六ヶ所再処理工場アクティブ試験強行に
    知事に抗議と試験中止申し入れ
         核燃料サイクル立地反対連絡会議

 核燃料サイクル施設立地反対連絡会議は3月30日、三村伸吾・青森県知事が、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の前提となる安全協定を日本原燃と締結したことに抗議するとともに、試験中止を求める申し入れを行った。合わせて、「六ヶ所再処理工場の稼働テストとあらゆる核廃棄物搬入の中止を求める署名」(4,927筆)を佐藤光彦・県商工部次長に手渡した。
 この抗議・要請には、立地反対連絡会議の諏訪代表委員、同小山内事務局長、同河内次長、県教組の一戸委員長、新婦人の阿部事務局長、県農民連の宮川事務局長、同千葉次長、日本共産党の三上県議らが参加した。
 県農民連代表は、「青森県のリンゴはこわくて食べられなくなるのではないかと心配です」(大阪のリンゴの共同購入者)の声を紹介、アクティブ試験の中止を求めた。県農民連は前日29日にも、三村知事に対する独自の抗議・要請を行った。
 三村知事は3月28日、午後8時48分、アクティブ試験開始に同意することを表明。会見終了後、県庁内で勝俣恒久日本原燃会長に安全協定案を提示した。翌29日、青森市内のホテルで県と六ヶ所村は日本原燃と安全協定を締結。年度末ぎりぎりの31日、日本原燃は六ヶ所再処理工場で、使用済み燃料を本格操業と同じ工程で処理する試運転を開始した。
 4月1日、使用済み燃料の切断、溶解作業をはじめ、同日夜、放射性クリプトン85が高さ150bの主排気筒から放出されるのが確認された。モニターによると、1日午後8時40分、分当たり1,797カウント。稼働前は約15カウント。六ヶ所再処理工場から放出されるクリプトン85は、33京ベクレル(京は兆の一万倍)。これは110万`h級原発の制限値の約400倍にものぼる。クリプトン除去技術は相当早い時期に開発されているにもかかわらず、取り付けられていない。安全無視の体質がここにも示されている。
 再処理施設の試運転強行で、日本の原子力政策は新たな段階に突入した。立地反対連絡会議は、今後、原発問題住民運動全国連絡センターの「原発政策を安全優先の立場で根本的に見直してください」署名を軸に、六ヶ所再処理工場の危険から、原子力災害から、風評被害から住民の命と健康を守る共同行動を広く展開するとともに、事業者や県が一体となってすすめる「まやかし」宣伝を打ち破る学習会活動など、新たな局面に見合った運動を構築して、事態の打開をはかるとしている。
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【警鐘】

●日本の文明は明治維新前までは中国文化を借用しながら民族状況に適合させていった。維新以後は西洋文化を取り入れながら同じように適合させていった●日本では、前者のそれを「和魂漢才」と呼び、後者を「和魂洋才」といって区別している。現在も「和魂洋才」の時代はつづいている。横文字を立て文字に「翻訳」する文明というところであろうか●日本で、この「翻訳」の体制が確立されているのか、「翻訳」自体が適切に行われているか、十分検証に値する問題であろう。明治維新以来、この「翻訳」の隙間を、政治が一貫して利用してきた伝統を知る人は少ない●国際的な重要文書について関係省庁が「翻訳」に当たった事例はまず見当たらない。あったとしても手前みそ的「翻訳」である。最近の「安全白書」はそのことを端的に示している。

(2006.4、第205号1面)



 金沢地裁が志賀原発の運転差し止め判決
     許容限度超える放射線被曝する具体的危険がある
         「耐震設計審査指針」の基礎の崩壊を認定

       梅夫・桜子の一問一答

 志賀原発2号機(改良型沸騰水型軽水炉=ABWR,135.8万`h)について住民が建設差止請求した訴訟で、金沢地裁(井戸謙一裁判長)は3月24日、本件原子炉の耐震設計に問題があり、「本件原子炉の運転により、周辺住民が許容限度を超える放射線被ばくする具体的な危険がある」として、北陸電力に対して「運転してはならない」との判決を言い渡した。この判決について、「梅夫・桜子の一問一答」として、話し合いました。


