展力 -Exhibition Schedule-
3月 March
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村上萌 個展                                                        
版のかたち                                                      
太湯雅晴展interview up                                                  
小西 真奈                                                        
モダン・ガーデン 高橋浩規 日本画展                                                        
−もうひとつの世界− 阿部 穣 展                                                      
増山麗奈 個展「DANGER! JAPAN」                                                        
第12回 ミニアチュールとガラス絵展                                                  
池永康晟展                                                      
宮井啓江展                                                        
芹田紀恵展                                                    
C-DEPOT tableau                                                        
大竹 敦人展                                                        
グループ展「ラントシャフト」                                                
 
加藤怜子展                                                        
TAKESHI KIMURA EXHIBITION                                                        
早川知加子展                                                        
 
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「Recommend & Review」では、これから始まる(始まっている)展覧会の中で、面白そうだったり興味があるもの、オススメの展覧会をピックアップしてご紹介していきます。
(随時更新[毎週月曜定期更新]、記事担当:幕内政治 Masaharu MAKUUCHI)

村上萌 個展『むらかみもえ』
銀座Aエリア 3/20-3/26 11:00-19:00 ギンザ幸伸ギャラリー Googleマップ
 
目が大きな女の子のキャラクターの鉛筆画の展示です。いろんな表情のキャラクターがそれぞれの画面に描かれているのですが、それがモノクロームのためにシックで、どことなく大人っぽいファンタジー、といった感じになっています。細やかな鉛筆の線によるグラデーションもていねいで印象的。また、作品の展示と合わせて、銀色に彩色されたフェイクの花々が壁や床に配置されていて、これらのメタリックな無彩色の硬質な色彩感が、鉛筆画の質感と相まって独特な空間の演出に一役買っています。

版のかたち 小保方祥子・豊泉綾乃・斉藤里香
銀座Bエリア 3/13-3/25
11:30-18:30
(L-17:30)
日休
ギャラリーなつか Googleマップ
 
3名の女性の版画家によるグループ展です。
まず、今年のVOCA展にも出展されている豊泉綾乃さんの銅版画。正面の壁に4版を使用した大きな作品と、小品が数点展示されています。一見して何もない画面のなかで、モノクロームの微妙なグラデーションによって記憶の奥の風景が再現されたような、不思議と落ち着く静かな作品。大きな画面だと精神が沈みこむような世界がより雄大に提示され、ちいさな作品だと風景のイメージがより具体的に浮かび上がるような感じです。
斉藤里香さんは、力強い抽象の木版画。最初に拝見した時はリトグラフかと思ったほど、ざっくりとした色の配置と質感。同じ色を重ねるといった手法も用い、茶色やグレ−、黒で、熱を帯びたような濃い色彩感で実に重量感のある光景をつくり出しています。この版で空間を埋め尽くして、もっとダイレクトに圧倒されたいというような気持ちにも。
小保方祥子さんは、花のつぼみを模したような作品。白の紙にワンポイントで、画面の空間に不思議な安定を与えていました。

第24回グラフィックアート『ひとつぼ展』 グランプリ受賞者個展  太湯雅晴展
「知らんと欲するすべてに広く告げる これなる紙片は千クローネの価値あるものなり。 その確かなる担保として保証されるは 皇帝御領に広く埋蔵されたる無限の財宝なり。いまや豊かなる宝が即座に掘り出され 本紙片と兌換さるべく事は準備されたり」
銀座Aエリア 3/20-3/30 11:00-19:00
(水-20:30)
土/日/祝休
ガーディアン・ガーデン Googleマップ
刑法の第十六章に「通貨偽造の罪」というのがある。まあ「ニセ札は作っちゃダメよ、作ったら捕まえるよ」という法律なわけだが、太湯氏はアートの目的でオリジナルの紙幣を作って「ひとつぼ展」に捕まり、この1週間強、銀座のガーディアン・ガーデンに収監されることになった模様...て、おい。
そのデザインだけでなく、額面までもがとにかくシュールな作品で、フェイクの札束によるファンキーなインスタレーションになるんじゃないか、と期待している次第です。
 
