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clear.gif (820 バイト) 周囲を海に囲まれた島国<日本>は国際貿易の大部分を海上輸送に頼る海運大国です。意外に知られていませんが、世界3大船会社のうち2社は日本にあり、世界最大の船会社として英国ギネスブックに記されているほどです。しかし外航船乗組員の実に9割以上は外国人船員にとってかわり、今や日本人船員は珍しい存在となりました。ここでは外国航路に就く日本人船員の現状についてお話しします。
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logi_male0.gif (1406 バイト)sman_edu2.jpg (10027 バイト)年々減少する日本人船員
日本の商船(外国籍を含めた日本船社所属のもの)は世界の海上輸送の15パーセントを担いますが、昭和50年(1975年)には5万人を数えた日本の外国航路船員は平成14年(2002年)現在、3,000人まで減少しています。代わって台頭するのが低コストのインド、東南アジアや東ヨーロッパの船員で、最もポピュラーなフィリピン人船員は現在、世界中の船会社で15万人もの人が働きます。またフィリピンでは多数の私立商船学校から毎年1万人を超える船員が生まれるのに対し、日本の外国航路船員の卵は商船大学および商船高専の約250人に限られます。特に昭和60年(1985年)に実施されたプラザ合意後の円高進行はその減少に拍車をかけ、各海運会社は生き残りのためにコストのドル化や外国船員との混乗化を進めて日本人船員を削減する緊急雇用対策が実施されました。その結果、昭和62年(1987年)から平成元年(1989年)にかけて日本人船員数は半減し、現在も減少の一途を辿っています。まさに日本の海運産業は空洞化を通り越して真空化しつつあると言えるでしょう。自国船員の減少は有事の際の国防にも影響するため、日本だけでなくイギリスやノルウェー、ドイツなど他の先進諸国でも問題視されており、各国で新しい取り組みが検討されています。
logi_fema0.gif (1969 バイト) logi_fem206.gif (1787 バイト)
logi_male0.gif (1406 バイト)船舶運航のフールプルーフ化
電子測位システムが貧弱だった時代、航海機器の取扱にはかなりの習熟と理数系の知識を要し、また天体を利用して位置を求める<天測>や地形を利用した<地文航海>には長年の経験と熟練した技量が不可欠でした。またレーダや各種航海機器、機関機器の信頼性が低かったため、高度な航海術や整備能力が船乗りに要求されました。しかし現在、自動車にまで普及したGPSにより僅か数万円の装置で全世界において自分の位置を知ることができる時代になりました。また技術の進歩により各種船舶機器のメンテナンスフリー化、信頼性の向上、そして操作の自動化や簡略化がすすめられ、船舶運航に要求される専門技術が希薄となりました。こうした運航技術のフールプルーフ化が折しも海運の国際競争時代と重なり、外国人との混乗化を加速させました。蛇足ですが通信の発達と運航のフールプルーフ化、マニュアル化により陸上からの船舶管理が容易になったことから、船長の権限が格下げしつつあるのも最近の傾向です。
logi_male0.gif (1406 バイト)sman_fsea.jpg (12328 バイト)賃金の安い外国人船員の台頭
フィリピン人船員の賃金は同職種で比較した場合、日本人の約3分の1で期間雇用(1隻乗船のみの契約)のためボーナスはありません。また職種のみで給料が決まっており、年令や勤続年数による手当はほとんどありません。この低賃金に加えて期間雇用のため雇用者に有利な点、国際市場から調達しやすい点から世界中の船会社で外国人船員が多く導入されるようになりました。日本の船会社で最も多いのがフィリピン人船員で、続いてインド人、ミャンマー人、ベトナム人、インドネシア人が活躍します。ところで安いと言われる賃金も母国では相当な高給取りです。フィリピンを例に取ると、高給取りと言われる公務員大卒初任給が3万円なのに対して最も低ランクの船員給与(22才)でも8万円を下りません。そのため結婚希望相手のベストスリーにノミネートされるなど船乗りは憧れの職業で、無数の私立商船学校がひしめいています。そして船員家庭には使用人(メイド)が家事を担い、羨望の的である日本製電気製品で溢れています。しかし高給がゆえ、多くの人が船や海に憧れをもって船乗りになるのではなく船は出稼ぎ労働の場として捉えているのも事実で、数年間の船乗り生活で手にした資金によりレストランやカーショップなどを起業する人も大勢います。

