備忘の都 2001 −FEBRARY−  ◆

大好きだった三木のり平さん、由利徹さんの
追悼の意味をこめて、
お二人のエッセンスをお借りしました。
「どうぞあちら側からも見て頂き、
一つでも二つでもダメを出して下さい」

「追いつ!追われつ!!」(2001)より
伊東四朗


141.スラバヤの娘142.高級板チョコ待望論
143.我が家の家訓144.天草嶋羊羹
145.あなたは10000番目の小惑星です

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 141.スラバヤの娘

2001/2/11(Su)

瀬戸口くんと共に(無論、同衾はしていない)惰眠を貪っている処に、PHSから「威風堂々」の着メロが流れる。
英ちゃんからだ。慌てて起き出してコートノポケットをまさぐる。…そっか、昨夜約束したんだっけ。

「今、何時?」
「ん。10時半」
「今、シャワーに行ってる」

はるさんが起きてる。という事は彼は本気だ(笑)。
ひとまずシャワーを借りてから歯を磨き髭を剃って身支度を整える。
瀬戸口くんに夏コミ・冬コミの戦利品を見せてもらったり、彼が今個人的にイチ押しの円谷プロ製作スペオペ帯ドラマ「スター・ウルフ(1978)」の村松克巳がササール人で出ている回を観せてもらったり(宍戸錠&高橋長英の役者魂に乾杯)、一部でウワサの熊谷カズヒロ「サムライガン」を通読しつつ、ふたりが来るのを待つものの、到着したのは12時を大きく廻っていた。おのれ、どんな戦術を…。
目黒・東京庭園美術館で昨日から開催中の「ロシア・アヴァンギャルドポスター展」に行くという僕の目論見はあっさりと潰え、瀬戸口邸を出た後、東京タワーをバックにどーでもいいスナップなどを撮っている間に(しかし、福岡でも揃わないこの4人が東京で不用意に揃った事は殆ど奇跡に近い。はっきり云って今後は絶後と云ってよい)、いつの間にかタクシーに乗せられ、お台場方面へ。え、何でよ。タクシー料金、2600円。



とは云え、初めてのフジデレビだけに心持ち胸がときめくが、連休中日のお昼過ぎだけに何処もかしこも殺人的混雑振りですぐ素に戻る。
はっきり云って、この界隈は、僕ら向きではないのでは。
話を聞くと、英ちゃんがガンダムのクリア・ファイルのおつかいを頼まれたらしい。そ、それでお台場なんかいっ。
とりあえず、メシでしょうと、メディアージュで店を物色するつもりが、どいつもこいつも土地カンが無さ過ぎて、知らぬ間にアクアシティお台場に迷い込み、そうとは気付かぬままに各店の前に出来た行列を掻き分けて、唯一待ちの無かったインドネシア料理「SuraBaya(スラバヤ)」に飛び込む。

エスニックか…と実はこっそり嘆息しつつ、民族衣装のスタッフに奥のソファ席に通される。
客の入りは7部かたくらい。他所の混雑振りと比較すれば、世には斯くも食わず嫌いの多いことよ。
店自体の雰囲気は悪くない。何だか到る処が竹細工(笑)。休日のランチ時の混雑だけは如何ともしがたいし。
とりあえずコースはやめて、アラカルトで何皿か頼んで皆で毒味しつつ楽しむ事にする。

ナシ・ゴレン(炒飯)にグレ・アヤム(鶏肉のカレー)、ナシ・プティ(カレーに添えるライス)。
ビーフン・ゴレン(ずばり、炒めビーフン)にグレ・カムビン(牛肉のカレー)。そしてマルタバ(揚げオムレツ)。
ちなみにゴレンってのは油を使った料理の事らしい。で、アヤムが鶏肉。
ちなみに瀬戸口くんが頼んだレンダン・ダギンは謎の牛肉料理。よく分からないけど旨かった。
瀬戸口くんとはるさんはドラフト・ビールを。僕と英ちゃんはノードリンクと応えたら、お水が来た。
「俺たちにも水を出せ」と瀬戸口くんが裸のガン気味になる。まあまあ。
料理が来る前に、ニョクマム(魚醤の一種)の入った皿が届く。辛味調節に、との事か。
料理自体は意外にクセが少なくて、とても美味しかった。きっと日本人の舌に合わせて、軽めに食べやすくしてあるんだろう。インドネシア料理はナイフが無く、フォークとスプーンを使うらしく、簡単なテーブル作法の書いたリーフレットも置いてはあったが、各自、無勝手流に食べる。とりわけ、ナシ・ゴレンは好きな味。おぼろげな記憶だが、確か「無印良品」にはナシ・ゴレンの素が置いてあったんじゃなかったか。

