| 「思いがけず回顧展になってしまったんで申し訳なくて(笑)」 冒頭からいきなり「お詫び」で始まった(笑)今回のインタビュー。こんどうさんのこれまでの作品が一挙に堪能できて、刺激に富んだ展示になっているのですが、その経緯にはいろんな気持ちの流れやタイミングがあったようで。
「人との関係を見直したいし、組み換えたかったっていうのもある展示だと思うんです。今回も新しい作品で全部行こうかと最初は思ってたんですけど、なぜか身体が動かないんですね...いつもと違っておかしいなあと思っていて。たぶん心境や考え方の変化が劇的に起こっているのにも関わらず、昔のやり方で突っ走ろうとしていることへの違和感みたいなものが発生していたんだと思うんですよ。木版画家として6、7年やってきたんですけれども、その中の過程で『何を取捨選択するか』を一回省みる時期に来ているような気がして。なので今回は墨を使っていた初期の作品も思いきって展示してます。中でも『武蔵野エレジー』っていう大きい作品があるんですけど、あれなんかもう大きさとか物理的な面もあって二度と出すまいと思っていた作品なんですね。でも、この作品を敢えて出したことは自分の気持ちの移り変わりをきちんと把握したいって気持ちを特に象徴したと思います。今回の展示を例えるなら『おもちゃ箱』だって思うんですけど、いろんな時期の作品を一堂に出すことで、私は変わらない自分の本質を見たかったんでしょうね」
−アーティストとしての芯になっている部分の再確認。
「そうですね、まさにその言葉だと思います。たとえるなら時計の文字盤の1から12までの数のうちで欠けてるのがあるんじゃないかって気がしたんですよ。これまで着色の少ない初期からカラフルな色使いの現在までいろいろやってきてるんですけど、ひょっとしたら3が抜けてるかも、とか7が抜けてるかも、ということを無意識に意識し始めちゃっているんじゃないか、って感じるんですね。だから一堂に並べた中で『あ、そういえばこの展開をやってなかったな』というのを見つけたかったという、ある意味メンテナンス作業でもあると思います。」
−観る側からしてみると、ないものを期待するというか、その続きが期待できるような感じになってるかも知れないですね。
「そうですね。あとは、私の作品を観てきてくれた人が何を感じてくれるかを率直に知りたい、というのもあったかも。回顧展にすると決めてすごく意外だったのが、みんな新作を観たがると思ってたのに、過去の作品を観たいって人が意外に多かったことなんです。過去も未来も一緒くたのごちゃごちゃな展示をするってことは実は私の中でいちばん許せないことだったんですよ。ひとつの展示に対して、タイトルを決めて、それに沿ってひとつのテーマで押していく...私は展示するにあたって、まず展示会場はインスタレーション的に1作品として捉えられるべしと考えていたし、さらにひとつひとつの作品としても記憶に残るものでありたいっていう、一つで二つを求めていたんですね。『こんどうあや次はどんな展開で行くの?』という期待に応えられるように、いつも楽しんで見せようっていうエンターテイナーっぽい自分が常にいたんですけど、そうじゃなくてもいいのかな、っていう割り切りも出来たんでしょうね。混沌としてても私は、私、みたいな」
「今回もアトリエの空気感を引き続き見せているんですけど、それは、前回の「Marian Bootleg」が自分の中の言葉とか感情面で現される私のアトリエであれば、今回の展示はひょっとしたら実際に作業している人間としてのこんどうあや、という割り切った思い...『仕事場』(を提示している)という感覚にすごく近いかも知れないですね。あと、知り合いの作家でいろんな人が自由にアトリエに出入りできるようにしてる方がいて、あ、そういう開けっ広げで、というのもいいんじゃないかな、とも思ったんです」
−前回のがイメージが具現化される感じだったのが、今回のを見るとそれがさらにはっきり分かる感じがしますね。
「両方合わさってやっと私なんでしょうね、きっと。前回はアトリエの中を満たしている私の考え方、思考回路だったりとかそういうものが出ていて、今回は、私のアトリエで作っている実際にある作品で固められていて。どっちも内面を通して出てきたものには変わりはないんですけど、そういう違いがあるかも知れないですね。で、内と外との調和を求めつつ、しかも新しい作風の世界に飛び出していくため、という意味をこめるかのように「BAROQUE PIANICA」っていうタイトルになったんだと思うんですよ。「バロック」って歪んだ真珠って意味なんですけど、そのときそのときの自分のリアリティギリギリのところで『これは絶対に今の自分だ』ということを確認しながら作ってきた作品を、時系列に並べるんじゃなくて空間を埋めるパズルのように並べていったので、それでちょっと空間に『歪み』が出ている。その歪みの感じを私も会場に何度も足を運んだり、観に来てくれる人といろいろ話したりすることで、自分の中で取捨選択すべきものは何なのかということを知っていくと思ってます」
−今回の展示で、こんどうさん自身もいろいろと見つけていくという。
「そうですね。そうなっちゃうかもしれない」
B Galleryでは階段に設置されているショーケースも展示スペースとなっているのですが、今回の展示では、それぞれの棚に音楽をテーマにした版画が飾られていて、そちらも見どころのひとつになっています。
「この次の展開として、コラボレーションするんだったら、CDのジャケットとか、音楽的な要素と絡んで何かできたらいいなあ、という欲がでてきたんです。それで(階段の)あの棚たちは音楽でまとめてみようか、と。『お仕事ください!』みたいな(笑)」
−ちょっとした『こんどうあやプレゼンテーション』ですね(笑)。
「そうですね(笑)」
(2/18、B Galleryにて) |