備忘の都 2000 −SEPTEMBER−  ◆

夫婦の危機を迎えたときは、とりあえずセーヌ川岸で話し合うこと。憶えておこう。

岡田斗司夫


071.普段はこんなもんですよ072.オホーツク銘菓
073.日本映画秘宝館074.ブラックジャックII075.ツイていない日

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 071.普段はこんなもんですよ

2000/09/22(Fr) 

乙番勤務だが,今朝は9時半から本社人事部との懇談会という名の面接を受けに支社ビルへ。まあ,色々とよく喋ってくる。
帰りに折角なので「エスプリ」に立ち寄って季節ものの栗のムース(「シャテーニュ」)を買って奥さんを喜ばす。相変わらず此処のケーキは美味しい。
大盛り皿うどんのお昼を食べて会社へ。会議とトラブルと週報作成とトラブルと会議と何たらかんたらと,ぎゅうぎゅうに仕事をする。俺らしくないなあ。

犬山の実家から梨が届いたと奥さんからメールが入ったので喜び勇んで帰宅。
岐阜県は美濃加茂市の豊水梨。梨に不自由しない生活というのに憧れてたの,オレ。



キタくんから二通目のメールを受け取る。
彼は今,佐伯市の上浦町でアワビ,トコブシ,アコヤガイ,ヒオウギガイ,ウニの子供を育てているんだそうだ。
「生き物相手だから休みが全然ありません。宇佐に帰るのも年に2日くらいです」とある。
オレなんか人間の子供を育てていて,今年はまだ宇佐に一度も帰ってないもんなあ。
皆んな,頑張っているんだなあ。ああ,キタくんにも会いたいなあ。




 072.オホーツク銘菓

2000/09/24(Su) 

朝,寝惚け眼のまま女子マラソンなどを観る。
朝と云っても9時をとうに廻っていたので,先頭集団は既に高橋尚子とルーマニアのシモンの一騎撃ち状態。ケニア勢はもはや遥か後方である。
35Km付近で勝負に出た高橋がゴーグルを投げた(後で「知り合いがいたので拾ってもらえると思って投げた」と語っていた)。それはいい。
実況が「遂にラストスパートに出たんでしょうか(うろ覚え)」と振ると,解説の増田明美が滑舌良く,

「ええ,よしいくぞうってつもりなんじゃないですかねえ」

と云ったのを聞いて否が応にも目が醒めた。
きっとテレビを見ていた吉幾三もソファから滑り落ちたに違いない。
あとは高橋が金メダルまでまっしぐらだったものの(爆風スランプの「がんばれタカハシ」を口ずさんでいたのは僕だけですかそうですか),今後も増田明美の動向には目が離せない。とは云え,気ィ入れて話を聞くには彼女と松野明美の話は長すぎるのだが。

今朝も山之上の梨を食べて会社へ。暫し,梨に不自由しない生活が続く。
それはそれは幸せな毎日です。



乙番勤務の楽日は,Y田さんのとっておきの北海道土産を放出してくれた。
オホーツク銘菓「流氷の舞姫・クリオネ」。オホーツク銘菓(流氷銘菓ともある)…ネーミングからして業者の意気込みを感じる。
あのクリオネを模したくず大福というか,水まんじゅう様の菓子である。勿論,売店専門に扱っているだろうから生菓子という訳ではない。くだんの生物をかたどった透明なくずの中に赤い餡(着色料・赤105号使用,とある)。触覚までは再現出来なかったらしく,それでも菓子を詰めたケースの方は触覚までかたどった窪みになっているあたり,つくり手の気概を感じる。或いは当初は触覚までつける野心があったものの,志半ばで破れた夢の跡なのかもしれない。しかし,クリオネを知らないひとにはこれって全く謎の菓子に相違ない。個人的にはバージェス頁岩(けつがん)のオパビニアだって菓子にしてほしいんだけど(ええ,そんな奇特な菓子屋はおりますまいて)。
ご丁寧にオプションできな粉までついていた。味の方はまあ皆さんのご想像通りの味と食感であると思っていただいていい。

特筆すべきは,発売元が榮屋活魚株式会社(北海道紋別市)って事かな。
まさか,さかな屋さんが菓子こさえて売ってるとは思わなんだ。

北海道土産といえば,僕の留守中にN山夫人が疾風のように現れて「例のブツです」とマルセイ・バターサンドを置いて,疾風のように去っていったらしい。追っ手が迫っていたのだろうか。いつもいつもすみません。ええ,これが楽しみなんですう。

昨夜の読書:ロアルド・ダール/永井淳訳「少年 BOY / Tales of childhood」ハヤカワ文庫



 073.日本映画秘宝館

2000/09/25(Mo) 