いささかセーヴ気味に頼んだとは云え、4人で7000円はなかなかリーズナブル。
うち1000円はビール代だし。皆、満足して店を出る。14時を廻ったのでそんなにのんびりもしていられない。



それから、ちんけな自由の女神像を睨みつつ、人混みを押しのけてフジテレビのキャラクターグッズ売り場に向かうが、痴漢が出来るくらいの人の多さにあえなく玉砕。ていうか、英ちゃんにも断念してもらう。個人的には「気をつけダルマ」ストラップやクリアファイルがまだ残っていだけにちょっと残念。「××(ダメダメ)せんべい」にも少しばかり食指が動くが、此処ってやっぱり平日に来る処だと思うぞ。

「ラヂオの時間」で細川俊之が内股で駆け降りた階段を通り抜けて、水上バス乗り場「お台場海浜公園」へ。
バードウォッチング・スポットだとは聞いていたが、成程、海鳥が鬱陶しいほど飛び交っている。
瀬戸口くんとはるさんが陸路よりは海路の方が早いと口を揃えて云うので。
日の出桟橋(浜松町)で降りれば、徒歩500m程でJR浜松町に辿り着くから、其処からモノレールに乗れとのご指示。時間もあれよあれよという間に15時を廻ったし、此処は東京人である皆さんの判断におすがりすることにする。
水上バスと云えば、10年近く昔に乗った隅田川下りクルージング以来である。
英ちゃんが観光みたいだとすっかりはしゃいでいる。屋上席は客がいっぱいだったので、意外と穴場な1階客室の一画を陣取って、海面すれすれに見えるレインボーブリッジなんぞを眺め乍ら、暫し雑談に花を咲かせる(「アイスもなか」は市場の5割増し。映画館並みなので可としておく)。
「晴海埠頭」を通過して、「日の出桟橋」へ。



JR浜松町で皆と別れ、クラフトマンシップに則ったロゴもイカした東京モノレールへ。
車中1度、飛行機に乗り遅れやしないかと心配した奥さんからPHS。…とりあえず大丈夫なようです。
空港で手短に土産関係を買って、搭乗口から英ちゃんに電話すると一行は秋葉原でメモリ関係を物色中だった。
定刻より20分遅れでJAS317便が離陸したのが17時26分。
福岡空港着が19時10分過ぎだったか。家に電話して小倉行き高速バスが出たのが19時47分頃。

21時前に引野口インター着。バス亭には、奥さんと悠都が迎えに来てくれていた。さぶいのにィ。
悠都は一晩留守にしただけなのに、心持ち冷たい。ていうか、頬を突ついても無関心な顔をする。
いっときしてからすぐにえへらえへら笑い始めたけど。
晩飯を食べていると、英ちゃんから電話があった。今、新宿で皆んなして鍋を突ついているとの事。
何だか、ほんの数時間前まで東京に居たのがウソのようだ。

という訳で、僕の一泊二日東京旅行は滞りなく終了した。
旅の準備から留守番、そして悠都の世話まで、夫のワガママをずっと支えてくれた奥さん、お利口さんでいてくれた(かも)悠都さん、
東京旅行を楽しいものにしてくれたE崎さん夫妻を始め、やっさん、右團治さん、文治師匠、「大小原」の大ちゃん、
それから忘れちゃいけない、瀬戸口くん、はるさん、英ちゃん。本当に本当にお世話になりました。