右写真はギリシャ人、クロアチア人、ロシア人、ミャンマー人、ベトナム人、フィリピン人、インド人など多種多様な船員で賑わう韓国のシーメンズクラブです(ところで韓国では船乗りのイメージがすこぶる悪いとのこと(フィリピン人船員を中心によくトラブルを起こすらしい)、韓国人の案内人から、もし誰かに職業を聞かれたら三菱重工かIHIの海外出張技術者であると答えてくれと指示されたのには苦笑でした)。

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logi_male0.gif (1406 バイト)sman_jpfg.jpg (8089 バイト)日本国籍船の減少
平成元年(1989年)まで日本国籍船における外国人乗船は認められておらず、日本国籍船は総て日本人乗組員でした。しかし海運産業の国際競争により人件費削減が叫ばれるなか、外国人乗組員との混乗化を進めるために各船会社は外国籍船を増やすようになります。こうして昭和55年(1980年)頃まで日本の船会社所属の大部分が日本国籍船でしたが混乗化に先立ち、税制上の利点もあったパナマやリベリアへの船籍変更が盛んに行われるようになりました。そして現在、日本の船会社の殆どが外国籍船となり、日本人がまったく乗船しない船が大多数を占めるまでになりました。日本籍船の減少は税収の減少および更なる日本人船員の減少につながるため、平成元年(1989年)には労使合意により最低日本人配乗数を定めた日本国籍船への混乗が認められ、さらに平成8年(1996年)には日本国籍船への日本人配乗下限が僅か2名となりました。なお、混乗化を行うために外国国籍を取得した船を<仕組船>または<便宜置籍船>と呼んでいます。
logi_male0.gif (1406 バイト)近代化船の登場と廃止
日本人船のコスト競争力回復のため、昭和55年(1980年)頃より1船あたりの乗組員数を減らす試みが官労使一体でプロジェクト化されました。これらは<近代化船>または<パイオニア・シップ>と呼ばれて数々の自動化機器の採用がすすめられ、最盛期には乗組員僅か11名という超大型タンカーも出現しました。近代化船は一定の成功を収めましたが混乗船のコストには到底かなわず、加えて乗組員不足から生じる整備上の問題と過労問題が発生したため平成11年(1998年)に廃止が決定されました。こうして日本の船会社は賃金の高い日本人船員を船乗りとしてだけでなく海運技術者として採用する傾向を強め、陸上での船舶管理を実行できる能力を要求するようになり、これらの知識を養う場として乗船勤務させるようになりました。
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logi_male0.gif (1406 バイト)sman_fili.jpg (9836 バイト)従軍外国人船員の強制連行問題発生!?
第2次世界大戦中の日本軍による従軍慰安婦強制連行問題が平成(1990年代)に入って第三国人(準戦勝国)を中心に騒がれはじめたのは記憶に新しいところです。ところで現在の日本商船の総てが外国人との混乗であることはすでに述べましたが、有事の際の外国人船員の立場が複雑になるであろうと言われています。例えば極東有事等により日本が不幸にも参戦した場合、当然のことながら商船は戦時徴用されることになります。その際、乗船中の外国人船員は早期帰国を強く要求すると思いますが(誰だって見ず知らずの他国のために命を落とそうと思わないでしょう)、乗組員の大部分を占める外国人船員の下船は即、運航停止につながるため政府はおそらく船員交代までの短い期間、乗船を続けるよう命令すると思われます。そうした状況下で不幸にも外国人船員が命を落とした場合、この政府命令が<強制連行>と捉えられて従軍外国人船員問題が戦後発生、危機管理体制が甘い日本は再び謝罪外交を行わなければならないという複雑な状況を強いられそうです。
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logi_male0.gif (1406 バイト)国際競争により据え置かれる賃金