月曜だが,昨日の振替休日で今日はお休み。
失われた週末を取り戻すべく,朝の出勤ラッシュを逆走して福岡へ。

10時過ぎには天神に到着したものの,目当ての映画はお午からなので中途半端にヒマな時間が出来る。
仕方なく2000円ぶんのタダ券を懐に,ベスト電器天神店へ。
加藤和彦「『ちんちろまい』サウンドトラック」と,いつのまにかひっそりと発売されていた大江千里「Solitude」
特に千ちゃんの場合,発売日は9月6日とある。2年以上振りのオリジナルアルバムだというのに(前作「ROOM802」は98年の5月リリースだった)公式サイトにだって情報は載ってなかった(て云うか,最終更新は去年の10月どまりじゃん)。と思ったら,此処に引越ししてた。僕が知らなかっただけらしい。てへえ。此処10年でいちばん地味なジャケ写。アルバムそれ自体の自信のあらわれか。

ベストを出た処で会社から呼び出しがかかるが,どうにか電話対応で切り抜け,後ろ髪を引かれつつバスで百道へ移動。220円。
正午からシネサロン・パヴェリアで「しあわせ家族計画(1999)」。長さん目当てで優先度をぐいぐい上げて駆けつけた。
これは同名のTV番組をネタに98年暮れに撮られて以降長くお蔵入りしていた不遇の一本。番組終了時期にどうにか公開が間に合った。
奥山追放劇で松竹大船は大きく揺れた。この映画は丁度そんなさなかに産み落とされた。松竹プログラムピクチャーとしては大船喜劇らしい,観客に明日への活力をくれる屈指の出来にも拘わらず,単館公開の憂き目にあった。本来なら全国松竹邦画系一斉ロードショーの番組だった筈だ。でも,斜陽の松竹映画部門にはもはや上映出来るハコがない。ひょっとすると九州じゃ上映館は此処だけだったんじゃ。
監督の阿部勉は長らく山田組のチーフ助監督だったひと。長年の顔が利いてか,デビュー作とは思えない潤沢なキャスト陣。主役は勿論,脇を固めるのも「学校III」の主演組,大竹・小林が惜しげも無くカメオ出演しているし,本当に賑やかしのためだけに出てきてプロの「コケ」を見せるTBSのガードマンこと笹野高史。でも,これこそ大船喜劇の醍醐味なんだよな。
物語の素材としての三浦友和を大きさを改めて(って何度改めた事か)実感。決して器用な役者さんとは云えないが,このひとにしか出せない空気はいつも僕らにあたたかい。元より奇をてらった筋な訳でもなく,とりわけ家族が番組に出場してからはラストシーンに到るまでこれでもかというくらい定石通りの決まりきった展開なのだが,やっぱりほろほろ泣けてしようがなかった。僕らは深く閑かな不幸の中でささやかに咲く「ちいさなしあわせ」というヤツに,どうも根っから弱いものなのらしい。気持ちのいい涙を流して映画館を後に,天神へ戻る。

次の映画まで1時間程あったので,Z−SIDEのB1食品売り場へ。
PHSで奥さんにいちいち価格帯を確認しつつ,1缶88円のホールトマトを4缶,1缶98円のハインツのミートソースを2缶,それから久し振りにこーんなちっちゃいのに1缶500円もするサバトンのマロンクリームを買う。実を云えば,フォションのミルクジャムに「キャラメル・ミルクジャム」「バニラ・ミルクジャム」「コーヒー・ミルクジャム」と3つのヴァリエーションが新登場していたのだが,如何せん1本1900円の大瓶しか置いてない処が業腹で,さすがにこれを買うのはあきらめた。せめて,ハーフサイズのおためし版を置いてくださいよ。> フォションさま。

缶詰の袋を提げて,中洲へ移動。それでも声をかけてくるのが,ポン引きのおにいさんの逞しさである。
「これからご予定はありますか」というおにいさんの挨拶を掻い潜って,シネリーブル博多着。
悲しい事だが,此処は今月末を以って閉館が決まった。今日はそのさよなら企画「日本映画秘宝館」
確かに此処へ来るのは本当に久し振りである。
出来た当初はポン引き攻勢にもメゲず繁く訪れたものだが,いつか拠点はシネリーブル博多駅1・2に移り,シネリーブル博多自体,気が付いたら2番館になっていた。僕にはこのへんの転落の経緯が良く分からない。一時期は市内では数少ない黒字を維持した小屋と聞いていた。モーニング,本編,レイトと番組を分けるという映画ファンのツボを押さえた興行も此処は率先してやっていたし,月刊されるリーフレットだってかなり充実していた(現在はシネリーブル博多駅がそれを引き受けた格好になっている)。となればシネリーブル博多駅という「事業拡張」が結局,シネリーブル博多自体の息の根を止めたのかもしれない。元々,地理的環境的に足を運び難いロケーションだったのを,番組と企画で乗り切っていたのが現実だったのではないか。其処に博多駅という絶好の立地条件下にほぼ同様のスタンス,フォーマットで姉妹館をつくれば,そりゃ客はそちらに民族移動をするだろう。加えて,小屋を増やしたことで人材の不足を深刻化したのかもしれない。以上は全て僕の憶測に過ぎないが,少なくとも僕が博多駅にシフトしたのにポン引き軍団というのは大きかったかも。このへん,若い女性にとっても場違い感は否めない処だし。

