参議院憲法調査会会議録第五号より
平成十二年四月五日(水曜日)

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  本日の会議に付した案件
○日本国憲法に関する調査

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○会長(村上正邦君) 
 次に、奥野恒久さんにお願いをいたします。
○参考人(奥野恒久君) 京都にあります龍谷大学大学院で憲法学を専攻しております奥野恒久です。大学を卒業してから少しブランクを置いて大学院に入りましたもので、三十を過ぎているんですけれども院生ということで応募させていただきました。
 三点ほど述べさせていただきたいと思います。
 一つは、私を含めましてかなり多くの人たちが今の日本という国についてこれからどうなるんだろうかという不安を持たれているんじゃないかと思います。日本のこれから進んでいくべき指針といいますか哲学、これが今ないんじゃないかとさえ思うわけです。
 二つ目です。では、その哲学とか指針として何がいいんだろうかと考えましたところ、今いろいろと言われておりますけれども、私は、日本国憲法、これを掲げていくべきだ、こういうふうに考えます。
 それは、日本国憲法が例えば第九条の先駆性といったそういうものを含んでいるということも当然あります。しかし、それ以上に私が重要視したいのは、戦後半世紀以上にわたって私たちや私たちの先輩方は、日本国憲法という後ろ盾を持って生活を営み、日本国憲法を武器にして運動をし、私たちの暮らしとか平和とか社会、これをよくしよう、守っていこうとしたはずです。憲法といいますのは形だけ見れば百三条の条文にすぎません。しかし、これによって、こういった運動、力強い運動が憲法に内容を込めてき、魂を入れてきた、そういうふうに考えるわけです。
 その意味からいたしまして、今の状況の中で私は断固として護憲です。今の日本国憲法、これを掲げ、そして日本国憲法が発するメッセージ、これを広め、そして私自身もそれに努めていきたい、こう決意しております。
 最後になります。日本国憲法が発するメッセージとは何か。
 今、地球自体が環境の問題、資源の問題で、二十一世紀の地球はどうなるのかという危惧を持たれているときです。それに対し、日本国憲法から二つのメッセージを読み取ることができます。一つは、日本みずからが軍縮を進めることによって世界の軍縮のイニシアチブをとる。もう一つは、今の豊かさとか今の繁栄、果たしてこれがいいのかどうか問いかけてみる。この二つのことを日本国憲法のメッセージとして受け取ることができるんじゃないかと思います。
 この路線は、普通の国になるという路線とは全く違います。しかし、日本がこの路線に向かって誠実に歩むのであれば、世界からもある種一目置かれる存在として私たち自身も胸を張っていくことができるかと思います。日本国憲法を基準に置いて二十一世紀を切り開いていきたい、そのように切に思う次第です。
 ありがとうございました。

○会長(村上正邦君) ありがとうございました。
○大脇雅子君 社会民主党の大脇雅子と申します。お二人の方に一問ずつお願いをしたいと思います。
 まず、奥野恒久さん。
 日本を憲法が切り開いてきた、魂を入れてきたということで、日本国憲法のメッセージは軍縮へのイニシアチブと、それから豊かさや繁栄を問い直すという二つのメッセージを受け取るとおっしゃいました。第一の軍縮へのイニシアチブというのはよくわかるのですが、豊かさや繁栄を問い直すということについてもう少し説明をしていただきたいという点です。

○参考人(奥野恒久君) 今特に若い人たちを中心に、例えば歩いていける人が歩いていける距離のところを車に乗っていくとか、あるいは不必要じゃないかと思われるような携帯電話が電車の中で使われている。果たして、これについての問い直しというところからまず入りたいというふうに思っています。
 ずっと繁栄という言葉はよしとされてきたわけですけれども、このまま世界がずっとどこもが繁栄を目指すという中で、これはもう地球全体がパンクするのではないかという中、我々自身が本当に豊かなもの、本当に何というのか、価値のあるものというものを問い直すには、繁栄とか豊かイズ・ベストという、これに一つ疑問を投げかけていく、これが憲法の前文にある全世界から貧困なんかなくしていくというのと合致するということです。これは一言、伝統とか自然を大事にするという考え方ともつながるんだということをつけ加えさせてください。
 以上です。

○石田美栄君 どなたも憲法上の天皇制、天皇の記述については御発言が全くなかったんですが、まず奥野さんにお伺いいたします。
 この発言要旨の中で、憲法を非常に尊重される、そういう中で、前文はありながら、日本国憲法は天皇から始まりますね。このことについての評価をお伺いいたします。
 そして、もし時間があれば、同じ質問を石川さんにもお述べいただければと思います。

○参考人(奥野恒久君) 確かに、おっしゃられるように、日本国憲法、明治憲法の改正手続を経たということがありまして、天皇条項、第一条の天皇から始まっています。私は、ここについても疑問を感じております。
 ただ、将来的に日本は共和制、完全な共和国家にするという国民の動きがあり、そして国民がそれがふさわしいんじゃないか、こういうふうな形になるのであればそのときには憲法を改める必要がある、こういうふうに考えておりますが、今のところの議論では、逆に天皇制を強化するという議論は出ていましても廃止するという形での議論が出ていない現状のもとで、私は、ここについては国民の、国民の側といいますか、どちらかというと運動を担っている側からの主体的な声は出ていないというふうに今は判断しております。
 以上です。