「女川原発18年―住民監視を考える」全国交流集会
東電事故隠し徹底究明へ
「女川原発18年―住民監視を考える」全国交流集会は9月8日、原発問題住民運動全国連絡センター、全国交流集会宮城県・現地両実行委員会の共催で、宮城県石巻市の「JAいしのまき」で開かれ、20都道府県から200人余が参加しました。
集会は、議長に小山内孝全国センター代表委員(青森)、武藤清一郎宮城県連絡センター代表(宮城)を選任。虎川太郎共産党宮城県議団幹事長が来賓あいさつのあと、庄司捷彦宮城県・現地実行委員会委員長が歓迎を兼ねた開会あいさつで始まりました。
「特別報告」が、@「女川原発18年―住民監視を考える」(高野博・宮城県女川町議)、A「海山町の住民投票に勝利して」(山下正行・原発反対海山町民の会事務局長)、B「刈羽村の住民投票勝利とプルサーマルのとりやめめざして」(池田力・新潟県刈羽村議)、C「愚策『プルサーマル計画』を阻止する福島県民世論」(伊東達也・福島県議)と題して行われました。例年の専門家の講演にかわる「特別報告」は、各地の住民運動の到達点を豊かに示し、参加者に感銘を与えました。ついで中村敏夫・全国センター筆頭代表委員が「集会への問題提起」を報告。東京電力の事故隠しが、日本の原子力政策の根本的転換を迫るものであることを強調。この点で集会がかつてない意義をもつことを指摘しました。
午後の討論では、午前の報告への質問・回答のあと、18人が発言。参加者は、集会が掲げる緊急要求にもとづく共同行動の展開の意義などを確認し合いました。とりわけ、原発の危険に反対する緊急要求の一点での共同行動という運動論の重要性がこもごも強調されました。集会は「討論のまとめ」を確認、「女川からのアピール」を採択しました。増田善信東京連絡センター代表委員が閉会あいさつをのべ、集会は終了しました。
【警鐘】
●東京電力の事故隠しは、このほど、東京電力の社内調査委員会の報告書、原子力安全・保安院の暫定調査報告が発表され、幕引き≠うかがわせている●東京電力は、自主点検作業をした米GE社の指摘の一部について認め、会長・社長ら役員5人の辞任など処分を発表したが、多くは不適切な点はないとしている。根本的な反省もない。同院も法令違反を指摘しながら刑事告発はしないなど馴れ合い≠見せつけている●東京電力も同院も、GE社の指摘事項について「安全上問題ない」と懸命に説明する。しかし、国民は、東京電力が指摘事項を隠ぺいしたり、虚偽記載したりした事実に憤激している。電力会社と行政が協力≠オて国民をだましつづけたことを怒っている●結局、第三者機関による以外に、公正な調査は期待できない。
(2002.9、第162号1面)
「女川原発18年―住民監視を考える」全国交流集会が採択した「女川からのアピール」を紹介します。
東京電力の事故隠しに抗議し、原子力政策の根本的転換を求める
女川からのアピール
私たちは、きょう、東京電力の事故隠しにやり場のない憤りを感じながら、「女川原発18年―住民監視を考える」全国交流集会に集まりました。
集会は、原発の危険に反対する緊急要求について、
*中心スローガンとして、
「東電の事故隠し―いまこそ原子力政策の安全優先への根本的転換を」
*サブスローガンとして、
「原子力のあらゆる分野からの『安全神話』の一掃!」
「独立した安全規制機関の確立!」
「原発事故は第三者機関による徹底かつ総合的な再調査を!」
「『プルサーマル計画』を撤回せよ!」
「プルトニウム利用政策の抜本的見直しを!」
を掲げています。
この集会は、これらの緊急要求を支持する個人、団体なら、だれでも参加できるものとして開かれました。同時に、私たちは、この集会が、これらの緊急要求にもとづく共同行動を、ささやかであれ、展開し、前進させるための対話の契機とすることを表明します。
東京電力の長年にわたる、しかも多数にのぼる原発事故隠しは、集会が掲げる緊急要求にもとづく共同行動の展開・前進がいかに重要かを改めて示すものです。