で,今月半ばから始まったシネリーブル博多最終企画,お客さんへの最後のご奉公が「日本映画秘宝館」である。
2,3日置きに日活映画のアーカイヴからさまざまなジャンルをセレクトして2本立て1000円という並木座並みの大盤振舞(ちなみにレイトショウはロマンポルノ系の棚卸し)。今日から3日間は青春歌謡の映画化作品という事で「上を向いて歩こう(1962)」「いつでも夢を(1963)」の2本(当時,我が両親が二十歳そこそこの頃である)。坂本九,橋幸夫は元より「長崎ぶらぶら節」を観る前に,まだ10代の吉永小百合さまを拝んでおくのも悪くない,と思ったのですが,ハイ,悪くなかったですよ。まだまだ無防備で何処もかしこもはちきれんばかりだったけれど,若き小百合さまのひたむきさと健気さが全開した2作品に釘付けの3時間余,非常に良いものを観させていただいたです。
他にも,元ジェリー藤尾夫人・渡辺友子(当時は「トモコ」)とか,キューピーちゃんこと石川進といったお宝どころ,更には「金八先生」最新作で校長先生を演じた長谷川哲夫が,高橋英樹の腹違いのイヤーンな兄を好演,後年,森重久彌・父に翻弄される出来のいい長男(ええ,次男は竹脇無我ですよ)とはまた違ったタイプの酷薄さを醸し出していてオレ的にグー。でも,最后は浜田光夫のやんちゃさと向こう見ずさで決まりでしょう。いやあ,いいよね,浜田光夫。誰か「浜田光夫ファンサイト」を作って然るべきだと思うぞ。

帰りに大丸に寄って,奥さんのリクエストである四川飯店の「坦々麺」を買ってから帰宅。
いつのまにか箱が変わって,これまで別々だった肉みそがいっしょくたになっていたが,美味しさは変わらず。
こんなに胡麻が強くなかったような気もするが,奥さんが満足気な表情をしてるので由(よし)とする。

今日観た映画:「しあわせ家族計画(1999・日)」「上を向いて歩こう(1962・日)」「いつでも夢を(1963・日)」



 074.ブラックジャックII

2000/09/29(Fr) 

仕事は早く切り上げてきたのだが,いかりやマニアなので(もはや断るまでもない)レイトを取りやめにして「ブラックジャックII」(TBS)
堤幸彦という演出家のセンスは買うが,それが決して良い方にばかり行くとは限らないのは映画版「ケイゾク」でさんざん思い知らされたので(「プリズンホテル」(テレ朝)も僕的には視聴者側に交通整理を強いているうちに,ランナーズ・ハイに達しないまま終わってしまったという苦い記憶がある),眉にツバをつけて臨んだのだが(結局「トリック」も観損ねたし)…何だ,面白いじゃん。
脚本(清水東。僕はこのひと,よく知らない)は意外と正統・手塚味。ドラマの独自カラーを出そうとするでなく(こういうファンの多い原作ものは案外命取りになる),手塚原作テイストを壊さない努力をそこかしこに感じる。ややもするとそれが却って実写化した際のギャップを埋められなくしたりするものだが,なかなか善戦している。

でも,今回僕が思わず膝を打ったのは,ピノコの扱いである。
ピノコと云えばある種,原作のキモであり,またフリークスでもあるという負と強烈に愛らしいという正を合わせ持つ強烈なキャラ故に下手に表現すると,物語自体が土砂崩れしかねない。いっそ出さないという懸命な選択肢だってあるのだ。
だが,本作では敢えてピノコに対して大胆なアレンジを試みた。

双子の「フツウの」小学生の女の子が並んだまま,殆ど表情を動かさずユニゾンで台詞を喋るのである。ピノコがふたりいることには何の説明もないし,少なくとも,ブラックジャックを含めた他の登場人物が彼女らをふたりとして扱ってはおらず,且つ,彼女らも決して第一人称名詞を「あたしたち」と複数形にはしないのだ。その代わり,ピノコ特有の舌足らずは姿を消し(台詞の一部語尾にピノコらしさを感じさせはするが)あまつさえ娘らの演技自体も今イチである。

