| 「通販生活 2001.2月号より |
100円で売ってどうして利益が出るの?
「なんでも100円」の100円ショップが急成長をつづけている。すでに全国に3,000
店以上のショップがあるそうだし、業界上位7社の売上高だけで年間推定1843億
円という数字もあらわれている。誕生して日が浅いせいか、まだ、なんとなく、“うさん
臭い目”で見られている感じだが、「安かろう悪かろう」ではこんなに急成長するはず
はない。
通信販売も昔は“うさん臭い目”で見られてきた歴史があるので、ここはひとつ、客
観的な目できちんと見ていきたいものだ。
採算の謎
たとえば、1本980円で売られている傘を100円で売って利益がでるの?
1990年代後半から始まった「100円ショップ」の驚異的な急成長は、いまや
社会現象となっている。そんな「100円ショップ」の店内を歩いていて、はたと
我が目を疑った。
「あれっ?980円で買った傘が100円で売られている。何故これが100円
なの・・・・・・・」
モノが売れない時代だからこそ「100円傘」は実現できた
まずは左の写真を見ていただきたい。写真中央の開かれた状態の傘こそが、
実際に100円ショップで売られている「100円傘」である。
一番高級な10000円のブランド傘と見比べても外見はそれほど変わらない。
機能性の面から言っても、100円傘はボタンひとつで傘が開くワンタッチ式である。
コンビニや駅の売店で売られている会社員ご愛爵の980円傘や500円のビニ
ール傘と比べても、見劣りするどころかはるかに上等品に見えてしまう。さすがに
携帯性では2000円の折りたたみ傘にかなわないが、とにかくこれがたったの
100円。消費税込みで105円というから驚きだ。
消費者としては嬉しい限りだけれど、売る側の100円ショップは本当に儲かって
いるのか。余計なお世話だけれども、どうにも気になって仕方がない。
そこで100円ショップ業界大手「キャン・ドウ」(平成12年12月現在、店舗数300
店)の商品部、梅沢ルリ子さんに聞いてみることにした。
この100円傘はとても100円の商品には見えません。売れば売るほど損をし
てしまいそうに思えるんですが、どうやって仕入れているんですか。
「まず、間屋さんやメーカーさんに、 一般小売店では980円で売られている
傘の仕様を示して、『これを100円未満で作れないか』と提案することから、
はじめます」
980円の傘と同じモノを100円未満で!? そんな無茶な。実は見えないところ
の機能を省略したりしているんじゃないですか。
「いえいえ。確かにメーカーさんから『8本ある傘の骨を7本にすれば・・・・・・』
などと言われたこともありますが(笑)、こちらとしては耐久性や安定性を考慮
しますから、『骨は8本にして欲しい』といいます。
そうやってメーカーさんと粘り強く交渉していきながら何度か試作品を作って
貰うのです。そして最終提案された商品を一部の店舗でテスト販売して、その
商品の売上げが好調であれば大量に仕入れをして全国の店頭に並べます。
おかげさまでこの傘は月に18万本(1800万円)売れています」
全国的にチェーン展開しているから大量仕入れが可能で、そこが安さの秘密と
いうことらしい。でも、大量に仕入れても、売れなかったら大損ですね。
「既存の小売店で売れている商品だけに絞ってって、それを100円で売るの
ですから、大はずれはあり得ません」
そんなにたくさんの商品をどこで作っているんですか。
「主に中国です。実は一般小売業界に出回っている1000円前後の傘を作って
いるのと同じ工場で作っています」
ハテ? 同じ工場で作られているのに向こうは1000円でこちらは100円。なぜ
こんな奇妙なことが起きるのか。
「今はモノが売れない時代ですから、メーカーさんは商品を作りすぎないように
生産 計画を綿密に立てています。そして、工場の計画生産量に達した時点で
生産ラインの稼動を止めてしまうわけです。
つまり工場の生産能力の100%をフルに使って商品を作っているわけではない
のです。
ところが生産コストの面から言えば、工場は年間を通じてフル稼働していることが
望ましい。そこでその生産ラインを止めないですむように、メーカーさんの計画
生産量にプラスする形で当社用の100円傘を作ってもらい、工場の稼働率を上げ
るのです。1個あたりの利益が薄くても取引量が多くなればメーカーさんも確実に
利益が上りますし、当社も安く仕入れることができるのです」
衝撃の取引価格表を入手。安さの秘密は海外生産にあった