  許容線量を超える被ばくの具体的危険がある

〈桜子〉 今回の金沢地裁の原発の運転差し止め判決は初めてね。
〈梅夫〉 志賀2号機の耐震設計に問題があり、これを運転すれば、周辺住民が許容限度を超えた放射線被ばくをする「具体的危険」があると、司法が判断したことが重要な点だ。
 判決は「抽象的危険」ではなく「具体的危険」があるとしたことだね。
 原発の運転による住民の不安に正面から答えた画期的な判決だね。
〈桜子〉 志賀原発から最も遠方(約700`b)の熊本県に居住する原告についてもその危険を認めたのよね。
〈梅夫〉 原発から放射性物質が放出されたら、遠方にまで影響が広がるのが原発事故の特徴だ。判決は、熊本県の原告についても、「許容限度である年間1_シーベルトをはるかに超える被ばくの恐れがあることになるから、全ての原告らにおいて、上記具体的危険が認められる」と判断した。
〈桜子〉 志賀2号機の耐震設計に問題があるということは、同じ耐震設計審査指針にもとづいて安全審査されている日本のすべての原発でも同じ問題があるということね。
〈梅夫〉 そうだよ。日本列島各地の原発の耐震設計に問題があり、それらの原発も運転をつづければ、志賀2号機と同じように、周辺住民が許容線量を超える放射線被ばくをする具体的危険があるということだ。
 日本列島各地のすべての原発の耐震対策が緊急課題だということだね。


  「具体的危険」―原告は相当程度立証・被告は反証尽くす

〈桜子〉 今回の金沢地裁判決の「差止請求の根拠」づけが重要だわね。
〈梅夫〉 金沢地裁は「差止請求の根拠について」、原告らが人格権または環境権にもとづくとしているのに対して、人格権は、根拠になりうるものと認め、環境権は概念、権利内容、成立要件、法律効果等がまったく不明としてこれにもとづく差止請求は許されないとした。
 「差止請求の根拠となる『絶対的権利』としての『人格権』は、名誉とプライバシーとを別にすれば、生命、身体及び健康を中核とする権利としてとらえるべきものと考える」とした。そして「本件原子炉の運転により原告らの生命、身体及び健康が侵害される具体的な危険があり、その侵害が受忍限度を超えて違法である場合には、人格権に対する侵害を予防するためその運転の差し止めができるという限度で採用できるが、その余は採用できない」とした。
〈桜子〉 今回判決では、「具体的危険」の立証責任が公平に求められたといわれるけれども…。
〈梅夫〉 判決文で、その立場が明確にのべられている。
 「原告らにおいて、被告の安全設計や安全管理の方法に不備があり、本件原子炉の運転により原告らが許容限度を超える放射線を被ばくする具体的可能性があることを相当程度立証した場合には、公平の観点から、被告において、原告らが指摘する『許容限度を超える放射線被ばくの具体的危険』が存在しないことについて、具体的根拠を示し、かつ、必要な資料を提出して反証を尽くすべきであり、これをしない場合には、上記『許容限度を超える放射線被ばくの具体的危険』の存在を推認すべきである」 この点が従来の原発訴訟とはまったく視点が違うところなんだね。
〈梅夫〉 原発訴訟の多くは、被告が主張する原子力施設の安全確保策全般にわたって、検討・認定しているが、この判決では、原告らが人格権侵害の具体的危険があると主張する点について重点的に検討している。その検討の仕方が、先の判決文の通り、被告に求められる反証の正否が検討されている。


