原子力安全・保安院と東京電力に「申し入れ」
データ捏造・検査偽装
再発事件の責任を問う
東京電力の原発検査偽装工作、事故隠し、データ改ざんが2002年に発覚して社会問題となり、東京電力は再発防止を国民に約束したにもかかわらず、昨年来、このときも引きつづき隠されていたことが明らかとなったことをめぐって、原発問題住民運動全国連絡センター・伊東達也筆頭代表委員をはじめ東京電力の原発立地の福島・早川篤雄、新潟・持田繁義(柏崎市議)、同・池田力(刈羽村議)の各氏ら代表7人は2月20日、東京電力本社と原子力安全・保安院を訪れ、一連の事件の徹底した調査と再発防止対策の確立を申し入れ(2面参照)ました。
東京電力では、小宮山訓章・原子力センター所長、笹木隆弘同センター課長(技術)、宇都宮和彦課長(事務)、原修課長(事務)が対応しました。
「国民の皆様の信頼を裏切り申し訳ありません」と、東京電力関係者は頭は下げるものの、これは昨今相次ぐ企業の不詳事件の度に見られる光景で、今回申し入れで、東京電力がこの事態を真正面から受け止めて真摯に対応に当たっているという実感はまったく伝わってくることはありませんでした。
センター代表らは、「2002年時に、東京電力が『失われた信頼を回復すべく役員・従業員一丸となって全力を尽くす』と誓いながら、そのときすでにその言明を根本から裏切っていたことは重大だ」として、国民が納得しうる調査と万全な再発防止策を求めました。
原子力安全・保安院では高橋正和・原子力発電検査課長補佐ら6人が対応しました。同院は「極めて遺憾」と答えましたが、センター代表らは、前回の調査時点で、格納容器圧力試験時の不正工作以外の検査偽装などを見逃した責任は重大として、「今回は前回とは違った調査―第三者機関による公平かつ徹底した調査」を求めるとともに、国際基準にもとづく原子力規制機関の確立の必要性を指摘しました。
一連の事件のうち、法定検査に係わるデータ改ざん等については3月1日、その他の事例については3月末までに東京電力の報告を求めたうえで、同院の報告書をまとめるとしています。
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【警鐘】
●高知県東洋町長からの高レベル廃棄物処分場の応募を受けた原子力発電環境整備機構(NUMO)は、高知・徳島両県知事の「地域の理解がえられない現状では受理すべきではない」との申し入れを無視して、年度内にも国へ申請する●焦点は国の判断に移行するが、このNUMOの判断は「独断」であり、硬直姿勢が顕わである。文献調査段階は、町長判断で可能とはいえ、知事の同意がなくては次の段階にはすすめない。それがわかっていて国へ申請することは、手続き論から間違っている●文献調査段階の交付金2.1億円が来年度から10億円に増額される。NUMOの国への申請は、この交付金のバラマキを含意したものである。この交付金はもとはといえば、国民の電力料金などから支出されるもの。NUMOの判断は、国民への二重の背任行為である。
(2007.2、第215号1面)
東京電力と原子力安全保安院への
申し入れ
原子力安全・保安院院長 広瀬研吉 殿
2007年2月20日
原発問題住民運動全国連絡センター
筆頭代表委員 伊東達也
東京都千代田区三崎町2-11-13東洋ビル402
電話03-5215-0577 Fax
03-5215-0578
さる1月31日、東京電力による199回にも及ぶ原発事故の隠蔽、データの改ざん、検査の不正行為などが明らかになり、周辺住民をはじめ国民の不安が改めて広がっています。
東京電力は2002年に発覚した不正事件の際、国民に「深くお詫び申し上げます」と謝罪の意を表明し、「今後当社は、失われた信頼を回復すべく役員・従業員一丸となって全力を尽くす」との再発防止を誓いました。ところが、今回の一連の事件は、このときも隠されていたもので、自らの言明をも裏切るものです。当時の事故調査、再発防止対策が根底から疑われる事態であったことが端的に示されました。
この点で、東京電力と国の責任は重大といわねばなりません。
私たちは、東京電力と国が、今回の一連の事件の調査と再発防止対策について、これらの経過を踏まえてなお、周辺住民はじめ国民が納得できる説明責任をはたすことを改めて求めるものです。
私たちは、こうした立場から以下の諸点についてただしたいので、十分な説明責任を果たすよう真摯な回答を求めます。
記
(1)、一連の事件の実態について、すべてを明らかにすることを求めます。それらの事件がどういう性質のもであるのか明らかにすることを求めます。
(2)、一連の事件について、2002年時の「データねつ造事件」等の際にウミを出し切らなかった事情について、どのような分析・検討を行い、どのような認識と教訓を明らかにするのか、納得のいく説明を求めます。
(3)、2002年当時、私たちは「第三者機関による事故調査」などを求めましたが、こうした住民運動の「申し入れ」をどのように扱ったのか、説明を求めます。
(4)、今回は、従来通りのやり方では、周辺住民はじめ国民の納得を得ることはできません。国民の納得をうる特別の対策が不可欠ですが、どんなことを考えられますか?