なるほど。つまり100円ショップのシステムは、メーカーにとっては「工場を遊ばせず
にすむ上に、利益も出る」もので、100円ショップにとっては「販売力を背景にした大量
仕入れで安くあげることができる」というところがミソらしい。
では、気になる100円傘の仕入れ値段はいくらなんですか。
「それは勘弁してください」
そう言われると余計に知りたくなる。そこで他の中堅100円ショップ数社にも聞いて
みたが、やっぱり、「お答えできません」という容えが返ってきた。仕方がない。
別の角度からアプローチしてみよう・・・・・・・と取材を進めているうちに、偶然にもマル
秘とされるある資料を入手できた。
表を見ていただきたい。これは99年の中国某所での現地船積み価格の取引価格
一覧表である。この表の中には傘の取引価格は出ていないが、他の商品の取引価格
を見るだけでもかなり衝撃的だ。
セロハンテ‐プ12巻36円、婦人ショーツ34円、日覚まし時計90円、ガラスのコップは
16円、割り箸100膳なんと18円。
「キャン・ドウ」は商品の30%を海外で作っているというし、他の中堅の100円ショップ
ではなんと80%を海外で生産していると言う。
海外で作った製品はなぜこんなに安いのか。経済ジャーナリストの蜂谷隆さんに聞い
てみた。
「人件費と為替レートです。日本ではパートタイマーの賃金をいくら安く抑えても
月に 10万円前後はかかってしまいますが、中国では月に8000円。
日本人が中国の人件費を『安い』と思うのは日本円に換算して考えるからです。
たとえば日本で1ヶ月働いた分の給料を持って中国へ旅行に行けば豪遊できま
すが、逆に中国の人が月収を持って日本にきてもホテルに1泊して終わりです。
国内では完結している貨幣の価値も、国際経済の舞台では国の経済力の違い
が為替 レートに反映される。
同じように商品の輸送費も名古屋〜東京間より、シンガポール〜東京間の方が
今は安い のです」
日本国内ではモノが売れない。でも、海外ではモノが安く作れる。そんな時代背景を
うまくシステムとして利用し、人々の購買意欲を刺激し続ける100円ショップは、いまや
時代の寵児となった。
中国でつくられた商品の原価っていくらなの?
☆アパレル ☆食器 婦人ショーツ 34円 24ピース食器セット 220円 紳士Tシャツ 65円 ガラス製コップ 16円 Yシャツ 198円 割りばし100膳 18円 ☆服飾 ☆その他 エプロン 78円 セロハンテープ12巻 36円 スリッパ 65円 ヘアドライヤ 62円 ☆キッチン用品 目出まし時計 90円 コーヒーポット 73円
この表は、「日本リテイリングセンター」の調べによる。同センターは、スーパーや大型
チェーンの経営指導と幹部訓線を行うマネジメントコンサルタント会社。各商品の原価は、
1(アメリカ)ドルを110円として換算した。
これまでの数百円のモノと比べて、
品質、性能はホントに愛わらないの?
どんな文房具でもセットで100円。消耗品から、コーヒーポツト、フライパン、鍋…あげく
の果ては電卓までも100円だ。
でも買ってすぐ壊れ、中身の量が少なくて何だか損した気分になった経験はありま
せんか? そこで、こっそり大手スーパーの商品と比べっこしてみました。
まったく同じ商品が100円と500円ってどういうこと?
100円ショップで購入した商品についての取材を進めていくうち、利用者からこんな声
が聞えてきた。
「薬味を切るときに便利だと思い、100円ショップで木製の小さなまな板をたんです。
でも、たった一度水洗いをしただけで翌日には反り返ってしまいました。
安いから仕方がないのかなあ」(会社員Mさん)
「竹の編み棒が100円なら安いと思って買いました。でも、家に帰ってちょっと力を
いれて編んだらカギ部分が取れてしまいました。
捨てるのは悔しいから、ボンドでつけて使っています」(主婦Sさん)
いくら100円といえども、れっきとした商品である。安くても買ってすぐに壊れてしまうのでは
商品と呼べない。
そこで東京都の消費生活総合センターに「100円ショップ」に関する苦情がどのくらい寄せ
られているかを聞いてみた・・・・・・・が、意外にも苦情は少ないのだった(失礼)。
「鍋つかみが溶けた」、「パンツのゴムが緩い」など、数件が寄せられただけだという。
我々が耳にした苦情がまれなケースであることを願うばかりだが、中には「100円だか
ら」と諦めてしまっているケースもあるかもしれない。そこで「大手スーパーで売られている