東京電力の事故隠しは、東京電力が所有する福島第一原発(福島県双葉郡大熊町・双葉町)、福島第二原発(同富岡町・楢葉町)、柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市・刈羽郡刈羽村)の沸騰水型軽水炉(BWR)のほとんどにおよんでいます。事故隠しは、1980年代後半から1990年代にかけて、東京電力が米ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル(GE I I)社に発注した「自主点検」作業において行われ、蒸気乾燥器、シュラウド(水流仕切板)など7種類の重要な炉心機器の亀裂や摩耗などについて、事実を確認しながらなかったこと≠ノしたケース、実際より小さく見せかける∞日付を違える<Pースなど、記録の虚偽の記載は29件と報告されています。これら改ざんは、東京電力関係者の指示にもとづいて行われました。日本の原発史上、最悪の事故隠しといわねばなりません。
しかし、事故隠しがこれだけにとどまる保障はありません。国の事故隠し報告に入っていないものがある事実がすでに明らかにされ、現在も、事故隠し体質はつづいています。私たちは、東京電力内でもそれ以外でも、事故隠しの全容の徹底した究明を求めます。
これをやりとげるためには、従来のように、事故発生に直接責任があるもの同士の調査では、原因の究明も事故再発防止の保障もありません。私たちは、事故隠しにまったく無縁な第三者機関による徹底かつ公正な調査を要求します。
今回の事故隠しは2000年7月、GE社の元派遣社員が当時の通商産業省に内部告発したのを契機に発覚しましたが、この2年余、国の原子力安全・保安院は、疑惑のある原発の運転をつづけさせ、また、「プルサーマル」の「安全」宣伝を行なってその実施をはかるなど、東京電力の事故隠しの「協力者」となってきました。加えて、事故隠し報告のあとも、疑惑ある原発について、安全上問題はないとして運転を容認したり、さらには、安全規制の緩和の態度さえ表明していることは、国民にたいする二重三重の背信行為といわねばなりません。このことは、原子力安全・保安院が規制機関を自称したとしても、その実体は推進機関とまったく同体であることを示しています。私たちは、独立した規制機関の確立を強く要求します。
今回の事故隠しは、当然、原発立地関係自治体をはじめ、広く国民の不安と憤激を呼び、原発情勢は劇的に変わりつつあります。
昨年5月の新潟県刈羽村の住民投票は、「プルサーマル反対」の住民意思を明確に表明しました。また、福島県知事は「当面プルサーマルは認められない」として、エネルギー政策検討会を設置して検討会をつづけてきました。こうした住民、自治体などの活動が広い世論の支持を受け、事実上、政府も電力会社も「プルサーマル」を実施することができない情勢を生み出していました。今回の事故隠しは、「プルサーマル」推進に当たってきた自治体、推進派住民にも決定的ともいえる不信感を与え、「事前了解」を撤回する自治体が増えるなど、「プルサーマル」実施の手続き上の不可欠な前提さえ失うに至っています。私たちは、日本の原子力政策の安全優先へ根本的転換を要求します。「プルサーマル」計画を撤回すること、プルトニウム利用政策を抜本的に見直すことを要求します。
私たちは、21世紀のエネルギーを原発に依存することを改め、小型水力、風力、太陽光、バイオマス、地熱など再生可能エネルギーの積極的な開発研究にあたるとともに、ローカルエネルギー・ネットワークのために抜本改革に取り組むことを要求します。
私たちは、集会が掲げる緊急要求にもとづく共同行動を、国民のみなさんとともに誠実にすすめることが、日本の原発情勢の革新的打開への道と信じています。また、そのことが日本での苛酷事故(シビアアクシデント)を未然防止する力となることを確信します。それは、女川原発18年の住民監視の取り組み、新潟県巻町、同刈羽村、三重県海山町の住民投票の勝利など、全国の住民運動の実績に裏打ちされています。
さぁー、この集会を機に、共同行動に踏み出しましょう! その輪を広げましょう!
