北陸電力・志賀2号機
    金沢地裁が初の原発差し止め判決
         「耐震指針」の基礎崩壊を認定

 石川県志賀町の北陸電力・志賀2号機(改良型沸騰水型軽水炉=ABWR、135.8万`h)の耐震性に問題があるなどとして、住民ら135人(うち3人死去)が北陸電力(富山市)に運転差し止めを求めた訴訟で、金沢地裁(井戸謙一裁判長)は3月24日、住民側の請求を認める判決を下した。判決は、地震による事故で許容限度を超えた被曝の恐れがあるとして、原子炉から最大700`離れた熊本県を含む16都府県の原告すべての請求を認めた。
 原発の運転差し止め判決は初めて。北陸電力は即時控訴して運転継続の方針。志賀2号機は3月15日、営業運転を開始したばかり。稼働中の原発では2番目の大型原発である。 
 井戸裁判長は、原発の「耐震設計安全審査指針」(耐震指針)による設計用最強地震、設計用限界地震の基準地震動の評価の基礎となっている「松田式」「金井式」「大崎式」などへの疑義を指摘している。
 「松田式」を用いて地震の規模を想定するのは想定される地震規模を小さく予測してしまう危険がある、マグニチュード(M)と震源距離から岩盤上での地震動を想定する「金井式」の適用の限界は慎重に見定めるべきである、としている。
 原発敷地の解放基盤表面における応答スペクトルを表した「大崎スペクトル」については、その妥当性は観測結果との整合性にかかっているとして、@1995年1月17日の兵庫県南部地震の観測結果は、「大崎の方法」によって導き出される基準地震動が現実の地震動よりも過小なのではないか、の疑問を生じさせた、A2005年8月16日の宮城県沖地震(M7.2)の際、女川原発の敷地で観測された加速度は「大崎の方法」(金井式)で想定した結果を上回った、と断じている。また、直下型地震がM6.5を超えないと断ずる合理的根拠はないなど、「指針」の基礎が崩壊していることを認定した。
 さらに、「指針」にもとづくものでも、国の地震調査委員会がマグニチュード7.6の地震が起きうるとした「邑知潟断層帯が考慮されていない」と指摘した。
 その上で、原発で地震が原因で最悪の事故が生じたと想定した場合、原告のもっとも遠方の熊本の原告も許容限度をはるかに超える被曝の恐れがあるから、原告全員に具体的危険が認められるとして、全員の請求を認めた。
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【警鐘】

●金沢地裁は原発の運転を差し止める判決を下した。日本で初めてのことである。重要なことは、原発の耐震設計自体に問題があるとする住民の訴えを認めたことである●先の名古屋高裁金沢支部の「もんじゅ」の設置許可無効判決は、原子力安全委員会の一連の「安全審査指針」類については「是」とした上での判決であった。今回判決は「耐震設計審査指針」そのものに踏み込み、この「指針」の基礎の崩壊を認定したことは画期的である●「耐震指針」については、1995年、兵庫県南部地震の岩盤上の地震動の記録が、日本のすべての原発の耐震設計値を超え、その基礎の崩壊が明らかとなった。安全委は当時、「指針」の「妥当」報告をしたが、国民の納得は得られていない。現在、見直し作業中だが、すべての原発の耐震対策が急務である。

(2006.3、第204号1面)



 玄海3号機への「プルサーマル」導入反対
      唐津市で集会とデモ

 佐賀県原発問題対策協議会、玄海原発対策住民会議などの呼びかけによるプルサーマル反対集会実行委員会が主催する九州電力の玄海3号機への「プルサーマル」導入に反対する集会が佐賀県唐津市栄町の佐賀県解放会館で開かれ、県内はもちろん福岡県、長崎県、鹿児島県などから労組、市民団体、漁協など30団体、約350人が参加しました。集会後、参加者は市内中心部をデモ行進し、「プルサーマル導入反対」を市民に訴えました。
 集会では、原発問題住民運動全国連絡センター柳町秀一事務局長が報告。「プルサーマルが現状の玄海原発の危険を増幅するだけのもの」で「百害あって一利なしのプルサーマルは断じて許せない」と強調。「プルサーマル反対」は思想信条の違い、玄海原発への賛否意見の違いを超えて、広く共同行動を前進させることを呼びかけました。
 集会では、玄海原発3号機へのプルサーマル導入反対、「住民投票」の実施、唐津市との「安全協定」の締結、公開討論会の開催、安全で持続可能なエネルギー開発などを求める「集会宣言」を採択しました。