…僕は本当にしあわせなヤツです。




 142.高級板チョコ待望論

2001/2/14(We)

そう云えば、ラジオで読まれた葉書にこんなのがあった。

「今日はバレンタインデーだったから、夫のために近所でも評判のケーキ屋に出向き、其処でいちばん人気のあるトリュフボックスを買って、夫に渡したのに、『あ、オレ、ウイスキーボンボンとかチョコレートの中に何か入ってるのって駄目なんだよねえ。それ、キミが食べていいわ』とひとつも口にしてくれませんでした。これ、どう思います? 6ピース入り1500円もしたんですよ。もう来年からは絶対にチョコレートなんかあげるもんかっ」

と、まあ、この奥さんのお怒りはご尤もなんですが…僕にはそのご主人の気持ちがよーく分かるんですよ。
まず、このご主人の一口も食べない事への、「義理を欠いた」無神経さは黙殺するとして。
実を云うと、僕もあのトリュフチョコというヤツが苦手である。結婚前の奥さんとも、バレンタインにそれで揉めた記憶が若干(笑)ある。幼い頃から、板チョコをはじめ、チョコレートなどというものは歯応えのあるもんだと刷り込みされて育った身にとっては、あのまろやかすぎる口当たり、あのむにゅむにゅしてまるで手応えのないさまは物足りなさを通り越して、もはや害悪ですらあるのですね、男にとっては。大体、あれは本当に旨いものなのか、ええ? 女性の側にしてみれば、高い買い物をしているというのもたいへん尤もな云い分ですが、高くても口に合わないものはしようがない。というか、日本式バレンタインが20年以上続いてきて、そろそろ男の側から「トリュフはご遠慮申し上げたい」論が台頭してきてもいいんじゃないか。そりゃ高級感は漂っているかもしれないけど、一体全体トリュフ系のチョコを旨いと感じている漢(をとこ)がどれだけいるのか。洋菓子メーカーには是非アンケートをとってもらって、高級板チョコ系を開発・プッシュしていただきたく、僕は此処に「高級板チョコ待望」論を展開するものである。
大体に於いて、オトコの味覚は安く出来ている。
男性はその85%が、アルデンテのパスタを食べるよりも、喫茶店の目玉焼きが乗った、口の周りが真っ赤になるようなケチャップで炒めたナポリタンスパゲティをこよなく愛しているのであり、有機ナントカの天然ポークのウインナーよりも、馬だの羊だの何が入ってるんだかよく分からない真っ赤なウインナーにこそそそられるものなのだ。マヨネーズごはんに醤油をたらしたりしたのが好物だったりするのだ。

尤も僕自身、トリュフの始末に困るほど(特に此処数年)義理チョコをもらえもしないのだが(おほほほほ)。



処で、今年の我が家のバレンタインだが、奥さんがガトーショコラを焼いてくれた。
どんなにケーキが美味しくても、それをぬけぬけと日記に書くのは、実に、このう、クールではない、と云ったのだが、奥さんが「あたしはクールじゃないのが好きなのよ」と仰せなので、彼女のケーキづくりの腕がどんどん上がっている事は告白しておく。確かに他人様にお出ししても全然恥ずかしくないくらい、美味しゅうございました。→ これで許してください。

長妹から天草土産の羊羹が届く。
日帰りで祖父母の墓参りに行ったらしい。しっかし彼女は本当に墓参りが好きだな。




 143.我が家の家訓

2001/2/15(Th)

極楽亭主((C)英ちゃん)が日々をのんべんだらりと過ごしている(というか、生き抜くだけで精一杯だったり)間に、奥さんが東奔西走したお蔭で、本日より我が家もフレッツ・ISDNでネットつなぎ放題となる。尤も、普段は昼間の大半を会社で過ごしているので、より恩恵を享受するのは奥さんなんだが(但し、常時接続ったって、いちいち生後11ヶ月の息子の御機嫌伺いを立てなければならないので、其処は彼女にとっても大きなカベである)時間を気にしなくてすむのは非常にめでたい。ご家老さまでした((C)阿南健治) → 奥さん。