  「指針」の考え方と現実の評価には食い違いがある

〈桜子〉 今回の判決の最大のポイントは、原発の耐震設計の不備についての原告の主張を認めたことね。
〈梅夫〉 これまでの原発訴訟でも、当該原発の耐震設計は問題にされたが、それらは「耐震設計審査指針」(以下「指針」)自体は争われず、「指針」を前提とした地震断層、断層成因や断層の長さの評価などについて安全審査に重大な瑕疵があるという裁判だった。いくつかの裁判では、安全審査の瑕疵が認められたが、原発の安全性全体には問題ないとされてきた。今回は「指針」自体の不備が訴因として争われた。
〈桜子〉 判決は「指針」のどこにどんな不備があるといっているの?
〈梅夫〉 「指針」では、原発は二つの大きい地震に備えるとされている。一つは、過去の地震から最も大きな影響を与える地震を選定する。これを設計用最強地震といい、その基準地震動を「S1」という。二つは、その地域での限界的な地震を想定する。これを設計用限界地震といい、その基準地震動を「S2」という。原発の重要施設は「S1」、最重要施設は「S2」の地震力に耐えるよう設計される。この考え方自体には問題はない。
 しかし、この二つの地震動―設計用最強地震の実際の記録はない、まして設計用限界地震の地震動は記録しようもない。そこで、この二つの地震動の最大震幅、周波数特性、地震動の継続時間及び震幅包絡線の経時的変化などについて、経験式のもとづいて評価しなければならない。問題はこの評価が適切かどうかだ。
 判決は、経験式の「松田式」「金井式」「大崎スペクトル」などについて、活断層の長さだけから地震規模のマグニチュード(M)を推定する「松田式」には限界があり、地震規模を過小評価する危険がある、「金井式」はその適用の限界は慎重に見定めるべきである、「大崎スペクトル」はデータが限られていることによる限界もありうる、と指摘した。
 1995年の兵庫県南部地震時の原子力安全委員会の「指針妥当」報告を踏まえても、「大崎の方法」によって導き出される基準地震動が現実の地震動よりも過小なのではないかとの疑問が払拭されたとは言い難いこと、昨年8月16日の宮城県沖地震が女川原発の耐震設計値を超えたことは、「大崎の方法」による評価結果と実際の観測結果が整合しないことを示したとして、「指針」の基礎の崩壊を認定している。
 また、「指針」が「S2」策定に当たって直下型地震「M6.5」の想定を求めているが、「M6.5」を超える震源断層が存在しないとまで断ずる合理的な根拠があるとは認めがたい、「指針」が考慮すべき活断層を5万年前以降活動したものに限定したこと自体の合理性も明らかでない、など、「指針」全体への根本的疑義を認定している。
 さらに「指針」を前提としても地震調査委員会がM7.6の地震が起きうるとした邑知潟断層帯が考慮されていないと指摘している。


  炉心溶融事故も反応度事故の可能性もある

〈桜子〉 その「指針」にもとづいて設計された志賀2号機の耐震設計には不備があると認定されたわけね。
〈梅夫〉 そう。基準地震動「S1」「S2」を超える地震動を受けたときの解析がないから、その場合、どうなるかわからないが、炉心溶融事故も、反応度事故の可能性もあると認定したんだ。


(2006.4、第205号2〜3面



 六ヶ所再処理工場の試運転強行に当たって
    「見直し」署名の集中的な取り組みを訴えます
      伊東達也・原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員

 政府と日本原燃は3月31日、青森県六ヶ所村の六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を、国民の多くの反対や疑問の声を無視して強行しました。試運転とはいえ、事実上の操業開始です。
 原発推進側は、すでに、長年にわたって、事故でストップしていた高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開をめざして、工事を強行しています。
 また、当面、保留を余儀なくされている、日本の異常なプルトニウム過剰事態を場当たり的に解消しようとするプルサーマル計画を、玄海原発、伊方原発、島根原発、浜岡原発などから始める準備を強引にすすめています。
 これらは、昨年、政府が決定した「原子力政策大綱」の「着実な推進」の表れであり、行き詰まりに直面する日本の原子力政策の「正面突破」をめざすものです。それは国民にとっては、安全上も、経済上も、はかりしれない原子力の危険と負担を増大させるものです。
 いまほど、草の根からの声が大切なときはありません。
 日本の原子力政策を革新的に打開する方向は、現在、私たちが取り組んでいる「日本の原子力政策を安全優先の立場から根本的に見直してください」署名で打ち出している三つの方向(@原発推進とプルトニウム利用を軸とする原子力政策を根本的に見直すこと、A独立した原子力の安全規制機関を確立すること、B原子力政策は原子力委員会が決めるのではなく、国民的議論の上で、国会審議を経て決めること)での転換です。
 先の全国総会では、小泉内閣のうちに第一回目の署名簿の提出を決めていますが、これからこの夏にかけて、みなさんが、集中して、「見直し」署名に取り組まれることを、心から訴えるものです。


 「見直し」署名数 (4月20日現在)

