備忘の都 2000 −FEBRUARY 〜 MARCH−  ◆

そういう訳で,出発間近の慌ただしい時に,
あんたは怒るかもしれないけれど,暫くお話ししましょう。

荒井さん,暮れの仕事で会ったよね。
あんた,現場に入った時より帰る時の方が元気だったもんね。
あれは本当にいい仕事だったよねえ。
その時,帰り際,個人的に話を出来たと思ってる。
あんたは云ったね。今度,医者からお墨付きの許可を貰うから,必ず飲みに行こうっ て。
あれが荒井さんと話をした最後になったけど。

今日ね,皆んな来たがってたんだ。
でも浮世の柵(しがらみ)ってヤツでね。
志村と高木は仕事でな。解ってやってくれよな。
加藤は,今こっち向かってんだ。渋滞に巻き込まれちゃってな。
笑っちゃうよな。アイツらしいよな。今頃きっとイライラし乍らこっち向かってんだ よ。

しかし,何だね。あんたはエラい人というのか,ヘンな人というのか。
ドリフターズがからっけつから始まって,
何とか先が見えてきてこれから金も儲かるぞって時だった。
飛行機で云えば,動き始めて離陸する一番しんどい時に一緒にやってきたのに,
ようやく楽に飛び始めて走り出したと思ったら「辞める」なんて云い出して。

その時,私はあんたの人生哲学ってのが全然理解出来なかった。
何云ってんだ,と思った事もあった。

あんたはあの時,条件出したよな。
極力迷惑かけない辞め方するって。お礼奉公するよって云ってくれたよな。
あの半年間のあんたの頑張り,それは凄かった。
本当に面白かった。鬼気迫るものがあるっていうか。
あの半年間,あんたがあんまり面白いんで,ひょっとしたら気が変わってくれるかと 思った。
けれど,ついに云い出すことはなかった。

あんたの事だから,止めても無駄だとは分かってはいるけれど,
もう本当に出かけてしまうんだね。
今,あの時と同じ状況に立たされている心境だよ。
行くな,とは云わないけれど,途中,気をつけてな。

今度,呑もうぜ。呑むんだよ,絶対に。時間もあんたが決めてさ。
あんまり長話をしてると,嫌われるよな。呑む場所もあんたが決めといてくれ。
じゃあ,いずれ。

2000年2月11日 荒井注氏葬儀・告別式
友人代表・弔辞 いかりや長介



016.夜遊び017.風少女018.グレゴリオ暦誤差修正
019.夜勤千秋楽020.晴れのちカエル

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 016.夜遊び

2000/02/27(Su) 

いこと,日記をほったらかしていたが,ぼやぼやしているうちにいよいよ2月も大詰め。
僕はと云えば,実は夜勤の2日目だったりする(5日間)。
夜勤外の生活のリズムも含めて,なかなか馴れない。未だペース配分がつかめず。
夜勤つったって,現在フォロー中のプロジェクトの問題発生時の見張りみたいなものなので(しかも応援),基本的に求められているものは「寝ずの番」以上の仕事ではない。オフィスにいる,それ自体が「仕事」なのである。昼間の仕事が遅延するのは会社も重々承知している(勿論,遅れを奨励してくれる訳はない)。僕を含めて3人,あてどなく勤務表をつけたり,雑誌をめくったり,気が向いたら先週から懸案中の見積作業のいくつかをしてみたり。

で,ヒマにまかせて「改造人間工房」などやってみる。
ちなみに以下が,僕の改造見積結果(そう云えば,日記で自分のフルネームを明かすのは初めてだな)。



改造人間お見積もり

倉田輝顕さんの改造計画を下記のようにお見積もりしました。

革命を起こしたい倉田輝顕さんの腕部には、ディ○スの剣をお取り付けします
これは、ピンチになると、なぜか敵にすきが出来る剣です。攻撃力に+50、防御力に-10されます
ちなみに、この改造には60万円かかります

一人で居ると寂しくなって話し相手がほしくなる倉田輝顕さんのには、ARMSをお取り付けします
これは、力が欲しいとき発動しますが、たまに言うことを聞きません。攻撃力に+70防御力に+10されます
ちなみに、この改造には100万円かかります

