「プルサーマル」=新潟県刈羽村の住民投票、「反対」の意思を明示
東京電力の柏崎刈羽原発へのプルサーマル計画の是非をめぐる新潟県刈羽村の住民投票は5月27日行われ、「反対」が過半数を超え、勝利しました。(別項参照)
プルサーマル問題では全国初めての住民投票でしたが、住民は明確に「ノー」の意思を表明しました。新潟県知事、柏崎市長、刈羽村長の三者協議では、99年3月の「地元同意」の撤回まではいかないものの、今回定検での柏崎刈羽3号機のMOX燃料装荷の中止を要請、東京電力も見送りを発表しました。
この投票結果は、政府と電力会社が大々的にすすめようとしている核燃料サイクル政策(閣議了解「当面の核燃料サイクルの推進について」―97年2月)への大きな打撃となりました。また、プルトニウム循環方式の根本的見直しを求めることになりました。「原発問題を考える刈羽西山住民の会」は、「原発問題を考える柏崎刈羽地域連絡センター」などと連携して、宣伝活動・組織活動の面でも、プルサーマル反対運動の中心的な役割を果たしました。全国センターは、青森・宮城・福島・茨城・東京・静岡・福井・愛媛など全国から延べ25人のプルサーマルの危険の語り部を、学習会講師や街頭宣伝弁士として、現地に派遣しました。
〈投票結果〉
▽有権者数=4,090
▽投票総数=3,605(投票率88.14%)
投票態度 票数 投票者数比 有権者数比
▽「反対」 1,925 53.40% 47.07%
▽「賛成」 1,533 43.52% 37.48%
▽「保留」 131 3.20% 3.20%
▽「無効」など 16 0.44% 0.39%
住民投票の勝利にわく「住民の会」の人びと(写真、省略)
【警鐘】
●木元教子原子力委員が「電気新聞」(6月18日付)「時評」欄に「住民参加というけれど」の一文を寄せている●刈羽村の住民投票で、住民がプルサーマル「反対」の意思を明らかにしたことへの批判である。プルサーマルは国策である、村は事前了解している、それでも、計画の是非が住民投票で問われたのだ、と悲憤慷慨する●住民投票には「諮問型」と「拘束型」があるとして、語源学的に解明もしながら、住民投票は「結果を参考にする『諮問型』で『拘束型』ではない、と私は理解している」と結ぶ●これが「逃げない原子力」「見える原子力」をモットーとする原子力委員氏の主張である。住民投票の結果は、地元の事前了解が住民の意思を反映していなかったことを示した。原子力委員氏は、これが「見えず」、これを「逃げた」のである。
(2001.6、第147号1面)
平沼赳夫経済産業大臣へ抗議申し入れ
「安全」宣伝しても説明はできず
原発問題住民運動全国連絡センター(中村敏夫・柳町秀一・安部愃三・小川定之氏)、原発問題を考える新潟県連絡センター(藤巻泰男・武田勝利氏)、原発問題を考える柏崎刈羽地域連絡センター(大橋徹氏)、原発問題を考える刈羽西山住民の会(池田力氏)の代表らは6月15日、平沼赳夫経済産業大臣、佐々木宣彦原子力安全・保安院長にたいして、刈羽村の住民投票の結果を尊重してプルサーマル計画の撤回を要求しました。
経済産業省は住民投票の敗北について、「十分説明ができなかった」として「今後とも説得活動を続ける」と表明。原子力安全・保安院は「政策の是非は当院の任務でなく、安全については説明責任を果たす」と回答。いずれも、プルサーマル計画の継続を表明。
経済産業省では、住民投票に照準を合わせて、大臣名の「刈羽村の皆様へ」のチラシを、日本立地センターに委託して、1500世帯への配布費用201万円をも含む332万円もかけて作成し、まいたことに批判が集まりました。
代表らは「この費用は電源開発特別会計から出た。電気料から支払われたということ。しかも、地方自治への乱暴な介入に使われたのでは、住民は踏んだり、蹴ったりだ」として「通常の広報活動を大きく逸脱していることは明白」と指摘。経済産業省は、エネルギーの安定供給の責任、エネルギー政策の説明責任を果たす広報活動の一環で、住民投票への介入の意図はないと強弁しました。
また、平沼大臣がチラシで、プルサーマルの「安全」論、「必要」論をのべているのにたいして、具体的に批判点を指摘して、住民が納得できるデータ・資料を求めましたが、これには、基本的に答えることができませんでした。結局、「安全」結論の押しつけ、宣伝はやるが、「安全」の中身は説明はできない。これでは、住民投票の結果を学んだことにはなりません。
(2001.6、第147号2面)
佐々木宣彦原子力安全・保安院長への抗議申し入れ
「包丁と同じ」論を擁護とは
原子力安全・保安院にたいしては、住民投票期間中の5月22日、佐々木宣彦院長が現地の「公開討論会」に推進機関と同席して
「安全」宣伝の一大合唱に加わったことに批判が集中しました。
同院は、主催者チラシで、佐々木院長が「推進側」と紹介されているのをあとで知り、当日司会者に訂正いただいた、また、当日の席もすでに準備されていて、変更もできない状況であったことなどから誤解を生んだことは残念と表明。同院は規制機関として、推進機関とは分離されていると回答。しかし、「安全」宣伝については、プルサーマルの「安全審査」の内容の説明であって、推進機関という立場からではない、と強弁しました。
代表らは、佐々木院長が「プルトニウムは包丁と同じで使いようだ」と発言して、ひんしゅくをかったことを取り上げ、「これは『安全審査』の説明の域を超えている。発言を取り消すべきだ」と迫りましたが、わかりやすい比喩として使ったまでと開き直りました。
同院は「確率論的安全評価(PSA)の結果から、苛酷事故は工学的に起きるとは考えられないほど小さい」と回答しながら、PSAが「安全審査」の対象となっていないことには口をつぐんだまま。また、95年の兵庫県南部地震の岩盤上の地震動の応答スペクトルが既設原発の耐震設計値を大きく超え、耐震設計の基礎が崩壊していることについても、具体的に回答できませんでした。
(2001.6、第147号2面)
応答スペクトルとは(用語の解説)
地震による建造物等の揺れは、その地震動とその建造物の固有振動によってきまる。ある地震動が固有振動のちがう構造物ごとに与える最大の揺れを示したものが応答スペクトル。1995年、阪神淡路大震災をもたらした兵庫県南部地震の岩盤上の地震動が記録され、応答スペクトルがわかる。この応答スペクトルは、日本の原発では、最大級の地震に備えている浜岡原発の耐震設計値を大きく超えていた。兵庫県南部地震は、浜岡原発を襲うであろう地震の60〜90分の1のエネルギーでしかないが、兵庫県南部地震程度の揺れで、浜岡原発の構造物が壊れうることを示したのだ。
(2001.6、第147号8面)