そうそう、久々に井沢先生のBBSで「映画とTVドラマ、その生理の差」みたいな話題にのっかって連続書込みをした折り、井沢先生に、

書く者の立場、心情からすると「〜なら、もっと踏み込めるのに」という発想はマイナーなので、
「〜などなくても成立する視点、構成で描こう」というのが正しい姿勢(笑)であります。
〜が出来ない代わりに、こういうメリットがあるじゃないか。だったら、デメリットを考え込むよりメリットのほうを大事にしよう。
この考え方は人生も楽に豊かにするので、くらた二世くんにもぜひ家訓として残されますよう(笑)。
(なるべく原文に忠実なまま、僕がその前後を編集してあります)

と、ご宣託をいただいたので、以後、我が家ではこれを家訓といたします(むふふふふ)。
父はこれを「人生、常にポジティヴ・シンキングで行こう。そのための工夫と努力は惜しんじゃいけないよ」くらいに解釈しています。
クリエイターであるには常にプラス思考が要求されます。その昔、ラブシーンの直裁的な表現の規制が厳しかった頃、ハリウッド・クラシックの名画たちに如何に沢山の小粋なラブシーンが生まれた事か。名作「笑の大学」での検閲に次ぐ検閲のさなかのシナリオ作りのプロセスに、僕らは前向き人生の縮図を見なければならないのです。窯約するなら「鳴かぬなら、鳴かしてみせよう、ほととぎす」ですか。ああ、太閤秀吉ですね。
ひとまず忘れないように宣言しておくので、いつか大きくなって父の過去日記を読み耽った際には、此処のくだりで恐れ入るように → 大きくなった悠都。



昨日の長妹に続いて、今日は次妹からバレンタインの小荷物が届く。
持つべきものは身内であるが、こちとら、先月の彼女たちの誕生プレゼントも未発送のままである。
ううむ、彼女らにとっては、持つべきものは身内ではないかもしれない。

今日観た映画:「回路(2001・日)」



 144.天草嶋羊羹

2001/2/19(Mo)

長妹が先週送ってくれた「天草嶋羊羹(イソップ製菓)」は、熊本県でも本渡市内でしか手に入らないポンカンテイストの羊羹で(天草にはとりわけ特産品であるポンカン系の土産物が多い。砂糖漬けとかポンカンワインとか。大分におけるカボスみたいなもんですね)、ウチの母(本渡市出身)の昔からの好物であり、行きがかり上、物心がつく前から天草に帰省する度口にしていた僕ら兄妹にとっても「故郷の味」として慣れ親しんだ甘味物である。羊羹は濃いオレンジ色をしており、柑橘系(砂糖漬けVer.)独特の風味が鼻に抜ける感じが良い。ある種、干し柿にも通じる甘さだが、そんなにしつこくもなく、お茶請けにこれ以上最適なものはない。
それはそうと、この羊羹、とにかく熊本市内ですら何処にも売っていない(少なくとも、5年くらい前まではそうだった)。熊本から天草方面へは車でも空いていて3時間は軽くかかるし、ましてや週末ともなれば、熊本から行って帰って来るだけで一日仕事だ。
近頃では天草はおろか、熊本にさえなかなか行けずにいるので、この羊羹は年に1、2回は何故か必ず墓参りに行く(「何故か」というのもあんまりな云い草だが)長妹の土産でしかありつけない。

で、思い立って検索したら、すぐに「イソップ製菓」のHPが見つかった。
処が、此処のもう一つの名物「あか巻(あんこのロールケーキを赤い餅でくるんだお菓子)」同様、天草嶋羊羹自体の紹介はあるものの、肝腎のネット通販がない。それじゃ意味ないじゃん、と探索を続けたら、オンラインショップ「岬ちゃんショップ」を発見。これで送料さえ度外視すれば(でも天草にわざわざ出向く事を考えれば安い買い物だわなァ)、いつでも「あの」天草嶋羊羹を手に入れる事が出来る。
でも、長妹が買ってこなくなると困るので、暫く彼女には黙っておく事にする(おいおい)。ちなみに今回彼女が送ってくれたぶんは、先週、今週と夫婦してちまちまと切り分けてお茶のお供に重宝している処だ。これ、羊羹愛好会の同好の士であるY田さんにもいずれは献上せねばなるまい。

