原子力委員会が再処理路線の維持方針に
    住民投票勝利を反古にしない
        新潟県刈羽住民からカンパ(1万円)と訴え

 原子力委員会の原子力長計策定会議は11月12日、使用ずみ燃料を再処理する核燃料サイクル政策を基本的に維持する方針を正式決定した。原子力委は同日、核燃料サイクル政策の中間とりまとめ案を提出、反対の委員もいたものの、最終的に了承されたとしている。中間とりまとめ案は、六ヶ所再処理工場で使用ずみ燃料を再処理し、処理しきれない分を中間貯蔵する、中間貯蔵された使用ずみ燃料の処理方策は2010年頃から検討するというもの。第二再処理工場計画は明記はされなかった。
 これを受けて同15日、都内で関係閣僚と青森県が協議する核燃料サイクル協議会が開かれ、政府は三村知事に核燃料サイクル政策堅持の方針を伝えた。
 今回の決定は六ヶ所再処理工場の2006年操業開始へゴーサインを出すためで、年内にもウラン試験を強行する事態にも…。原子力委員会が政策の基本的検討よりも現状追認に「見切り発車」した。
 この報道を受けて、新潟県刈羽村の住民投票で勝利をかちとった住民から「プルサーマル計画反対運動を経験した一人として心配」だとして、使用ずみ燃料について「国はどう処置・処分するか」をまず広く議論し、決定すべきであるとの訴えがカンパ1万円を添えて事務局に届いた。
 この刈羽村の住民投票の勝利を反古にしないという決意は、核燃料サイクル政策について憂慮する人びとすべてが共有するものであろう。


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【警鐘】

●日本原子力産業会議(西沢潤一会長)が、このほど、「2050年の原子力‐ビジョンとロードマップ」をまとめ、そのなかで原発を廃止するシナリオを初めて示したとして、原発推進団体が「原発廃止シナリオ」をまとめたのは珍しいなどのコメントが流される●しかし、その報告は、原発を倍増する「拡大シナリオ」との対比のためといいながら、その内容は「(原発廃止は)化石燃料に大きく依存し、排出される二酸化炭素を回収・投棄するコストもかさむ」と、原発拡大の有用性を認めるものとなっている●これは「拡大」と「廃止」の対比の比較検討に目的があるのではない。こうした対比の方法論までを、原発拡大の広報・説明に動員する姿勢に異常なまでの執念が伺える。住民運動もこれを上回る執念を必要としているということ。

(2004.11、第188号1面)



 惰性だけが罷り通る「策定会議」
     「長計に対するご意見を聴く会」
          で出された意見をどう扱う?


 原子力委員会の原子力開発利用長期計画(「長計」)策定会議は11月12日、使用ずみ燃料を再処理する既定の核燃料サイクル政策を維持する方針を正式に決定した。
 しかし、この決定の明確な説明はなく、というよりも、既定政策維持の「惰性」だけが機能した経緯から説明できないというのが正直なところであろう。
 次期の第10回「長計」には、六ヶ所再処理工場を稼働させるか運転しないで放棄するか、「もんじゅ」の運転を再開させるか廃棄するか、の根本的な選択が好むと好まざるとにかかわらず迫られる。その点では第1回「長計」(1956年)以来、事実上、日本の原子力政策で主流と位置づけられてきた高速増殖炉路線を軸とする核燃料サイクル政策が行き詰まりに直面した現状を直視した検討・議論が求められている。なかでも、高速増殖炉を「将来の原子力の主流となるべきもの」と明記した第3回「長計」(1967年)は、その根拠について、「核燃料問題を基本的に解決する炉型」として、「高速増殖炉は、消費した以上に核分裂性物質を生成しながら発電を行うことにより、天然ウランのほとんどすべての利用を可能」とまで書いた。
 天然ウランには核分裂性ウラン-235は0.7lしか含まれていない。原発ではこれを3〜4lに濃縮して燃料とする。残る99.7lは非核分裂性ウラン-238であるが、炉心の核分裂反応で中性子を吸収して核分裂性プルトニウム-239となり、この核分裂反応によるエネルギーも発電に寄与する。そこで、非核分裂性ウラン-238から生成された核分裂性プルトニウム-239を新たな燃料とする高速増殖炉開発への期待が生まれ、これが「夢の原子炉」といわれる。
 ところが、その実現は実用技術があっての話である。アメリカ、フランス、イギリス、ドイツなど主要国は、技術的経済的困難、核不拡散などを理由に、高速増殖炉路線からは早々に撤退している。「もんじゅ」事故は、世界の流れが間違っていないことを示した。
 もし仮に、技術開発ができたとしても、「天然ウランのほとんどすべての利用を可能」とする「長計」の記述はありえないことである。このようなウソで日本原子力政策を誘導してきた原子力委員会の歴史的責任こそ、今回「長計」策定で問われるべきものである。
 また、今回「長計」では、初めて再処理と直接処分のコスト比較(別記参照)を行い、再処理が割高という試算を出していながら「再処理推進」という矛盾した政策決定をしている。また、試算では「政策変更コスト」なる費用を出しているが、これも結論を再処理に誘導する意図が見え見えである。
 プルトニウム純増事態など原子力政策の行き詰まりへの検討はまったくない。


