ユリは、惨めな犬女優の引き紐を無理矢理引っ張り、劇場の中庭からロビーまで引き立てた。
ロビーにたむろする三下どもが、口々にさくらをからかう!
「けけっ!犬のお嬢ちゃんっ!今日はどこで糞するんだいっ!」
「帰ってきたら、また小便を飲ませてやるようっ!便女犬っ!」
「外に出たら、いつもみたいに盛大にケツを振って愛嬌を振りまくんだぜっ!」
「ぎゃははっ!せいぜい皆に可愛がってもらうんだなっ!犬畜生っ!」
「ひきいっ!ひきゃうう〜んっ!」
「きゃいいい〜んっ!きゃいいぃ〜〜んっ!」
今のさくらには、三下どもの罵声など耳に入らない。
無駄とはわかっていても、強引に紐を引く残忍な加虐者に哀れみを乞う犬語を連発する!
今までも言語に絶する羞恥地獄を経験してきたさくらではあったが、しょせんそれは閉鎖された空間でのこと
屋外で一般市民に、奴隷以下の家畜にまで堕ちた今の惨めな姿を晒すことなど想像も出来ない!
ましてや、さくらはほんの三ヶ月前までは庶民のあこがれの的、帝国歌劇団の新人アイドルだったのだ。
劇場近辺でさくらの顔と名前を知らないものはいない。
その、瑞々しく新鮮なキャラクター、気取らない親しみやすさ、凛とした気品、彼女は庶民派アイドルとして
同性からも好かれる、劇団でもトップを争うほどの人気者であったのである。
だが、現在のさくらには当時の面影などなにもない。
身につけている者は桃色の足袋と首輪のみの素っ裸!
小振りだが形の良い乳房も、嬲り尽くされてはいるがまだ色素の沈着が進んではおらぬピンク色の秘所も、
自らの髪の毛で作られた犬の尻尾を模した張り形に貫かれた薄紫色の肛門をも晒け出し、獣のように
四つ足で歩くことを強制された惨めな犬少女の姿があるだけである。
しかし、一番の相違点は彼女の心の内面にある。
誇り高き帝国歌劇団一の少女剣士の精神は、この一ヶ月のあまりにも激しい調教でズタズタに引き裂かれ
卑屈で、自信のない、しょぼくれた負け犬に変貌を遂げてしまっていたのだ。
彼女は外道会の取るに足らぬチンピラどもにさえ媚びへつらい、乞われるままに尻を振り、陰部をさらけ出し
陵辱に身を任せ、嬌声を上げ、あまつさえ彼らの小便まで飲み干す!
まさしく奴隷以下の家畜にまでなりさがっていたのである!
「きゃいんっ!きゃいんっ!きゃいいぃ〜〜んっ!」
「うるさいねぇっ!もうっ!」
バチンッ!
「きゃひんっ!」
ユリの手がさくらの尻に飛び、激しい音を立てた!
情けない悲鳴を上げのけぞるさくらの体を、引きずるようにユリが思いっきり首輪を引く!
その時、ロビーの入り口にたたずむ一人の少女がユリに声を掛けた。
「ユリさんっ!遅いですようっ!」
「一寸待ってよ!私が悪いんじゃないわよっ!この糞犬がっ!」
ボカンッ!
「ぐぎぃっ!」
ユリが被虐者の頭に思いっきり拳骨を飛ばす!
「皆さんお待ちかねですようっ!早くしてくださいっ!」
「ひひゃっ!?」
ツバキの言葉に、さくらは怯えたような目で、引き紐を引く元同僚の顔を見上げた。
「ふふんっ!何よその目はっ!」
「お外に出ればわかるわよっ!ほらっ!とっととおいで!」
ユリは、泣きながら嫌々をする美しき被虐者の尻尾の生えた尻を蹴り飛ばし、ようやく入り口の扉の前まで
引きずり出した。
さくらの涙に濡れた黒目がちの瞳に、見慣れた帝国劇場の扉が映る!
この扉一枚隔てた外界が、こんなにも恐ろしい世界になろうとは!
数時間前までは、一刻も早くこの地獄の劇場から逃げ出したいと心から思っていたさくらだったが、今では
逃げる場所すらないことを思い知らされたのだ!
のどがからからになり、体がガクガク震える!
冷や汗が止まらない!
ユリは、崩壊寸前のさくらを小馬鹿にしたような目で見下し、優しい口調で話しかけた。
「心配しなくても大丈夫よさくらちゃん。あたしが守ってあげるわ。」
「ただし、いいこと、これだけは守ってね!」
「扉が開いたときっ、絶対に目を閉じないことっ!」
(そして、私の指示には絶対に従うことっ!)
さくらはびっくりしたようにユリの顔を見た!二番目の指示は頭の中に直接響いたのだ!
(あははっ!ユリの目を借りてあたしが話してるのさっ!)
「う、うひゃあ〜〜〜っ!」
(み、みろく様っ!)
ユリが、いきなり奇声を発した家畜犬をいぶかしげに見下ろす。
(あははははっ!今日はせいぜい楽しませておくれよぅっ!)
「はぁああああっ!はぁあああっ!」
(い、いやあああああああっ!許してくださぁいっ!)
さくらは、必死にミロクに念話を送り返した!さくらが取り乱すのも無理はない、みろくは
さくら達、元帝国歌劇団員の生殺与奪の権限を天海より与えられたクロノス会の大幹部なのだ!
ミロクの指示は絶対である!さくらはこれまで幾度と無く、気の狂うほどの惨めな行為を
このクロノス会の女幹部の命令により強制されているのである。
(ユリには、知らせてないけどね、こいつの脳にはあたしの分身が埋め込んであるのさっ!)
(うふふふふっ!今からお前に、どんな恥をかかせてやろうかねぇ!)
(ひぃいいいいっ!い、いじめないでくださいっ!あわれな犬めにお慈悲をぅっ!)
さくらとみろくが、そんな会話をしているとは気付きもせずユリはツバキに声をかける。
「じゃあツバキちゃん!行って来るね!」
「ユリさん、いってらっしゃぁい!」
「さくらちゃん!お昼ご飯までに帰ってくるのよぅっ!」
「あたしのおしっこで作った特製のお粥を食べさせてあげるからっ!」
ツバキが無邪気にさくらに声を掛けた。
「ほらっ!返事!」
「あ、わ、わんっ!」
さくらが現実に引き戻され、あわてて犬語で答える。
「開けますようっ!」
「いいわよっ!ツバキちゃん!」
「くうぅっ!」
さくらが、思わず身を固まらせる!
(いやあああぁっ!こんな格好でお外に出るのはいやあああっ!!)