商品」と「100円ジョップで売られている商品」では何が同じで何が違うのかを比較して調
べてみることにした。
☆ソーラー電卓 100円ショップ 100円 大手スーパー 700円 「100円ショップ」の電卓は中国製の自社製で思わぬ注意書き付き(本文参照)
「大手スーパー」の電卓は日本製。
☆蛍光灯 100円ショップ 100円 大手スーパー 590円 「100円ショップ」、「大手スーパー」ともに白色・20ワット・580ミリでの比較。
メーカーはまちまちだがどれも有名メーカー製。
☆単三乾電池 100円ショップ 100円 大手スーパー 248円 「100円ショップ」、「大手スーパー」とも2本入りパックでの販売。驚きは同じ有名
メーカーのアルカリ電池であること。
上をみていただきたい。これは大手100円ショップでの1年間を通した売れ行き
トップ5である。単3乾電池、トイレ用洗浄芳香剤、便座カバー、蛍光灯、ソーラー電卓
の5種について比較を進めていくと、100円ショップの商品は、以下の2つに分けられ
ることがわかった。
(1)品質も性能も大手スーパーと全く同じで販売ルートが違うだけの商品(ここでは
乾電池と蛍光灯)
(2) 大手スーパーの商品とは素材を変えたり、内容量を減らしたりしている商品(ここ
ではトイレ用洗浄芳香剤、便座カバー、ソーラー電卓)
(1)の乾電池と蛍光灯は国内メーカーの同じタイプの商品であるにもかかわらず価格
に差が出た。その理由をまず乾電池メーカーに問い合わせてみると、
「小売店の利益の取り方が多いか少ないかの違いです。また、1000個買ってくれ
るところと1万個買ってくれるところでは当然、卸値はぐっと変わってきます」
蛍光灯メーカーも、「大量生産ですから100円ショップ向けに品質を変えたら余計コス
トがかかってしまいます]と、ほぼ同じニュアンスの答えが返ってきた。
その上で二社とも、「性能は100円ショップのモノも大手スーパーのモノも、どちらも
同じです」とお墨付きを与えてくれた。
となると同じメーカーの商品については、大量購入で卸値を安く抑えた100円ショツプ
に軍配が上がるわけだ。
コスト削減と品質保証の両立は100円ショツプでも同じ
「100円ショップ」を利用する際に気になるのは先の(2)分類される商品である。
便座カバーや芳香剤は素材の違いや内容量の違いが価格に反映された商品だから、
それぞれ用途や好みに合わせて選択すればいいだろう。
しかし、(2)に分類される商品の中で最も注目したいのは、大手100円ショップの
ソーラー電卓(自社製品・中国製)のパッケージにある注意書きだ。そこには「1%弱、
製造上の原因による不良品が発生しています。ご了承の上、お買い求めください。
不良品が発生した場合は、お店にてお取り換えさせて頂きます」とあらかじめ明記され
ている。不良品が発生することを前提に販売する商品も珍しいが、これは取り扱い品
種が多岐にわたり、かつ大量に扱わなければならない100円ショップならではの現
象だろう。他の100円ショップ・チェーンの店員も返品、交換については次のように語
っている。
「当社の商品に不良品があった場合にはもちろんですが、同業他社のモノでも返品
に応じています。商品のどこが壊れやすいか、お客様がどこに不満を持っていらっ
しやるかが検討できるからです」
うーん、急成長の秘密はこんなところにもあったのか。遠隔地から電車やバスに乗
って買い物にきた人の場合は、100円のためにあらためて電車賃、バス賃をかける
のはバカバカしいから返品・交換をしないかもしれないが、近所から買いにきた人な
ら、これは安心できるシステムだ。
いずれにしろ、コスト削減と品質保証の両立はすべての企業にとって永遠の課題。
コスト至上主義とも思える100円ショップといえどもこの課題に取り組んでいることが
わかった。
クレーム、返品、交換は消費者の不満をダイレクトに受け止める機会であり、企業に
とっては大変重要な責任である。
その点で、100円ショップ側に返品や交換に柔軟に応ずる用意があるのは、いわば
当然のことかもしれない。
先の「キャン・ドウ」の梅沢さんは、100円ショップの品質管理についてこう話してく
れた。
「たとえば口紅はチョコレートと同じで、一定の温度を保たないと汗をかいてしまい
ます。ですからメーカーとの取引条件の中に、品質を保つために必要な倉庫を
作ってもらうことを盛り込むなど、日々品質向上のための努力をしています」
手軽に買えていいけれど、ゴミの問題はどう考えているのだろう?