忍者になりたい倉田輝顕さんの手指には、ドロンチェンジャーをお取り付けします
これは、印籠の形をしていますが、人に見せても何の効果もありません。攻撃力に+20、防御力に+20されます
ちなみに、この改造には10万円かかります

この改造には総額170万円かかります。この改造を行うと、今の倉田輝顕さんより攻撃力が140、防御力が20増強されます
この改造後は倉田輝顕スーパー1と名乗るとよいでしょう


れを楽しんだくらいではまだ宵の口である。次に「伝説」をやってみる。
以下が,知られざる僕の伝説(やれやれ)。



倉田輝顕の伝説はこのように語り継がれる・・・

ある日,サイババが殉教者に手をかざすと,手の中から倉田輝顕が生まれた。
だって、あの子が忘れられない。告白しとけばよかったのに。後悔をかさねる倉田輝顕5歳。
倉田輝顕は10歳の時に、妹と血が繋がっていないことを知ってしまう。
11歳の時、愛車のホンダ・カブ50を1500ccにボアアップする。
このころ、「おもしろ顔コンテスト」で準優勝。そんなこんなで桃太郎はスクスクと育っていきました。
倉田輝顕は遂に人類初のワープ航行に成功しアルファケンタウリ星域に到達。地球へ帰還後、NASAにスカウトされる。
34歳のとき倉田輝顕は強まった。
44歳にして、ついに脳をAMD5x86に置換する。処理能力が公称で142パーセント向上したが、夏場になると熱暴走を起こしやすくなった。
そのせいで、倉田輝顕は『倉田輝顕互換次世代機』と呼ばれるようになった。
54歳になり小さな頃からの夢だったレレレのおじさんになる。
英語の辞書をひくとき歌わなくなった。57歳。
うっかりねすごしてどうやっても巣穴からでられなくなった。
65歳にして命を懸けた大博打をする羽目に。
勝敗は定かではないがこれ以降倉田輝顕互換次世代機(本名:倉田輝顕)は歴史の表舞台から姿を消した。


なみに「語録」なんてのもあるぞ。こいつはいたってシンプルだ。



倉田輝顕は声を荒げてこう言った。
「俺のこの手が真っ赤に燃える。」


ういうプログラムはパターンを見切らないうちに,面白がって適度に切り上げるのが吉。
折角だから「平さんがゆく」でやっさんのプロフィールにも加える事にする(ばか)。
かくて夜遊び,もとい夜通しの勤務はまだまだ続く(いやあ,ラクな日記ではある)。

そう云えば,田中小実昌さん死去。
作家なんだけど,子供の頃深夜番組で観た気弱な笑顔と黒い毛糸の帽子しか覚えていない。合掌。




 017.風少女

2000/02/28(Mo) 

勤中日(なかび)。
何だか日に日に体調が悪くなる気がする(って,まだ3日目だ)。

潟県警本部長が温泉麻雀責任で見送りの拍手も花束も無く「寂しく」離任したそうだが,此処で喝采を浴びて部下全員から最敬礼でもされた日には舌噛んじゃうよ,ココロあるひとなら。やはり映画化する際(しないしない)は北村総一郎主演で,という事になるのだろうか。スリー・アミーゴスは日本中に実在する。「癒着あっての地域社会」ってのは,あーた,冗談でも何でもないのよ。

て,その昔(1988年春)NTV系列で,後藤久美子主演「風少女」というドラマがあった。
おおた慶文のイラストと岡村孝子の歌声(「Believe」)がおりなす爽やかなオープニングを見事に裏切ったドロドロの家族崩壊劇であった。何しろメルティ人間劇の教祖こと内館牧子(当時はまだ新進気鋭であった)が脚本に名を連ねている。物語のディテールは忘れてしまったけれど,子供3人(野村宏伸,三上祐一,後藤久美子)の順風満帆家族(夫:津川雅彦,妻:香山美子)が,夫の浮気相手・洞口依子が姿を現したことから,一転直下,家中がホーンディング化してゆくというお話(そう云えば,グレン・クローズのストーカー振りが世の夫たちを震撼した「危険な情事」公開がこの頃である)。確信犯である洞口の策略で息子と父が彼女を取り合うように仕向け,遂にはあれほど貞淑だった妻が叛乱を起こして家を飛び出し,かつてしあわせの象徴だった家には,高校生の長女がたったひとりで立てこもって必死で崩れ落ちる天井を,壁を,非力なその腕で支えようとするという涙,涙の物語であった。孤独な彼女を支えるのは家族ではなく,父の親友(梅宮辰夫)や母の親友(水野久美)ばかりなのだけれど,本当に彼女を支えられるのは両親や兄弟に決まってるじゃないか,とよくフンガイさせられたものである。後藤の線の細さがまた良かったんだ。