 
ああもう最高(笑)。
展示スペースに足を踏み入れた瞬間から膝の力が抜けるシュールな光景が。「零円」だとか「√-1円」だとか壁にはさまざまなオリジナルのお札が刷られた紙が吊るされ、床には同様にお札が刷られた太いロール。さらに、3000枚も積み上げられた裁断前のお札(もちろん太湯券)、1万円札の巨大なフェイク(肝心なところはちゃんと太湯バージョン)、さらには「π」を果てしなく算出して額面に記載した異様に長い「π円札」。壁の長さが足りずに、それらを繋げて展示できなかったという代物。そして各ポイントに配置された警備員、のかたちをしたドイツのフレイザー社のミニチュアの警備員がしっかりと目を光らせてますっておい。
とにかく個々まで徹底されると無条件で「あっぱれ」です。
 
 
−なんでまた、こういう作品を作ろうと思われたんですか?

「このシリーズを作りはじめたのはだいたい3年くらい前です。自分の価値を測る物差しを作ろうと考えました。それまで作っていたインスタレーション系の作品のウケが芳しくなかったというのが主な理由です。自分の作品を物差しにしようと考えて、いちばん最初に作ったのがあの『零円』です。最初は自分の作品の価値はゼロだろうと思って、ゼロからのスタートという意味も込めて。で、人に見せたらどんな反応をするかな、と思ってたらそこそこ受けた(笑)。『あ、これいけるんじゃないかな』と思って、じゃあゼロ以外の数字も入れてみようかな、と。で、ただ入れるんじゃなくて、通常の通貨では使われることのない、無理数だとか虚数だとか、普通の数じゃない数を入れたほうが、物差しとしての曖昧さ、美術作品が持つ商品としての価値の曖昧さを表現できるんじゃないかと…そんな感じで3年間」

−(笑)。

「赤瀬川原平さんも『零円』っていうのを作っているんですよ。で、こういう作品を作ってるとしょっちゅう赤瀬川さんの名前を出されます、だったらあの人の作品なら知ってるよというつもりで同じモノを作っておこう、と」

−赤瀬川さんの零円をそのまま…。

「そうです。ほぼ。あの方は肖像の顔の部分だけをくり抜いているんで、僕もくり抜いて(笑)」

−でも特に赤瀬川さんの作品があってからというわけではなくて、コンセプト自体はオリジナルなんですよね。

「そうですね、あの方の場合は、元々ある既存の価値を拾いあげて、というやり方ですね。僕の場合その逆で、ないところから作っていくって感じで始めたんです」

−あの頃だと世間に対するアンチテーゼみたいなのがあるけど、太湯さんの場合は単純に面白いことやってやろうという(笑)。

「そうそう(笑)」

−でもその辺はやっぱり今の感覚というか…難しいこと抜きにして、面白いことをやってやろうというのは、すごく『今』な感じだと思うんですよ。ひとつぼ展で拝見した時から、お札であることの意味は関係なしに『くっだらね〜(笑)』って嬉しくてしょうがなかったって感じなので。それがこうやって、ひとつの空間がフェイクのお札で占められると、入っただけでもなんかこう、膝の関節が緩むような感じなんですけど(笑)。で、やっぱり数学とか好きだったんですか?

「あんまり(笑)。作り始めて数字が面白いことに気付いていった感じで。虚数や無理数の存在は、忘れてたというよりも、知りませんでしたね(笑)。一生懸命面白いネタないかなと思ってカチカチ、インターネットで探してたら虚数が出てきて、無理数も出てきて。こんな数字まであったんだ、と」

−肖像がに使われているのは、ご自分だけなんですか?

「自分が多いですね。あとは友達とか飼い猫です。自分の作品なので、登場するのは基本的に身近な人たちです。模様の素材もいろんなところから」

−それにしても細かい作業ですよね。

「このシリーズに関していえば、売りのひとつが『目の細かさ』です。人の目を惹く要素のひとつになり得ると考えているので、だったらすごく細かくしようかなと。描かれてる線は一本一本すべて、AdobeのIllustratorを使って、マウスでカチカチと、ソフトで拡大縮小しながらひたすら手描きです」

−その徹底さがいいんだと思うんですよ。『お札にしました』だけだと『ああそうですか』で終わるんですけど、『ここまでやりますか!』ってくらいに精密に描き込まれているのが逆に面白いじゃないですか。無駄な労力が笑えるっていうのがあって、そのシュールさがまた堪らなかったりするんですけれども。あと、お札に使われているのに丸首のシャツを着てたり、襟が開いてたり…。

「もうちょっとちゃんとした格好すればいいんですけれどね(笑)」

−そこで詰めが甘いところもまたいいんですよ(笑)。使われている紙は特別なものなんですか?

