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海の事故は<海難>と呼ばれます。海難は国際的に特別扱いされており、一般の裁判ではなく<海難審判>といわれる特別な裁判によって原因究明が行われるのが特徴です。海難の種類には有名なタイタニック号事件のような衝突、沈没をはじめ火災、浸水、座礁、荷崩れなどがあります。また広義ではエンジントラブルなど、船の安全性(正確には堪航性といいます)が損なわれた場合も海難に指定されます。それでは以下、実際に発生した海難を多少アレンジして紹介します(写真はイメージです)。なお、このページに紹介した海難に関する質問には一切お答えできませんので予め御了承下さい。

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sea_acci_pic1.jpg (11434 バイト) acci_f006.gif (1472 バイト)マラッカ海峡をクルーズツアー中の豪華客船で機関室火災が発生した。消火活動と共に救命ボートを利用して乗客、乗員の避難が始まった。陸岸が近かったこと、また火勢が比較的弱く機関室内に収まっていたことから1人の犠牲者も出すことなく全員の避難が無事終了した。その後、船はタグボートで安全な場所へ曳航された。安全地帯へ移されて間もなく、ほぼ鎮火状態であった誰もいないこの客船は突然ゆっくり沈み始め、結局80メートルの浅海に没した。火災原因は油清浄機から漏れた燃料に電気系統の火花が引火したことであった。不自然な沈没が注目を集めた事件であった。 現在の船は多くの水密区画が設けられていることから短時間で沈没するケースは殆ど見られなくなりました。また火災程度で沈没することはまれです。しかしどの船にも急所があり、これを操作することで故意に沈没させることができます。現在でも保険金目当てに老朽船を失跡させる事件は後をたちません。左の例が故意による沈没か否か不明ですが、不審な事件は保険会社により徹底的に調査されます。
acci_f010.gif (1517 バイト)世界でも交通量が多いことで有名な東京湾で大型LPG船と貨物船が衝突した。貨物船はLPG船から流出したLPGを大量に被り瞬く間に火に包まれ、乗組員の殆どは逃げる間もなかった。貨物船は東京湾内で全焼後、鎮火したがLPG船の火勢は一向に衰える気配がなかった。そして炎に包まれたLPG船はゆっくり陸岸に向かって漂流を始めた。二次災害を防止するため懸命な曳航作業が行われ、LPG船を東京湾外へ退避させるのに成功、その後も消火活動が続けられた。しかし数々の爆発を繰り返しながらLPG船は事故後20日以上も燃え続け、付近航行船舶の危険防止のため遂に魚雷、爆弾により爆沈させられた。30人以上の犠牲者を出す大惨事であった。 東京湾や大阪湾、伊勢湾のような狭い海域でこのような大事故が起こると湾内の海上交通が制限され、大都市の生命線が断たれるという問題が発生します。最近では海上自衛隊潜水艦<なだしお>号による事件が記憶に新しいところです。この大事故を契機に、危険物積載船や大型船の新たな通航規則が国内の特に交通の激しい水域を対象に策定されました。
acci_f009.gif (1410 バイト)2,700TEU積み大型コンテナ船が沿岸航海中、火災探知機が船内に鳴り響いた。火元は機関室中段付近であった。直ちに乗組員で消火活動に移るが火勢が強く機関室立ち入りが困難と見られたため、仕方なく最後の消火手段である集中消火装置(機関室に二酸化炭素を送り込む装置)を作動させた。しかし事前に機関室開口部を十分閉鎖していなかったため火勢は衰えず、遂に炎が居住区に達し始めた。船長は総員退船を命じ、乗組員一同救命ボートで避難した。鎮火後確認された被害状況は機関室全焼、居住区全焼、船倉のコンテナの一部も火に包まれており、全損と判定された。原因はメインエンジン燃料油系統の高圧管(約240kg/cm2に加圧された燃料を噴射弁へ送る配管)破裂による燃料噴出、引火であった。 熱伝導の早い金属で造られた船の火災は怖いものです。各船には大がかりな消火装置が備えられており、二酸化炭素を利用した集中消火装置もそのひとつです。しかし取り扱いを誤ると左例のように十分な効果が発揮できないばかりか人命を失う危険もあります。ビジネスの世界は非情なもので消火活動に重大な不手際があることが判明すると以後の保険処理が難航することもあります。

 