中でも印象的なのは,喫茶店で久々に落ち合った両親が,冷え切った関係をどうにか修復したいのに,気が付くとお互いの欠点を論(あげつら)ってしまう処である。

「おまえはいつだってそうやってカップを掻き回す時にカチャカチャ音を立てるんだよ」
「あなただって臭い靴下をご丁寧に丸めて結んでその辺に投げ散らかすじゃない」
「おまえ,今それを云うのか」
「ずっとずっと云いたくて我慢してたのよ」

かくて,地球最後の日なんていとも容易くやって来る。
長いこと一緒に暮らしていれば,そりゃお互いの欠点の100や200を論うなど造作もない筈で,旨く行っている夫婦や家族などというものは,お互いへの深い愛や敬意がブラインドになったり,人生を共に過ごす最小単位の潤滑油としての遠慮や配慮やデリカシーがそれを云わせないようにする,或いは細心の注意を払ってほのめかしたりするものなのだ。たぶん。
例えば,食事の時にたべものをぽろぽろこぼす癖を,可愛いと微苦笑しつつ拾ってあげるのか,だらしがないと眉をひそめるのかは,あばたもえくぼ,その仲間へ抱く愛情の比重がものを云う。
上記の応酬だって,何気ない日常の積み重ねに相違無い。あるきっかけがあって誰かをキライになる時,そのひとをキライだと誰かに説明する材料なんてこんな風に常備ストックしていくものなのだ。ちょっとしたワガママ,ちょっとした甘え,そしてちょっとした不公平。日頃,キライを構成する決定打ではないものの,それらの候補はいつ何時かたちをなして,僕らに向かって牙を剥くとも限らない。
僕らが時間をかけて築いた人間関係の修羅場に陥った時,きっかけになった事物についてだけケアしても埒があかないのはそうした理由だ。飛び飛びで好きとキライに塗り分けられた碁盤は,あなたのその最后の一言をひとつ置いただけで,真っ黒に塗り替わるかもしれない。その一言を「なかったことにした」くらいでは,他のキライたちはもはや引っ込みがつかない。其処からゲームを真っ白にひっくり返すのは並大抵のエネルギーで出来る事ではない。僕らは知らず知らずに好きとキライのオセロゲームを続けている。但し,碁盤が広すぎて,どちらか一色に染まる事なんて滅多にないのだけれど。

「ストーリー・オブ・ラブ」「母の眠り」といった一連の家族や夫婦を巡る愛憎の物語を立て続けて観ていると,これは自分がオトコ性だからかもしれないが,どうも「ユメみる」夫・父のエゴが鼻につく。いちいち我と我が身に跳ね返るのだ。妻や娘が云い放つ一言一言が耳に痛い。近親憎悪と自己嫌悪が交互に襲ってくる。独身時代というか,ひとりものの頃には無かった感覚である。
ロマンティストというと聞こえは良いが,ただ単に地に足を付ける覚悟が無い旦那と,彼を支え,日々の暮らしと格闘する奥さん,という図式のあられもない愚かさに頭(こうべ)を垂れつつも,結局は奥さんの優しさに甘えて己が欲望に邁進する,僕もそんな亭主族のひとりである。好きキライの話に立ち帰れば,この図式が生む不公平は「僕にとって」いつでも夫婦関係の火薬庫であり続けている。導火線は到る処から顔を出しているし,これがまた引火しやすいこと,このうえない。
とは云え,時々は適当に小爆発を起こさせて,大爆発だけは避けなければいけないのも頭が痛い処。
やはり,ウチの奥さんにも2作品とも観てもらうべきであった。

