備忘の都 2000 −NOVEMBER〜DECEMBER−  ◆

久し振りに法廷の君を見たよ。
相変わらず、君の言葉は冷たいな。正確だが、実に冷たい。

だから、大企業の顧問弁護士どまりなんだ。

三谷幸喜「合い言葉は勇気」より
赤岩一孝弁護士


111.バトル・ロワイアル112.追いつ!追われつ!!
113.今年いちばんのクジ運114.クジ運消化
115.誰かのせいにしながら生きるつもりはないだけなんだ

備忘の都【目次】/ 備忘の都1999
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 111.バトル・ロワイアル

2000/11/29(We)

先週頭から読み始めた宮本輝「焚き火の終わり」上下2冊,ようやく読み終わる。
いやあ,いつになく「背徳のインモラル」に踏み込んだ内容で(昔そういう愉快な邦題の伊映画があったのだ),主人公である異母兄妹は近親相姦,周囲のひとたちはソドミィにゲイ・カップル,しかも兄妹の出生の秘密に,幾人もの男女が出入りしていた閨での秘め事とくれば,あとは見立て殺人が3,4件も起こってくれればまんま横溝正史である。尤もダークサイドから目をそむけないスタンスのまま,カルマを乗り越えた,或いは共存した処に在る人としての幸福を模索していくさまは,作家・宮本輝ならでは。

さあ,これでようやく「合い言葉は勇気」シナリオ本の方に入れるぞ。



「ニュース・ステーション」でくだんの茶番を観る。そう,昨夜行われた「バトル・ロワイアル」国会議員向け試写会騒動。
天下の深作欣二御大相手に映画痴呆のPTA議員(民主党:石井紘基だの,自民党:森岡正宏だの)たちがまあよく吼える。

「子供たちには非常に有害と決めつけざるを得ない」と森岡すっとこどっこいが突っ込めば,
「子供というのは何歳から何歳までを子供だと定義するんですか」と深作監督。
「そんな杓子定規に云わなくても…」って,あんたの立場そのものが杓子定規なんだよ,森岡すっとこどっこい。
挙句,「犯罪を犯した少年がこの映画を観たと云ったらどう責任を取るんですか」だと。

くだらないうえにつまらない。映画を有害だとなじる前に「有害な」国会議員をなじって欲しい。
そもそも,あなたがたに絶望した子供たちこそ犯罪に走るのである。衆人環視の中,堂々とカネで頬を叩くように内閣不信任案を押さえつけ,選挙で地元を廻っている時からは想像も出来ない品性下劣な野次を飛ばし,目にも止まらぬ早さで非拘束名簿式だの原発特典だのてきぱき法案化していくあなたがたこそが大いに「有害」なのである。

もしも青少年への悪影響を真剣に心配するのなら,かの映画を彼らに見せないよう署名運動を考える前に,有害な国会議員を40人程見繕って離島送りにしてくれないかなァ。皆さん,武器を手に手にバトル・ロワイアル。で,生き残ったひとりの議員だけが国会に戻って40人ぶんの票を持ってよしとするみたいな。その方がいっそ清々しくないか。「政治はゲームです」と教師キタノは云うに相違ない。松浪健四郎なんか腕っぷしが強そうだし,漏れ聞く処によるとサムライだそうだから武器はコップの水だけで充分だろう。
無駄な経費も削減出来てきっとさばさばすると思うよ。何しろ,国会議員39人ぶんの歳費が浮く訳だし。
なーに,衆院本会議で野次飛ばすくらい仕事にあぶれた総会屋にだって出来る。ていうか,彼らの方がスキルはうんと上だ。

どうすか,有害国会議員BR法。来年あたりの通常国会で審議してみませんか?

今日の読書:宮本輝「焚き火の終わり(上)(下)」(集英社文庫)



 112.追いつ!追われつ!!