「これはですね、普通の紙、そこら辺に売ってる紙です。それをロールで買ってます。展示してあるのがそうなんですが、あそこからぜんぜん減らないんですけど(笑)。 このロールの幅に対応したプリンターを持っていて、それで全部印刷したんです。業者さんにお願いするととんでもないお金がかかっちゃうんですよ。この幅で1m1万円くらい。それぞれのパターンで6m分印刷してるんで、これ1本で6万円くらいになるわけですよね、印刷屋さんにお願いすると。それが全部で12本なんで、60万越えます」

−この中央に積み上がっているのは3000枚とおっしゃってましたよね。これもご自分でプリントアウトされたんですか?

「これはオフセットで、業者さんに。これはさすがに家ではできないです」

−これ、全部印刷されてるんですか?

「はい、こんな感じで(といって積み上がった紙をめくって見せていただく)」

−あ、ほんとだ(笑)、裏まで(笑)。額面が無限円ってことは、出世した、と。

「出世したのかな…(笑)」

−このお札のデザインは、本物をある程度参考にして。

「そうですね、これは特に伊藤博文の1000円を。模様はトレースですね。この地紋もそのまま使ってますし。で、ホントは桜が入ってるんですけど、それはちょっとヤバいかなと思って、その部分だけオリジナルです」

−この『π円』は…お札って呼んでいいのかってところから気になるんですけど、これはどこから始まるんですか?

「これはですね、いちばん下のいちばん左側から3.14なんとかかんとかと始まって、ずーっといって2段目3段目といって、とりあえずあそこで終わるんです。1段が20m、合計で60m」

−これ3枚で1枚のお札。

「そうです(笑)。展示してある壁面が8mしかないので、残りの12m分は端で巻いてあります。全部をお見せするには壁が足りなくて(笑)」

−いちばん最後にあの顔、肖像がでてくる。

「そうです。数字としてはまだまだ続いてるはずですけど、きりがないので(笑)」

−ちなみに何桁なんですか?

「これは、3000万桁です。1段で1000万桁」

−(汗)。あちらの床置きのロールの『π円』は、イメージとしてはロールの端まで 続いてる。

「そうです。あんまりそこは深く突かれると困るところなんですけど(笑)」

−逆に安心なんですけど(笑)、イメージは伝わりますよね。

「種を明かしてしまうとみんな『なーんだ』みたいな顔されてしまいます(笑)」

−背景が金色になっている作品は…

「紙幣は昔は金銀と兌換できるという安心感の元で流通していたんですけど、今はそれが出来なくなって、かわりに『信用』でのみ通用してしまっているんですね。だから物としては紙切れでしかない紙幣を金紙の上に印刷してみせることで、あたかもそれらしい紛い物の安心感を表現したかったんです。ところでこの紙はもう手に入らないんですよ、作ってた業者さんが製造中止にしちゃって。たぶんあれで最後の作品です。もともとあの紙ってチョコレートやキャラメルの包み紙に使う紙なんですよ。で、その上にインクジェット用のコーティングをして、印刷できるように販売したらしいです」

−しばらくはこれでいろんなシリーズを続けていかれるんですか?

「そろそろ次の展開に入ろうかな、と思っているんですよ。これを使って街中に出ようかな、と。実際に使ってみて、ドキュメントタッチの写真を撮ってみようかな、と。捕まらない程度にですけど(笑)」

−ちょっと心配な気もしますが…(笑)。

「友達の外人に1枚あげたことがあって。その友達が、駅まで他の友達を呼びに行ったんですよ。で、帰ってくる途中におまわりさんに捕まっちゃったらしくて、『滞在ビザ見せろ』と。で、財布を出したらビザを持ってない。『じゃあ、財布の中見せろ』ということになって渡したら、僕の作品が出てきて。『何だこれは!』と(笑)。 『マイフレンズアートワークス!』って訴えて、泣きながら帰ってきました(笑)」

−ずいぶん罪作りな作品ですね(笑)。

(3/25、ガーディアン・ガーデンにて)