(2006.3、第204号2面)



 唐津市で「全国交流集会」開催

〈全国交流集会〉

 ○集会が掲げるメーンスローガン
  玄海原発3号機へのプルサーマル導入反対
    ―いま、まともに原子力政策を見直すとき―
 ○日時―9月17日(日)午前10時〜午後3時
 ○場所―佐賀県唐津市「市民会館」

〈現地見学と懇親会〉

 ○現地見学―9月16日(土)午後1時〜(実費負担)
 ○懇親会 ―同       午後6時〜


(2006.3、第204号2面)



 機器冷却系の海水取水不能
      津波引き潮5b―原発8割
         吉井質問に原子力安全・保安院長が答弁


 津波による5bの引き潮があった場合、日本の原発の8割相当の43基の原発で、機器冷却系の海水取水が不能になることが3月1日、衆議院予算委員会分科会における日本共産党吉井英勝衆議院議員の質問で改めて明らかになりました。
1960年のチリ津波時に女川原発で機器冷却系海水(RCWS)の取水が不能になることが明らかとなり、住民運動側は一貫して追及した結果、3号機建設時に10b浚渫工事を実施させ、対策を講じさせました。また、福島第一、第二原発でも同じことが明らかとなり、住民運動側は万全な対策を迫っていました。
 吉井質問は、これらを踏まえたもので、広瀬研吉原子力安全・保安院長は、海面が4b低下した場合で28基、5b低下で43基、6b低下で44基の原発の機器冷却系海水の取水に一時的に必要な水位を下回ると答えました。
 吉井議員は、浜岡1号機を例にとり、取水槽の容量から、水位低下で取水不能となった場合、「34秒で冷却不能となる」と指摘、また、運転停止した場合、崩壊熱の冷却に毎分60dの冷却水が不可欠で、炉心溶融事故になりかねないとして、緊急な対策を求めました。原発では、安全上、核分裂熱と崩壊熱の二つの熱の制御が基本条件です。


(2006.3、第204号3面)



 六ヶ所再処理工場アクティブ試験
     の危険性を考える学習・決起集会
         クリプトン除去技術あるのに全量放出
              講演で市川氏(元原研研究員)が指摘

 核燃料サイクル施設立地反対連絡会議は3月4日、青森市内で「六ヶ所再処理工場アクティブ試験の危険性を考える学習・決起集会」を開き、約110人が参加した。
 市川富士夫氏(元原研研究員)が講演し、同工場からクリプトン85は全量大気中に放出されるとされているが、実はクリプトンの除去・保存技術は旧動燃が研究をすすめ、ほぼできあがっているにもかかわらず、日本原燃が経済的理由から除去装置を取り付けていないことを指摘。しかも、旧動燃が東海再処理工場に取り付けなかったのは、六ヶ所でも装置を取り付けないわけに行かなくなるからだったとのべ、日本原燃の安全無視の姿勢は、再処理工場運転の資格を欠くことを強調しました。
 集会は、核燃料政策の見直しとアクティブ試験、本格操業の中止を求める決議を採択した。
 集会には青森県反核実行委員会、核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会から連帯のメッセージが寄せられた。


  3団体が試運転中止求める
      「共同アピール」を知事に渡す

 核燃料サイクル立地反対連絡会議(諏訪益一代表委員)、青森県反核実行委員会(渡辺英彦実行委員長)、核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会(平野良一共同代表)は3月4日、青森市内のホテルで三村伸吾知事に対して、日本原燃がすすめる六ヶ所再処理工場のアクティブ試験(試運転)の中止を求める「共同アピール」を手渡した。
「共同アピール」は上記3団体が呼びかけたもので、73団体、37個人が賛同、名前を連ねている。「共同アピール」は、アクティブ試験の問題点を指摘し、@アクティブ試験の中止、A県民への十分な情報提供と県内一円での説明会の開催、Bアクティブ試験の是非を問う県民投票の実施、などを求め、文書での回答を要請した。