2002年9月8日
「女川原発18年―住民監視を考える」全国交流集会
(2002.9、第162号2面〜3面)
緊急要求の一致点での共同
裏打ちされた運動論に確信
熱気あふれる討論
全国交流集会の討論は、別記のように18人が発言しました。
いずれの発言も、東京電力の事故隠しを受けて、これを質さないわけにはいかないとの熱気がこもっているのが印象的でした。また、各地の運動の前進を反映して豊かな内容でした。参加者は、集会が掲げる中心スローガン、サブスローガン、のほか別記のスローガンにもとづく共同行動の展開を確認し合いました。とりわけ、事故隠しの第三者機関による徹底調査、独立した規制機関の確立、さらには原子力政策の根本的転換を求める気迫が込められていました。
新潟県巻町につづく同刈羽村、三重県海山町の住民投票勝利で裏打ちされた「緊急要求の一致点での共同行動」という運動論の重要性が改めて指摘されたのも、全国交流集会の大きな特徴でした。
<全国交流集会の発言者一覧>
(敬称略)(発言1人7分間)
@泊3号機増設とプルサーマル反対運動 斎藤敏夫(北海道)
A核燃料サイクル施設をめぐる状況 河内淑郎(青森)
BJCO臨界事故3周年茨城県集会 川又俊水(茨城)
C浜岡1号機事故が示す老朽化の危険 岡村哲志(静岡)
Dむつ市の中間貯蔵施設誘致と反対運動 石崎日出雄(青森)
E原子力委「市民参加懇談会」の動き 大橋 徹(新潟)
F耐震設計審査指針の抜本的見直しを 立石雅昭(新潟)
G原発の即時中止と建設の撤回 高橋礼二郎(宮城)
H福島第一・柏崎刈羽原発の調査から 野村存生(国会)
I原発の建物は建築確認はおりない 渡辺三郎(福井)
J東電事故隠しで九電に申し入れ 坂本 洋(佐賀)
K原発容認を前提に安全対策を 阿部克彦(宮城)
L上関原発反対の共同行動の拡大 森山文夫(山口)
M推進派から転じた人たちとの共同を 野木茂雄(福島)
N医療従事者の役割と後継者対策 西脇洋子(青森)
O脱原発社会をめざしてほしい 菅原聖子(宮城)
P再処理工場・核のゴミ化反対県民署名 小山内孝(青森)
Qパンフ「原発住民運動」と運動の課題 宮崎秀夫(東京)
*このほか「特別報告」への質問2(青森・宮城)と文書発言1(福島)
全国交流集会が掲げた原発の危険に反対する緊急要求
今回の全国交流集会が掲げた「中心スローガン」「サブスローガン」は、本号2・3面掲載の「女川からのアピール」に明記してあります。集会はこのほかに、次の一連のスローガンを掲げてひらかれました。
○有事法制反対! いかなる原子力施設へのテロ・攻撃にも反対!
○老朽化原発を酷使する「寿命延長」、「連続運転」、「定期検査短縮」など規制緩和をやめよ!
○使用ずみ燃料はサイト内に安全かつ厳重に保管せよ!
○耐震設計審査指針類及び指針類「妥当報告」の抜本的見直しと万全な耐震対策の確立!
○苛酷事故を想定した原子力災害対策の確立!「日本では苛酷事故は起きない」の「安全神話」の一掃!
○安全犠牲に新技術を「目に見えるコストダウン」に動員した新型超大型炉(ABWR及びAPWR)の新増設反対!
○六ヶ所再処理工場の建設・運転反対! 高レベル放射性廃棄物の「ガラス固化↓30〜50年の一時冷却貯蔵↓地層処分」方針に反対!
○21世紀のエネルギーを、危険なプルトニウム循環方式を軸とする原発推進政策に依存することをやめ、マイクロ水力・風力・太陽光・バイオマス・地熱など再生可能エネルギーの積極開発へ、発想から体制まで抜本的に転換せよ!
(2002.9、第162号4面)
各地からの便り
原発事故隠しで石川県に要望書
原発問題住民運動 石川県連絡センター
原発問題住民運動石川県連絡センターは9月12日、東京電力の事故隠しに関連して、北陸電力・志賀原発1号機(BWR,54万`h)について、3項目の対策を求める要望書を石川県に送付しました。
要望書は、@同機の第三者機関を含む体制での総点検と結果の公開、A独立した原子力規制機関を設置、原発の安全確保体制の強化、B定期検査の簡略化などの規制緩和から脱却し、検査体制強化を国に求めること、の3項目の対策を要望しています。
同センターは9月12日、石川県秘書課に交渉のセッティングを要請。要望書にもとづく交渉を9月25日、環境安全部長室で、同部と企画開発部と行うことになりました。
九電と知事に要請
川内原発増設の環境調査を認めるな
原発の危険に反対する鹿児島県連絡会
原発の危険に反対する鹿児島県連絡会は8月31日、須賀龍郎県知事にたいして、川内原発増設の環境調査を認めないよう要請しました。また、鎌田迪貞九州電力社長に、環境調査申し入れ撤回を要請しました。
九州電力は同3号機(APWR,150万`h級)増設の環境調査を2000年9月に、県知事と川内市長に申し入れ、反対世論が高まるなか、知事は「態度を保留とする」としています。
