「誘致反対」の一点での共同を追求
原原発の不安について全町民と対話し勝利
三重県海山町
原発の誘致をめぐって行われた三重県海山町の住民投票は11月18日行われ、「誘致反対」が「5,215」で圧勝しました。有権者比59.61lで、絶対過半数を大きく超え、投票比67.25lで「誘致賛成」の2倍以上という大差で勝利しました。
原発問題での住民投票では、住民運動側が、新潟県巻町(1996年8月)、同刈羽村(2001年5月)につづいて3連勝となりました。この勝利で三重県の熊野灘圏内での原発立地騒動に終止符が打たれれました。
今回の住民投票は、推進派が町議会に「原発誘致」の請願を「6,506」の署名を添えて提出、「原発反対海山町民の会」が「誘致反対」の請願を出しました。町議会は請願審査特別委員会を設置して九回の審議を重ねながら、採決を回避して住民投票となりました。
「町民の会」は、ほとんどの町民が原発への不安・心配を抱いていること、その不安・心配には正当な根拠があることを対話で明らかにしながら、「原発誘致」に反対する一点での共同を呼びかけました。
この基本的な構えが、思想信条の違い、原発への意見の違いを超えて、町民を大きく結集する力となるとともに、当初の力関係を大きく逆転する契機となりました。また、共闘面では、当初「四者」でスタートしたものが、「6者」さらに「7者」へと発展することになりました。
最後には、推進派は、「各戸に金が入る」との謀略宣伝するまでに、追いつめられました。
〈投票結果〉
○有権者数 8,748
○投票総数 7,754
(投票率 88.64l)
▽「反対」―5,215
▽「賛成」―2,512
▽「無効」― 27
【警鐘】
●「重く謙虚に受け止める」「引きつづき住民理解に努力する」―これは三重県海山町の住民投票の結果に対する平沼赳夫経済産業の談話である●「謙虚」発言は、当然のことであるが、その中身は…となると、とたんに意味が失われる。この発言が真実なら、本来、「原発推進政策の見直し」につながるべきものである●それをいわないで、「住民理解」発言が出るところに本音がある。2010年までに、10〜13基の原発新増設が必要ということにたいする住民の「理解不足」というのが大臣の理解である●しかし、これこそ、住民投票にたいする大臣の「理解不足」である。海山町民は原発新増設の道をとらないという意思を明確に表明したのである。この住民意思を「理解不足」というのは、大臣が住民を愚民扱いしている証左である。
(2001.11、第152号1面)
政策論戦を明確に
@原発計画ない住民投票の異常さ
A「軽水炉は安全」宣伝をあばく
B自然をまもる地域振興を訴える
「原発反対海山町民の会」は、住民投票において、三つの面の政策論戦を重視。ビラ・街頭宣伝などで推進派を圧倒して勝利しました。
一つは、今回の住民投票が、推進派主導で、しかも、電力会社の原発計画もない段階での異例のものであるということを訴えたことです。
立地予定とされる地域では、土地取得の可能性もないことが明らかにされました。
また、海山町民が推進派も含めて、昨年、芦浜原発構想の白紙撤回をかちとった南島町民が、中部電力に原発の賛否をめぐる37年のたたかいで、真っ二つに割れ、親族間にも大きな傷を残していることに対して、「あの二の舞は御免」という気分があることを考慮して、「町民の会」は、「原発誘致」を引っ込めることが、町を二分させない保障になることを訴えました。
二つは、推進派が「軽水炉は安全」との宣伝を精力的に展開したことに対する批判です。
推進派は、原発から放射性物質が出る危険は認めざるを得ませんでしたが、「五重の壁」で閉じこめられているから「安全」だとか、「多重防護」の機能が働くから「安全」だとか、軽水炉原発で「死者は出ていない」「けが人が出たことは…一度たりともない」とか、電力会社もやれないような異常な「安全」宣伝を繰り広げました。
終盤では、浜岡原発1号機で重大な事故が相次ぎ、電力会社が「申し訳ない」と陳謝しているときに、推進派は、事故が起きても放射能が外部に出なかったから安全だといい出す始末でした。