(5)、一連の事態の再発防止には、「第三者機関による調査」にもとづく公正性と徹底性の確保が不可欠の条件です。今回は、そこまで踏み込んだ対応が求められます。
(6)、今回事件に当たって、他の電力会社に対する対策の水平展開を求めます。
なお、伊方原発のプルサーマル計画でのMOX燃料と高燃焼度燃料の併用に関する問題で、国際的事例として紹介されているベルギーの事情についてご説明ください。
(以上)
<注>「東京電力社長 勝俣恒久様」宛の「申し入れ」は、上記の「(6)項目」と「ただし書き」部分を除いたものです。
(2007.2、第215号2面)
「ふげん」―建屋コンクリート強度不足
劣化? 施工ミス? 原発は?
直前の非破壊検査で「合格」だったが
破壊検査では設計基準の半分以下も
日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、新型転換炉「ふげん」(福井県敦賀市)の原子炉補助建屋のコンクリート壁面6個所から抜き取った34資料を破壊検査で調べたところ、5個所25資料が設計基準を下回ったことを、このほど、明らかにした。コンクリートを壊さず外部から強度を測る直前の非破壊検査では全地点で設計基準を満たしているとされた。破壊検査と非破壊検査の結果が大きく食い違った。国内の原発の建材に使われるコンクリートの劣化調査の大半は非破壊検査で行われており、今回の結果は、原発建屋についても懸念が出てきた。
「ふげん」はATRの原型炉で旧動力炉・核燃料開発事業団が1979年に運転を開始し、1998年に廃炉が決まり、2003年運転を終了した。
解体を前に資料採取し、他の原発の老朽化対策に反映させるとして、昨年10月から、運転開始以来24年間でどの程度コンクリートが劣化したかの調査を始めた。その結果は、補助建屋コンクリートの壁面を抜き取った6個所のうち5個所の強度が設計基準を満たしていないことがわかった。その他、半数以上の地点が設計基準を満たしていなかった。もっとも強度が低かったところでは、一平方_当たりにかかって耐えられる力が設計基準値22.06N(ニュートン)に対して10.6N、半分以下しかなかった。放射線管理区域内のコンクリートについては来年度に調査する。
原子力機構は「信じがたいデータ」と語るが、専門家は「強度が異常に低い」と指摘、「非破壊検査はさまざまな要因に左右されやすく、今回の資料はコンクリートの品質を正しく反映しているとみるべきだ。施工上、問題があった可能性がある」と語る。原子力機構は昨年11月、「ふげん」の廃止計画を原子力安全・保安院に提出、2012年度までに使用ずみ燃料を搬出した後、周辺施設、原子炉本体、建屋…の順に解体をすすめ、2028年度までの撤去完了をめざしている。
今回の破壊検査の結果は、原発のコンクリート構造物全体の安全性が問われることになったが、沸騰水型軽水炉(BWR)では蒸気発生器(SG)取替工事の際、格納容器の壁を「8×8b」開口・閉口工事を行っており、この強度問題を抱えているだけに、今後の対応が注視される。
(2007.2、第215号3面)
廃炉費3,290億円が不足
また国民へ新たな請求書 電事連試算
電気事業連合会は2月8日、原子力発電所などの廃止措置費用について、現状では3,290億円が積み立て不足になるとの試算結果を公表した。
この試算は、同日開かれた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電気事業分科会の原子力発電投資環境整備小委員会(委員長=金本良嗣東京大学院教授)に報告された。