県への要請には、同会杉野武彦代表、井上森雄事務局長、代表委員の祝迫かつ子日本共産党県議らが脇田稔副知事に会い、要請書を手渡しました。
要請書は「世界の流れは原発からの脱却」と指摘、原発に依存するエネルギー政策からの転換を求めています。また、九州電力への要請は、同社鹿児島支店で行いました。
プルサーマル導入中止を「申し入れ」
原発問題全道連絡会
原発問題全道連絡会は9月12日、堀達也北海道知事にたいして、泊原発へのプルサーマル計画導入を容認しないよう要請しました。
同会は、これまで、泊3号機の増設に反対するとともに、プルサーマル計画の泊原発への導入は、現状の危険を格段に増幅するとして、知事が導入反対を国に申し入れることを要請してきました。これにたいして、道は「北電の説明がない」として、態度表明を先送りしてきました。ところが、同会が北電に検討状況をただしたところ、「2010年めどに実施」と回答したことから、知事の態度表明が直ちに行われるべきとして、知事の見解を改めて問うことになったものです。
また、同会は南山英雄北海道電力社長に同じ申し入れを行いました。
玄海原発の安全確保を
佐賀県原発問題対策協議会
佐賀県原発問題対策協議会(会長・真鍋毅佐賀大名誉教授)や玄海原発対策住民会議(坂本洋会長)など3団体が9月4日、九州電力・玄海原発(佐賀県玄海町)を訪れ、鎌田迪貞九州電力社長宛に、玄海原発の安全確保を求める申入書を提出しました。
申し入れは、東京電力の事故隠しに関連して▽国が求めている再点検の結果の公表▽定期検査、自主点検状況の説明▽点検記録の閲覧など、4項目について、半月後をめどに回答を求めています。さらに、エネルギー政策の転換、プルサーマル計画の中止を求めています。同原発は「本店に正確に伝える」と返答。
(2002.9、第162号6面)
「ヨーロッパ原発調査団 報告集」
「百聞は一見にしかず」の驚き
原発問題住民運動全国連絡センター刊行
パンフレット「ヨーロッパ原発調査団 報告集」が、このほど、刊行された。昨年8月29日から9月7日にかけて、全国センター派遣の調査団が、ヨーロッパのドイツ、スウェーデン、デンマーク三国を訪れ、原発、エネルギー事情について調査した報告書である。
この調査団は、原発の危険を憂慮する一点で、共通の立場に立つ住民運動関係者、地方議員、学者など13人で構成された。
ドイツでは、西南端のフライブルク市を訪ね、「エコシティー」としての取り組みを見学・調査した。また、フィリップスブルク原発を訪れ、「2020年初頭ころまでに原発廃止」の連立政権と電力会社との合意の実施状況などについて事情を聴くとともに、同2号機の格納容器内に入って見学した。
スウェーデンでは、オスカースハムで、高レベル放射性廃棄物の地層処分実験場を見学、合わせて研究施設でその開発研究の現状、使用ずみ核燃料の中間貯蔵施設を見学した。2010年の原発廃止の住民投票結果の実施状況などを聞いた。
スウェーデンからの帰路ストックホルムに立ち寄り、ノーベル記念館や受賞式会場なども見て回った。
デンマークでは、非原発エネルギー開発への国民的な取り組みについて、NGO環境団体「OOA」関係者から話を聞いた。非原発エネルギー開発の軸として、風力を位置づけ、市民参加型の推進により、国の新産業に振興させた取り組みには、興味深いものがある。
全国センターとしては、第2次チェルノブイリ事故調査(91年)、同第2次調査(96年)に代表を派遣したのをはじめ、フランスのラ・アーグ再処理工場、イギリスのソープ再処理工場、スイスの緊急時対策の調査(94年)、アメリカの原発事情調査(98年)につぐ海外調査であるが、今回パンフレットにも、「百聞は一見にしかず」の報告が多く寄せられている。住民運動の良き参考書といえよう。ぜひ一読をすすめたい。
(1部1000円上納)
(2002.9、第162号8面)
事故・トラブルの「国への報告」とは(用語の解説)
原発の事故は、原子炉等規制法、電気事業法など法令にもとづくものは当然報告すべきものである。また、法令にもとづかない軽微なものでも、大臣通達によって報告が求められている。つまり、法令にもとづくか、もとづかないかは別にして、軽微なものも含めて、原発の事故、トラブルは報告するようになっているということである。今回の東京電力、中部電力、東北電力の事故隠しは、いずれにしろ、許されるものではない。東京電力は、事故隠しの発端として、70年代に再循環ポンプ配管の「インディケーション(ひび割れの前兆)あり」と記載したところ、当時の通産省の検査官から「これではダメだ」と突き返されたと主張している。事故隠しは、国と電力会社の「癒着」から始まったことになる。もともと、技術的未確立の原発を実用段階にあるとして「安全審査」を行い、「安全」として建設・運転を認可している。これが「安全」実証のデータねつ造を生む構造になり、事故隠しの背景になっている。
(2002.9、第162号8面)