「せーのっ!はいっ!ちょっとだけご開帳〜っ!!」
ツバキとユリが扉の片側づつの取っ手を引き劇場の扉を少しだけ開く!
(ああああああっ!いや、いやようううううう〜〜っ!)
ギイイイイッ
扉の中央部から光が漏れ、ほんの少しだけ扉が開かれた。その瞬間!
うおおおおおおおおぉっ!
地を揺るがすような怒号と歓声が沸き起こった!
びくぅっ!
お座りの姿勢で扉の前に鎮座する可憐な犬女優が、その音に激しく体を引きつらせる!
(う、あっ、な、なんなの!?何が始まるの!?)
彼女の位置からはまだ外の様子は窺いしれない。彼女の胸に得体の知れぬ不安が渦巻く。
「みなさ〜ん!お待ちかねのさくらちゃん登場ですよぅっ」
扉の影からちょこんとツバキが顔を出し、外に向かって声を掛ける。
どおおおおおおっ!
さらに大きな歓声があがり、いきなり音がやんだ!
奇妙な静寂があたりを支配する。
「そろそろ行くわよっ!いい、目をつむったらただじゃおかないわよっ!」
「やれやれ、こいつ初舞台の時みたいに緊張してますよぅっ」
「さっ!帝国家畜団!犬組の看板女優のお披露目よっ!」

「そうれっ!」
バタンッ!
ツバキとユリが両開きの扉を一気に開放した!
(くぅうううううっ!)
さくらは、黒目がちの大きな瞳を涙でうるませながらも、言いつけ通り目を開いたままでその時を
迎えた。しかし、その目にはなにも映らなかった。
「!?」
彼女の視界は激しい閃光で真っ白になってしまったのである!
パシャッ!パシャッ!
パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!
パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!
さくらは、凄まじいカメラのフラッシュとシャッター音につつまれていた。
さくらを待っていたのは、数百人にも及ぶ新聞記者と雑誌記者達のカメラの放列だったのだ!
自らの想像をはるかに超える事態に遭遇した哀れな生け贄は、己の裸身を隠そうともせず、ぽかんと
口を開け、焦点の合わない目で辺りをゆっくり見回す。
帝劇を取り囲む、カメラを構えたおびただしい人!人!人!!!

(どうぉ!帝劇の元看板娘のお披露目に相応しいでしょうっ!)
呆然とするさくらの脳内にみろくの念話が響き渡る!
(帝都中のマスコミを集めてあげたわっ!チンチンして皆さんにご挨拶なさいっ!)
さくらは全てを理解し、そして絶叫した!
「ひいいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「ひいいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「ひいいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!
パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!
身も世もない惨めな絶叫を続けるさくら犬にさらにカメラのフラッシュが降り注ぐ。
「ひいいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜っ!!!」
「ひいいいいいいいいいいい〜〜〜〜〜っ!!!」
さくらは、果てしない絶望に、天に向かって泣き叫ぶばかり。
さくら犬のお散歩ー4終了
さくら犬のお散歩ー5に続く