小西 真奈
銀座Dエリア 3/20-3/25 12:00-19:00 (L-17:00)
日休
Space Kobo & Tomo Googleマップ
今年のVOCAでの主役であり、これまでも個展やオペラシティアートギャラリーの「PROJECT N」でもピックアップされている小西真奈さんの個展が奥野ビルの地下にあるちいさなホワイトキューブ「Kobo & Tomo」で開催されます。ふわっと広がる緑いっぱいの風景、何となく懐かしい想い出を惹起するような、それでいてなぜか未来的な感触も伝わってくる油彩の作品。VOCAでの大作と合わせてぜひ。
 
嬉しくなるような瑞々しさ!
正面の壁に大きな作品が1点、その他の壁と事務所の壁に小品や比較的小さめの画面の作品が展示されています。
描かれる風景のグリーンとブルーの鮮やかさがとにかく感動的です。時間をかけずに描かれたような筆の流れがはっきりと伺えるほど、ざっと配色されているのですが、それは充分に、たとえその絵の風景を実際に知らなくても、記憶のなかからイメージが蘇って浮かんでくるような感じがします。森の絵の作品では、霧がかかったような瑞々しさが充満しているし、海辺の絵では潮の香りや乾いた空気が海からの湿気を吸収する感じさえも伝わってきます。過去の記憶を惹起しつつ、同時にすごく新しい感じ、コンテンポラリーな感触もあるのです。
画面の中に登場する人が、以前の作品と比べて小さく描かれていることも、作品にスケールの大きな奥行きを出すのに大いに貢献しているように思えます。気分もフレッシュになれる、素敵な空間です。

モダン・ガーデン 高橋浩規 日本画展
その他エリア 3/21-3/27 10:00-20:00(L-16:00) 所沢西武百貨店7階美術画廊 Googleマップ
絶妙な繊細さ...高橋さんの作品を拝見すると、まずその繊細な色彩で描かれる世界に引き込まれます。それも、描かれるものが本来持っているのとはまったく別の配色で、しかしそのことに対して違和感を感じさせず、どこまでも先の時間を見定めたような達観した視線と、絶妙なバランスで均衡が保たれているような鮮やかな色彩感が印象に残ります。あらためて、岩絵の具が持つ『色』そのものの美しさを堪能できます。
 
はなのいろ、ふわり。
今回出展された作品は、1点を除いた全てが花を主題にした作品です。紫陽花、椿、蓮、菊、薔薇、チューリップ、そして花菖蒲...他にもさまざまな花がそれぞれの画面のなかで優雅に、繊細に咲いています。清々しい白銀、あるいはやさしいセピア色が舞い散るようなしっとりとしたグラデーションの背景、本来の色から薄茶色やあざやかな青に置き換えられた葉や茎、渋目の銀色の額。それらの脇役に引き立てられて、よりいっそう花の色彩が鮮明に、爽やかに感じられます。
一点一点じっくりと観た後、退いて空間全体を見渡したときの、「こんなにも色彩感に溢れてたんだ。。。」という感嘆も。そして観終った後のふっと心が安らぐような後味のよさ。

−もうひとつの世界− 阿部 穣 展
銀座Aエリア 3/22-4/1 11:00-19:00
日休
ギャラリー白石 Googleマップ
 
神々しさと、ユーモアと。
阿部さんの作品には、蛙、金魚、鯉、象や猿などといったいろんな生物が登場します。キャンバスに岩絵の具、さらに膠での盛り上げによって、金魚や鯉の鱗はひとつひとつが作り込まれていて、さらに画面の凹部からひっそりと浮かび上がるように現れる金色が、全体の印象をぐっと渋くさせているように感じられます。また、作品によってふたつの生き物が同じ作品に登場したときの組みあわせのおもしろさも。スケールが大きな大作と生き物の仕草が味わい深い小品。それぞれの世界を楽しみたいです。
 
