今回の展示では発表される作品はすべてタブロー作品、すなわち平面作品でかつ複製不可なもの、とのこと。そういうなかで、平面のスペシャリストもいれば、工芸作家、映像作家など、普段は平面作品を制作しないアーティストもいて、そういったさまざまな個性がそれぞれ独自の解釈で平面作品を発表しているのはホントに面白い!
C-DEPOTのメンバーのうち21名が参加した今回のタブロー展、これだけバリエーショ
ンに富んでいながらも、クオリティが高いところで統一されているので散漫な感じはせず、それぞれの個性を楽しめました。
特に注目しているアーティストグループなので、全作品のレビューです。
・奥村恵里「朝顔」
ダイヤモンド型に配置されたドットで構成された黄色い朝顔の絵。ユニークな模様が入ったグレーの背景、緑の葉、黒の稜線。いかにもデジタルチックな平面的な質感と、見方を変えるとグラフィック的な奥行きも感じられて面白いです。
・青木伸介「森に眠る日」
2点組の漆を使った作品(研ぎだし蒔絵)。それぞれの画面にゼブラとヒョウが描かれ、向かい合うように配置されています。漆と金銀の粉で描かれたゼブラとヒョウの顔、貝で現された青い目には何頭の深遠なものを感じます。素材からくる深み、箔による流線が織り込まれた背景も印象的です。
・佐野絢子「ふわふわ」
すりガラスに金属泥を用いて描かれた、野菊を模したような花の絵。ひょろりとした茎に花がつき、そこから上へと向かって泡のような丸いものがぷかぷかと。すりガラスの半透明さが効いていて、そこから感じられる奥行きがかなりユニークです。
・日根野裕美「アネモネの剥製」
オレンジが広がる画面、手前にはさまざまな色彩でふわりと咲くアネモネが6輪。その後ろには、仰向けに横たわる女性。日根野さん独特の幻想的な世界が画面いっぱいに展開しています。
・青山健一「ヒヤシンス」「すずらん」
控えめな立体感のある画面。ピンクの背景にすずらん、水色の背景にヒヤシンス。花のかわいらしさが際立つ爽やかな作品で、それぞれひとつの茎にたくさんの花がついていますが、その花ひとつひとつが、ぽっと明かりが灯るような優しい色彩で描かれているのも良い感じです。
・島名毅「d
-ash-」「d -r-」
人形作家の島名さんが描くタブローは、アクリル画で、荒廃した質感の背景にそれぞれ人形が横たわっている絵です。前者は手前に転がっている部品も生々しく、生命が宿っているような青い目も印象的、後者は憂いを帯びた表情と、投げ出されたように広がる赤い髪が目を引きます。絵にすることで、登場する人形に物語が附随した感じです。
・森住武志「自筆再現#008」「自筆再現#007」
厚めのパネルに白の下地が施され、そこにエンジ色の線で描かれたラフスケッチ。#008には砂煙りをたてて走る車、#007はもっとラフで、4コマの絵。浮かんだイメージを絵にするその瞬発性が伝わってきます。もっといっぱい並べて観てみたい気がします。
・桑山佳代子「祈り(虹に烏賊)」
「祈り(流れ星)」
キャンバスボードに油彩の作品で、ふたつの作品には手を合わせる女の子が登場しています。前者には 刷毛でざっと触れたような虹と目つきがコミカルな烏賊が、後者は夜、ぼうっと光る星空にひとつだけほうき星。すぐにでも物語がついてきそうな、絵本の一場面のようでもあり、大人っぽくもあり。深いです。
・野口都「REVEL」
コルクの板に描かれたトランプの絵柄。Queenのみ女性、あとのAce、King、Jackには山羊が描かれています。Aceに描かれた剣、その他のには鍵盤や百合の花などが挿入されていて、大人のファンタジーといった雰囲気が印象的です。
・八木沢優記「M36」
透明アクリル板にラミネートされた白のパネルには、鉛筆で描かれた拳銃の絵。シンプルですが、それだけ余計に「もの」の質感が伝わってきます。