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sea_acci_pic2.jpg (25006 バイト) acci_f003.gif (1470 バイト)この日は濃霧にも関わらず瀬戸内海はいつもの混雑ぶりだった。視界が悪かったがスケジュール維持のため大阪を出港したフェリーはレーダを頼りに通常航海速力で航行していた。レーダ見張りをしていた航海士が左舷に横切り関係の船影(貨物船)を捉えた。フェリーは優先船のため法規どおりにコース、速力を変えずに航行を続けたが、この貨物船は一向に避ける気配がなかった。衝突の恐れが考えられたためフェリー側も直ちに減速、針路変更を開始したが間もなく、濃霧の船首至近に船影を目視後に衝突した。さらに後続の小型タンカーがフェリーに追突した。衝撃でこのタンカーから引火物が流出したが大事には至らず、幸いにもこの事故で犠牲者は発生しなかった。 国際条約では霧などの視界不良のもとでは安全な速力と適切な見張りを行うよう指示されています。しかし安全な速力には具体的な速力が明示されていないため、最終的には船長の判断に委ねられます。現在の船はレーダが高性能化したうえGPSが普及したため、運航スケジュール維持のために視界不良時でも通常の速力で航行することができるようになりましたが過信は禁物です。
acci_f004.gif (1634 バイト)新車を半載した自動車専用船がマレーシア、ポートケラン港を出港した。水先案内人が下船後、潮流が強いため直ちに機関全速とした。防波堤を通過後、左一杯に舵を切るといつものように右に傾斜しながら左回頭を始めた。普段より傾斜がきついと感じたその時、船はどんどん傾ぎだした。必死になって手すりにしがみつくが船はさらに傾斜を続け、遂に横倒しになった。幸いにも水深が浅かったため沈没は免れ、犠牲者はいなかった。救援タグボートによって船体引き起こし作業のため、水深の深い海域へ移動すると無念にも開口部から浸水し、瞬く間に沈没してしまった。固定器具でデッキに固縛された自動車が何事もなかったように垂直に張り付いていたのが不気味だった。原因は航海士のバラスト計算ミスによる復元力の喪失であった。 船が浮いていられるのは浮力のおかげですが、横転しないのは復元力のおかげです。しかし積み荷やバラスト水の配置が悪いと船は簡単に横転します。一般に船体上部に荷重が集中すると(これをトップヘビーといいます)復元力が損なわれる危険が高くなり、この傾向は構造上、自動車専用船、木材運搬船で多く発生します。復元力を維持するために専用計算機でバランス良い積み付けが事前に計算されますが、入力ミスが恐ろしい結果を招きます。
acci_f011.gif (1623 バイト)ドーバー海峡を航行中の大型タンカーが航路の選定を誤って岩礁に乗り上げた。座礁後、船体は波に洗われたため大規模な亀裂が入り積載していた10万トン以上の原油が流出、欧州一帯に流れ始めた。遭難通信発信後、各国の救助部隊が到着して油による海洋汚染を防ぐために大量の中和洗剤が散布された。同時に懸命の離礁作業を試みるが船体の複雑損傷により困難を極め、失敗した。最終的にこのタンカーは船主了承後、不運にも爆撃機を使用して沈没させられた。この事故で注目されたのは流出油のみならず、海洋生物に有害な中和洗剤による事故後の海洋汚染であった。 海難審判は当事者の処罰よりむしろ再発防止に重点が置かれています。油流出事故が発生するとその被害は漁業施設、観光施設だけでなく工場施設にまで及び、天文学的数値となります。しかし大事故と引き換えに新たな国際条約が策定されているのも事実で、特に油流出事故により構築された条約が多いのも特徴です。タンカーの船底二重構造の義務化もそのひとつです。

 