ギャラリー白石の2階フロアと階段での展示が阿部さんの個展となっています。
2階に入るとまず、正面の壁に唯一展示されている象と猿が描かれた作品が目に飛び込んできます。ごつごつとした黒い皮の象はどこか達観したような穏やかな表情で、その太くて長い鼻の上でなぜか猿がしゃがんで、あさっての方向に視線を投げています。そしてその2匹の動物の織り成す神妙で滑稽な雰囲気を、ゆったりと広がる雲がさらに深遠なものにしていきます。こんな具合に神妙さと滑稽さとがなんともいえないバランスで入っているのが阿部さんの画の面白いところのひとつ。他に、雲の上で戯れている兎、指先にとまるとんぼを眺めている猿の無垢な表情、金魚と蛙の競演など。他に鯉や亀を描いた作品も独特の風味があります。
阿部さんの作品は、キャンバスに岩絵の具というありそうであまり見かけない組み合わせで、下地の丈夫さを活かして、膠でていねいに盛り上げてできる立体的な表現、削って得られる画面のちょっと荒れた感じが演出する味わい深さといった見どころも多く、絵の世界と合わせてその独特な世界にじっくりと浸ることができます。
 
−阿部さんの作品って、芸大のデザイン科を修了されている方らしく、いわゆる日本画だけをなさってる方が思い付かないような画風があるように感じます。

「デザイン科ってホントに『なんでもあり』なところなので、絵そのものもなんでもありって感じになる傾向がありますね。使う絵の具も人によってさまざまで、僕自身もいい感じが出る顔料をいろいろ探したので」

−最初から岩絵の具っていうわけではなくて。

「最初はアクリル絵の具をよく使ってて、学部の頃はまったくアクリル絵の具だけで。で、こういう具象は描いてなくて、むしろ精神的な、というか、抽象的なものが結構好きで。けっこう暗い感じだったんですけどね。大学院に入ってから、ちょっと自分の好きなものを描いてみようって(笑)」

−では、支持体も最初はキャンバスではなかったんですか?

「いろいろやりましたね。綿の布や、もっと粗い麻の布、もちろん和紙も使ってましたし。和紙の時代は結構長かったかな。途中で削ったりするようになって、和紙だと耐久性がちょっと心配で、それでキャンバスに」

−キャンバスだと、引っ掻いて剥がした時の質感も布の織り目がうまい具合に出てきたり、そういう面白さもありますね。膠や揉み紙で作る質感とはまたちょっと違った感じがあって。キャンバスはそのまま使用されているんですか?

「キャンバスにはジェッソなどの下地が塗ってあるので、それを裏返しにして使ってます。そのままだと顔料が画面に乗らないので。イメージとしては生(無加工)のキャンバスなのですが、本物の生だとそこに膠だけが染み込んで絵の具が浮いちゃう感じで、余計に顔料が乗らないんですよ。裏に一層あるとそこで食い止められるんですね、この使い方はこれでちゃんと意味があるんです(笑)」
「キャンバスだと、下手にやると割れるんですよね、膠が。そこで割れない工夫、処理をしないといけない。膠って湿度でけっこう収縮するんです、それにキャンバスだとついてこれないんですよ。和紙だといっしょについてくるんですけど、キャンバスだと伸び縮み具合が違うんで、それで割れてきちゃうんですよね。特に僕の場合、ジェッソなどが塗ってあるものを使っていう、というのもあるし」

−布だとけっこう伸縮には柔軟なイメージがあるんですが...難しいんですね。

「そうですね。昔は、やってみてバキバキに割れて、『これはだめだ...』と思って諦めかけたんですけど、それでも割れないようにするにはどうしたらいいかを考えて」
「今は、いちばん下(下地)には膠とアクリルのメディウムを混ぜているんですよ。アクリルのメディウムだけだとその上から塗ったものが割れてきてしまうので、混ぜて使うことで伸び縮みも、耐久性も出てくるんですよね。とにかくいちばん下がしっかりしてないことには...表面はちょっと無理しても、そう簡単には割れないんですよ。だいたい下から割れてくるんで。剥落するのもいちばん下からで、取れる時は根元からごっそりと。逆に、いちばん下さえしっかりしてれば上は膠でも大丈夫」

−その辺の苦労話は、いろいろ興味深いです。

「大学院の頃はもう失敗だらけでしたからね。バキバキに割れちゃったり、全部流れ落ちちゃったりとか。せっかく描いたのがぼろぼろになってたり(笑)」

−気に入ってても、残せなかった作品がけっこうある...。

「そうですね」

−それでも諦めずになんとか。

「大学院の時は大量に絵の具を使ったし、そういう無駄がいっぱいあったんで」

−こういう質感による表現の仕方は、どなたかからの影響があったのですか?