  個人署名=11,352筆
  団体署名=   416筆


(2006.4、第205号4面)



 チェルノブイリ原発事故による死者16,000人
     WHO付属国際がん研究機関が報告

 世界保健機関(WHO)の下部組織の国際がん研究機関(IARC)は4月20日、チェルノブイリ原発事故による死者は、ヨーロッパ全域とベラルーシ、ウクライナなど旧ソ連諸国と合わせると、16,000人にのぼるとする新たな報告をまとめ、明らかにした。
 IARCの専門チームは昨年から今年にかけて、チェルノブイリ原発事故で被ばくを受けたと見られるヨーロッパ40ヵ国を調査したところ、広い範囲で放出された放射性物質が確認されたという。こうした調査をもとに、IARCは、チェルノブイリ原発事故による死者は最終的に16,000人にのぼるとの見方を示した。
 WHOは4月13日、今月26日に事故発生から20年を迎えるチェルノブイリ原発事故の健康被害に関する報告書を公表。ウクライナ、ベラルーシ、ロシア三ヵ国で、事故に起因する死者数は9,000人に達すると推定した。
 IARCの今回の報告は、調査範囲を広げた場合、死者数がさらに増えることを指摘したものである。調査チームのカルディス博士は「チェルノブイリ原発事故では、たとえ低レベルであっても大勢の人が被ばくしており、今後さらにがん患者が増える恐れがある」と警告している。
 一方、国際原子力機関(IAEA)は昨年9月、直接の被ばくによる死者は最終的に4,000人程度とする報告書を発表している。これには、ベラルーシなど地元研究者からは「現実を反映していない」と厳しい批判が寄せられているが、犠牲者を数倍に見込んだ今回のWHOの推計は新たな議論を呼ぶものである。


(2006.4、第205号5面)



各地からの便り


  「原発と地震・津波を考える」報告会
        原発の安全性を求める福島県連絡会

 原発の安全性を求める福島県連絡会は4月16日、吉井英勝共産党衆院議員を招き「原発と津波問題」についての報告会を、福島県楢葉町で開いた。福島第一・第二原発の周辺住民ら約50人が参加した。
 原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員・伊東達也氏は、耐震設計に問題があり、運転を継続すれば、周辺住民に許容限度を超える放射線を被ばくする具体的危険があるとして、志賀2号機の運転差し止め請求を認めた金沢地裁判決について、その内容は福島第一・第二原発でもそのまま当てはまるもので、耐震対策は緊急課題であることを訴えた。
 とくに、福島原発の場合、チリ地震時の津波の引き波の際、機器冷却系の海水取水が不能となるレベルに下がったことから金沢地裁判決の意義はいっそう大きい。
 吉井議員は、津波の引き波が5bの場合、福島原発を含む原発の8割で機器冷却用海水取水が不能となるという政府答弁を紹介。「いま、老朽化した原発と地震・津波問題を改めて考えるときだ」と強調した。 原発では核分裂反応熱と核分裂生成物質の崩壊熱の二つの熱の制御が問題となる。核分裂反応熱は運転を止めればいいが、崩壊熱は運転停止後も冷却が必要であり、機器冷却系が作動する仕組みになっている。ところが、この系の海水取水が不能となれば、最悪の場合、炉心溶融に至る苛酷事故を起こしうることになる。


  JCO臨界事故展示
       原子力科学館に実物大模型
           茨城県東海村

 作業員2人死亡、近隣住民の避難という重大な事故となった茨城県東海村の核燃料加工会社JCOの臨界事故から6年半。事故を風化させず、教訓を伝えようと、事故の発生現場となった沈殿槽の実物大の模型の展示が4月1日から同村の原子力科学館で始まった。
 展示は、高さが約2.3b、幅3.1bの沈殿槽原寸模型装置、臨界事故の「解説映像」、臨界事故ドキュメント、事故を検証する「映像資料」、証言映像からなる。同館の開館時間は9時〜16時(月曜日休館)。入館無料。
 「事故現場」の保存をめぐり、住民の間には、実物の保存をという声があったが、沈殿槽は将来復元が可能な形に分解され、原寸模型の展示となった。
 模型の製作は、経産省が約5,000万円を出し、東海村に委託する形で行われた。 茨城県原発を考える会の中村敏夫会長は「実物展示でないのは残念だが、模型として、事故を風化させず、歴史を伝えることは貴重なこと」と語る。


