マリアの百獣擬態 その弐
エリマキトカゲ〜6 - 2〜

このシリーズは、あらゆる惨めな珍芸を仕込まれ続ける
「マリア」の動物や昆虫の形態模写のみを厳選して
ご紹介するシリーズです。
クールで知的な男装の麗人のなれの果てをご笑覧下さいませ。
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罰ゲーム
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14.「再会 - 1」
午前10時00分
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運命の日の朝、洋書店「露西亜堂」の老夫婦は
店頭で開店前の準備に追われていた。
店主の楠が心配そうな視線を妻のアンナに送る。
しまい込まれていた洋書を、店先に運び出す妻の姿は普段と変わらない。
しかし、長年連れ添ってきた夫婦だけにわかる微妙な変化が、空気が、楠には痛いほど伝わるのだ。
(あの時もそうだったな・・)
楠が思い出すのは10年前に娘を病気で亡くした時のこと。
無理をして、悲しみを抑え普段通りに振る舞おうという愛妻の姿が
老店主にはたまらなく痛々しく感じられるのだ。

「ふう、やれやれ……儂ももう年かな、立ち仕事はきついわい」
腰を押さえて楠が伸びをした。

「何言ってるんですか!まだまだ頑張ってもらわなくっちゃ!」
「娘が戻ってきたときにこの店が閉まっていたら寂しがるでしょう」
笑いながらアンナが夫に声を掛ける。
(やはり、アンナは信じているのか、あの娘がまだ生きていると・・)
老店主が妻の方を振り返る。

「はやいものだな、……もう半年にもなる……」
遠い目をして楠がつぶやく

「大丈夫!きっと無事でいますよ!あの子が死ぬものですか!」
妻が夫の手を取り、その肩にもたれかかる
二人の視線は同じところで固まっている
それは、ショーウィンドウに飾られた一枚の写真。

その写真は先の大戦の折りに行方不明となっている帝国歌劇団の男装の麗人
マリア・タチバナであった。
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「ひやああああ……」
「うひゃあああ……」
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「……あれ、なにかしら?」
風に乗って聞こえてきた女の叫び声に、老夫婦が声のした方角を振り返る。
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「うひゃあああ……」
「うひゃあああ……」
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女の叫び声が次第に大きくなってくる!
そして二人は、奇妙な格好をした人物がこちらに走ってくるのを確認した
「何でしょう、あれ?」
不安げに婦人がつぶやく…人物の姿が、声が、次第に大きくなっていく
「ひやああああ……」
「うひゃあああ……」
「うひゃあああ……」
「うひゃあああ……」
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15.「再会 - 2」
午前10時02分
「うばああああああっ!!」

「うへえっ!うへへへっ!」

「な、な、なんだ、こいつは!」
楠は、目の前に突然現れた半裸の変態女の姿におもわずうめき声をあげた。
驚くのも無理はない!
身長180cmを優に越える外人女性が
は虫類を模した惨めなコスプレで身を包み、陰部も乳房も剥き出しにして
だらしないがに股ポーズで
白昼の路上にその惨めな格好を晒けだしているのである!
おまけにその顔面は、クリップとフックによって無様に引き伸ばされ
原形をとどめぬほど醜く変貌を遂げている。
幼児のようにアップにまとめられた髪型がいっそう惨めさを増している!

「あへぇっ!あふあふうっ!」
張り付いたような笑顔?で口元を歪め、だらだらと涎を垂れ流し!
引き伸ばされた目からは涙を、つり上げられた鼻からは鼻水を垂らしている!
傍らではアンナが顔を両手で覆っていた。
厳格なロシア正教徒の彼女にとっては、このような人物を目にするだけで
自分の目がつぶれるほどの嫌悪感が湧いてくるのだ。
目を固くつむり十字を切る!

(神よ、この汚れた魂に救いの手を与えてください!)
「うひいっ!うひひいひいっ!」

(ああっ!ママっ!あたしよっ!あたしはここようっ!)
マリアが狂ったような泣き笑いを浮かべ悲鳴を上げるが
その叫びは
変質者の雄叫びにしか聞こえない!