現時点の廃炉費用は全国55基が40年間稼働した前提で2兆5,936億円必要とされている。110万`h級一基当たりの廃炉費用(2004年価額)は沸騰水型軽水炉(BWR)565億円、加圧水型軽水炉(PWR)544億円とされている。電力各社は「原子力発電施設解体引当金」として2005年度末残高で1兆1,010億円を引き当てている。
電事連は2005年の原子炉等規制法改正、2000年の建設サイクル法で、廃止措置費用の見直しが必要になっていると説明。その見直し試算の結果、110万`h級一基当たりBWR94億円、PWR53億円不足と試算。全国55基合計で3,290億円不足と報告した。
地元紙が2003年5月、電事連のバックエンド対策費試算として「約9兆円の財源不足、公的支援など要請」といっせいに報じた。総合資源エネルギー調査会は、バックエンド対策費を18.8兆円と試算うち約8.8兆円が未回収として「国民に薄く広く負担」をもとめ、国民へ請求書を突きつけた。
電事連は、以前は「原発は安い」として原発を推進してきたが、自由化により事情は様変わりして、原発への「公的支援」という名の大収奪に公然と乗り出している。その手法として使われているのが、総合資源エネルギー調査会を舞台とする「試算劇」である。
今回は「廃止措置費用」試算で新たな請求書を突きつけている。
資源エネルギー庁は「原子力発電施設解体引当金」の不足分を料金、税制面での調整で反映するとしており、国民負担増となって跳ね返ることは必至である。
(2007.2、第215号4面)
各地からの便り
高レベル放射性廃棄物最終処分施設
設置可能性調査に対する申し入れ
高知・徳島両県知事が経産相に
高知県東洋町の田嶋裕紀町長が高レベル放射性廃棄物最終処分場の文献調査に応じたことに対して、「応募に対する地域住民の理解」が得られていないとして、橋本大二郎高知県知事と飯泉嘉門徳島県知事は2月6日、甘利明経済産業大臣宛にそれぞれ文書で調査反対を申し入れた。
両知事は同日、実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)山路亨理事長、資源エネルギー庁望月晴文長官を訪ね、「地域の理解が得られるまで文献調査を行わないよう」申し入れた。
橋本知事は山路理事長に対し、東洋町の六割を超す反対請願、隣接する室戸市、北川村の議会による処分場誘致反対決議、加えて地元産業への風評被害を懸念し、「地域住民の同意を得ないまますすめることが日本の原子力政策にとって本当によいことなのか」と疑問を投げかけ、応募段階から十分な合意が必要と主張した。
飯泉知事は「(徳島県の)海陽町と東洋町は地続きで生活圏も一体。県境を越えているが慎重の上にも慎重に対応してほしい」と要請しました。
エネ庁、NUMOは「文献調査はあくまで予備的調査の位置づけ」と、手続き的には問題はないと強弁した。
「原子力政策大綱と新『見直し』
署名運動の意義」学習会
核燃料サイクル施設立地反対連絡会議
核燃料サイクル施設立地反対連絡会議は2月16日、青森市内の県民福祉プラザで講演「原子力政策大綱と新『見直し』署名運動の意義」(講師・伊東達也筆頭代表委員)と特別報告「六ヶ所再処理工場をめぐる諸問題」(諏訪益一同連絡会議代表委員)をテーマに学習会を開催し、約60人が参加した。
同連絡会は、新「見直し」署名運動を新たにすすめるために、「原子力政策大綱」を正確に理解すること、青森県の原発動向を国策との関係で正確に認識すること、再処理問題・最終処分場問題・プルサーマルの関連性を学ぶことなどを掲げ、今回の学習会となった。
プルサーマル学習会
ふるさとを守る志賀町民の会