買物の楽しさをアピールするこうした均一価格ショップでは、目的買いよりも衝動買
いが多く見受けられる。だから専門店に劣らぬ品揃えが求められている。一店舗平均
2万種類・・・・・・・。それにしても、こうもプラスチック商品ばかりではそのモノの行
方が気になって仕方がない。
家庭ゴミの6割を占めるプラスチックの行方
「100円ショップの楽しさは、衝動買いができること。私にとって、唯一気楽に
モノを買える場所なんです」
自他共に認める“100円ショップの達人”石井和子さん(36歳主婦・100円シ
ョップ歴6年)はそうおっしゃる。
なるほど、確かに商品はみんな100円だから衝動買いをしても安心か……。
100円ショップで5000円分の買い物をしようと思ったら、きっと買い物カゴには
入りきれないもんね。
でもちょっと待ってください。逆にその手軽さが、「どうせ100円だから」という
意識を生み、つい不要なモノを買いすぎてしまったり、買っても結局使わなかった、
なんてことになるんじゃないですか。
「私が買うのは生活に必要な消耗品と、他の店では千円近くして手が出せなかった
便利グッズだけです。『生活には必要ないけれど、あつたら楽しい』という便利グッズ
は、3ヵ月も経てば100円ショップにも並びます。そのときでもまだ欲しいと思える
モノだけを買います」(石井さん)
さすが達人。でも、なかなか石井さんのように上手に100円ショップと付き合え
る人ばかりではないようだ。
「青色、黄色、ピンクなど、カラフルなプラスチック製品に目を奪われて、まだ家に
使えるモノがあるのに、水切リカゴや台所のボールを買い込んでしまいました」
(主婦Tさん・28歳)なんてオッチョコチョイな人も、結構いるんじゃないの。
でも、そうすると、これまで使っていたカゴやボールはゴミとして捨てることになつて
しまうのか。
それではもったいない。一体、100円ショップでは商品を売った後のゴミ問題をどう
考えているのだろうか。
「それは商品開発をしているメーカーさんと消費者側の問題でしょう」 ある100円
ショップに取材したところなんともつれない返事が返ってきた。
でも、膨大な種類と量の商品を扱い、その多くがプラスチック製品なのが100円ショップ
ではないですか。環境への負荷はかなりのものになるはずだけど。
東京武蔵野市「むさしの・ごみを考える会」の服部美佐子さんは、100円ショップ
によって日本人に使い捨て意識が蔓廷することを危倶している。
「100円でモノがどんどん売れるということはそれだけ廃棄物の量が増えるという
ことです。100円ショップは大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄という消費
サイクルの究極の形です。しかもプラスチックは今、家庭ゴミの6割を占めており、
これをいかに減らしていくかがゴミ処理の最大の課題なんです」
確かに100円ショップの商品には、紙・アルミ・プラスチックなどの複合素材が多
い。これはゴミの分別も難しくしてしまう。
「忘れてならないのは、作る費用が安くても処理の費用まで安いとは限らないことで
す。今、日本では販売された商品がゴミになったときの処理費用はすべて自治体が、
つまり私たちが税金で負担しています。だからこそ100円ショップはモノを安く売
ることができるのです。たとえ100円でモノを買えたとしても、結局は処理費用を
負担している自分達に税金という形でハネ返ってくる。100円ショップの商品は、
実は決して安くはないのです」(服部さん)
「100円ショップは将来的にどうなっていくのだろうか?
ここまで、「100円ショップは価格が安いし、品質も決して悪くないし、返品交換
にも応じてくれるし」と、その光の部分に感心してきたけど、視点を商品リサイクル
や処理に移して眺めてみると、影の部分が見えてくる。
国際的には、「商品のリサイクルや処理に見合う費用は生産者に負担させるべきだ
という拡大生産者責任の考え方がひろがってきているが、商品におけるリサイクルやゴ
ミの問題をまさかメーカーだけに押しつけるわけにはいかない。
その商品を販売している小売りショップにも応分の責任はあるだろう。
リサイクルやゴミ問題の地に、100円ショップにはどんな問題があるのだろう。
100円ショップ業界に詳しい流通ジャーナリストの辻和成さんに聞いた。
「ある大手100円ショップの社長は、『飽きられたらおしまいだ。新商品を次々と出さ
ねば』と一言っていますが、それで大丈夫なのか。衝動買いする人もいるでしょうが、
100円ショップブーム当初に衝動買いされていたインテリア小物の売れ行きは、今
では確実に落ちています。
また、単品での商品管理をしていないため、生活雑貨用品などの売れ筋商品が品切れ
になった場合は補充に時間がかかる。各店舗から本社へ の発注システムもコンビニの
ように合理化されていませんから、商品管理をきちんとやうと思えば人件費などのコストが
膨らんでしまうのです。
今は消費者が宝物さがしをしてくれている段階ですが、そのうち『100円だからといって
買う必要はない』『100円ショップに宝物はない』と感じるようになったとき、生活に必要な
消費雑貨を買いに来てもらえる店であるかどうかが、100円ショップの明暗を分けるでしょう。
辻さんは、多いところでは4万品目ともいわれる100円ショップの品揃えの多さについて
警鐘をならしている。
− 以上 −
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