…いつかこれが,ただのスプーンになる日が来るのかしら。

思えば,ミシェル・ファイファーの自問がやけに胸に痛いレイトショウの夜であった。


念の為に断っておくが,ウチの夫婦仲は到って良好である。
時々,このように反省だけはしてみるのだ(全くばあかな話である)。




 018.グレゴリオ暦誤差修正

2000/02/29(Tu) 

400年に1度来るイレギュラー閏日(「マニトゥ」を思い出したのは僕だけじゃあるまい)。
今回,一応は閏年対応も兼ねての夜勤だったのだけれど,緊迫感も無く朝を迎える。
アメダスの誤作動騒ぎを他人事で聴くくらいには平和な朝でした。勿論,夜までずっと。

宅して,風呂に入って,朝御飯を食べて,奥さんをスクールに送って,高須へ給油に行って,灯油買ったついでに車も洗って,帰り途に村上春樹「神の子どもたちはみな踊る」(新潮社)を買って,布団に入ったのが11時過ぎ。夜勤明けは大体このスタイルで定着してきた気がする。
17時くらいに目を覚まし,少し時間があるので長い事積ん録しておいた火サス「取調室11」(1/25放映ぶん)を観る。
犯人役はワイドショウ的に旬の人,佐久間良子。娘としっくり行かないカリスマ医事評論家という役どころ。
元ご主人は云わずと知れた名優,平幹二郎だが,堪えられないくらい濃い夫婦である。このふたりだけは両親に持ちたくないと奥さんは笑ったが,実際にお子さんがふたりいらした筈であるから,さぞかしかつては濃厚な食卓だった事だろう(大きなお世話)。
処で,準レギュ出演で刑事役の粟津號さんが不自然に激ヤセしていた。具合が悪いんだろうか。

話は脱線するが「金八」の前シリーズの校長先生,早崎文司さん(1929生)も放映当時,老人痩せだけとは思えないほど激しく痩せていて非常に気になった事がある。過去シリーズあれだけ仇役だったのがいきなり好々爺になって,ラスト付近で見せ場が増えたというのも製作側の作為を感じたし,しかも僕が知る限り,早崎さんはその後メディアから姿を消してしまうのである(ね,気になるでしょ)。
最近,金八サイトのQ&Aで彼の消息を尋ねたがアンサーはまだ無い。
誰かご存知の方がいらしたら,早崎さんのその後の消息を教えてください。

も,積ん録ドラマをたかだか一本消化した処で,我が家の積ん録状況の大勢に影響は無い(奥さんは何が積ん録されているかそれすら知らない。あのひとは自分が録画を頼んだ番組のことも沢山忘れている)。現在はリアルタイムで観損ねたので,映画公開を機に再放送している「ケイゾク」を録画しているが,まだ1話も観ていない。いや,前評判で番組観ずにいきなり映画はツラいと聞いたものでまとめて観ることにしたのだが,果たして映画公開中に観終わる事が出来るんだろうか。



いう訳で,夜勤4日目。問合せが数件あるが,いずれも今回のフォローとは無関係。
Eさんから「夜勤お疲れさま」の枕と共に「オケピ!」一緒に観てもいいよとのメールが届く。
先日,ご夫婦で生瀬&古田の「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を観てきたそうで羨ましいナリ。
再々々々演(あるのか,あるだろ)は僕もどうにかして行きたいナリ。




 019.夜勤千秋楽

2000/03/01(We) 

と云うのに,よりによって遅刻(寝坊だ,寝坊)。

と思いついて,東西落語特選など読み始める。
地理的にいくら直に触れる機会が少ないとは云え,噺家の公式サイトをふたつも管理してるとは思えないほどネタを知らない(もしくは演題と中身が一致していない)。しかも嫌いじゃないくせにと来ている。

手始めに開いた「たらちね」に,やっさんから昨夜届いたばかりの「噺の穴(長屋の花見)」の末尾に引用された「楽しみは、春の桜に秋の月、夫婦仲良く三度食う飯」が出て来た。八五郎が薔薇色の新婚生活を思い浮かべる内にザークザクのバーリバリのガンガラガン,サークサクのポーリポリのチンチロリンと茶漬け妄想に走る手前でひとくさり垂れる講釈のひとつであった。これもまた西手新九郎のひとつなり。