  高知でも「プルサーマル学習会」
      中川氏が講演、読者も拡大

 高知市自由民権会館で4月15日、講師に愛媛県の中川悦郎氏(元当センター代表委員)を招いて「プルサーマル学習会」が開かれ、90人が参加した。中川氏は、伊方3号機(愛媛県伊方町)へのプルサーマル導入が現状の原発の危険を増幅するものであること指摘。金沢地裁判決が原発の耐震設計に問題があるとして、周辺住民はもちろん志賀原発から700`遠方の原告も許容限度を超える放射線を被ばくする具体的危険があるとして、志賀2号機の運転差し止めを認めた状況下でプルサーマルをすすめることはいよいよ危険であり、高知県との共同行動でプルサーマルをやめさせようと訴えた。
 この講演と合わせて、中川氏は「げんぱつ」読者2人を拡大した。


(2006.4、第205号6面)



 「2005年版 原子力安全白書」  原子力安全委員会
     安全規制機関不在の原子力政策推進を
         国際的な「安全文化」の花で覆い隠す



 原子力安全委員会(松浦祥次郎委員長)は3月28日、「2005年版原子力安全白書」を閣議に報告した。今回の白書は、原子力利用における「安全文化の醸成」を特集している。
「白書」は第1編第1章で「安全文化」に関する国際的な取り組みについて、国際原子力機関(IAEA)の国際原子力安全諮問グループ(INSAG)の報告書「INSAG-1,3,4,13,15」及び経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)の原子力規制活動委員会(CNRA)の報告書を紹介している。日本の原発状況が、これらの報告を取り上げざるを得ない局面にあり、「安全文化の醸成」が急務であることを反映してはいる。
 大方の国民は、原子力安全委員会がこれらの取り組みを真摯に始めるのかなと読み取るのは当然であろう。しかし、白書のそれは羊頭狗肉のたぐいである。
 昨年の白書でも「国と事業者の責任についての国際原子力機関(IAEA)の規定から」で、IAEA規定では「規制機関は…原子力発電所の立地、設計、建設、試運転、運転及び廃止措置における原子力安全規制に関連した全ての監視、管理に対する責任を持たねばならない」となっている部分を「…全ての問題について、国として監視、管理に対する責任を持つとされています」と、意識的に誤った紹介をしている。「規制機関」の主語を「国として」に置き換えることで、日本における規制機関不在をごまかしたのである。
 今回白書も、この延長上の国際的な「安全文化」への取り組みの紹介なのである。第2章では、安全規制について、原子力事業者、経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全基盤機構、原子力安全委員会が「あれもやった、これもやった」式の取り組みを列挙して、安全規制機関が存在しているかのように書いているのである。
 白書は、根本的見直しが求められる耐震設計審査指針の基礎の崩壊についての言及もない。これは、既設原発の運転をつづければ、周辺住民が許容限度を超える放射線被ばくする具体的危険がある問題である。
 結局のところ、今回白書は安全規制機関不在のもとでの原子力推進の危険を覆い隠すものでしかない。

(2006.4、第205号8面)



 吸収線量とは? (用語の解説)


 被曝線量の尺度として最初に生まれたのが吸収線量である。物質1`c当たり電離放射線のエネルギーをどれだけ吸収したかで定義される。物質は、人体でもなんでもかまいません。吸収線量の単位はグレイで、エネルギーの単位は国際的にジュールが使われている。物質1`c当たり1ジュールのエネルギーが吸収されたときの吸収線量を1グレイと呼んでいる。つまり、物質1`c当たり、電離放射線のエネルギーがたくさん吸収されれば、影響の度合いも大きくなるはずだという考えの下に生まれたのが吸収線量である。1989年3月までは、ラドという単位が使われていたが、現在の単位グレイとの換算は、1グレイ=100ラドである。この吸収線量が被曝線量を測る場合の基本ということになる。しかし、吸収線量が同じ1グレイであったとしても、中性子で1グレイ被曝した場合とガンマ線で1グレイ被曝した場合では、影響の度合いは違う。そこで、これを考慮した別の尺度が必要となる。


(2006.4、第205号8面)