2000/11/30(Th)

メールにてマダムEより吉報。
舞台としては5年振りに伊東四朗・小松政夫両巨頭が共演する「追いつ!追われつ!!」のチケットをげっちゅー,との事。
この夏最大のイヴェントであった「オケピ!」では,チケット争奪戦に敗れ,本来,マダムE夫妻と行く筈だった東京公演がお流れになる,という苦い思い出があるので(結局僕はひとりで執念の大阪公演に向かう訳だが)今回はその雪辱戦とも云える。前回は全く威力を発揮しなかった「でちゅー」が今回はでかした。いや,でかしたのはマダムEなのだけれど。
東京でもたかだか10公演。その貴重な10公演の中の,しかも唯一の土曜のソワレを押さえられたのだから,もはや小躍りするしかない。何なら子ヤギの上でアルペン踊りを披露してもいい(嘘です)。
やはりお土産は小松の親分さんに敬意を表して,差し入れに「甘さ控えめほんのり塩味」塩豆大福を持ってゆくべきだろうか(福岡ローカルな話題ですみません)。しかし,あれは餅はいいが,持ちが悪い(お察しの通り,倉田,少し舞い上がっております)。
尚,チラシを見てもらえば分かるように,芝居の内容は全く明かされていない。しかしキャストは東京ヴォードヴィルと東京サンシャインボーイズ寄り抜きという僕好みの人選に加え(しかも,阿南さんのサイトとはかなり早い時期から相互リンク張ってるぞ)演出を伊東さん自身が手がけるのも気になる処。

という訳で,2001年2月10日の夜は下北沢でお会いしましょう。



明日は年休を取ると職場関係者にメールで伝えたら,K桐さんが僕の席まで来て「明日は映画の日やろ?」と訊ねる。

「確かにそうですが,それと僕の休みは関係ないですよ」
「別に隠さんでもよかろ。明日は映画の日なんやろ」
「隠したりしません。確かに明日は映画の日です」
「つまり,そういう事なんやろ」
「いえ,あくまでも所用です」
「またまたァ」
「はいはい」

K桐さんはニヤリと笑うと,僕の肩を叩いて去っていった。佳いひとである。
余談だが,明日は武闘派のT中さんも年休を取る。いや,全く余談に過ぎない。全くの。




 113.今年いちばんのクジ運

2000/12/01(Fr)

AMCなかまは今2周年キャンペーンだとかで,1月18日迄の期間限定でチケットラリーなるものをやっている。
映画のチケット3枚で1回福引きを廻せて,1等「韓国旅行ペアご招待」をげっちゅーしようというもの。ちなみに2等の「グランド・ハイアット一泊ペアご招待」もなかなかに捨て難い。11月18日から始まったのだが,僕は此処のお得意さまなので(主にレイトショウ専門),今日2度目のクジを引いた。勿論1度目に出たのは5等の白玉(スカ)で,残念賞のコカコーラ・グッズ(栄養ドリンク・ボトル)を貰った。あんなものを4本も5本も家のコヤシにするのは本意ではないので,また白玉が出たらどうしようと正直ユウウツだった。

抽籤会場は4Fのチケット売り場の真向かいの喫茶コーナーで,5Fにある売店とほぼ同じレイアウトでカウンターの前にカフェな丸テーブルが幾つか置いてあるものの,此処でお茶しているひとというのを一度たりとも観たことがない。しかし映画館の客の有無に拘らず閑古鳥が鳴いている場所なので普段は気にもとめていない。というか,レイトショウ専門なので映画がハネた時間にはお店自体が閉まっているのだ。

僕が抽籤会場に行ったのは17時を少し廻った処だったが,やはり客は1人としておらず,スタッフのおねえさんが2人所在なげに佇んでいる。
白玉だったら景品は辞退しようと心に決めて,福引をガラガラと廻すと転がり落ちたのは紫色の玉だった。
おねえさんたちはあっけに取られた後,顔を輝かせてハンドベルをカランカランと鳴らした。
閑散としたカフェに鳴り響く鐘の音は館内で鳴り響く浜崎あゆみの着メロ以上に恥ずかしい。も,もうそれくらいで…。

おねえさんA「スゴイです,4等ですゥ」
おねえさんB「ホント,すごいすごい。(インカムに)今,4等が1本出ました」
僕「…そ,そんなにすごいですか?」
おねえさんA「ええ,サンマルクのお食事券2000円ぶんです」

