これだけの規模のプロのリコーダー演奏家集団というのは、世界でも例がないらしい。金子健治率いる15人の芸達者が、緊密なハーモニーを聞かせてくれる。ほとんどの曲はオルガンを原曲にしているが、オルガン演奏と最も異なるのは、純正な響き。オルガンのワンワン唸る響きに慣れた人には、あるいは物足りなく感ずるかも知れないが、純正なハーモニーによる演奏は、曲の新しい魅力に気づかせてくれるようだ。「トッカータとフーガニ短調」の冒頭を聞いてとても驚いた……という声を複数の人から聞きました。(O)
リコーダーの純正な響き
趣味でリコーダーをやっている。先日も川口を拠点に活動するアマチュアのアンサンブルグループ「エスカルゴ」の定期演奏会に参加して、リコーダーを吹く楽しさを満喫してきたばかりだ。
リコーダーほど世間から誤解されている楽器は少ないのではないだろうか。小中学校でやる「たて笛」は、一八世紀前半までは西欧音楽シーンの花形だったのである。
手にとって息を吹き込めば誰でもピーと音が出る。ちょっと指使いを覚えれば「メリーさんの羊」ぐらいは簡単に吹ける。だが、真に豊かな音楽を紡ぎだそうと思ったら、そこから先が大変だ。音程一つをとっても、指使いが正しいだけでは足りない。息の量
を調節し、楽器のクセを把握し、場合によっては替え指を駆使しなければならない。そして、そうした努力が功を奏して、自分の息がナイスな音楽に変わったときの喜びには、何物にも替えがたいものがある。要するに、とっつきやすくて奥が深いのだ。
最近発売されたばかりのCD『トッカータとフーガ/東京リコーダーオーケストラ』(発売=アントレ編集部、税抜2800円)は、リコーダー・アンサンブルの楽しさを伝えてくれる一枚だ。
収録されているのは、バッハの「トッカータとフーガニ短調」など、オルガン曲を原曲にしたものが多い。
東京リコーダーオーケストラは、金子健治率いる一六人のプロ集団で、これだけの規模のリコーダーアンサンブルは世界にも例がないらしい。
音が出た瞬間、ハッとした。実にすっきりと美しい。
オルガンによる演奏と最も違うのは響きである。ここにあるのは、平均律でない純正なハーモニーなのである。いわばこれは“驚異の超純正オルガン”なのだ。「オルガンはあのニゴリが良いんだよネ」という向きもあるだろうが、一方にこうした純正な響きの演奏があってもよい。
一糸乱れぬアンサンブルは至難の業だろうが、それは一六人の芸達者に任せて、聞く方はただその美しい響きに身を任せていればよい。(大友浩)[東京新聞
2003.05.04]
リリース:2003.4.10