余談だが、この天草嶋羊羹、僕ら兄妹が子供の頃は「南蛮羊羹」という名前で憶えていた。
母親が「南蛮羊羹が食べたい」と連呼していたからである。実は、今でもよく連呼している。
だから、僕らもてっきり通称「南蛮羊羹」と呼ぶものとばかり思っていたのだが、此処を読むと、どうもウチの母の壮絶な勘違いらしい。南蛮羊羹とは「南蛮船が初めて来日した島原地方で作られていた黒砂糖を長崎では羊羹に加え作っていた」事から来ているネーミングらしい。やれやれ、ウチの母にまた騙された。これはいつか彼女にオリジナルの「南蛮羊羹」を送り付けてやらねばなるまい。



昼過ぎ、とんくんからメール。
去年好評だった「春風亭鯉昇・桂平治二人会」の2回目が今年も妙法寺で開催が決定したとの事。
こないだやっさんに会った時、鯉昇師匠のお友達が後援してる佐世保の落語会が5月27日(日)に決定したと聞いたので、そいじゃ福岡でやるなら土曜だね、みたいな話はしたのだが、ようやくその件のアウトプットが出たらしい。会場も前回同様妙法寺で落ち着いたようだ。
ひとまず、速報という事で、以下に記しておく。

「第2回 春風亭鯉昇・桂平治二人会」

期 日: 平成13年5月26日(土)
時 間: 14:30開場  15:00開演
場 所: 唐人町 妙法寺(福岡市中央区)
木戸銭: 前売り 2,500−/当日 3,000−
主 催: 内浜落語会
後 援: 唐人町商店街・桂平治を応援する会

北九州市内なら会社関係を動員出来るが、福岡市内となると身内にしか声をかけられない。
今年は親父がバツだし、妹たちと、あと、うーんと、糸島の伯父さん処に声をかけるか(それでもかなり遠いが)。
会そのものの面白さは保証付きなんだけどなあ。




 145.あなたは10000番目の小惑星です

2001/2/20(Tu)

冥王星は惑星にあらず!? アメリカ自然史博物館が態度表明
昨夜、悠都を抱いてぼんやりNHKのニュースを観ていたら出た話題がこれだった。
博物館に来た子供たちが「ウープス、プルートが無いぞ」と困惑している図と、ローズ地球宇宙センターの何とかいう代表が自信たっぷりに「冥王星は小さ過ぎるし、何しろ氷で出来ているんだから惑星といえない事はあきらかさ、オーバー?」と発言している様子が流れた。
いや、そりゃ確かに冥王星が惑星か否かという議論はかの星が発見された1930年直後から延々と続けられてきたさ。
曰く、

1.冥王星だけが氷の天体である。
  地球型岩石惑星でもなければ木星型ガス惑星でもない。
2.冥王星の円軌道は独特すぎる。
  他惑星は同一平面上でほぼ円軌道を描くが、こやつのみ軌道が17度傾いている上に軌道の一部が海王星軌道の内側に食い込んでいる。

その他にも惑星としては「小さすぎる」という話もあるのだが、これはお仲間がいない話でもないので。
という訳で、確かに何処となく気持ち悪いのである。というか、惑星としては非常におさまりが悪い。
ただ、元来「惑星とは何ぞや」などという確固たる定義も無かった故、「太陽系の外縁部を公転する天体だしィ」永らく惑星としての地位を守ってきてしまったのである。殆ど、ついうっかりと。

