■ 防腐・防蟻処理薬剤
ねこちパパのおうちでは、防腐・防蟻処理に薬剤を使用することにしています。近年、この薬剤がシックハウスの原因になっているとして注目されることが多くなってきています。防腐・防蟻処理薬剤についても公庫仕様書に記載されています。さっそく見ていくことにしましょう。
■ 公庫仕様書の記述
4.4.3 薬剤の品質等 1. 防腐・防蟻薬剤を用いて工場で処理した防腐・防蟻処理材を用いる 場合は、次による。 イ. 枠組壁工法用製材のJASの保存処理(K1を除く。)の規格に適合 するものとする。 ロ. JIS A 9108(土台用加圧式防腐処理木材)の規格に適合する ものとする。 ハ. JIS K 1570に定める加圧注入用木材防腐剤を用いてJIS A 9002による加圧式防腐処理を行った木材とする。 ニ. (社)日本木材保存協会(以下「木材保存協会」という。)認定の加圧 注入用木材防腐剤を用いてJIS A 9002による加圧式防腐処理 を行った木材とする。 ホ. イ.ロ.ハ.又はニ以外とする場合は、防腐・防蟻に有効な薬剤が、 塗布、加圧注入、浸漬、吹き付けられたもの又は接着剤に混入された 防腐・防蟻処理剤で特記による。 (ただし、集成材においては接着剤に混入されたものを除く。) 2. 薬剤による現場処理を行う場合の防腐・防蟻薬剤の品質は次による。 イ. 木部の防腐措置に使用する薬剤の品質は、特記による。特記の ない場合は、JIS K 1570(木部防腐剤)に適合するクレオ ソート油の規格品又は木材保存協会認定の防腐剤とする。 ロ. 木部の防腐措置及び防蟻措置に使用する薬剤の品質は、特記に よる。特記がない場合は、(社)日本しろあり対策協議会(以下 「しろあり協会」という。)又は木材保存協会認定の防腐・防蟻材 とする。 3. 薬剤による現場処理を行う場合の木材の処理方法は、特記による。 特記がない場合は次による。 イ. 塗布、吹き付け、浸漬に使用する薬剤の量は、木材及び合板の表面積 1平方メートルにつき300mlを標準とする。 ロ. 処理むらが生じることのないようイの薬剤の範囲内の量で、2回処理 以上とする。 ハ. 木材の木口、仕口、継手の接合箇所、亀裂部分、コンクリート及び 石などに接する部分は、特に入念な処理を行う。 4. 2のロの薬剤を使用する場合の処理方法は、しろあり協会認定の標準 仕様書に準じる。 5. 現場の加工、切断、穿孔箇所等は3に準じて、塗布あるいは吹き付け 処理を行う。
■ 解説
あいかわらずの記述です。何をどうしたら良いのかすぐには分かりません。まず、1では工場で処理する製材を用いる場合です。これは、ねこちパパには当てはまりません。2では現場で薬剤処理を行う場合ですからこれに該当します。しかし、イ.ロ.いずれも特記によると書かれています。これでは何のための仕様書なのか分かりません。
特記のない場合、イではクレオソート油または木材保存協会認定の防腐剤を使うこととなっています。ロでは、しろあり協会又は木材保存協会認定の防腐・防蟻剤を使うこととなっています。
良く見ると、イでは防腐措置だけを対象にしているのに対し、ロでは防腐措置と防蟻措置の両方を対象にしていることが分かります。これは、そもそもしろありが生息しないために防蟻措置の必要のない地域を区別するためであろうと考えられます。
ねこちパパのおうちの建つ地域は防蟻措置も必要となりますから、ここでは、ロの防腐・防蟻剤を使う必要があります。
■ クロルピリホス
今回ねこちパパのおうちに使用した薬剤は、シントーファイン(株)という製剤会社のシントーアリピレス20W乳剤という商品です。この薬剤はビフェントリンなどの成分を使用しています。数年前まではクロルピリホスという成分を持つ薬剤が使用されていましたが、シックハウスの原因になるとして自粛措置がなされています。公庫仕様書にもその記述が見えます。
防蟻薬剤について 防蟻用に使用される有機リン系薬剤であるクロルピリホスについては、 平成12年11月、(社)日本しろあり対策協会において、輸入、製造、 販売、使用の自粛措置が決定されており、防蟻薬剤を用いる場合にあって は、クロルピリホスを用いないことが望ましい。
監督さんからも聞いていたのですが、数年前まではかなり臭いもあったのだそうですが、最近のものはほとんど臭わないそうです。自粛措置でクロルピリホスが使われなくなったためであると思われます。