(きゃははははははっ!)

(感動のご対面ねっ!)

(ほらっ!さっさと用件をすませちまいな!)

(おしっこもれちゃいますよぅ!)



(きゃははははははっ!)
勝手なことを言い合い笑い転げている三人娘は、真底、この
陰惨な再会劇を楽しんでいるように見える。
しかし、実際、マリアはそれどころではないのだ。
「ほげぇっ!ほげほげぇ〜っ!」

(はぁ、ち、ちびるっ!ちびっちゃう〜っ!)
先程から催している気の狂わんばかりの尿意は、とうにマリアの限界を
越えており、いつ崩壊してもおかしくない状況に追い込まれているのである。

(はいっ!ちびる前に自己紹介なさいっ!)

(や、やらなくっちゃ、叔父様とママのためにもっ!)
マリアが悲壮な決意を固めた。
先程カスミに命じられた惨めな自己紹介を始める!
.

「ろ、ろしあどうのっ!みなしゃん、こんにちわ〜っ!」

「あ、あたしにょ、なまえはっ!」

「オミャンコ・クリトリスキーれすぅ!」
老夫婦が呆気にとられる。
この変態女は、露西亜堂(うち)に用事があったのか!?
なんだ、そのふざけた名前は!
この女は、本当にアタマがおかしいのか!?

「あ、あたしは、はなやしきのっ、げどうかいでっ!」

「飼っていただいていりゅ・・見せ物女郎れすうっ!」

「き、きょうはっ!おつかいできましたぁ!」
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気まずい沈黙が流れる。
楠もどう、対処していいかわからない。
しかし、相手は名を名乗りこの店に用件があると宣言している
客人として扱うより他はない。
しかし、人一倍好奇心が強い楠は、思ったことを口にせねばいられない。

「く、クリトリスキー?さん、その格好はいったい?」

(よくぞ聞いてくれましたぁ!)



(きゃははははははっ!)

(お、叔父様の馬鹿っ!なんでそんなこと聞くのようっ!)

(お、おしっこもれちゃうじゃなぁい〜っ!)



(きゃははははははっ!)
ここに来るまでの道程でマリアは、あらかじめ質問の内容によって
どのような恥知らずな受け答えをするかを指示されていた。
そのなかでも極めつけに惨めなのが、たった今、楠が発した質問だったのである。

「うひょひょひょひょっ!」

「あ、あたひはっ、さむいところで生まれたんれっ!」

「にほんは、あつくてたまりまひぇ〜ん!」

「ぱんちゅなんてはいたら、
おまんちょがむれちゃいまふぅ!」



(あははははははっ!あははははははっ!)

(いいわよっ!その調子っ!)

「き、きょうは、ひさしぶりのおでかけなんでぇ!」

「おめかししてきちゃいまひたぁっ!」

「どうおっ!かあいいでひょうっ!」
マリアはそう言ってポーズを決めた!
まるで、大道芸人のピエロのようだ。
店主が胡散臭そうにマリアを見つめる。
最初の衝撃は既に薄れ、恥知らずの変態に対し軽蔑の視線を向ける。

(あ、ああっ!叔父様っ!そんな目で見ないでっ!)

「……で、ご用件は?」

「ち、ちゅうもんしてた、ごほんをうけとりにきましたぁっ!」

「注文ねぇ、で、本の名前は?」
いぶかしげに店主が注文の台帳を取りだした。
関わり合いになりたくない、早く引き取って貰いたいという意志がみえみえである。

(カ、カスミ様っ!ほ、本の名前は!?)

(あれっ!なんだっけなぁ!)

(ちょっと待ってて、えーと…………)

(あああああっ!はやくっ!はやくっ!)
マリアの尿意は完全に限界を超えている!いつ漏らしてもおかしくはない!

(えっと、たしかぁ…………)

(ああああっ!も、もれちゃう〜っ!)
「ふぎいっ!ぎいいいいいっ!」

(か、かしゅみさまっ!お、おねがいぢまず〜〜!)