こうした「安全」宣伝に対して、「町民の会」は、軽水炉原発が構造的に炉心溶融に至る苛酷事故の発生を排除できないこと、放射性廃棄物の安全な処理処分法が確立していないことから原発技術は未確立であることを基本的に押し出しながら原発の現実にある危険がさまざまな面で重大化していることを訴えました。対話、学習会、ビラ、街頭宣伝で通じて訴えました。これが町民がもつ原発への不安・心配と「共感」を呼び、原発についての基本的な理解が急速に広がりました。
この点では、全国センターから現地に派遣された、原発の危険についての「語り部」たちの地域の経験にもとづく訴えは、町民から大きく歓迎されました。
三つは、紀伊半島の美しい自然を守りながら、地域振興を積極的に訴えたことです。
推進派は、「原発は地域振興の最後の『栄養剤』だ」として原発誘致は地域振興の切り札という宣伝を繰りかえしました。最終盤には「協力金確約」として、協力金が「中部電力→海山町→区、自治会→全町民」に配分されるとする謀略「号外」まで出す始末でした。
この点では、三重県の教育委員長や公安委員長を歴任した町内の有力者速水勉氏(林業家)が、「紀伊半島の人々は、目先の利益に惑わされることなく、原発設置の要請を断固拒否し、自然と産業を保持してきている」と訴え、大きな反響を呼びました。
また、引本浦では、尾鷲市からの漁民も参加して大規模な海上デモ、白浦では、白浦漁協青年部が漁業を守れと、自動車デモを行いました。
「町民の会」は、海と山の自然を守り、産業を発展させるという海山町の地域振興の本道を歩むことの重要性を訴えました。住民投票の勝利はこの道の第一歩を示すものとなりました。
(2001.11、第152号2面)
高圧注入系・余熱除去系の配管
異常な爆裂・破断事故 浜岡1号機
中部電力・浜岡原発1号機(BWR、54万`h)で11月7日、緊急冷却用の高圧注入系の月1回の定期試験をしたところ、配管が爆裂・破断する重大な事故が発生しました。この種の配管爆裂・破断事故は日本では初めて。
同日午後52分、高圧注入タービンを起動させるために、バルブを開いたところ、配管が爆裂・破断。火災報知器10台がいっせい作動しました。
設計を変更した部分で爆裂・破断
爆裂・破断した配管は、高圧注入系と枝分かれした余熱除去系のバルブの手前部分。もし緊急に冷却水が必要な場合、この事故が重なれば、炉内は空だき状態となり、瞬時に炉心溶融に至りかねない重大な事故でした。また、余熱除去系は原子炉を停止した場合、核分裂反応は止まっても、炉心に蓄積された核分裂生成物質(死の灰)が出す崩壊熱を除去するために、起動させるためのもの。もし、、余熱除去系の起動が必要なときに、この事故が重なれば、余熱の除去ができなくなり、大事故になりかねないものでした。
ところで、爆裂・破断を起こした配管部分は、余熱除去系のバルブの手前のところで、中部電力が93年に設計変更した部分(図参照)でした。
運転中は余熱除去系バブルは閉じており、バルブの原子炉内の蒸気(70気圧、285度C)が圧している側と反対側の温度差があまりに大きいために、バルブが完全閉まらず、蒸気が余熱除去系に漏れる事態が生じたといいます。これを防止するために、蒸気が圧す側に水がたまる構造にして両側の温度差を小さくするように、中部電力は、設計を変更しました。
この結果、水と蒸気が接する面が新たに生じますが、今回事故はまさにこの部分で起きています。ところが、この設計変更は、「安全審査」の対象となっていませんでした。圧力バウンダリであるにもかかわらず、こうした設計変更が中部電力の意のままにできる「安全」規制とはなんなのか、改めて問われます。
中部電力は、すでに、1号機につづいて2号機の設計変更を行っており、定期検査中の3号機も設計変更中であるとしています。BWRで同じような構造のすべての原発の総点検は急務です。
原発では水と蒸気の接面で重大な事故が生じることは、これまでよく知られてきたことであり、BWRでは特別に多いと指摘されてきました。当然、中部電力は、これを承知していたはずで、なぜ設計変更したのか、改めて問われます。