クロルピリホスは、有機リン系の薬剤で、農薬や除草剤、殺虫剤、くだものの防腐剤などとして昔から広く使われてきました。アメリカ環境保護庁(EPA)は1965年に登録しています。特にシロアリ対策用の防蟻処理剤だけに使われているというわけではありません。アメリカの家庭では、ダーズバン(Dursban)という名前の殺虫剤がよく知られていますが、その主成分でもあります。しかしアメリカにて最近次第にその毒性が問題になり、2000年6月8日,EPAは、クロルピリホスの建物内における使用を事実上全面廃止すると発表しました。EPAでは発達段階にある子どもの神経系統への影響を懸念しています。
防蟻薬剤を使用するのであれば、これからはこのクロルピリホスが含まれていないかどうか確認されることをお勧めします。
■ ビフェントリン、ピレスロイド
クロルピリホスが有機リン系の薬剤であるのに対し、ビフェントリンはピレスロイド系の防蟻薬剤として知られています。
ピレスロイドとは、除虫菊(シロバナムシヨケギク)の花に含まれる殺虫成分、ピレトリン類のことを指します。また、これら自然に存在するピレトリンと化学構造のよく似たピレトリン類似の合成化合物の総称でもあります。
極めて微量でも昆虫に対して素早い効き目があります。昆虫の体の表面から体内に入り、神経に強いダメージをあたえ、マヒさせて殺す作用を持っています。一方で、温血動物においては分解酵素の働きにより速やかに解毒され体外に排出されるため安全性が高いと説明されています。
しかし、最近の研究によれば、脳が発達中の幼い動物にピレスロイドを投与すると、行動や脳の機能に大人になっても続く影響を与えることが報告されています。化学物質である以上、まったく悪影響がないというものはありえません。ねこちパパの考えでは、やがてビフェントリンに替わるさらに安全な薬剤が将来開発されるであろうとみています。
■ シントーアリピレス20W乳化剤
シントーアリピレス20W乳化剤について資料を入手しましたので、紹介いたします。
薬剤の種類 木部処理剤 メーカー名(原体) エフエムシー株式会社 メーカー名(製剤) シントーファイン(株) 商品名 シントーアリピレス20W乳化剤 有効成分 ・ビフェントリン 1.0% ・IPBC 8.0% ・テプコナゾール 8.0% 製剤の安全性(ビフェントリン) 経口毒性LD50(ラット) > 500(mg/kg) 経皮毒性LD50(ラット) >2,000(mg/kg) 吸入毒性LD50(ラット) > 5(mg/kg) 原体 皮膚刺激性 弱い刺激性 魚毒性 TLm48 C類相当 蒸気圧 ・ビフェントリン 2.41e−7 hpa@25℃ ・IPBC <2.7e−5 hpa@26℃ ・テプコナゾール 約1e−8 hpa@20℃ 認定 白対協 7234 JWPA A−5332 消防法 非危険物 毒劇性 普通物 剤性 乳剤 臭気 ほとんど無臭 希釈倍率 水20倍 化審法登録 指定化学物質 2−3546
この資料は施工を行った日東エース株式会社さんから入手したものです。
いずれにせよ、ビフェントリンを用いたものにしても全く人に影響がないと考えるのは早計です。今後はさらに人体に影響の少ない薬剤が開発されることを希望します。
■ IPBC
IPBCは、3ヨード−2プロピニルブチルカーバメイト(3−Iodo−2−ProphynylButylCarbamate)の略で、木材の防かび剤です。規制の厳しいアメリカとドイツでも食品包装容器に使えるようになっているとのことです。
■ テプコナゾール
コナゾール系の防蟻薬剤とのことですが、詳しいことは分かりませんでした。
■ LD50
LD50とは、50%半数致死量、つまり一定時間内に実験動物の半数を死亡させる致死量を表します。マウスやラットなどの実験動物に量を変えて毒物を投与し、その半数が死亡した量をLD50としています。
実験動物の種類によって値が大きく変わりますので、LD50を表示する時にはその動物種をきちんと合わせて記載することが大切です。上の資料ではラットで規定しています。
■ JWPA
JWPAは、Japan Wood Preserving Associationの略で、先の公庫仕様書の記述の中に出てきた「日本木材保存協会」のことです。
日本木材保存協会のホームページでは、認定薬剤リストをエクセルファイルで公開しています。このリストを見ると、アリピレス20W乳剤は、確かに認定番号A−5332で平成11年7月21日に認定されていることが確認できました。