備忘の都 2001 −MARCH−  ◆

人は、その身の丈に合わせて人を理解しようとするという。
私は、檀を自分の身の丈に合わせ、ことさら卑小に語ってしまっているのではないかと恐れる。

沢木耕太郎「檀」より


161.さらば、LDプレーヤー162.海を見に行く163.ケーキ入刀奇譚
164.膏薬口に苦し(未確認)165.いつのまにか、春

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 161.さらば、LDプレーヤー

2001/3/22(Th)

やらなきゃならない仕事は後から後から沸いて来るが、空回りしてばかり。

会社帰りに、ベスト電器で予約してあったSMAP「Smap Vest」を購入。
知っているひとは知っているがこのCD、初回盤は12色のジャケットを選べるのだが、奥さんの第一希望のピンクは既に売り切れ、とりあえずモスグリーンにする。(個人的にはグレーが綺麗だったのだが、地味な色厳禁指令が出ていた)。個人的には「慎吾ママのおはロック」が入っていないので、コンプリートとは云えない。しかし、シングル32曲たァ凄いよね。尤も、タイトルだけなら半分以上分からない。おそらくDisc2を通して聴く事は一生ないような(おいおい)。

新珠三千代さん、死去。享年71歳。もう、そんな齢だったんだ。
僕らの世代になると、もはや「細うで繁盛記」すら怪しい。記号としての富士真奈美くらいしか。
此処10年はテレビ・映画への露出は殆ど皆無だったんじゃ。新橋円舞場方面がメインだったのでは。
僕が記憶している新珠さんのリアルタイムなドラマ出演は80年代後半のNHK「橋の上の霜(1986)」で菅原文太の奥さんを演っていたのと、CX新春ドラマスペシャル「結婚行進曲(1989)」(ホンは松原敏春だった)で杉浦直樹の古馴染みの旅館の女将でちらりと顔を出していたくらいのものだ(因みにこのドラマ、東宝芸能所属の役者さん総出演であった。何しろ、主人公の三姉妹を演じた主演女優にしてから古手川祐子、沢口靖子、斉藤由貴である)。合掌。



今夜はNHKラジオ「話芸・笑芸・当たり芸」に文治師匠と右團治さんが出るので、食事中にも拘わらず、珍しくラジオなど聴く。
文治師匠、相変わらずの快気炎。まるで楽屋でお話を伺っているのと寸分違わなかったり。右團治さんの相槌もそのまんまだし。
処で、オンエアされた師匠の「浮世床」は既CD化ぶんの音源だろうか。
右團治さんの「転失気」も含め抜粋版なのが何とも残念。

悠都の好奇心とはしっこさは留まる事を知らぬ為、今夜、泣く泣くLDプレーヤーを一時撤去。
だいぶ見て見ぬ振りをしてきたのだが、このままではビデオデッキも危ないと判断した。頼むよ、悠都。
LDプレーヤーは既に再生ダイヤルが着脱可能に、制御窓の細長い蓋も無残に破壊されてしまった。
未見のディスクも10枚以上あるのだが(ちゅどーん)、優雅に映画を愉しむ夜など果たして来るのだろうか。

深夜、やっさんからFAXで送られて来た平治メモをしこしこ打ち込む。
そう云えば最近、やっさんと電話で話してねぇなァ。




 162.海を見に行く

2001/3/24(Sa)

この週末は久し振りに福岡行きはお休み(来週は竹中直人「連弾(2001・日)」が公開されるから…)。
で、午前中、今世紀に入って初めて髪を切りに行く。3ヶ月も髪を切らなかったなんて、この10年なかったのでは。
だもんで「髪を伸ばしておられるのなら、長めに切っときましょうか」などと云われる。いえ、ばっさり切ってください。

さっぱりした後、奥さんのアイロンがけの間、悠都を連れて近所を散歩する(我乍ら珍しい)。
社宅の前の並木道はモクレンの白い花が満開で、足許にもうるさい位花弁が散っている。
近くの小学校で、これまた満開の杏の樹の桃色の花を見せた後、校庭脇のニワトリ小屋へ。
奥さんに犬は泣いて恐がると聞いていたが、金網越しだからか、ニワトリがどんなに鳴いても平気そうだった。むしろ楽しそうというか。
隣の金網にはウサギがいたのだが、どんなに注意を向けさせようとしても悠都は小屋の奥にいるウサギが分からないようだった。
やっぱり小さい子って視野が狭いのね。そろそろ腕がしびれてきたので、とっとと家に帰る。

