衆議院憲法調査会が神戸で地方公聴会を開催(2001年6月4日)

中北龍太郎弁護士(護憲・大阪の会代表委員)が意見陳述

「平和憲法は世界に誇れる日本の宝」

 6月4日、衆議院憲法調査会が神戸で地方公聴会を開催した。憲法改悪に反対する市民・団体は「ストップ改憲!『神戸公聴会』を監視する実行委員会」を結成し、一般公募による意見陳述人や傍聴者の拡大等を求め、6月3日には「市民が開く公聴会」を開催するなどの取り組みを行なった。

 公聴会では、中北龍太郎弁護士が社民党推薦で意見陳述。「平和憲法を変えることは日本が世界に誇れる宝を失うこと。いまこそ平和憲法を生かさなくてはならない」と強く訴えた。また、浦部法穂神戸大副学長(共産党推薦)も「国家の安全保障から人間の安全保障へ、日本は世界から軍備をなくす努力を」と訴えた。また、自治体首長が4人、政党推薦で意見陳述者に選ばれたが、「日本は平和の技術で国際貢献を」(貝原兵庫県知事、自民党推薦)、「生存権の立場で国は住宅再建支援を」(笹山神戸市長、公明党推薦)、「子どもの権利条約の具体化、平和と非暴力の人権文化を」(柴生川西市長、民主党推薦)と憲法を活かす立場からの意見が続いた。

また、一般公募で意見陳述者に選ばれた中田作成さん(大阪工業大助教授)は、「一般公募の陳述人が2人だけ、傍聴者も100人に限定するなど、公聴会のあり方は間違っている。改憲のためのお膳立てであってはならない。「個人より国家」という新たな国家主義の台頭に憂慮を覚える。市民の自治を求める主体的な努力がなされてきたのは、憲法、とくに人権、言論の自由に支えられ、憲法の精神を具現化しようとしたもの。憲法改「正」論の台頭は住民自治への脅威であると受け止めている。憲法を活かし、貫くには強靭な意志とたゆまぬ努力が必要であり、一人一人が憲法を見つめよう」と呼びかけた。

 

中北龍太郎弁護士の意見陳述(要旨)

21世紀の日本のあるべき姿は、戦争の世紀であった20世紀の誤りを克服し、平和の世紀を創ることです。そのためには、平和憲法をしっかり守り、活かすことです。

20世紀の前半、二度の世界戦争で人類は比類のない戦争の惨禍をこうむりました。その象徴がホロコースト、南京大虐殺、ヒロシマ・ナガサキの原爆被爆です。日本は他国に大きな戦争の被害を与えるとともに、政府の戦争政策で、被爆、都市空襲など市民が大きな被害をこうむりました。

日本の戦争は「自衛」「東洋平和」「正義の戦争」の美名で正当化されました。こうした戦争の歴史を忘れてはなりません。歴史の忘却と歪曲は、新しい戦争の芽を作り出すものです。

平和憲法はこの反省から生まれたものです。人類の戦争廃絶の想いが結実し、戦争は絶対悪という認識が平和憲法の願いです。

それとともに、政府の政策で尊い人命が犠牲になってはならないという想いから、市民に人権として、平和に生きる権利を保障しています。戦争は最大の人権侵害です。平和は人権の基礎であり、戦争につながる動きは人権を根こそぎ破壊するものです。

戦後日本は一人も戦死者を出していません。平和憲法をなくすことはこの誇りをなくすことです。

しかし朝鮮戦争をきっかけに、日本は日米安保条約を結び、再軍備を行いました。いまや世界有数の軍事力を保有しています。この憲法の空洞化に歴代政権は責任を負っています。冷戦の終焉は、この流れを転換する大きなチャンスでした。しかし、周辺事態法の制定、日米新ガイドラインと、米軍の戦争協力のために、集団的自衛権の行使ができる憲法に変えようという動きが出ています。

いまなすべきことは、非暴力平和主義の平和憲法をしっかりと活かすことです。非核神戸方式を法律化し、東アジアに非核平和地帯をつくること、日本の非軍事化を進め、日米安保条約を友好条約につくりかえ、日本を平和の発信基地にすることです。

平和憲法を変えることは、日本が世界に誇れる貴重な宝を失うことになります。憲法調査会のなすべきことは、憲法をどう実現していくべきかをきっちりと調査することです。このことを憲法尊重義務のある政治家に強く訴えます。

金子哲夫委員(社民党)の質問

「広島で原水爆禁止の取り組みを行なってきた一人として、公聴会で神戸にまいりますと、神戸空襲に思いを馳せます。小泉首相の靖国神社公式参拝の発言や、戦争被害に対する国の責任のとり方には問題があると考えます。例えば、旧軍人・軍属には補償を行なっていても、一般市民に対しては、受忍論で、補償は全く行なっていません。そのことに対し、弁護士の立場から、中北さんのご意見をお聞かせください」〉

中北龍太郎弁護士

一般市民への戦争被害は国内だけでなく、強制労働や従軍慰安婦、強制連行など、アジア各国に及んでいます。日本はこの国内外の一般市民の戦争被害に補償をしていません。憲法前文は、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と名誉ある地位を明記しています。国内外問わず、一般市民に対し戦後補償をしっかり行なうことが憲法の立場です。

軍人・軍属だけ補償してきたのは、「国のために命を捧げるのは尊い」という差別的な思想であり、これが靖国神社と結びついています。靖国神社は戦前、軍が管理し、軍国主義の大きな精神的基盤でした。このことの反省から憲法の政教分離が生まれたのです。この靖国神社への公式参拝は明らかに違憲です。中曽根首相のときの違憲訴訟で、大阪高裁も「公式参拝は違憲の疑いが強い」と判決し、確定しています。

(文責 護憲・大阪の会事務局)