(はやくぅ〜っ!はやくぅ〜っ!)
老夫婦はいきなり奇声を上げ地団駄を踏みだした異形の変質者を
不思議そうに眺めている。
さんざんマリアを焦らしたあげくカスミがやっと口を開いた。

(そうそう!たしか・・・・)

「あ、ああっ!“まぞゆえに”でしゅうっ!!」

「はぁ?」

「“ま・ぞ・ゆ・え・に”ってほんでしゅう!」

「………そんな注文はありませんが」

「え?し、しょんなはじゅは!」
「くううううううっ!ひいいいいいいいっ!」

(あっ、はっ!も、もれる、も、れ、ちゃうっ!)
がに股ポーズがいつのまにか極端な内股ポーズになっている!
膝頭がガクガク震え、脂汗が滴り落ちる!

(くすくすくす!マリアちゃんがんばって〜!)

(あ、ごめんなさーい!こっちだったわ)

「あ、あっ!まちがえまひたぁっ!」

「“つばきひめのけつ”でしゅう!」

「“つばきひめのけつ”!」

「………その注文もありません」

「ひいいいいい〜〜〜んっ!」

(かしゅみさまっ!もうだめっ!もうだめなんですようっ!)

(ごめん!ごめん!こっちが本命!)

「だ、“だいさんちんぽこっ”!!」

「“だいさんちんぽこっ”ってほんはっ?!」



(あははははははっ!あははははははっ!)

(カスミさんっ!それ傑作ぅっ!)
カスミが面白がってマリアに言わせている書名は
全てマリアが主演した舞台の題名をもじったものである。
しかし、極限の尿意に急かされているマリアに気付くゆとりはない!

「だ、“だいさんちんぽこっ”!!」

「“だいさんちんぽこ〜〜っ”!」
黙って聞いていた楠がついに声を荒げた!

「ないよ!そんな本は!カストリ雑誌なら他の店をあたってくれっ!」

「さあっ!出ていってくれ!」

「ま、まってくだしゃいっ!おねがひれすぅっ!」

(ああっ!叔父様っ!やめてぇっ!)

(お、おつかいをすまさないとっ!おつかいをっ!)

(あれぇ〜ゲームオーバーですかぁ!)

(あ、思い出した!まりあちゃんこれよ、これ!)

「ひあっ“さるおんなおまんこじごくぅ”」

(ああっ!だめっ!ちびるっ!ちびっちゃうよぅ〜っ!)

「ふざけるのもいい加減にしろ!」

(けっ!しゃれのわかんねえ爺いだな!)

(燃やしちゃいましょうよ〜)

「“さるおんなおまんこじごく”〜っ!」

(今度こそ本当よ!えーと・・・)
気の狂うような尿意!店主の怒号!三人娘の哄笑!
全てがごちゃ混ぜになってマリアの精神はすでに崩壊寸前であった!
そして、その時
.
.
「・・マ、マリアさん!?」
全ての時が停止した。
店主ともみ合っていたマリアがゆっくりと振り返る。
そこには、呆然とマリアを見つめるアンナの姿があった!

「あ、あなた、マリアさんね!」
マリアは、驚きのあまり声も出ない!
醜く引き伸ばされた顔をさらに歪め、ゆっくりと首を振って
いやいやをする!
そして絶叫した!

「ち、ち、ちがいましゅう〜〜〜っ!」

「あたしは、げどうかいのみしぇものじょろうっ!」

「オミャンコ・クリトリスキーれすぅっ!」
マリアの魂を振り絞るような絶叫が店頭にこだまする!

(ブーッ!ブーッ!ブーッ!)

(ゲームオーバーですぅ!)



(きゃはははははははっ!)

(ひいいいいいいいいいいっ!)

「ち、ちがうっ、ちがいますようっ!」

「あたしは、はじしらじゅなへんたいおんなっ!」

「オミャンコ・クリトリスキーっ!」

「オミャンコ・クリトリスキー
なんですうっ!」
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マリアは狂ったように、恥知らずな自らの芸名を
何度も何度も絶叫するのであった。
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エリマキトカゲ 6-3 に続く
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