昼飯の後、ドライヴにでも行くかなどとお出かけの準備が終わったあたりで15:27になり、家中がガタガタ揺れ始める。
2分近くも揺れただろうか、体感時間はもっとうんと長く感じられた。こんな長い地震は初めて体験する。
暫くは細かい揺れが続いた。奥さんの悠都を抱きしめる腕に力が入る。慌ててTVをつけると、ややあってNHKが早速地震速報を流した。
山口・広島は震度5だの4だのと云っている。北九州は震度3…あれくらいが震度3なんだァ。
大分は震度4だったので、宇佐にひとり、一時帰省しているハハに電話する。
彼女は友達と電話している最中だったそうで、とりあえず電話を切ってトイレに非難していたらしい。
電話相手はご夫婦して家の外に飛び出したというから、これはウチのハハの判断の方が正しかった。
元気そうなので安心して電話を置く。福岡は大丈夫でしょう。

余震の心配はないという事だったので、改めて家を出る。

高須でガソリンを入れた後、気が向いて、若松北海岸方面へドライヴ。
こないだ、シーホークに泊まった時に果たせなかった「悠都に海を見せる」のリトライ。
シーズンオフの脇田海水浴場に向かう。はっきり云って社会人になってから海水浴に行った事はないので、地理事情も疎かったのだが、どうにか道路の案内板だけで目的地へ到着。小さな漁港と隣接しており、夏は賑わう筈の駐車場もスカスカ。何組かのカップルがデートに来ているのみである。海風が強くて少し肌寒かったのだが、悠都を砂浜の波打ち際に連れて行ったら、彼の表情が見る間に晴れやかになって口許には笑みさえ浮かんだ。初めて見る海がかなり気に入ったらしい。さあ、それからがタイヘンで興奮して僕の腕の中で渾身の力で暴れるので、落とさないよう必死で捕まえてなきゃならないし。しかし、カメラを忘れたのは返す返すも失敗であった。
寒かったので適当な処で切り上げて帰る。今度また連れてきてやるから。

今日観た映画:「ザ・セル(2000・米)」



 163.ケーキ入刀奇譚

2001/3/25(Su)

一日中、やっさんちと右團治さんちの更新作業(主に画像関係)。
云う程の作業量でもないのだが、子守りをし乍らなので全然捗らない。
息子はチチかハハかどちらかが、傍らにいないと、すぐに甘え泣きをする。やれやれ。
平日の奥さんのご苦労には全く頭が下がる。

お昼に、以前キャナルの「無印良品」で買ってあった「ナシゴレンの素」を試す。
そうそう、これこれ、この味。ちょっと濃い目ではあるが(奥さんはそれでもごはんの分量をかなり増やしたと云っていた)、深みのある旨み、スパイス加減、確かにナシゴレンになっている。この味はクセになるかも。

3時頃から、中間のユニクロに行き、チノパンを2本買う。
ユニクロの盛況振りは重々承知しているつもりだったが(折尾のユニクロはいつ行っても、駐車場に交通整理のおじさんが出ている)、試着室の前にはモスクワのマクドナルドのように試着待ちの行列が出来ている。夫婦で交代して悠都を抱いて試着する。奥さんもGパンを1本買うが、イマイチ気に入らなかったらしく、隣のジーンズショップで更に物色して、ブラウンのパンツを買う。本人はこれがいたく気に入ったようだ。

社宅の駐車場でK藤くん一家に会う。
K藤くんによれば、彼は昨日、岡山で行われたT田くんの結婚披露宴に行ったのだが、例の地震が起きたのがちょうど新郎新婦のケーキ入刀と同時だったそうで、会場は阿鼻叫喚の大騒ぎだったらしい(オーバー)。場合が場合だっただけに逃げるに逃げられないし(やはり写真撮影は悉く手ぶれしてしまったのだろうか)。ひょっとしてケーキの中央部に地震誘発スイッチが埋め込まれていたとか(ないない)。或いはケーキに向かって「ポチッとな((C)八奈見乗児)」と突っ込んでみたとか(少年の心を忘れずに)。だからナイフを引き抜かなかったら、地震もそのまま終わらなかったとか(しつこい)。しかも新幹線が停まってしまった為、日帰り予定でこちらから出向いた参加者は軒並み現地泊を余儀なくされたそうだ。
まあ、何にせよこの結婚式は今後列席者間で永久に語り継がれる筈なので、それはそれでしあわせな事では。…駄目?

