

海の地図となるのが<海図(チャート)>で世界各国から様々なものが発行されています。サイズは模造紙大とかなり大きく、地図がブック型式で出版されるのが一般的であるのと異なり、1枚1枚別々に発行されます。新版が発行されるまでの長い期間何度も繰り返し使用されるため丈夫な紙でつくられています。ここでは世界4カ国の海図を紹介しますがスペースの関係上一部しか掲載できない旨、予めご了承下さい。
| ■使用図法 | ほとんどの海図はメルカトル図法を採用しています。この図法の利点は方位線(子午線となす角)が常に正しく表される点です。その他の特徴として高緯度になるほど緯度線が広がること、最短距離が直線でないことが挙げられます。海図で使用される図法として他に大圏図法、平面図、ランベルト正角円錐図法などがあります。 | ||
| ■種類 | 航海用海図には港湾施設が詳細に描かれた<港泊図>、沿岸航海用の<海岸図>および<航海図>、遠洋航海用の<航洋図>、航海計画の立案に使用する<総図>があります。また他に海上交通情報図やパイロットチャート、潮流図などの特殊な海図も発行されており、近年はカー・ナビゲーションのようにCD-ROMに海図データを収めた電子海図も普及しつつあります。 | ||
| ■測地座標系 | あまり知られていませんが地図、海図上にかかれている経緯度線は世界各国で異なります。すなわち北緯34度35.6分、東経135度24.5分という位置は日本でつくられた地図とアメリカでつくられた地図では異なります。この経緯度線のとり方を<測地座標系>といい、測地座標系には国内のカー・ナビゲーションや地図で多く使われる<日本測地系>、アメリカで生まれて世界標準となった<WGS-84測地系>などがあります。測地系の違いは船の安全を脅かすおそれがあることから現在、海図の測地系は世界的にWGS-84にするよう勧告されています。 | ||
| ■大ざっぱな陸地情報 | 海上情報が詳細に描かれている海図ですが道路や住所など、陸上情報は必要最小限しか書かれていません。 | ||
| ■情報の更新 | 1枚の海図は新版が発行されるまでの長い間、繰り返し使われます。そのため記載内容に小変更が生じた場合、毎週発行される<水路通報>を使用して加除訂正し、常に最新に維持された状態にしなければなりません。これを海図の<改補>といいます。 | ||
| ■海図の色 | 陸地の色をグレー、オレンジまたはクリーム色にするよう推奨されています。その他浅瀬や浅水域の色も概ね決められています。 | ||
| ■底質 | 船の錨泊に必要なため、大縮尺の海図には一定間隔で底質が表記されています。錨泊に最適な底質は砂もしくは泥で岩礁地帯は不向きです。 | ||
| ■灯台、浮標 | 灯台、ブイ、灯標には灯質(何秒間隔で点滅するかなど)、灯高そして光の到達距離も記されています。 | ||
| ■潮汐、海流 | 長期間蓄積された海流データを利用した海流情報、潮汐に伴って発生する潮流についての記述がある海図もあります。 | ||
| ■海底危険物 | 海底危険物とは沈船、魚礁、海底ケーブル、海底パイプラインなど船の航行や錨泊にあたって注意が必要なものです。 | ||
| ■地物、陸上構造物 | 山岳の高さや海岸線の形状も詳細に描かれており、海上からの目標となる高層ビルや煙突、タワーについてはその高さも記載されています。また航行に影響のある橋や送電線については最低海面高さが記されています。 | ||
| ■水深 | 海図の情報で最も重要なのが水深です。暗礁や沈船などの危険地帯は特に特殊な記号と色分けにより注意喚起されています。水深の単位にはメートルのほかにフィート(足の長さを基準。1フィート=30.48センチ)、ファゾム(身長を基準。1ファゾム=6フィート)が使われるため、注意が必要です。 | ||
| ■経緯度線 | 緯度、経度線のほかメルカトル図法の場合、基準緯度線が明記されます。使用測地座標系も表示されます(総図などの小縮尺海図にはない場合もあります)。 | ||
| ■磁気偏差 | 磁気コンパスを指北させる地球の地磁気は場所によって異なります。地磁気の水平分力を偏差もしくは偏角といい、海図情報の一つとして記載されています。また地磁気は日々変化するため偏差の年間変化量も海図上に記されます。 | ||
| ■灯台 | 発展途上国ではランプ切れや停電しているところも少なくありません。 | ||
| ■浮標 | 実際には流出して無い場合もありますので航行警報には注意が必要です。 | ||
| ■沈船@ | |||
| ■沈船A | 太平洋戦争の戦地となった東南アジアや戦争の舞台となることが多いペルシャ湾には多数の沈船があります。 | ||
| ■浅瀬 | ![]() |
浅瀬には低潮時に水面上に姿をあらわす<干出岩>、低潮時に水面と同一になる<洗岩>、特に危険な<暗礁>など多くの種類があります。 | |
| ■水先人乗船場所 | 一つの港でも船の大きさや種類により、水先人乗船場所が異なることがあります。 | ||
| ■指定錨地 | 一般錨地、検疫錨地、飛行艇用錨地、タンカー用錨地などがあります。 | ||
| ■海底パイプライン | 海底にはパイプラインの他に電力ケーブル、通信ケーブル、地震計などが設置されています。 | ||
| 日本国内を中心に韓国、台湾を含む東南アジア一帯そしてオーストラリアと中東の一部をカバーしています。列強時代、大東亜共栄圏時代の測量データを使用しているためか日本国内の海図精度が極めて高いのにも関わらず国外の海図についてはあまり精度が高くないようです。几帳面な国民性ゆえ、すべての海図サイズが一律で世界中の海図の中でもっとも高品質な紙を使っています。 | |

| かつて七つの海を股に掛けた大英帝国に恥じず、現在でも日本を含めた全世界の詳細な海図を発行しています。航海に供する灯台表や航海歴、潮汐表、航路誌などの<水路書誌>とともに、全世界でもっとも多く使われています。BA(British Admiralty)版チャートと呼ばれます。 | |

| 以前、米国には2種類の海図がありました。一つは軍事色が強いDMA(Defence Mapping Agency)版、もう一つは民間団体が発行したNIMA(National Imagery and Mapping Agency)版です。現在はNIMA版に統一され、一部を除いたほぼ世界中の海図を発行しています。大ざっぱな国民性のため縮尺や用途により海図サイズがバラバラ、そして経緯度線の表記方法がまちまちのため使いにくいのが難点です。 | |

| 英国版海図の血を色濃く残して自国で測量、改訂したのがこのオーストラリア版でオーストラリア一帯並びに南アジアの一部をカバーします。一見したところ英国版海図とそっくりです。 | |