確かに4等は「八仙閣」もしくは「サンマルク」のお食事券とあった。14名様という数は果たして多いものやら少ないものやら。
おねえさんたちは心底うれしそうにスゴイスゴイと連発しながらカウンターの下で腰を落としてがさごそと探し物をしている。

僕「な,何を…」
おねえさんB「(一旦,顔を上げて)いえ,ちょっと(笑顔)。もう少し待っててくださいね」
僕「ま,まさか…」

と云う間に,おねえさんたちはにんまりと立ち上がった。彼女らの手には各々クラッカーが握られている。

僕「あ,あの…もう充分ですから…恥ずかしいですし」
おねえさんA「いえいえ(にっこり)おめでたい事ですから」
おねえさんB「景気良く行きますからねっ」

パァンパァンと,閑散としたカフェをクラッカーが「景気良く」鳴り渡った。
向かいのチケット売り場の客が何事かと振り返る。大丈夫です,発砲事件じゃありませんから…。
何だかマルコヴィッチの穴があったら入りたかった(おいおい)。いや,決して悪い事は何ひとつしていないんだけど。
おねえさんたちはすこぶる邪気の無い笑顔を浮かべているので,少なくとも彼女たちの溜飲は下がったらしい。

うやうやしくお食事券を受け取り「決まりですので」との事なので,ノートに記帳した。ラリーが始まって何人がクジを引いたかは定かではないが,4等以上をとったのは僕が4人目で,他の人も最高で3等「フィットネスクラブ一日体験入学」が1本出ているだけだった。しかし今日は僕が2人目の4等獲得者だった。おねえさんたちのオドロキはこれだったか…。

請けあうが,これで今年の僕のクジ運は尽きた。
そんな訳で次回以降の結果に過大な期待を抱かないように → 奥さん。

今日観た映画「漂流街(2000・日)」「チャーリーズ・エンジェル(2000・米)」「X−メン(2000・米)」



 114.クジ運消化

2000/12/02(Sa)

昨日とは打って変わって今日は出社。
とは云え,15時までには予定の仕事が済んだので,早めに帰宅してパソコン部屋の片付けなど。3ヶ月ぶんの日経新聞(朝・夕刊)とフェリシモやいただきもののダンボール箱が部屋の半分近くを占拠し,さながら「漫画少年」返本の山が雪崩限界に達したような有様だったので,とりあえず新聞とダンボールの山をわしわしと縛っていく。小一時間の作業で部屋全体の見晴らしはどうにか良くなったが(我が家の名誉の為に写真公開は控える),雑誌やチラシの類の整理を思うと何処かで丸一日ほど時間が欲しいぞ。→ だったら映画行くな,オレ。



昨日AMCで貰った食事券を有効に活用する為,夕食は中間「サンマルク」へ。
此処は,九州圏フランチャイズのベーカリーレストランで,そう云えば一昨年くらいに従姉妹が此処でバイトをしていて(バイト先は福岡市西区だったけど)どうしても店に食事に来てはならぬと固く申し付けられていた(それじゃ木下順二だよ)。日明の「サンマルク」には行った事があるが,此処は店の規模が小さくて「すかいらーく」に対する「ガスト」みたいな処だった。

