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058.マイ・ムービー・ビジネス
2000/07/02(Su)
昨日に続いて会社から障害連絡のあったいやーんな休日だったが,気を取り直して,午後から子供を乗っけて高須方面へドライヴ。
奥さんが,こないだアカチャンホンポで購入した特売のミリブ3000(木梨憲武がキャラクターをつとめるチャイルドシートである)の乗り心地(勿論,乗るのは赤子だ)を試したがったもので。
最近出来たのだが,北九州であり乍ら非常に大分ローカルな香りのする「スーパーなかの」「明屋書店」に立ち寄って,明屋ではジョン・アーヴィング/村井智之訳「マイ・ムービー・ビジネス」(扶桑社)を,スーパーなかのでは,野菜諸々食料品を買い込む。ガソリンを入れて,「もち吉」で松平さんに簡単なお中元を選んだ後,ローソンで英ちゃんをたぶらかして誘ったばかり(上演后の平田オリザ・シアタートークで釣った)の「月の岬」(青年団プロデュース+「月の岬」プロジェクト公演)のチケットを買う。発売は昨日だったのにも拘らず,整理券番号付のチケットは7番8番。発売日翌日の夕方なのに,まだ6人しか買っていないとは(そりゃ3回公演だから総売上枚数はもうちょっと行くんだろうけど),これはこれで「オケピ!」には無い悲しみが…。地味だけど,良さげな芝居なんだけどなあ。
夜行く予定だったレイトショウも返上して買ったばかりの「マイ・ムービー・ビジネス」(扶桑社)を読破する。
昨日「サイダーハウス・ルール」を観たばかりなのも,映画自体のライナーノートとも云える本作を読むのに(そして映画自体により愛着を持つのに)大いに役立った。僕は元々「ホテル・ニューハンプシャー(映画版)」からアーヴィングを知った人間なので(しかも映画自体は気に入ったくせに彼の著作の例外無き分厚さに恐れをなして未だレジまで辿り着いた事がなかった。つまり,これが僕の記念すべきアーヴィングの一冊目なのである),映画原作者としての「彼と彼の映画」というアプローチは非常にとっつき易かった。
彼の作品の映画化は決して珍しくはないにも拘らず「サイダーハウス・ルール」が彼にとってとりわけスペシャリテなのは,最初に脚本を書き始めてからクランクインまで13年の紆余曲折を経たこと,彼が脚色して初めて密接に一貫して映画製作に携われたこと,そして,脚本家として今年のアカデミー賞最優秀脚色賞というかたちで長年の労が報われたことにある。
彼の「サイダーハウス・ルール」脚本執筆の歴史はまた,気が遠くなるほどのリライトの歴史でもある。
ジャンルこそ違えど,劇評や再演,あるいは演出家や役者との理由から上演台本を何度も書き直し続けるニール・サイモン「書いては書き直し」(早川書房)は,上映時間や配給元といった多くの制約の中でより自分らしさ(作家性)を出すべく挑み続けたアーヴィングが必ずよよと泣き崩れる好著に相違ない。ましてや映画の方は完成台本がゴールではない。作家の意は100%汲み取られる幸運はまずありえない。さまざまな要因が撮影時に完成台本をずたずたに切り刻むのを,作家は悲しげな瞳で見守る他ないのだ。それにしても,最終的に監督がラッセ・ハルストレムに行き着く迄に,ウェイン・ワン(最近「地上より何処かに」を観たばかりだ)やマイケル・ウィンターボトム(このひとの映画は「ウェルカム・トゥ・サラエボ」以外全部観ている)といったそうそうたる面々を介していたとは驚きだった。アーヴィングの原作なら,という名匠,或いは名優はごまんといるのだ。
映画と本を続けて堪能したら,4年もの間積ん読していたロジャー・ローゼンブラット/くぼたのぞみ訳「中絶」(晶文社)を久々で手にとってみたくなった。アメリカでの中絶の歴史は中絶容認派(プロ・チョイス)と中絶反対派(プロ・ライフ)の抗争史と読み替えても良い(ちなみにアーヴィングはプロ・チョイスの立場をとっている)。僕がほったらかしておいたこのメディアル・レポートの中核をなすのは,プロ・チョイスとプロ・ライフとの混沌(カオス)にある。つまり,双方の考え方に理があるとし,矛盾を孕みつつ,その状況をこそ受け入れようというもの。さて,暇を見つけて本を開いてみますか。
ウォルター・マッソ死去。享年,79歳。「おかしな二人2」を観に行っといてよかった。
ジャック・レモンは,ニール・サイモンは,戦友の死にどんなにか力を落としているだろう。
今日の読書:ジョン・アーヴィング/村井智之訳「映画の中のアーヴィング マイ・ムービー・ビジネス」(扶桑社)
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