私の吹きガラス事始め  その1


吹きガラスに出会う

私が初めて吹きガラスの現場に潜入した時には、まだ普通の
ただの 吹きガラスの見学をする人 でした。
なんのきっかけでかは、今となってはもう思い出せないのですが、
とにかく何でだか、一人でのこのこ吹きガラスの現場に出かけていったのです。
今から、19年前のことでした。
そこは当時まったくの一人でガラスを吹くと言うスタイル
(今の私と同じって言うことですね)
で仕事をされている工房で、
私が現場に到着した時には、まだ仕事は始まっていませんでした。

ま コーヒーでも・・・なんて具合にコーヒーをすすっていると、
「はっ」とか「んっ」とかみたいな、声は出されなかったと思うんだけど、
はたでみていても判るくらいの気合と共に、
吹きガラスの仕事が始まったのでした。

自分がこの仕事をするようになって、その時の私がどんなにずうずうしかったかが、
初めてわかります。
ほんとなら、穴掘って、入っていなくちゃなりません。
殊に最初に吹き始める瞬間、どれくらいの「気」やら「集中力」が必要なことか。

その時はそんなこと知る由もなかったので、コーヒーカップ片手に
ガラスを吹き始める様子を眺めていました。

窯(溶解炉ですね)の前に立ち
パイプ(さお と呼んでいます)にガラスを巻きつける。
息を吹き込む。
吹いたガラスを覗きこむ。
少し冷ます。
更にガラスを巻きつける。
さおを 上に向けたり下に向けたりしながら
息を吹き込む。
さおを持って 椅子(ブロー台 と呼びます)にすわり
大きなピンセットのような物(洋バシ と呼びます)
で あんなことや こんなことをする。
立ちあがり あんなことや こんなことをしたガラスを
窯に入れ、焼き戻す。
別のパイプ(ポンテ あるいは ポンテざおと呼びます)
にガラスを少し巻きつけ、
あんなことやこんなことをしたガラスの底にくっつける。
やすりでちょっとこすって、コン とさおをたたく。
ややっ ガラスがポンテのほうにうつったぞ。
で それを又窯に入れ 焼き戻す。
また ブロー台に戻り 洋バシで
あんなことやこんなことをする。
ややっ 何だか知らんうちに カタチが出来てるぞ。
で それを 別の窯に入れ(徐冷窯 と呼びます)
コン と ポンテざおをたたく。
何にもくっついていないポンテざおだけを持って
窯の前に戻ってくる。

ナニカ すごいことが起きて
何にもないところから
カタチ が生まれた瞬間でした。

作家とガラスとの間にある、緊張感。
そのタイミングでしか存在できない、すごい調和。
カタチを造るという行為と、それを包む 静かな集中力。

ずぼって音がしたかと思うくらいに
ガラスを吹くこと に 私がはまってしまった
瞬間です。

その日は時間を忘れ、フト気が付くと、
辺りは暗くなったりしていました。

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