  再処理総額は42兆9000億円

 原子力委員会は10月22日、使用ずみ燃料をすべて再処理する場合、総額42兆9,000億円の費用がかかるとする試算を公表した。直接処分する場合は、30兆〜38兆6,000億円かかると試算している。
 経産省はこの1月、同様のコストを18兆8,000億円とする試算を出している。
今回の試算は、従来の試算を大幅に上回る結果となっている。これは両者の試算の前提条件が異なることによる。対象期間が前者は、2002〜2060年の59年間。後者は40年間で、原子力委員会が試算に含めた核燃料の加工費などは除外されている。
 原子力委員会は、核燃料サイクルのコスト比較をすすめ、使用ずみ燃料を全量再処理する場合の費用は1kWh当たり1.6円、使用ずみ燃料をそのまま地層に埋める直接処分の場合は同0.9〜1.1円と、再処理が45〜77l割高とする試算を、すでに出している。 今回、これを踏まえ、コストの総額を試算したもの。


(2004.11、第188号2面)



 「時期尚早で拙劣、将来に禍根」と批判
    国民的議論を経て見直しも含め結論を
        保安院の経産省からの分離再度強調
            佐藤栄佐久福島県知事

 佐藤栄佐久福島県知事は11月17日、定例記者会見で、原子力開発利用長期計画の改訂で核燃料サイクル政策の維持を決めた原子力委員会の策定会議について、「時期尚早。国民がほとんど知らない中での決定は拙劣で将来に禍根を残す」と批判。これまで国民的議論を経て見直しも含め結論を出すべきと主張してきた。
 佐藤知事は、「(策定会議は)欠陥までとはいわないが、4分の3が推進派と聞く」と人選に問題があると指摘。関西電力美浜3号機死傷事故にも触れ、「事故を起こした責任者(藤洋作関電社長)も策定会議に参加して発言している」と、安全に対する同会議の姿勢に疑問を呈した。
 佐藤知事は「エネルギー政策はじっくり検討すべきで、フランスは15年、ドイツは20年かけて議論した。それに対して日本の核燃料サイクル政策は5カ月できめてしまった」とのべ、「(使用ずみ燃料をそのまま埋める)最終処分場の(設置場所が決まらない)問題を真剣に考えないで先送りしているのが一番問題」と憤りを隠していない。
 また、佐藤知事は原子力安全・保安院を推進官庁の経産省から分離すべきだと改めて強調した。同19日、福島市内で開かれる北海道東北地方知事会議で各道県に対して共同歩調を呼びかけるとしている。
 これに先立つ同16日、原子力安全・保安院の松永和夫院長は福島県大熊町の福島オフサイトセンターで記者会見し、県が求める保安院の経産省からの分離について「現在の規制体制の実績を積み上げていくことが大切」として、分離の考えがないことを強調した。


(2004.11、第188号3面)