で,中間の「サンマルク」である。
店内はエントランスを入ってすぐがベーカリーになっていて,奥がレストラン。店の広さ・間取りからして日明とは全然違う。天井はうーんと高くて開放的,フロア中央にはアップライトのグランドピアノまで置いてある。店の雰囲気はなかなか悪くない。
僕らは鏡張りになった壁際のテーブルに案内された。
悠都は鏡に映った自分に興奮してひとの膝の上でぴょんぴょん跳ねまくる。楽しくてたまらないらしい。
メニューは各10数種類程ある前菜・副菜・主菜・デザートからお客が好きなものをチョイスするフルコースのシステムで,一律1600円程度だが,選んだお皿によって料金が加算されるシステムで大体2000円前後も出せばいい勘定(AMCの食事券は2000円ぶんだったから,まさに一人ぶん)。数種類のパン食べ放題(何しろベーカリーレストランですから)とワインorソフトドリンクのサービス付なのを考えればまずまずの内容ではないか。
僕が選んだのはポテトと白葱のポタージュ,ローストビーフのサラダ,和風ハンバーグ,ブランマンジュで2000円ジャストくらい(奥さんがごぼうのポタージュ,鴨のサラダ,若鶏のクリーム煮,ブランマンジュだったか…大体そんな処)。味が濃い目なのは僕の好みだし,一皿一皿が決してファミレスファミレスしておらず,見た目にも「カジュアルなりに」高級感漂う技巧が凝らしてあり好感が持てる。時々スタッフが巡回して御用聞きして配る種々のパンもなかなか旨かった(特に僕が気に入ったのはオニオンのパンとオレンジのパンかな)。
食事をしていると,背中でいきなり「ハッピーバースデー」の生演奏が始まって,奥さんと「今日は誰かの誕生日らしい」と話していると,30分后に再び「ハッピーバースデー」が始まる。定番メニューなのかもしれない。ま,誰かの誕生日なんだと得心する事自体,それなりに微笑ましく思えるので,効果的な選曲と云えないこともない。そのあとでピアニストのおねえさんはTBSの金ドラで使われていた何とか云う洋楽のバラードを弾いていたが,生演奏という趣向自体,確かに「カジュアルなりの」高級感が味わえる。此処ならまた来てもいいかも。

カジュアルと云えど一応はフルコースだったが,どうにか悠都の堪忍袋が時間切れになる前に食事を終える。
たいした粗相もせず(機嫌はいいのだが,わーわー喚くくらいの事はしてくれた),「ほっぺた触らせて」と寄ってくるおばさん,遠くで彼の一挙手一投足にニコニコする母娘など,却って何人かの他人をなごませつつ店を出られたのでほっとする。
やたら人あたりがいいのは,我が子の最大の美徳かもしれない。




 115.誰かのせいにしながら生きるつもりはないだけなんだ

2000/12/06(We)

鈴木その子が亡くなる。肺炎,享年68歳。
彼女もまさか自分が世紀越えが出来なくなるとは思っていなかったろうなァ。金曜日の「誰ピカ」には審査員で出ていたし,昨日の朝FM福岡で「サンクスサーティー,ぶっとびネクスト」とCMで喋っているのも聴いたので,どうにも実感がわかない。コメントなどを耳にする限り,いい意味でも悪い意味でも言葉の端々にいつまでも少女のようなナイーブさの残るひとであった。
処で,本名が荘能子なのには吃驚したな。合掌。

とりたてて日記に書くネタもないのでTVネタが続くが,今夜観た「ミュージック・エンタ」でゲストLIVEを演ってた松田聖子のバックで本当に原田真二がギターを弾いていた。いや,別に悪くはないんだけどさ。原田って確か,「太陽の法 エル・カンターレへの道」の入りも絶不調な「幸福の科学」信者だった筈だから,これを機に松田聖子が「幸福の科学」に入っちゃったしたりしたらヤだな。広告塔的にはこのうえないネームヴァリューと人気だし。



もう日曜の話になるが,槙原敬之「太陽」を買った。
ひとまずアルバムを一聴してみての感想は ──これは夫婦して一致した見解なのだが── 明らかに彼のコトバ使いに変化が生じている。一言で云えば「強い」。以前のマッキーでは考えられない程,激しく猛ったコトバの数々。「事件」を経て,あちらの壁,こちらの天井に頭を,身体をぶつけ,でこぼこになった心が吐露したコトバたちは彼一流のやさしさのオブラートで包んではみても,庇い切れない程,ささくれ,傷ついてしまったようだ。逆風の中,通り抜けて道が開けたというよりは,懸命に自分を叱咤鼓舞して励ましている途上と云った処か。
聴いていてこちらがはらはらするほど痛ましくなるフレーズが何箇処かある。

そんな中で「濡れひよこ」の,これまでと変わらぬほのかな闘志と負け惜しみがうれしい。

 そうさがんばれ! 濡れひよこ
 明日は新しいゲームの発売じゃないか
 ちょっとわくわくしてきたぞ

そう,このくらいな些細な愉しみだけで,僕らはたいがいの事は乗り越えてゆけるように出来ている。



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