続けて,くだんの「長屋の花見」
実を云えば,高校時代に文化祭で初めて聞いたやっさんの落語がこれだった。

あと「かぼちゃ屋」

与太郎「兄弟同士で夫婦になっちゃ,おかしいか?」
叔父さん「たりめぇだ!」
与太郎「へへ,そんなことぁ無いよ,あたいのおとっつあんとおっかさんなんざ,親同士で夫婦だ

あるいは,

与太郎「かぼちゃなんてものぁ,食うヤツがいるからこしらえるヤツがいるのか,こしらえるヤツがいるから食うヤツがいるのか知らねぇけど,運の悪いやつは間に入って売るような目に合っちまう

などなど。
ね,与太さんというひとは,実は天才的なコピーライターだったりする。

もひとつ「悋気の独楽」。これはやっさんの持ちネタでもあるが元々は上方落語。

しかし本当に可笑しいものはテキストで読んでも充分に可笑しい。噺の到る処に散りばめられた隙の無いウィットとばかばかしさは,アメ公あたりのスタンダップ・コメディなんかでは決して堪能出来ないシロモノだ。幾ら夜勤でひとが少ないとは云え,大笑いするわけにもいかなず,必死で笑いを噛み殺したが,端で見るとモニタ眺めて顔を真っ赤にしているさまはさぞかし薄気味悪かったろう。時々我慢出来なくなって笑い声漏らすし。
今夜はこのくらいにしといてあげる(ばか)。

,とにかくこれにて夜勤終了(一応,仕事もしてるんですよ)。
これより,徹明(んなもん,寝て終わりだ)を含め4日間の休暇に入る。




 020.晴れのちカエル

2000/03/03(Fr) 

勤のぶんの代休。
夜勤モードに馴れた身体を1日で戻すのは無理みたい。夜眠くなく,昼間は枕が恋しい。

朝は夫婦して中間のファースト・オン・フライデーへ赴く。ティム・バートンの新作「スリーピー・ホロウ」など。
もうじき臨月を迎える奥さんは,もはやレイトショウは耐えられなくなっているので,映画は朝イチがベストなのである。彼女は僕が昨夜観た「マグノリア」とどちらにするか最后まで悩んでいたが,上映時間でこのゴシック・ホラーを選んだ(「マグノリア」は3時間を超える)。彼女は元々「ビートル・ジュース」「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」を始め,バートン・ファンなのだ。グロいの駄目なくせに。
尤も,グロいと云えば昨夜の「マグノリア」も後半いきなりグロテスクの隠し玉が物語全篇に炸裂するので,あれはあれで連れて行かなくて正解だった。
以下,タばれになるが,映画の後半,夜半過ぎにいきなり町中をカエルの雨が襲来するのだ。
それも一抱えもある漬物石大のヒキガエルが山と降る。しかも見た感じCGは使ってないというか,少なくとも全然分からないというか,とにかく道路を次から次からカエルがどしゃ降りするのである。あれは怖いよ。
まずドラマ的には何の脈絡も無く走行中の車のフロントガラスに何か直撃するのね。余りの激しさと唐突さに最初は銃弾かと思ったもん。運転していたジョン・C・ライリーがおそるおそる見上げると,血まみれになった一匹のヒキガエルが不自然な体勢でフロントガラスをずるずると滑り落ちてくる。彼が「What's?」と呟く間もなく,第2陣がぼたぼたっ,ややあって,ぼたぼたぼたぼたぼたっ…フロントガラスを埋め尽くすカエルカエルカエル。「うわああああああっ」とそりゃ彼じゃなくても阿鼻叫喚るわ。描写してる僕が気持ち悪くなってきた。
奥さんはカエルが全く駄目である。瞳がつぶらで黒目がちで,人差し指ほどの大きさもないアマガエルでも,国体に出られそうなハイジャンプで飛びのく事が出来る。それでいて,フレンチで出て来るカエルはササミみたいで美味しいなどとヌカすから分からない。料理のカエルだって,下半身がそっくりリアルに出て来たら大概グロいと思うのだが,食べ物の体裁を整ってさえいればノープロブレムらしい。…ったく。

