

一口に航海日誌といっても船には船用航海日誌、撮要航海日誌、公用航海日誌のほか機関日誌、無線業務日誌などたくさんの日誌があります。実船で使われている船用航海日誌を見て船内生活をのぞいてみましょう。
| 広く航海日誌と呼ばれるのがこの<船用航海日誌>でログブックとも言います。当直航海士が当直中に起こった出来事を記入し、署名もしくは押印します。陸上から目の届きにくい海上において、船長および当直航海士が職務遂行に注意を怠らなかったことを証明する重要書類となるため安易な訂正は禁止されており、誤記の場合には訂正者の署名、捺印が必要です。なお、外航船では英語で記入します。 | |

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正午欄 Noon Position |
| 航海日誌の1日は船内時間の正午から正午までで、この正午欄には1日の航海集計を記入します。正午位置を筆頭に1日の航海時間、航走距離、機関平均回転数などが記入されます。ところで正午位置には観測によって得られた正しい位置<Fix Position>、針路と対水速力を用いて求めた推測位置<Dead Reckoning Position/D.R>があり、航走距離には対水距離<Distance Running by Log/ログ・トータル>及び対地距離<True Distance Running/OG・トータル>があります。 | |
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当直中の針路、気象、速力 Course, Speed and Weather Observation |
| 毎時の指定針路、対水速力、気象を記入します。記入ルールや記入事項は船会社によって様々で視界、対地速力を記入するものもあります。東京湾やパナマ運河などの狭水道では指定針路を定めるのが困難なため、「Var.(針路不定)」と書きます。 | |
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記事欄 Items and Remarks |
| コースの変更、当直交代時の気象状態、船内作業、入出港作業を記入するほか、海員の懲戒処分や事故についても記載します。航海日誌で記入する記事は下記記事例のように主語を省くのが一般で過去形で記入するのが特徴です。 | |
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航海集計欄 Voyage Total |
| 2港間もしくは航海毎の総航海時間、航走距離を記入します。また燃料消費量、清水消費量なども集計されます。 | |
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その他の記入事項 Others |
| その他、航海日誌には燃料・清水使用量、造水量、入出港時間、停泊時間、喫水、錨位などが記入されます。また入出港時の燃料残量や清水残量も記入します。 |
■航海設備の点検 |
1330 Tested and inspected the steering systems and other nautical equipment and found them in good condition. | ||
| 「13時30分
操舵装置その他航海計器を点検、結果良好であった」 自動車の運行前検査と同様、発航前には航海に必要な準備が揃っているか否かを検査することが法律により義務づけられています。また、国によっては入港前の航海機器検査が義務づけられています。
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■出港 |
0810 Let go all shore lines and left Tokyo for Seattle. Dead slow ahead engine and used it ahead var'ly. Closed voyage "18-Laden" and opened voyage "19-Ballast". | ||
| 「08時10分
すべての係船索を放ちシアトルへ向け東京を出帆した。機関を微々速前進とし、その後操船のため機関を使用した。第18次航復航を終了し第19次航往航を開始した」 航海次航の切り替わりは通常、入港もしくは出港時間が用いられますが荷役終了時間やカーゴホース接続時間、水先案内人乗下船時間が使用されることもあります。var'lyはvariouslyの省略です。
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■出港後の船内保安 |
1430 Searched all over the ship for stowaways and contraband goods and found none. | ||
| 「14時30分
密航者および密輸品についての検査を行ったが異常はなかった」 違う国へ向け出港した場合、出港直後に密航者および密輸品の有無を検査します。しかし船倉やコンテナの中など、密航者が後を絶たないのが現状です。
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■当直終了時の定例記事 |
0400 Sea smooth. Rounds made, all's well. | ||
| 「04時00分 海面状態平穏、巡検異常なし」 当直交代時の定例記事です。当直を通じて特記事項がない場合、記事欄はこの1行だけとなります。
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■コース変更 |
0645 Muroto Misaki lighthouse ab'm <330> 20.5' and a/co to <045>. Log 324.2. | ||
| 「06時45分 室戸岬灯台を正横330度、20.5マイルに見て45度に変針した。積算距離324.2マイル」 a/coはaltered course(コースを変える)、そしてab'mはabeam(正横)の省略です。GPSが普及し、容易に対地距離が求められる現在でも積算距離には対水速力が用いられます。また積算距離は出港からのものではなく、前日正午からの積算です。
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■時刻改正 |
1900 Put clocks ahead 1 hour for S.M.T in Long 105-00E. | ||
| 「19時00分 経度線105度の平時に合わせるため船内時計を1時間進ませた」 船では太陽の正中時が船内時計の午後12時付近となるよう時刻改正をし、入港前にはその国の標準時に合わせます。必ずしも1時間単位ではなく3分や6分単位で行う船もあります。S.M.TはShip's Mean Timeの略称で船内使用平時の意味です。
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■操船指揮権交代 |