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sea_acci_pic3.jpg (20924 バイト) acci_f007.gif (1466 バイト)原油を満載したタンカーがクウェート、ミナ・アル・アマディ港を出港した。水先案内人を乗せて狭い水路を航行中、突然停電した。停電とともにエンジンが停止、出港作業に従事していた2隻のタグボートではなすすべもなく、重い満載タンカーは浅瀬に向かって漂流し始めた。船長は漂流をくい止めるため、船首の乗組員に投錨を命じた。しかし運悪くストッパーが引っかかっており、アンカーはビクともしなかった。油圧があればストッパーが外れるのだが停電のため動かせない。しばらくすると水先案内人が港湾局に緊急手配した支援タグボートが全速力でやってきて事なきを得た。電源が復旧したのは停電から20分も経ってからだった。 停電は英語で<ブラックアウト>といいますが、船の停電は日本語としてもよくブラックアウトが使われます。エンジン停止、操舵不能となるブラックアウトが長期化すると大事故につながります。そのため、現在の基準で建造された船はブラックアウトを最小限に抑える様々な工夫がされており、この例のようにブラックアウトが2分以上続くことは稀です。またブラックアウトに備えて定期的な検査、保守が義務づけられています。
acci_f005.gif (1442 バイト)いつもの手順で1番タンクから順番に揚げ荷を開始した。3番タンク内にある2号ポンプをスタートさせたときだった。<低電流トリップ>保護回路(ポンプ負荷が異常に低いときに作動するポンプ保護機能)が作動し、ポンプが緊急停止した。再度始動を試みるが結果は同じであったため、1台のポンプのみの片肺運転で揚げ荷を行った。次の航海を利用して原因調査を行ったが電気系統、そして甲板上の配管には異常は見られず、残る調査ポイントはタンク内部だけとなった。タンク内部は容易に入れないため、造船所のドックに回航されたのち調査されることになった。そこで見つかったのは粉々になったポンプの残骸で、直ちに修繕作業が実施されたが長期にわたる運航中断を余儀なくされた。なお、ポンプ破損の原因は不明であった。 この事故は人的、物質的な大事には至らなかったけれども営業上、多大な損失を被った例です。コンテナ船やLNG船は定期チャーターされていることが多く、この例のような事故でその船が不稼働となると多大な違約金の支払いが生じます。このような機器破損事故の他に積み間違えや揚げ忘れなど、ヒューマンエラーによる営業上のトラブルがあるのも事実です。
acci_f008.gif (1546 バイト)北海付近を航行中、操舵装置の故障によりLPG船が航行不能になった。救助依頼を受けた救援会社の大型タグボートが現場に急行したが契約条件で折り合いがつかず、作業は難航した。その間、船内では懸命の修繕作業を行うが折しも強風のため船体動揺がひどく、修理ははかどらなかった。そして船は強風にあおられながら徐々に海岸側へ漂流、ついに座礁した。座礁後、強度を失った船体は折損したが幸いにもガスタンクの亀裂は免れ、大事には至らなかった。その後ようやく船主と救援会社の契約が取り交わされ、救助活動が始まった。原因は油圧系統のバルブに異物がはさまったことによる操舵不良であった。 この事故を見て生死の一刻を争うときに、なぜ救助代金の交渉に手間取るのかと思われる人が多いでしょう。誠実な?日本人には信じられないかも知れませんが、世界には事故のどさくさに紛れて驚くほど法外な救助代金を請求する業者が絶えません。そのため、船会社の多くは船長に対して事故後、曖昧な救助契約を結ばないよう命じています。

 

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sea_acci_pic4.jpg (15345 バイト) acci_f002.gif (1596 バイト)フィリピン、ダバオ港を出港して穏やかな航海が続き、インドネシア、ジャワ海に入った。深夜2時、突如武装した強盗団が高速ボートで接近、誰にも気付かれることなくロープをつたって船内に侵入した。その後強盗団は就寝中の船長室へ乱入、乗組員一同が船橋に監禁された。翌日、手足を縛られた乗組員は降下された救命ボートに移され、僅かな食料とともに大海へ投げ出された。強盗団によって奪われた貨物船は逃走、行方不明となった。1週間後、乗組員を乗せたボートは運良く救出された。そして半年後、中国の上海港で荷揚げ作業を行うこの貨物船と瓜二つの船が目撃された。公安当局により調査すると元の船名がうっすら船体に残っており、船舶国籍証書が偽造されていることが発覚した。しかしこの船主は市場から船体を購入しており、事件とは関わりがないことが判った。そして背後には複雑な組織が絡んでいることが判明して捜査は難航、この船が本来の持ち主に返ることはなかった。 海賊は現在でも東南アジア、アフリカ、南米を中心に蔓延っています。金品を奪うだけでなく、船そのものを強奪するウソのような事件も度々おこっています。盗まれた船は盗難車同様、巧妙に船体が塗り替えられ、各部の銘板が打ち直され、証書類が書き換えられてブラックマーケットへ流出し、悠々と第2の人生を過ごします。運良く発見されても港湾局や船籍国が捜査に非協力的なことが多く、取り戻すのは容易ではありません。
acci_f001.gif (1375 バイト)航海当直終了後、一等航海士がいつもの船内巡視に向かった。車両甲板を終えて雪がうっすら積もったデッキに出ると、手すりの下にきれいに揃えられたスリッパが懐中電灯に照らされた。「なぜこんなところにスリッパが?」と思い、よく見ると一枚の封筒がスリッパにはさまれていた。遺書だった。死への決断に迷ったことを物語るかのように、スリッパのまわりに残るさまよう足跡が脳裏に焼き付いた。直ちに船長へ報告し、乗船券をもとに乗客の人員確認が行われ行方不明者発生の旨を沿岸警備隊へ通報した。しかし行方不明者は発見できず、捜査は打ち切られた。 残念ながら旅客船においても人身事故は時折発生します。しかし落下地点が不確かな場合、落水者の発見はプールに落としたひとつの砂粒を探し出すのと同様ほぼ不可能です。また水温が氷点下以下ですといくら泳ぎが上手な方でも15分と生きられません。生命を育んだ美しい<海>。しかし皮肉にも船は柵をこえると<海>という地獄が待っています。皆さんもデッキ上で走り回ったり悪ふざけをするのはやめましょう。

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注意

写真はイメージです。このページに紹介した海難に関する質問には一切お答えできませんので予め御了承下さい。

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