さて、この話、周辺部から攻めていかなければならないのでちょっと長くなる。

1950年、オランダの天文学者ジャン・オールトが、これまで発見された彗星軌道データの統計的研究から、太陽から0.5〜1光年程度先に球殻状に彗星の巣が広がっているんじゃないかと推定した。これが俗に云う「オールトの雲」である。
オールトの雲は、1兆個以上の彗星からなる「長周期彗星の故郷」であり、その質量は巨大で木星と同程度かそれ以上はある(らしい)。
それから1年して、アメリカの天文学者(つったってオランダからの帰化人なんですが)カイパーとエッジワースは、短周期彗星の軌道解析から冥王星の軌道の外側にこれまたリング状に広がる彗星の巣があるという仮説を立てた。これが即ち「エッジワース・カイパーベルト天体」(超海王星天体とも呼ばれる)である。周期200年以下の短周期彗星の供給源がどうもこいつではないかと考えられている。尚、その総質量はアステロイド・ベルトの数百倍はあるだろうとの事(そう云われてもスケール感が浮かびませんがな)。
処で、オールトの雲は、エッジワース・カイパーベルト天体よりも太陽の近くで形成されたものと察せられる。巨大惑星の近くで形成された天体は、重力作用で太陽系外に追い出され、太陽系から完全に逃れていないものがオールトの雲を形成し、遠く離れてしまった小天体がエッジワース・カイパーベルト天体として残ったのではないか。

何だか、仮説の話ばかり続いたが、90年代に入ってこのエッジワース・カイパーベルト天体に属する実物が続々と発見され(尤も、その位置は冥王星ではなく、海王星の軌道外縁部であった)、この仮説は実証されるに到る(その最初が、1992年にハワイ大学のジュイットとカリフォルニア大学のリューが発見した1992QB1、直径280Kmくらいある氷の塊である)。そして発見された天体の幾つかの軌道は冥王星のそれに酷似していた、と聞いたら、あーた、どう思うね?

かくて、冥王星はエッジワース・カイパーベルト天体の「とりわけ大きいヤツ」として分類するのが妥当なのでは、みたいな結論が導かれる。
先のローズ地球宇宙センターの自信の根っこは此処らあたりに依拠する訳だ。でも、まだ大いなるフライングだよねー。
実際、専門家の間でも、冥王星を惑星では無く「超海王星天体の映えある1番として扱おう」とか、「いやいや、この際小惑星の映えある10000番にしてはどうか」とか各天体候補を巡っての切り番認定競争さえあったくらいなのだ(尤も、超海王星天体にしても小惑星にしても冥王星のサイズが並外れて巨大だったので、この提案は圧倒多数の賛同を得られなくて「お流れ」になったようだ)。
何も冥王星だけではない。冥王星の衛星カロンは元より、海王星の周囲を逆行する軌道を取る衛星トリトンだって元々はエッジワース・カイパーベルト天体なのでは…、てな疑いが濃厚である。先に書いた通り、冥王星の軌道は海王星の軌道とラップしているが故に、海王星の重力がエッジワース・カイパーベルト天体を現在ある軌道に押しやった可能性もあるのだ(つまりトリトンと同輩関係にある天体も相当数存在していたっておかしくない)。

悠都が学校に上がる頃、太陽系は果たして「水金地火木土天海」と教わる事になるのだろうか。
こうなったら社会の教科書で教わる(歴史上の、ではない)日本四大工業地帯から北九州工業地帯がなくなるのとどっちが早いか競争だ。



鷺沢萠「失恋」(実業之日本社)、読了。4つの失恋からなる中短篇集。
9月の刊行時に買いそびれていたのをようやく日曜に買ったのだが、昨夜あっという間に読み終えた。

そんなに多作なひとではないけれど、内容の面白さとその深みは(こういう云い方はおかしいかもしれないが)安定しているし、筆は決して荒れないし(生活の荒れ具合は知らないが・笑)、鷺沢さんは僕が今最も安心して読める作家のひとりである。
これは僕の勝手な思い込みかもしれないけど、デビュー当時は年齢にそぐわぬと云ってもいい老成された完成度だったのが、近頃、歳相応(僕とほぼ同い年)の瑞々しさ、青臭さを感じるようになったのは、彼女が歳相応の人生を楽しみ始めたという事なのか。いや、むしろ韓国で学生生活を送ったからか、より若返ったような。で、その青臭さがまたいいんだよ。

今日の読書:鷺沢萠「失恋」(実業之日本社)


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