「好きなコラージュアーティストがいて、イギリスの作家でイアン・ウォルトンっていうんですけど、いろんな廃材を組み合わせたり、金属やセメントを使ってみたり、『半立体』といった感じで。このアーティストの絵の質感がすごく好きで、これと自分が持っているイメージとをうまく合わせられないかな、と。ラッセル.ミルズも似た感じで好きですね」
「けっこう立体も好きで、学部生の頃は立体作品も作ってて。いろんな素材の材質感っていうのが好きで...デザイン科だといろいろやれたんですね。学部の後半になるとさっき言ったようにちょっとシュールなものになっていって」

−膠で盛り上げる表現も、そういう立体的なイメージがあるんですね。

「そうですね。そういう質感を出したいと。ちょっと荒れた感じ、そういうものの内側にあるかっこいい感じとか」

−描かれる題材が、その組み合わせこそユニークでも、比較的オーソドックスなものですよね。

「身近なものですね。生き物は好きなんですよ(笑)、単純に。魚も好きで...描きやすいんですよね、描きやすいしイメージしやすくて。で、小さい頃から魚を捕って遊んでたんで、魚を何度も掴んで持った感覚が残っているからすごく描きやすいんですね。触感を知っているとぜんぜん違います。だから逆に、鳥なんかは難しいですね。たまに孔雀とか鶴を描くんですけど、もう何度もスケッチしてやらないと。魚はもう、スケッチしなくてもやれるんですけど(笑)、体で覚えてるんで」

−猿とか象とかもけっこうイメージで、それなりに、鳥を描く時と似たような苦労がある。

「そうですね...象や猿はまだ哺乳類で分かるんですけど、鳥って分からないですね、なんか不思議ですよね、空飛べるから(笑)」

−そうですよね、飛んでるんですもんね。

「だからやっぱり難しいんですよね」

−組み合わせるのに、物語じゃないですけど、ストーリーっぽいのは入れてたりはするんですか?

「あまり深くは考えないようにしてるんですけど、まあ、『こんな感じかな?』っていう」

−ちょっとここに猿がいると面白いかな、っていう。

「かなり感覚的なものですね」

−大陸的な雰囲気も感じつつ、色彩や質感の深さとは裏腹に、軽さというか、楽しい感じがあるのが不思議で面白いなっていうのがあるんですよ。ちょっと『クスッ』ってしちゃうところや『あらっ』とコミカルに感じるところ、こういう要素がさりげなく織り込まれてたりするのがすごく好きなんです。

「けっこう釣りも好きで、釣りに行くと、意外とそういう場面ってあるんですよ。まあさすがに象と猿の絵みたいなのはないけど(笑)、生き物の『人間的』な行動とか、そういう一面がたまに見えるんですよね、自然の中にいくと。動物園とかそういうところだとよく分からないですけど、自然の中だと見つかって。で、そういう生き物も、例えば花が花であることとか、そういうことを全部分かってるんですよね。これがどういうものであるとか、そういうものを分かってて、そういう行動をしてるんだなと思うと、やっぱりそこからいろいろイメージは湧いてきますね」

−案外シュールな光景なのかもしれないですけど、画面で見ると自然なんですよね、『あるかもしれない』というか、逆にあったら楽しいとか。

「そうですね、あったらいいな、みたいな感じですよね」

−それがこの独特の、キャンバスに岩絵の具っていうので描かれて、渋さもありつつ、面白さもありつつ。ほんとこの象に猿なんかも、すごく深そうで、『ちょっと待てよ!』という。

「『そこには乗らないだろ!』みたいな(笑)。まあ、そういうものが描いていて楽しいんですよね。いろいろ想像して...やはり単体だけだと、絵の世界に入り込めないところもあるし」

−組み合わせで面白さを出すほうが描きやすい。

「そう、自分でも楽しいし、ひとつひとつの生き物に愛着を持って描けるっていうか。蛙も、金魚がいるからああいう向きにできるんであって、蛙だけ描いたら、ああいう表情とかは描こうとは思えない」

−金魚の二枚目なところがあるから蛙の三枚目なところをおし出せるっていう。

「そういう描きやすさもありますね」

−しばらくはこういう動物のテーマを続けていかれるんですか?