  青森県が意見聴取
      八団体は「中止」主張

 三村伸吾青森県知事は3月4日、青森市内のホテルで、アクティブ試験について、県内各団体から意見を聴取した。これは核燃料サイクルに反対している団体が、知事との対話集会を要請したのを受けて開かれたもの。各団体代表8人が、県民の健康や農業に与える影響、高レベル放射性廃棄物の最終処分の不透明さなどを指摘、アクティブ試験の中止を主張した。
、核燃料サイクル施設立地反対連絡会議事務局長小山内孝氏は、放出される放射性廃棄物の総量規制もなく、研究開発の体制がないことを強調。「事業者は使用済み燃料を青森県に運び込めばいいと考えているのではないか」「これでは青森が核のゴミ捨て場になる」と指摘した。


  日弁連がアクティブ試験を
      実施しないことを求める声明

 日本弁護士連合会は、このほど、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場で予定されているアクティブ試験(試運転)を事業者の日本原燃が実施しないことを求める声明を出した。
 声明は、アクティブ試験について「使用済み核燃料を使う最終段階の試験で、事実上の運転開始」と指摘している。「工場や周辺環境への放射能汚染が現実化し、後戻りがきわめて困難になる」として、青森県と六ヶ所村に、試運転に向けた安全協定を結ばないよう要請している。


(2006.3、第204号4面



各地からの便り


  「プルサーマルで東海村が先行することはない」と村長答弁
        茨城県東海村議会で永井一郎村議(共)が質問

 茨城県東海村議会で3月8日、日本共産党の永井一郎村議が一般質問の中でプルサーマル問題を取り上げ、村上達也村長の見解をただした。
 永井村議は「いままで村長は、議会でプルサーマルについての質問に対し、福島、新潟等の先発県がやらない限り、東海村は先行することはないと明言してきたが、いまでもその方針に変わりはないか」とただした。
 これに対して、村上村長は、「電事連、日本原電の発表で、東海2号炉でプルサーマルの計画があることは承知している。しかし、具体的に申し入れはきていない。東海村は原子力発祥の地だから、すべて原子力開発の先陣を切らねばならないという時代ではなかろう。東海村は人口密度の高いところに存在しているし、また、東海村は二度も重大な原子力事故に遭遇している。JCO臨界事故においては周辺10`圏内の住民31万人が屋内待避を勧告されたという歴史も体験している。慎重の上にも慎重を期して対応していきたい。かつて、福島、新潟が先発ということでスタートされたが、頓挫した。整理が必要。東海村がプルサーマルを沸騰水型で先陣を切らねばならないという意識は持っていない」と答えた。


  志賀2号機営業運転開始に関する声明
       原発問題住民運動石川県連絡センター

 原発問題住民運動石川県連絡センターは3月14日、「志賀原子力発電所2号機の営業運転開始について」の声明を発表しましたが、翌15日、この声明を石川県谷本正憲知事と北陸電力水原功社長に送付しました。 声明は、同2号機(改良型沸騰水型軽水炉=ABWR,135.8万`h)の営業運転開始が電力需要上、なんら必要性がなく、県民に危険だけを押しつけるものと批判しています。また、ABWRは苛酷事故に対する設計概念を変更したものでなく、現在稼働中の炉をスケールアップしたもので、核分裂生成物の潜在的危険性は最も高いものと指摘。出力の巨大化による炉心部熱量密度増大も危険を高めるものと追及しています。
 声明は、北陸電力が安全に運転できるか危惧されるとして住民監視を訴えています。


