミットハンマー測定器の説明書に記載されています。エクセルを用いると一気に計算させることができます。エクセルで式を用いて計算をするのは、初歩的な使い方ですので、説明はここでは省略します。

推定強度 (N/平方ミリメートル)


     荒れている部分(A面)   荒れていない部分(B面)

 1回目   34.1           37.7
 2回目   36.3           34.1
 3回目   34.8           35.6
 4回目   34.8           35.6
 5回目   36.3           34.1
 6回目   35.6           33.4
 7回目   35.6           34.8
 8回目   37.7           37.0
 9回目   35.6           36.3
10回目   34.1           34.8

同じ母集団から取られたものと結論付けられていますので、すべてのデータを対象に標本平均と標本標準偏差を計算してみました。

平均値       35.4

標本標準偏差   1.20

推定強度の値自体を見てみると、呼び強度:27N/平方ミリメートルを充分上回っていることが分かります。

■ 母集団の分布の推定

さて、ここから実際に母集団の分布を推定する作業に入ります。母集団の分布推定は、データの性質にもとづいて決めることになります。今回は、正規分布またはガウス分布と呼ばれる分布を母集団の分布として仮定します。

正規分布は、平均値を頂点にして、平均値からはずれるに従ってなだらかなカーブを描きながら出現確率が減少していくかたちの分布です。偏差値でもおなじみの分布です。ベルを横から見たような形となります。

なお、出現確率のことを確率密度とも呼びます。自然にばらつくものの分布は正規分布に従うことが多いです。正規分布の詳しい説明については、参考書や別のサイトを参照してください。

■ 母平均の推定とt分布

難しそうな小見出しをつけましたが、要は、今回それぞれ10個づつ取ったデータからどうやって母集団の平均値を推定したら良いのか?ということです。

母集団の偏差が既知の場合(というのは通常はないと思いますが)には、z推定という推定方法を用いて母平均の推定を行ないます。

z推定は非常に重要な母平均の推定方法ですが、詳細を説明するのはかなり長くなりますので割愛します。勉強される方は、標準誤差中心極限定理などをしっかり押さえて理解されることをお勧めします。

さて、母集団の偏差が未知の場合、z推定ではなく、別の統計量tによって推定を行うべきであることを発見したのは、イギリスのゴセットという学者(といっても当時ビール工場勤めの研究者)でした。ゴセットは(謙遜にも)Studentというペンネームを用いており、統計量zの代りにtの文字を用いたことから、現在ではtの分布はStudentのt分布と呼ばれています。

統計量tの分布はzのように正規分布にはならず、中心の山が少し低く、裾野が広がったような形になります。ただし、サンプル数が大きい時にはtの分布は正規分布に近づきます。従って、サンプル数が(100個など)大きく取れるときは、z推定を用いても大きな違いはありません。

いっぽうサンプル数が少ない時は、z推定によらずt推定を行なうことが必要となります。なお、サンプル数がいつもたくさん取れるような検定をしている場合、基本がz分布にあるような誤解を与える書きものがありますが、正確には母集団の偏差が未知の場合はt分布による推定が基本です。

■ t推定の信頼区間

t推定の両側信頼区間は次の式で表されます。

 信頼区間 = m ± t(α,n−1)×s/√n

 m : 標本平均
 n : 標本数
 α : 信頼度
 s : 標本標準偏差
 t(α,n−1) : 統計量t(両側)

信頼度は、ここでは母集団の平均値が信頼区間の中に入る確率を表します。

■ 両側信頼区間と片側信頼区間

両側信頼区間は、上の式のように、上限値と下限値の間に入る確率に対応する区間です。いっぽう、ある値以上あるいは以下になる確率に対応する信頼区間を片側信頼区間といいます。

今回は、母平均がある値以上である確率を信頼度として考えますので、片側信頼区間を求めることになります。すなわち

 信頼区間 > m − t(α,n−1)×s/√n

 ここでのt(α,n−1)の値は先ほどと違い、片側の値を使用する必要がある点に注意しましょう。

■ 95%信頼区間を求める

実際に95%信頼区間を求めてみましょう。エクセルを使用すると簡単に求まります。

 n : 標本数
 m : 標本平均
 s : 標本標準偏差

についてはあまり説明は要らないでしょう。n=20です。mは先に見てきたようにAVERAGE関数で求まります。また、sはSTDEV関数で求まります。

問題はt(α,n−1)です。エクセルにはTINV関数が用意されており、ここにαとn−1を入れることによりtの値が計算できます。このTINVは両側の値が返ってくるので注意が必要です。片側の値を得るためには、αの値に2倍の値を入れる必要があります。従い、α=0.05と入れるべきところを、ここではα=0.1と入れます。

すなわち、

t(0.1,20−1)=t(0.1,19)=1.729

と求まります。なお、n−1は自由度と呼ばれます。自由度は統計では大切な概念ですが、ここでは説明は割愛します。

さて、これで準備が整いましたので、95%信頼区間を計算することができます。結果は、

95%信頼区間 : > 34.9

と求まりました。

■ 99%信頼区間

信頼度を99%に上げたければどうしたらよいでしょうか? αの値を変えれば簡単に求まります。

t(0.01,19)=2.861

より

 99%信頼区間 : > 34.6

■ 配合強度

呼び強度が27N/平方ミリメートルですから、これはかなり良い数字です。どうしてこのような良い値が得られたのでしょうか。実験では、良い値が得られたと脳天気に喜んでばかりもいられないことも多いものです。予想外のことが起きたのであれば、設計に反映させなくてはいけません。ばらつきの程度も問題となります。

この秘密は、生コンの配合強度にあります。配合強度とは、呼び強度を達成するために実際に配合する生コンの強度のことです。生コンを打っても実際にはできあがりのコンクリートの強度はばらつきます。弱い方向にばらついた場合でも、できるだけ呼び強度が達成できるように、あらかじめマージンを持った強い強度の生コンを配合しているのです。

従って、生コンの手配を確認する時、本当は呼び強度だけでなく、配合強度を確認することがお勧めです。配合強度は、配合報告書に記載されています。配合強度の値は企業秘密に属するかもしれないので、ここでは伏せておきますが、得られたデータからは呼び強度27N/平方ミリメートルを達成するのに充分な強度が用いられていることが分かります。

■ 安心しました!

水先案内人さんから過剰な心配だと指摘されたとおりの結果となりました。しかし、数字でしっかりと確認できたことにより安心できました。


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