 伊方3号機プルサーマル計画
     愛媛県知事が「了承」方針


 四国電力が愛媛県伊方町の伊方3号機(PWR,89万`h)で予定しているプルサーマル計画について、加戸守行愛媛県知事は10月25日、四電が国に行う原子炉設置変更許可申請の「事前了解願」に対して、「基本的安全性は確認されており、断る特段の理由はない」として、了承する方針を決めた。
 また、同22日開かれた伊方町議会の原子力発電特別委員会(全議員)は、四電からの「事前了解願」について了承。これを受けて中元清吉町長も了承の意向を表明した。委員会後に記者会見した渡辺委員長は「全員一致で受け入れに賛成した。伊方原発には安全運転を最優先し、管理体制、情報公開することを求めた」と説明した。


  「愛媛県民共同の会」が国への署名運動

 伊方等の原発の危険に反対する愛媛県民会議は、愛媛労連、愛媛労組会議などとともに、四電の伊方原発のプルサーマル計画中止を求める「愛媛県民共同の会」を結成し、国の安全審査を中止するよう署名運動などをすすめる方針である。

(2004.11、第188号4面




各地からの便り


 「聴く会」で2分間の論陣
      核燃料サイクル施設立地反対連絡会議

 原子力委員会は長計策定会議で核燃料サイクル政策の維持方針を固めながら10月20日、青森市内のホテルで「長計についてご意見を聴く会」を開いた。約300人が参加した。地元住民の意見を聴取したという体裁を整えるための「駆け込み開催」である。
 核燃料サイクル施設立地反対連絡会議から小山内孝事務局長、河内淑郎同次長が参加。小山内事務局長が粘り強く挙手をつづけ、発言の機会を得た。発言時間は2分。
 同氏は、原子力船「むつ」問題を例に引き、当時の政府が「これからは原子力船の時代」と鳴り物入りの大宣伝をしたのに、結局は巨費を投じながら「廃船」となった事実をあげ、六ヶ所再処理工場でプルトニウムを抽出しても、先の展望がまったくないことを指摘。核燃料サイクル政策の根本的見直しを求める論陣を堂々とはった。

    <青森県へ申し入れ>

 同連絡会議は10月28日、三村申吾青森県知事にたいして「国の原子力長計への県民意見の徹底反映とウラン試験・安全協定への拙速な締結中止を求めます」との「申し入れ」を行った。
 諏訪益一代表委員のほか阿部喜美新婦人事務局長、木村充民医連代表、小山内孝事務局長、河内叔郎同次長が参加。県側は資源エネルギー課、原子力安全対策課の担当者が対応。申し入れは国及び知事にその旨伝えると答えた。


  美浜3号機事故、プルサーマル問題等で石川県に申し入れ
      原発問題住民運動石川県連絡センター


 原発問題住民運動石川県連絡センターは11月15日、石川県庁内会議室で、「原発問題に関する申し入れ書」を県に提出、環境安全部との交渉を行った。尾西洋子代表委員、飯田克平日科原子力問題研究委員会委員、児玉一八事務局長ら9人が参加。県側は鈴木正幸環境安全部次長らが対応した。
 今回申し入れと交渉は
 @美浜3号機事故をふまえた安全対策、
 A志賀1号機で続発する事故・トラブルへの対応、
 B志賀2号機(ABWR)の建設を止めること、
 C志賀1号機のプルサーマル計画を拒否し、再処理は抜本的に見直すこと
―などの緊急要求の実現を求めて行われた。
 県側は、美浜3号機のような高温高圧水が流れるエリアは志賀原発では立ち入れず、今後も安全確保に引き続き指導する、事故続発には「ハラワタが煮えくり返る」、増設問題には温暖化対策に優れている、出力調整運転は安全と聞いている、プルサーマルにはMOX燃料の健全性は確認されている、再処理見直しにはプルトニウムの透明性の確
保が重要などと回答。県独自の判断の基礎は示さず、基本的に国の言い分をオウム返しにしたものであった。
 これらの回答に対して、住民運動側の参加者は、テーマごとに、回答内容を質すとともに、県が責任説明を果たしていないことを指摘。
 石川連絡センターは、この交渉経過を「ニュース」に詳しく編集して、地域住民に広く伝えた。