が完全にそれたが(いつもの事だ),どっちにしても胎教に悪い映画であった。彼女に云わせると母子共に楽しんだんだそうだが。
確かにバートンらしく雰囲気があって面白かったんだけど,科学捜査を標榜した結果がアレでは,イカボット捜査官の将来は昏いのではないか。「新世紀(この場合19世紀)に間に合った」などと新しい奥さんを連れて呑気にNYに舞い戻っていたが,そもそも彼は今回の事件で彼の科学捜査の正当性を立証してこなければならなかったんだよね。
彼を村に派遣する時,クリストファー・リー市長は怖い顔をして確かにこう云ったのだ。

「忘れるな。今度は君が試されているのだ」

んで,解決した事件の顛末が,アレがアレの為にアレをアレしたって,大審院のもの笑いになるだけなんじゃ?

れから太陽家具へ行って,ベビー箪笥を物色,佳い取っ手の抽斗のヤツがあったので即行でまとめる。
奥さんはいつも贔屓にしていたおすぎ似のUさんが辞めたというのはかなりショックなようだった。対応もまどろこしかったし,店長がわざわざ如何にもの体(てい)でアイサツしにきたりするその営業スタイルがいやーんだったので,たぶん今回限りで此処の太陽家具に足を向けることはあるまい。

舎の日曜日」で遅めのランチを摂る。前々から奥さんが行きたがっていたもので。
いや,全くもって「探検!九州」のムック本の効果は絶大である。
太陽光をいっぱいに取り込めるテラス席で僕はサルティンボッカ,奥さんはカレーロワイヤル(これが「探検!九州」のオススメであった」)。
仔牛の肉は軟らかかったしソースもひどく美味しかったんだけれど,敢えて苦言を呈させてもらうなら,サルティンボッカのつけあわせにサフランライスが付いているのに,ライスかパンをつけてはかぶってしまう(オーダーの時,付け合せにサフランライスが付く旨,説明はあった)。どうせならスープを付けちゃうとか(サラダは別についている)。デセールのヨーグルト・ソルベは美味しかったし,食后の呑み物にジュースのチョイスが出来るのもかなりポイントが高いだけにちょっと残念。あ,カレーロワイヤルもなかなか美味しいです。ライス軟らか目派の僕としては,ちょっとぽろぽろ感がアレですが,ま,これは個人の嗜好の問題ですから。



は夜とてレイトショウ。「釣りバカ日誌イレブン」,何しろ今日までだったもので。
しかし受け付けのおねーさんが云う事には「フィルムに疵が入っててひどく見にくいんですけど構いませんか?」
以前「アナライズ・ミー」でも同様のことを云われあの時は引き下がったが,「釣りバカ」は今日で終映だからそうも行かない。
「構いませんよ」と答えると「では料金は要りません」との返事。
決まりですからと鑑賞者リストにサインを求められただけである。まさかロハにしてくれるとは。
んで,肝腎の本篇だが,確かに銀幕中央に熱で出来た泡状の疵がぷつぷつ浮かんでいたが,物語を楽しむのにさして遜色はなかった。折角なので浮いたおカネでパンフを買う。出来の方はうーん,作り手は結構自画自賛してるけど,僕は結構辛口。本木監督は確かに野心的に頑張っているのだけれど,そもそも山田・朝間脚本が息切れしてしまってる感じ。懲罰委員会も今までの焼き直しだし,何よりあろうことかスーさんに激しい「老い」を感じてしまった(何だか萎んじゃったし)。これは手痛い。いや,確かに喜寿を迎えたことくらい頭では理解しているんだけど,何処かで妖怪・三國神話を盲信していた。ブルータスおまえもかってね。無いものねだりなのは100ダースだって承知してはいるんだよ。

キティーちゃんのひなあられと苺クリーム入りミニシューを買って帰る。23時30分。
奥さんは狂喜したが,妊婦のカラダ的にはやさしくないかも。

今日観た映画:「スリーピー・ホロウ(1999・米)」「釣りバカ日誌イレブン(1999・日)」



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