0030 Master designated the command of ship to duty officer. | ||
| 「00時30分 船長は操船指揮権を当直航海士へ委任した」 操船指揮は船長が行うのが基本ですが安全上問題ないと判断した場合、当直航海士へ引き継がれます。責任を明確化するため、操船権の委任についても航海日誌に記録します。
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■操練 |
1300-1400 Practiced fire and abandon ship station drill at 17-00N, 117-43E. Tested emergency equipment and apparatus and found them in good condition. | ||
| 「13時00分から14時00分 北緯17度00分、東経117度43分の位置で防火および船体放棄操練を実施した。応急設備の点検を実施、異常なし」 船の非常訓練のことを<操練>といい、国際条約および法律により定期的な実施が義務づけられています。操練には上記例の他に非常操舵操練、油濁防除操練、救助艇操練、防水操練などがあります。
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■日付変更線通過 |
1910 Crossed the Date Line eastward in Lat 38-20N. | ||
| 「19時10分 北緯38度20分で日付変更線を東方に向け通過した」 日付変更線通過時間が午前中であるか午後であるかにより次の日の取り扱いが異なります。午前中の場合は前日の日付が、午後の場合はその日が繰り返されます。上記例が7月27日であるとした場合、通過時間が午後ですので翌日の最初の行に「27th July was repeated, as ship crossed the Date Line on previous day(前日に日付変更線を通過したため7月27日を繰り返した)」という記事を記入します。
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■水先案内人乗船 |
0912 Bore Yoroi Saki lighthouse on <289> 6.5' off and Irago Pilot Mr. K. Miyamoto came on board. | ||
| 「09時12分 鎧埼灯台を289度方向6.5マイルに見る位置で伊良湖航路水先案内人「宮本氏」が乗船した」 乗船時間、乗船位置のほか水先案内人名も記録します。ところで水先案内人は必ずしも1人ではありません。また1週間近く泊まりがけで水先業務を行ったり(欧州周辺)、1つの港で2回以上水先人が交代する(東京湾、スエズ運河など)場合もあります。
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■入港 |
1550 Made her fast to berth K-9 with her starboard side alongside and arrived at Yokkaichi. Stopped engine and F/W engine. Dismissed tugs and pilot left her. | ||
| 「15時50分 K-9埠頭に右舷付けで係留、四日市港に到着した。機関停止後、機関を終了し手仕舞いした。タグボートを放ち、水先案内人が下船した」 F/WはFinished with engineの省略で、機関手仕舞いとはエンジンをクーリングダウンすることです。ところで大型船エンジンのウォーミングアップには最低2時間程度かかるのです。
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■特殊記事@ |
Dressed ship in full in honor of the Emperor's Birth Day. | ||
| 「天皇誕生日を祝って満船飾を実施した」 貨物船において満船飾をすることは珍しくなりましたが、客船やフェリーでは独立記念日などの祭日に満船飾を実施します。
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■特殊記事A |
1610 While getting alongside felt slight shock on her port hull. | ||
| 「16時10分
着岸中、左舷側に軽いショックを感じた」 荒天に遭遇したり障害物と接触した場合、異常がなくても海運局や公証人役場へその旨を報告します。
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| ■天気記号 | b | Blue Sky | 快晴 | |
| bc | Partly Clouded | 晴れ | ||
| c | Cloudy Detached Opening Clouds | 曇り | ||
| o | Overcast | 本曇(雲の隙間なし) | ||
| r | Rain | 雨 | ||
| q | Squalls | 疾風(スコール) | ||
| p | Passing Shower | しゅう雨 | ||
| f | Fog | 霧 | ||
| ■風浪階級(海面状態) | 0 | Calm (Glassy) | 鏡のようになめらか | |
| 1 | Calm (Rippled) | さざ波がある | ||
| 2 | Smooth (Wavelets) | なめらか、小波がある | ||
| 3 | Slight | やや波がある | ||
| 4 | Moderate | かなり波がある | ||
| 5 | Rough | 波がやや高い | ||
| 6 | Very Rough | 波がかなり高い | ||
| 7 | High | 相当荒れている | ||
| 8 | Very High | 非常に荒れている | ||
| 9 | Phenomenal | 異常な状態 | ||
| 航海終了後、船用航海日誌から重要事項を抜粋して航海の概要をまとめたものがこの<航海撮要日誌>で通常アブ・ログと言われます。営業契約上の実績報告として用いられることが多いため、用船者(*)によって様々な書式があります。 *用船者:船を運航する会社です。飛行機を例にして説明すると旅行会社(JTB社など)が航空機(JAL機など)を丸々チャーターしてヨーロッパツアーを実施した場合、用船社に当たるのがJTB社です。チャーター機にはJTBのマークが描かれることがあるのと同様、船の場合にもファンネルマークが用船会社のものに書き換えられることがあります。 |
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| 船籍国の法律により義務づけられている航海日誌がこの<公用航海日誌>で記録内容はその国の法律によって様々です。日本船籍船の場合、記入事項は船員法によって定められています。 | |