(2001.11、第152号3面)
浜岡1号機 原子炉底部から水漏れ
前回事故で監視装置つけながら7月からの水漏れにも運転継続
浜岡1号機の配管爆裂・破断事故で原子炉を止め、11月9日午後2時前から格納容器内を点検していたところ、作業員が原子炉圧力容器底部の制御棒駆動装置部分から炉内の放射能をもつ水が漏れていることを見つけました。
1988年、中性子測定器のインコアモニタハウジングに亀裂が生じて水漏れ事故が起きたことがあります。
制御棒89本が原子炉下部から挿入する仕組みになっており、その一本(CRD38-11)の駆動装置部分から水漏れが発見されたもの。
亀裂があったのは、制御棒ハウジングの支持管(スタブチューブ。外径約20a)を原子炉圧力容器の底部に溶接している部分で、亀裂の長さは2〜4aと中部電力は発表しました。炉外からこの部分に圧縮空気を送り、水中カメラで調べたところ、亀裂部分の2カ所から泡が出たといいます。この部分の溶接はメーカー工場で原子炉作成時に行われたもので、応力腐食割れの原因となる熱によるひずみなどをとる対策がとられているとされるものです。事故当初には、建屋に原子炉を運び込んだあとに溶接された支持管上部の溶接部に亀裂が入ったという予測があっただけに、関係者にショックを与えているといわれます。
国内では、こうした溶接部の損傷はこれまで例はない事態です。同じ沸騰水型(BWR)は計28基あり、その点検が求められます。
今回のような水漏れは、1979年似たような場所での亀裂が見つかったビッグロックポイント原発はじめアメリカで5件、スペインで1件起きているといいます。加圧水型(PWR)では、1997年に関西電力=美浜原発2号機の制御棒駆動装置で亀裂が見つかっています。
今回の水漏れ事故は、いまひとつの問題点を明らかにしました。
それは、水漏れ事故監視装置が機能しなかったことが明らかになったことです。
八八年のインコアモニタハウジングの亀裂・水漏れ事故の際、中部電力は、「浜岡1号機、2号機、3号機とも原子炉格納容器内の漏えいについては、現有の設備において十分検知できます」といい、「しかし、1号機については、念のためハウジングの近傍に漏えい監視装置(露点計)を設置し、監視を強化します」と説明していました。
ところが、今回は、配管の爆裂・破断事故で原子炉をとめ、格納容器内を点検して初めてわかったものです。
しかも、水漏れは、7月、8月から始まった可能性がありますが、水漏れが「現有の設備において十分検知でき」「1号機については…監視の強化」したということが事実なら、この間、水漏れを承知で運転を継続したことになります。また、この水漏れについて、まったく気づかなかったとすれば、このときの中部電力の説明は空言だったことになり、いずれにしろ、中部電力の責任が改めて問われます。
ところで、中部電力は、二つの事故について、中部電力内で調査するといい、国も、原子力安全・保安院
原子力安全委員会が調査を行っていますが、これでは調査の客観性、公正性は保障されません。1号機の許認可に係わらない第三者による徹底かつ総合的な調査が強く求められます。
(2001.11、第152号4面)
耐震設計審査指針の見直し(用語の解説)
現在、原子力安全委員会は、地震学上の新しい知見などを取り入れて、耐震設計審査指針(「指針」)の見直しを行っている。「指針」は、かなり以前から、専門家から「科学的に誤っている部分がある」と、具体的に批判されてきた。それが、95年の兵庫県南部地震では、「指針」の基礎の崩壊となって実証された。ところが、原子力安全委員会は、意外な手際の良さで、同年中には、兵庫県南部地震を踏まえても「指針」類は「妥当」とする報告をまとめた。このことによって、日本の原発は、耐震対策に重大な欠陥を抱えることとなった。今回の「指針」の見直しには、当初、この「妥当」報告は含まれないとされたが、原子力安全委員会も、条件づきながら、「指針が大きく見直されるような事態になれば、それをもとにした『妥当』報告も見直さざるを得ないかも知れない」と、いわざるを得なくなっている。
(2001.11、第152号8面)