・吉野貴隆「宝珠小槌漆吉祥文」
こちらも漆を使った作品。箱型の額に円形のパネルに描かれた漆絵が2点、横に並んでいます。左に小槌、右に宝珠。それぞれの絵のていねいさや細やかさ、漆の黒の美しさ。そしてそれらが箱に収まった感じからくる安心感が心地よいです。
・天野由美子「wardrobe」
天野さんといえば「アリクイ」。今回は白のスクエアな画面に8頭のアリクイが手を繋いで4列に横に並んだ絵。赤の稜線と、グレーで軽く付けられた影が白の背景からアリクイたちが浮き上がって見え、さらにアリクイの体が抜き絵のようになっていて、何かしらの絵が現れているのも面白いです。
・安立喬「構成
060312」
この展示の中においてかなり異色。画面中央より若干上に放射状に線が入った黄色いリング。その中心を起点に数本の線が走っていて、画面下方にも黄色の長方形が。かなり抽象的なコンポジションですが、俯瞰のイメージなのかも、と思ったり。
・杉山治「sky」
キャンバスに描かれたハッピーでアッパーな色彩とかたちがとにかく楽しい!キミドリの森のシルエット、モリモリと湧く雲。ブルーの空には大きく弧を描く虹と、散らばる五角形の星。雲の切れ間からも虹色が。部分的に雑な仕上がりになっているところが、この絵のポップさと相まって逆にアバンギャルドな風味さえ感じる面白味も。
・根本尚明「CONSENTRATION」
「そうきたか!」と思わずにはいられない、ファンキーな掛け軸。貼られた紙の左手にはカラフルなラインが縦に走り、その線上の下方には女の顔。そして右手には実に堂々とした「根本尚明書」の聿書きが。「なんだこりゃ?!」と思った瞬間にこちらが負け、そんなインパクトの強い作品です。
・名古屋剛志「金魚図」
このところ深遠な雰囲気の作品の発表が続いた名古屋さん、今回は打って変わっていかにも日本画らしい主題、2匹の泳ぐ金魚を描いた縦長の作品。画面の上と下とで優雅に泳ぐ金魚の紅白の鮮やかさが、むしろ海を思わせる濃くて明るいブルーに映えます。また新たな名古屋さんの一面を発見したような嬉しさが。
・安岡亜蘭「Chin」
縦長の画面にアクリルガッシュで描かれた作品。ちょっとざらついた真っ白の背景、等幅の稜線の効果でメカニカルな感じのする犬の正面の姿が画面上方に。そこから画面右側を下へと向かう線上に咲く赤い花の鮮やかさが際立っています。無条件にかっこいい絵です。
・野地美樹子「栞」
「樹木」シリーズの作品。絶妙な間隔で並ぶ木々、さまざまな樹皮の色彩も優しく、枝に残る紅葉は軟らかい光を放っているような。秋の夕刻の気配を思わせる空のグラデーションの渋い鮮やかさと、その奥に佇むように配置された白い上弦の月も美しいのです。
・瀧下和之(from
GRAPP)「桃太郎図ノ弐百九拾四・サクラサク」
おなじみの桃太郎シリーズ、今回は季節にぴったりのお花見がテーマ。赤鬼4体がそれぞれ桜の枝やとっくり、金棒、スルメイカを持って、その1体の足に噛み付く犬。相変わらずの無礼講ぶりはホントに楽しくて、画面上方に広がる満開の桜もその花びらのかたちさえも何となくコミカルに思えてきます。
・金丸悠児「或ルサカナ」
いつもと違う雰囲気、でもいつもと同じくらいに個性的。今回の金丸さんの作品は、目の粗い布、ガーゼ、英文が印刷された紙が貼られたパネルに、大きな口と目、立体的なヒレがコミカルなヒラメが描かれています。透明パネルケースの額も新鮮です。これまでの作品といっしょに並べて観たらどんな感じがするだろう...。
・大竹美佳「ユメミルウサギハネウサギ」
ほとんど立体作品です、壁にかけられているのでなんとかギリギリセーフ(笑)。2点あって、円形の画面にそれとは中心が若干上に設定された円とで構成された、月を模したリングの上に、変わった耳のかたちをしたウサギが寝そべっているかわいい作品です。
C-DEPOT、次は夏だ! |