  静岡の読者から
       本紙を使った詩


 静岡県岡部町の読者から本紙「『げんぱつ』を使って作品を同人誌へ出します」の便り。「安全神話は」と題する詩は「全国の原子力発電所事故はこの9月は18件」と187号の「9月の事故」を引用して始まる形。便りは「中越地震で原発情報がマスコミからは何も伝わって来ません。心配です」と結んである。



(2004.11、第188号6面)



 国民の不安は原発の現実の危険が背景
     「原子力広報の新展開」のすり替え



 京都大学で開いた日本原子力学会秋の大会予稿集(T〜V。各4000円)がこのほど刊行。その中で「原子力広報の新展開」というテーマを掲げ、原子力広報のあり方をめぐって多くの報告や提案が行なわれた。
 同学会の社会環境部会長である岡芳明東京大学教授は、原子力広報のあり方について「産業界からメデイアへの戦略的な広報」「原子力理解活動のための教育訓練の実施やガイドラインの作成」など五つの課題をあげ、「合意や信頼形成の本質が心理的理解であるのにそれを達成する方法を理科系の人間は勉強していないのでは?」と指摘。米産業界や米原子力学会の取組み、NRC(米原子力規制委員会)の「原子力広報ガイドライン」などを参考にすべきだと提案している。
 しかし、この指摘には基本的な見当違いがある。原発の危険に関する国民の理解が「心理的」な漠然とした不安にあるのではない。JOC臨界事故、「もんじゅ」事故、東電や関電の不正・事故隠し、美浜3号機死傷事故など、繰り返される不祥事・事故を通じて、原子力事業者の安全軽視の企業行動、安全問題に対する政府の弛緩した姿勢の危険性など厳然とした事実にもとづいていることに、まったく気が付いていない。
 『エネルギー』(11月号)の特集「コミュニケーション&エデュケーション」でもこの議論が取り上げられている。日本の原発政策が行き詰まりを見せる中で、「原子力広報」を打開する切り札として推進関係者が重視しているからであろう。
 この種のすり替えはこのところ大盛況の「原子力広報」に共通するものである。
 アメリカから学ぶとすれば、TMI原発事故が発生した際、大統領直属のケメニー委員会をつくり、推進関連機関の活動はもちろん、推進機関から独立した規制機関であるNRCの活動も調査対象として公正かつ厳格な報告書をまとめたことを特記すべきであろう。また、NRCが推進行政から独立して独自の能力と権限を持って安全規制に当たっている事実を銘記すべきであろう。原子力関係者が国民にわかりやすい言葉で説明するのは当然だが、国民が信頼できる安全規制体制を構築することが不可欠の前提であろう。


(2004.11、第188号8面)



 「核化学反応」とは?(用語の解説)

 放射能をもった不安定な原子核は「アルファ崩壊」「ベータ崩壊」など、自発的に核反応を起こして他の原子核に変わる。ある原子核が中性子を吸収した場合、質量数が一つ増えるが、原子番号は変わらない。この場合、一般的には原子核は不安定になって放射性元素となり、「ベータ崩壊」や「アルファ崩壊」して、安定した元素に変化する。より安定な方向へ元素が変化し、物質が変化する。原子番号が変化して化学的に別の元素に変わるのだから、厳密には「核化学反応」といわれる。宇宙は、原子核が核化学反応により生々流転しているシステムである。さまざまな原子核がすべて同じように安定なのではない。各原子核の安定度は、結合エネルギーを核の質量数で割れば、「原子核の結合エネルギー曲線」として陽子、中性子一個当たりエネルギーで表示される。そのなかで、一番低く安定なのは鉄・ニッケルである。宇宙では物質の生々流転の終点は鉄・ニッケルである。天から隕鉄が降ってくるのも、地球の中心部が鉄・ニッケルとされるのもそのためである。


(2004.11、第188号8面)