.
辻元清美の海外視察報告
辻元清美、三つの海外渡航を語る
〜21世紀に向けて〜
辻元清美国会報告『清美したデ』22号より
みなさんは2000年の夏をどのように過ごされましたか。
辻元清美は、8月下旬から9月上旬にかけて三回海外に出ました。
いずれも、21世紀を目前にして、世界の動きの中での日本の位置づけや目指すべき方向性を確認する重要な旅でした。
それぞれの訪問の目的や印象に残ったことなどを聞きました。(う)
聞き手 この夏はあちこち飛び回って、随分忙しかったですね。 辻元 そうですね。今こうして日程表を見直しただけで自分でも目が回ります。北朝鮮から戻ってすぐにヨーロッパ二往復でしょ。荷造りして、ほどいて洗濯して、また荷造り(笑)
聞き手 まず、北朝鮮へは約一年ぶりでしたね。辻元 今回はピースボートの北朝鮮クルーズ乗船者202名のひとりとして参加しました。
6月の南北首脳会談の直後だったわけですが、空気は明らかに変わっていました。やっぱり明るい。南北をつなぐ鉄道・京義線の復旧工事も再開間近だったし、交流した青年団のメンバーの口から出る「統一」っていう言葉にも、希望っていうのか意思っていうのか、強いパワーを感じました。
その後南北離散家族の再開が実現したり、シドニーオリンピックで両国が統一旗で入場したり…。
歴史が動いてるのを実感しました。
聞き手 同じ頃、土井たか子党首がソウルで金大中大統領と会談しましたよね。辻元 ええ。党首は大統領に、南北朝鮮とモンゴル、日本の4カ国北東アジア非核地帯構想の提案をしたんです。
この時は韓国の与党新千年民主党とその方向性を確認し合いましたし、つい先日はモンゴルの人民革命党とも同様の協議をしました。
遠からず北朝鮮も訪れることになるでしょう。
聞き手 その後、ヨーロッパへ2度ですね。じゃあ、最初のジュネーブ行きの話から辻元 『清美したデ』20号でもご報告しましたけど、私は今年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の「明日の世界のリーダー100人」に選ばれたんです。
そのリーダーたちのサミットがジュネーブで開かれたので参加しました。
世界経済フォーラムといえばグローバル化を推進しようとする資本家の総本山。
先日オーストラリアで開かれた会議も各国のNGOに取り囲まれ非難と攻撃の対象になりました。
私にとっても、いわばかつての“敵”? 私も石を投げる側だった(笑)。
聞き手 それなのに敢えて参加した理由は?辻元 まずはどんな人たちが世界経済を動かしているのか知りたかった。
それにリーダーは45歳以下という条件があるので、世界各国の同世代人と地球規模で経済や環境について議論するよいチャンスだと思ったので。
聞き手 で、何か面白い発見はありました?辻元 一言で言えば、「目に見えない地殻変動」かな。
今までは大きな会社や組織が世界を動かせたけど、これからはコミュニティーやネットワークを重視しなければ会社も生き残れない。
だから経済界でもNGO、市民社会とどう付き合うかというのが大きな関心事になっています。
個性的なリーダーたちとの出会いもありましたよ。
英国のコーホンさんは、コカコーラのバリバリビジネスマンから子どものエイズ撲滅や労働問題に取り組むNGO活動家に転身。
スペインのバルサブスキさんはIT関連企業創設で手にした莫大な利益をあちこちのNGO活動に寄付している。
こういう仲間と連絡をとりあって“ダボス内ゲリラ”を結成しようかな、なんて(笑)。
聞き手 最後は衆議院の憲法調査会欧州調査団ですね。
ずいぶんハードな視察だったようですが。辻元 いろいろな意味でハードでした。
そもそも訪問先が「すでに何度も改憲している国」という基準で選定され、特に独・伊については「敗戦国だって改憲しているのだから」と改憲を正当化する根拠にしようという意図がミエミエ。
勝手な結論を持ち帰られたら困るので、きちんと監視しなければと思って調査団に参加したんです。
日程的にもきつかったし、四六時中同じメンバー(ほとんどが改憲派)と顔をつきあわせているのですから、ちょっと……(笑)。
聞き手 訪問国の憲法の特徴的なところを紹介してください。辻元 ドイツでは戦後42回改憲していますが、大きな改正は3回。
初めは西ドイツにおける兵役と再軍備についての改正。
でもこれは、冷戦時代の東西分裂の中での選択です。
二回目は東西ドイツ統合にあたっての、三回目はEU統合にあたっての改正です。
いずれも歴史の大きな変動に伴っての改憲ですね。
イタリアにおける改憲は、過去の戦争の反省にのっとって、全体主義から民主主義へと変わるんだという理念に基づいたものであると私は理解しました。
ドイツとイタリアには憲法裁判所があって、成立後の法案や国会議員の言動が憲法に合致したものかどうかを裁きます。
日本とは三権分立の在り方が違うので単純な比較はできませんが、「最高法規の具現化」のための強力な機関だと思います。
また、スイスでは百回以上も憲法を変えていますが、憲法の位置づけが日本とはぜんぜん違う。
スイスでは地方分権が徹底していて、州法が大変重視されます。
憲法は連邦政府の役割を詳細に定めたものなんです。
国民投票制度が根付いているのも、その前提となる自治の伝統と民主主義の成熟があってこそと思いましたね。
聞き手 フィンランド憲法についてのレクチャーも受けたとか。辻元 そうそう、ドイツで。
フィンランドの憲法はすごく進んだ内容で、外国人の人権、死刑廃止、情報公開、環境権、オンブット制などがみんな入ってるんですよ。
これは日本で改憲を主張する際に引き合いに出される事柄ですよね。
でも、本当にこのような権利を盛り込むために憲法を変えようと言ったら、憲法9条を変えたい人たちの大多数は躊躇するんじゃないかな。
聞き手 欧州全体としては?辻元 ヨーロッパは冷戦後、集団安全保障の方向で外交関係を結んでいますよね。
つまり、軍縮の方向に向かっている。
憲法9条の理念がやっと普及してきたという感じです。
聞き手 さて、私たちは日本国憲法とどう向き合っていけばよいでしょうか。辻元 今回の視察で「憲法はその国の顔、そして日本の顔は憲法9条」という思いを強くしました。
それに、日本国憲法は実によくできている。
憲法はその国の顔であると同時に、改正は、自国の問題としてだけでなく周りの国との関係の中で考えなくてはいけない。
南北朝鮮統一に向けての動きと連動して、アジア全体の空気も動きつつあります。
今日本が憲法9条を変えることは、日本の孤立化を招くでしょう。
それこそ、改憲を唱える人たちが声を大にして叫ぶ“日本の国益”に大きく背く行為なのでは。
9条の理念を生かした国づくりを進めることこそ21世紀の先取りだと私は確信しています。