「そうですね、こういう感じで。変わるとしても、いきなりがーっと劇的に、ということはないと思いますね。徐々に変わっていくと思うし、描き方も以前と比べてもぜんぜん変わってきてるし」

−こういうキャンバスに岩絵の具っていうのを始められてからも、どんどん変わっている...。

「そうですね。こういうヤスリで削り出していく、というのは2年くらい前からで。その前までは普通に下絵を描いていって上から岩絵の具でとかだったので、こういう感じで削ったりはしてなかったですね。まあ、いろいろ研究しながら」

−こういう象と猿の作品を観てると、こういうのの連作を観てみたい気がします。

「これじゃないんだけど、50号の細長い画面ので連作があって。象と猿のがあって、孔雀と亀、鶴と猿、虫がいっぱいいるもの...雲があって、そういう雰囲気で統一してやってたんですけど。こういった連作をたまに作ってみて、何十年後かに全部並べたいな、と」

−何十年後といわず、お願いします(笑)。

「(笑)。絵を描くのって大変で...好きなことをやっているという意味では大変じゃないですけど、プレッシャーというか、本当にやっていけるんだろうか、というのはあって。でも、続けていけばなんとかなっていくもので、ではモチベーションを保ちつつ続けるためにはどうしたらいいかって考えていくと、結局いかに楽しくしていくかなんですよね。そういう感じでやっていってますね」

(3/25、ギャラリー白石にて)


増山麗奈 個展「DANGER! JAPAN」
銀座Bエリア 3/20-3/25 12:00-19:30
日休
exhibit Live & Moris Googleマップ
 
昨年の「府中ビエンナーレ」での増山さんの作品はかなりの衝撃でした。強烈な風刺が織り込まれたフェイクのドル札が描かれたベニヤ製の小屋のなかで、増山さんが世界各国で展開したパフォーマンスやコラボレーションの記録が撮影されたビデオが流されていて、その行動力に脱帽し、各国の画家とひとつの画面を分け合って制作された絵がホントに素晴らしかったです。それ以外にも過激なパフォーマンスで知られる増山さんですが、今回は本「桃色ゲリラ−PEACE & ARTの革命」の出版記念に合わせた個展。正直、見当もつかないのですが、とにかくどういうふうになるか、楽しみです。
 
予想通りに想定外の展示です。
まず、階段の吹き抜けのところに、昨年の府中ビエンナーレで子供達と描き上げたという大きなタペストリー。これはホントに素晴らしい、ピースフルな色彩、質感、雰囲気です。
ギャラリーの中は、とにかく尋常じゃないほどに混沌としたインスタレーション。ざっくりとした仕上がりの絵はあるわ、巨大なオブジェがあるわ、ビデオが流されてるわ...なんていうか、ものすごく「生きざま」を見せつけられたような感じで、増山さんのバイタリティと合わせて圧倒されっぱなし。それでも平面作品、特に入口付近にあった作品は、やっぱり画力を感じるというか、さまざまな情報をシャットアウトしても、作品そのものの力だけで充分に見応えのあるものだと思うのです。

第12回 ミニアチュールとガラス絵展
銀座Dエリア 3/15-3/31 11:00-18:30
日/祝休
森田画廊 Googleマップ
 
ちいさな空間に、たくさんの作家のちいさな作品がていねいに展示されていて、とにかく見応えのある企画です。出展作家も実に多彩、油彩、岩彩を中心に、いろんなテーマを取り上げて、ちいさな画面の中でそれぞれの個性を発揮しています。また、額がある程度統一されていることでちゃんとひとつの方向性が生まれているように感じられました。
まず注目したいのが、川瀬伊人さん。これまでは、銀箔の使い方が個性的で力強い岩彩の作品の作品のイメージでしたが、今回出展されているのは墨を使ったモノクロームの作品。水辺が描かれたもので、饒舌さはこれまでの作品からずいぶんと抑えられていつつ、ちいさな画面のなかで広がっていく世界は相変わらず深みが感じられました。
高橋浩規さんの作品は、富士山が描かれた青い作品。その真っ直ぐな青の鮮やかさに目を奪われます。
福井江太郎さんの、熱を帯びたような黒で描かれたダチョウの絵の迫力。 才木康平さんの巻き貝の存在感。山本浩之さんのモノクロの花の妖婉さ。 他にもさまざまな作品があってそれぞれ見どころがあって面白いです。
一角にガラス絵のコーナー、こちらも同様にさまざまなスタイルの作品が壁いっぱいに詰め込まれていて嬉しくなってきます。