志賀原発の炉心から約6`の石川県志賀町の堀松公民館で、「ふるさとを守る志賀町民の会」の第二回総会が」開かれた。
この「会」は、昨年、石川県志賀町と福来町が合併したことを踏まえ、両町にあった二つの原発住民運動組織が合同して新たに結成されたもの。
中町良雄会長のあいさつの後、原発問題住民運動石川県連絡センター・児玉一八事務局長がプルサーマル問題について、スライドを使って一時間半にわたって講演した。
総会では、志賀2号機運転差し止め判決などを中心に活動の総括と新しい活動方針について報告・討議がおこなわれた。会長に中頭良雄氏、事務局長に山岸譲二氏を選出(再選)した。
(2007.2、第215号6面)
古川和男論文「核拡散防止への実効ある提言」
第22回佐藤栄作賞最優秀賞 佐藤栄作記念国連大学協賛財団
原子力が核兵器の軛を離れて、
真の平和利用に道を開く可能性を示唆する
この論文は、2005年度の第22回佐藤栄作賞最優秀賞に選出された。この賞は「佐藤栄作記念国連大学協賛財団」(佐藤栄作元総理が1974年に受賞したノーベル平和賞の賞金をもとに設立されたもの)が毎年テーマを決めて募集しているもの。
この論文で古川和男氏は、「今こそ、初心に戻って核分裂科学の本質を再検討し、軍事悪用を封じるのに適した『核分裂エネルギー平和利用技術』を本格的に開発すべきである」と提案している。この視点は、戦後の原子力の平和利用が軍事技術と表裏一体の関係で推進されてきたことに対する、きわめて重要な警告を与えるものである。
この論文は、たびたび本紙でも取り上げてきた古川氏の『原発革命』(文春新書)などに展開されているトリウム溶融塩炉の優位性の一つとしての核不拡散性に焦点を当てて論じているものである。
1960年代後半のアメリカでは、ウラン・プルトニウム・サイクルにかわるトリウム・サイクルによるトリウム溶融塩炉の利用技術が開発されていた。平和で安全な原子炉開発である。しかし、アメリカ政府は核戦略維持の立場から軽水炉・高速増殖炉路線をとり、この方向を封殺してきた歴史がある。トリウム溶融塩炉は、第四世代原子炉研究開発の国際プロジェクトのテーマの一つとなっている。
この受賞は、トリウム溶融塩炉の不拡散性に注目してのことだが、安全性、経済性に本来の意味がある。日本でも、軽水炉・高速増殖炉路線を見直し、真摯な研究開発に取り組む必要があるだろう。
(2007.2、第215号8面)
被曝線量の許容限度とは?
現在、一般人の許容線量は年間1_シーベルト、放射線業務従事者は5年で100_シーベルトそのうちのどの1年間にも50_シーベルトを超えてはいけないとされている。この許容限度は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告にもとづいて定められる。ICRPの前身、国際X線及びラジウム防護委員会(IXRPC)は、職業病の放射線障害を防ぐ目的で設立(1928年)され、ICRPへと改名(1950年)されてからも医療関係者の障害防止が主な役割だった。ところが、核の軍事利用、原発の利用が推進されると、軍関係労働者、原発労働者の被曝が避けられないとして、さらには一般人への放射線の影響をどこまで許容するかという方向に考え方を変えざるをえなくなったというわけである。被曝を認めることになったのである。当初は「可能な限りの最低レベル」まで制限するとしていた被曝線量であったが、社会との兼ね合いで「合理的に達成できる限り低く」決められるようになり、現在の許容限度がある。この二つの許容限度が安全を保障しているわけではない。
(2007.2、第215号8面)