但し,ユニゾンで話すそれ自体の異様さが彼女たちの演技の巧拙を不問にするし,また半端なマンガのモノマネをされるよりはこのくらい大胆な解釈を入れてくれた方がうんと小気味良い。これはあくまでも推測に過ぎないが,これは脚本ではなく演出の段階で堤さんが発案したのではなかろうか。あのひとならこれくらいの飛び道具は平気で用意しそうな気がする。誠にもって油断ならない。モッくんの二枚目と二枚目半を行き来するブラックジャック特有のたたずまいもイイ線行ってたし(少なくとも歴代のブラックジャック役者…加山雄三,宍戸錠,隆大介諸氏の貫禄つきすぎの黒男には正直原作とのギャップを感じてヘキエキしていたので,僕はモッくん版を現時点でのベストとしたい),これは意外な拾い物であった。長さんが良かったのは断るまでもない。外科手術シーンの生々しさについてはゴールデンタイムという時間帯を考えると意見の別れる処かとは思うが,原作的にもどうにかしてクリアしなければならない壁だったし,あれで良かったのでは。

処で当初「ブラックジャック」の単行本(秋田書店)は恐怖コミックスを名乗っていたんだよね(後にヒューマン・コミックスと改められる)。あれってリアルな外科手術シーンのせいもあったんじゃないかな。楳図センセイの「うばわれた心臓」と同系列に扱われていたとか。医学マンガなんてジャンル,当時の担当者は思いもつかなかったんだろうなあ。



福岡の親父から電話がかかって,明日福岡へ召喚される。
見舞いだけならちーとも苦ではないのだが,浮世の義理と掟だけはなかなか思うようにコトが運ばない。




 075.ツイていない日

2000/09/30(Sa) 

ポケベル(NTTドコモ)のインフォチャネルでは,やぎ座の運勢は「人間関係×」とあった。見事当たってた。
夕方近くまで浮世の義理を片付けたあと(片付いたのかっ),へろへろになって病院から次妹と逃げ帰る。外はワイパーが効かない程の大雨。
せめてもの気晴らしと「16区」へお茶しにいく(そう云えば先々週も来たんでした・笑)。実を云えば,次妹は今日が「16区」デビュー。
雨がさいわいして,ティールームも比較的空いていて窓際の角テーブルをげっちゅー。カフェ・オ・レと此処の特製モンブランで疲れを癒す。
奥さんにはシュー・ア・ラ・クレームをおミヤ。次妹にはマロンパイを薦める。当たり前ではあるが,彼女も此処を気に入った様子。

そのあと妹が「ビブレで買いたい服がある(昨日見つけた時に買っとけよ)」というので,天神方面へちょこっと寄る。 どうせ15分もいやしないだろうと,福ビルの30分250円のパーキングに駐車して(普段は8:00〜20:00ずーっと1000円の処に駐めている)制限時間30分の中,妹はビブレへ,僕は丸善へ。と思ったら丸善が本日定休日(土曜日なのにィ)だとかでエスカレーターが停まっていたので,慌てて隣の天神コアへ移動し,6F紀伊国屋書店へ駆け上がる。目的は井沢満「つま恋」(角川書店)三谷幸喜「三谷幸喜の仕事(仮)」(角川文庫)の2冊。前者は新刊コーナーに平積みになっているのをすぐにげっちゅーするが,幾ら探しても三谷さんの文庫が見つからず。思い余って端末検索してもらうと発売延期の悲しいお知らせ。今日は予定していた映画も皆ーんな棒に振ったし,よくよくツイていないらしい(ツイていないことは朝から知っていましたさ)。
どうにか5分前にパーキングに戻るが,今度は妹が帰ってこない。ぎりぎり30秒前になって,ニコニコと(少なくとも僕には見えた)現れる。こんなつまんない処で盛り上げてどーする。たかだか250円じゃんと云われればそれまでなのだが,1分の違いで250円支払いが増えるのはどーあっても許せない。いや,だから間に合ったんだけどお。

結局,妹を乗せてそのまま一路,北九州へ。
途中折尾駅で彼女を降ろして高須でガソリンを入れてから帰宅。
あ,途中,宗像のモスで妹におごってもらったえびグラタンバーガーは期待に違わぬ旨さだった。さすがはソース・アメリケーヌってか。妹によると同時発売のほたてグラタンバーガーよりもこちらの方が旨いとのこと。



夜,井沢先生のサイトのBBSで「つま恋」購入報告をしてから,1時半から読書。
結局3時半くらいまでわしわしと読み進める。気がつくと奥さんと息子が同じ寝姿で僕に寝顔を向けている。
コオロギも鳴いているし,嗚呼,何と秋の夜長だこと。



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