高度成長期真っ只中の昭和40年(1965年)頃まで日本の船乗りは高給取りでした。海外旅行が自由化される以前、海外に行けるのは外交官と船員のみと言われ船員家庭には国内では見慣れないお酒や外国製品で溢れていました。しかし日本の賃金水準の上昇に伴う低コストの外国人船員の台頭により、賃金上昇率が他産業と比較して鈍くなりました。参考までに昭和55年(1980年)の船員賃金(円建て)を「100」とすると平成11年(1999年)の指数は「156」であり、これは日本の全産業の平均賃金である「170」を下回ります。このように相対的には船員賃金は低下しており、現在は陸上の給料とそれほど変わらなくなりました。また以前は外航船乗りと内航船乗りの間に賃金格差がありましたが日本の経済成長に伴い格差はほとんどなくなりました。それでも円高により日本船員の賃金はドルベースにおいてイギリスやドイツを凌駕するほど高水準となってしまいました。
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logi_male0.gif (1406 バイト)sman_riku.jpg (10310 バイト)海上勤務ばかりではありません
以前、船乗りの殆どが海上勤務のみでした。しかし賃金の安い外国人船員の台頭により日本人船員にはより幅広く、付加価値の高い業務が要求される時代となり、その一つとして海上勤務という特殊な経験を活かした陸上での活躍が期待されるようになりました。そのため個人差はありますが、数年間の船乗り生活と数年間の陸上勤務が交互に行われるのが一般的となり、陸上勤務では営業部門や船舶管理部門のほか海上輸送コンサルティングや船舶運航の研究開発、特殊法人への出向など幅広い分野に配属されます。なお、内航船会社や国内フェリー会社では陸上勤務を殆ど実施していないため、一生船乗り生活を送ることになります。
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logi_male0.gif (1406 バイト)sman_momb.jpg (9142 バイト)旅行では味わえない外国とのふれあい
海外旅行でもちょっとした人々とのふれ合いは楽しみのひとつです。船上生活の短い停泊期間では上陸中のみならず船に訪れる商店や現地法人、船舶代理店や作業員の人たちとの交流機会もあり、その国の雰囲気を肌で感じることができます。
logi_male0.gif (1406 バイト)sman_ind.jpg (11389 バイト)観光では難しい秘境への寄港
船乗りの魅力は何といっても観光では訪れることの難しい地域への寄港でしょう。私の乗船経歴における珍しい寄港地としてベイルート、プエルトリコ、セイシュル諸島、コロンビア、サウジアラビアなどが挙げられます。しかし残念ながら情報化時代による物流のスピードアップにより停泊時間が短いのも事実で、船種によってはせっかく訪れても上陸する機会に恵まれない場合もしばしばあり、僅か2時間でショッピングセンターを往復しなければならないこともザラです。またペルシャ湾岸国では上陸禁止措置を執っている国も多く、原油タンカーや液化ガスタンカーでの海上勤務では海外での上陸の楽しみは期待できません。
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logi_male0.gif (1406 バイト)日本を離れるということ
日本の外国航路船乗りの乗船勤務は年間最大8ヶ月で、残りの4ヶ月が休暇となります。だいたい6〜7ヶ月の船上生活を送り2〜3ヶ月の休暇生活を送るのが普通ですが、日本の他のサラリーマン生活と同様、会社の辞令により休暇期間が左右するのが実状です。殆どの船が数週間から数ヶ月で日本に帰国しますが停泊時間が短いため、乗船期間中最大8ヶ月もの間、家族と離れることもあります。イギリスやアメリカ、オーストラリアなど家族との時間を第一に考える欧米社会では艦船を含めた乗船勤務は極めて特殊な職業とされており、乗船期間は最大4ヶ月で休暇は乗船期間分与えられる雇用形態となっています。欧米と比較すると日本や韓国、アジア諸国の乗船勤務がいかに過酷かが分かります。なお、国内フェリー会社では20日間の乗船勤務と10日間の休暇を繰り返したりなど、外航船会社と雇用形態が異なる点に留意して下さい。
logi_male0.gif (1406 バイト)意外に多い転勤
陸上勤務中に与えられる社宅も乗船勤務中にはどの船会社も与えていないのが現状です。個人差はありますが、日本の外航船会社ではだいたい数年間の船乗り生活と数年間の陸上勤務を交互に行っているのが普通です。そのため数年間の陸上勤務を社宅で送り海上勤務に移行した際、持ち家がなければ転勤を余儀なくされます(但し正規家賃を払えば社宅を利用できます)。また陸上勤務では他のサラリーマン同様、本社のみならず全国各地の支店や子会社への派遣もあるため船乗りといえども転勤が多いのが事実です。

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