  パンフレット「いままともに見直すとき
      『満身創痍』の原子力政策」学習会
            新日本婦人の会北海道本部

 新日本婦人の会北海道本部は3月13日、食べ物と環境部の会議で1時間、パンフレット「いま、まともに見直すとき 『満身創痍』の原子力政策」をテキストに学習会を開きました。
 原発問題全道連絡会の菅野一洋事務局長が原発の仕組みや歴史も触れながら、軍事開発の「落とし子」としての原発と再処理、高速増殖炉の導入だけが中身の吟味もなくすすめられている日本の原子力政策について説明、そのことが原子力政策のあらゆる局面で、行き詰まりに直面する根源となっていることを指摘しました。
この事態の革新的打開の方向として、@原発推進とプルトニウム利用の根本からの見直し、A独立した原子力規制機関の確立、B原子力政策は国民的議論の上で、国会審議を経て決める、の三点を提起しました。
 新婦人道本部と各支部では、この間、原発問題住民運動全国連絡センターが呼びかけている、小泉首相宛の「原子力政策を根本から見直してください」全国署名に取り組み、道本部・支部の団体署名と400人を超える個人署名を集めています。


(2006.3、第204号6面)



 『原子力eye』06年3月号 特集
   「エコロジストと原子力発電融合≠フ軌跡」
     原発の現実の危険を直視し、
       住民の安全を守る立場の欠如



 『原子力eye』3月号は、「原子力支持に転向したエコロジスト/P・ムーア氏の真髄に迫る」と題した環境団体グリーンピースの共同創設者であるパトリック・ムーア氏と木元教子原子力委員の「巻頭特別対談」を載せている。
 対談では、木元委員が、なぜ「原子力支持に転向した」のか質問しているが、その答えは「エネルギー安全保障と経済性および安全性がハイレベルで認識されている」と原発推進側の言い分を何の論証もなしに繰り返している。
 この特集のねらいが、「環境主義のリーダーの口から」原子力支持、とりわけ「2050年頃からFBRを商業用として導入する計画」について、「そこが、日本のすばらしいところの一つですね。2050年という先のことを考えられるのが、日本人のすごいところ」と「原子力政策大綱」に支持を表明させることにあることは明らかだ。
 対談で、いつから原子力反対でなくなったかの問いに、同氏は「原子力反対が変わったのは、5年くらい前」で、それまでは「(故郷の)ブリッテイシュ・コロンビア州には原子力発電所はありませんし、北米では、原子力発電は15年ぐらい過去のものという認識」だったが、「原子力と気象変動の関係に気がついたとき」、「環境学者のジェームス・ラブロック博士が原子力推進派だというのを聴いてから」と答えるとともに、「実はスリーマイルアイランドは本当は大事故ではなかったのですが、人々は大事故だとイメージされています。それで不安が生まれ、過剰規制が生じて、建設コストがあがったため、原子力技術がそこで暗礁に乗り上げ、停滞してしまった」とまでのべている。その上での「原子力政策大綱」の方向に支持を表明しているのである。
 TMI事故が住民の健康に影響はなかったというのが今日までの米国の公式発表だが、大事故と認識されたのは被害の実態にもとづくもの。同氏の言い分は、事実にもとづいて徹底的に論破されてきたものである。
 原発の危険から住民の安全を守る立場に立たなければどうなるのか、同氏の転向の教訓ではなかろうか。

(2006.3、第204号8面)



 「放射線」と「放射能」の違い? (用語の解説)


 電離放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線、中性子などがあり、非電離放射線には紫外線、赤外線やマイクロ波などがある。放射線とよく似た放射能という用語がある。放射能とは、@ある種の原子が自発的に壊変して別の種類の原子に変化する性質あるいは能力のことをいう、A一秒間に何個の原子が別の原子に変化するか、つまり放射能の強さのことをいう、B放射性原子あるいは放射性物質のことをいう。Bは専門家は使わないが、世間ではよく使われる。「放射線漏れ事故」と「放射能漏れ事故」とは違う。「放射線漏れ事故」は、Bの意味の放射能漏れはないが、放射線だけが遮蔽物を突き抜けて漏れ出ている事故を意味する。この場合は、放射線による外部被曝が問題になる。「放射能漏れ事故」は、Bの意味の放射能が遮蔽物のひび割れや穴から漏れ出ている事故を意味する。この場合、外部被曝だけでなく放射能を体内に取り込むことによる内部被曝が問題となる。


(2006.3、第204号8面)