池永康晟展
銀座Cエリア 3/17-3/25 12:00-19:00
日休
ぎゃらりぃ朋 Googleマップ
 
この展示の空間の中に入った瞬間から、一気に池永さんの色彩に引き込まれます。統一感のある色使い、セピア色の岩絵の具で構成された女性の肖像画です。
すべての作品において、立ち姿であったり、横になっている姿であったりとさまざまではありますが、女性の半身像が描かれています。そこでまず目に留まるのが、女性が身につけている服の模様。これらが実にていねいに絵の中で再現されています。ひとつのパターンが画面の中で描かれていることへの感激。そして、生のキャンバスに描かれているために布地の質感がしっかりと出ていて、それも良い効果を出しています。加えてほぼ面相筆による線で描かれた女性の表情の軟らかさ、静けさ、黒い髪の流れも相まってたいへん印象的。
額に入った作品だけでなく、ジーンズ地の布も用いたタペストリーも、布の質感がより強調されていて良い雰囲気です。

宮井啓江展
銀座Cエリア 3/15-3/21 12:00-19:00
(日/祝-18:00,L-17:00)
柴田悦子画廊 Googleマップ
 
絹本彩色の観音像。描かれる観音の表情は、女性の作品らしくどれも妖婉さと優しさとを兼ね備えているような感じです。観音の顔立ちだけでなく、身に纏うものの紋様、観音を取り巻くさまざまなものもそれぞれが細い線によってていねいに描かれていて、さらに背景の色彩も実に自然なグラデーションが美しいです。観ていてすっと心が落ち着く感じがします。
1点だけ、不動妙王が描かれた作品が。頭の上に乗る蓮の花の鮮やかさが印象に残るところなど、こちらはさらに女性らしさが現れているように思えて興味深かったです。

加藤怜子展
京橋エリア 3/13-3/18 11:00-19:00 (L-17:00)
日休
ギャラリー山口 Googleマップ
 
たっぷりの空間に負けない大作が、4面の壁に配置されている迫力のある展示。
とにかく圧巻なのが、1点を除くすべての作品において、画面いっぱいに展開される「手」の線描。手のひらを自然に広げた手が整然と並んでいる作品と、さまざまな表情の手が集まってひとつの流れを構成し、その手の集合に引力のようなものを感じさせる作品とがあり、それぞれで強烈な世界が展開されていました。なかでも正面の壁いっぱいにひろがる相当な広さの作品。表貼りの箔が醸し出す深み、地平線を思い起こさせるようなラインを構成するようにぎゅっと配置された手の線描、そこに被さるように配色された深い青。そしてその奥行き感。さまざまな手の表情によってねじ曲げられた時空、吸い込まれるような奥行き...とにかく尋常でない深みと力強さが深く印象に残る作品でした。
手が描かれない残りの1点の、うねるような色の散らばりも印象に残りました。
 

TAKESHI KIMURA EXHIBITION
銀座Bエリア 3/13-3/18 12:00-19:30
日休
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4点のFRP素材によるオブジェの展示。
鈍いかたちの塊を重ねるようにして作り上げられた動物。その表情は憂いを帯びているようにも感じられ、そこに深みが生まれています。ラクダのような動物の背中に渦高く積み上げられた麻袋。突き立つ岩を巻き込むように身体をくねらせる犬。これらはそれぞれ鉄錆を模した表面処理が施されていて、それもまた独特な雰囲気を醸し出す一助となっています。他に、ブロンズのような仕上がりの作品も。
 

早川知加子展
銀座Bエリア 3/13-3/19 12:00-20:00
(日-11:00-15:00)
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水彩木版の多色多版摺りの抽象画です。
濃淡がある有機的なかたち、それらが集まってさらに有機的な模様を構成しています。木版独特の抑えられた色合いで、和紙の上に浮かび上がるように現れたものから何かのイメージと繋がった時、一気にぐっと画面の世界に気持ちが入り込んでいきます。また、信じられないくらい細い凸版による線には、その繊細さにため息が。ちいさな画面のドローイング作品は、木版より若干強めの色彩がまた良い感じです。

 
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