夜は、ココイチで点心カレー、チーズ乗せを食う。奥さんは春のアサリカレー、温泉玉子付。
悠都用に補助椅子を出してもらうが、すぐに身を乗り出すので、仕方なく、もがく息子を羽交い締めにしてカレーを食べる。
ううむ、どんどん外食するのがキビしくなるなァ。ココイチも個室を作ってくれ。

此処んとこ、全く普通の日記である。
面白くなくてすまん → 誰にあやまってるんだ。




 164.膏薬口に苦し(未確認)

2001/3/26(Mo)

深夜(25:20〜25:50)、一口茶屋のたい焼き(さくらあん)を頬張りつつ、普段なら決して観ない「AX MUSIC FACTORY つんくちゃん」(NTV)を観る。いや、ゲストに三谷さんが出るって話だったから、悠都と一緒に寝てたのをわざわざ起きた(ばか)。今夜はネットをしていなかった事もあって、かなり眠くて(とっても、がさつモード)番組の録画もしなかった。


三谷さんは、つんくが近作の視聴率低調(と自嘲する)三谷ドラマ(「合い言葉は勇気」「今夜、宇宙の片隅で」「総理と呼ばないで」「竜馬におまかせ!」)を殆ど観てくれていた事に感激して「いやー、実は今朝からちょっとブルー入ってたんですけど、これでかなりハッピーになれました」と真顔で答えていた。当のつんくも「王様のレストラン」は存在も知らなかった、というあたりにかなりリアリティがあったり(上京したての不遇期は口惜しいのと貧乏なのとでテレビを観る事自体を避けていたらしい)。

それから、ボードにモー娘。のメンバーの写真を貼っていき乍ら、三谷さんなら、彼女たちをどんな風にキャスティングするか話。最后の最后に「彼はいつも僕のドラマに出てくれている…」と、ポケットから梶原善の写真を出したのがオチだったのだが、つんく、余り反応してくれず。

それから映画「みんなのいえ(2001・日)」の予告編がかかる。
これだけ映画館通いをしているにも拘わらず、且つこれだけ邦画贔屓にも拘わらず、ついぞ銀幕でこの予告編を観た事は無かったので(どうせDVD化した時に映像特典がつくさ、などとうそぶいていた)少々感激する。特に最后の監督自身がキャメラを覗いているミス・リーディングがいいですね。そもそも顕微鏡自体に逸話があるひとだし(笑)。

映画話が少しあった後、つんくに今期のドラマについて問われ、「『HERO』は役者さんもスタッフも知っている人が多かったので、正直口惜しかったですね」と心情を吐露する。「でも、僕が書けば視聴率は8%くらいしか取れませんけどもっと面白いものが書けると思うんです」発言はオレ的ナイス。石原ドラマに於ける、ああいう作劇の妙で魅せるチーム物の草分けが「王様のレストラン」にあるのは明らかだし、其処を土台に築き上げた快挙だと僕も信じるので(勿論、キムタクというメインキャストに助けられたのも事実である)、三谷さんの矜持は尤もだと思う。
三谷さんのHERO発言が聞けただけでも、ネット無し夜更かしの価値があった。


それから番組に満足して再び蒲団に潜り込むも、両脚のふくらはぎがじんじん疼いて眠れないので、膏薬を貼って寝る。
問題なのは、この痛みの心当たりが当人に全く無い事。昨夜、悪夢(笑)なら見たけど。
此処数日で特に目立って激しい運動及び労働をやった憶えなどまるで無い。
可能性として考えられるのは、

1.重度の記憶障害で、ほんの少し前にも拘わらず心当たりをすっかり失念している。
2.常識の範囲外のような昔の脚の酷使が今頃、筋肉痛になって顕われた。
3.日常歩行のレベルで筋肉痛が発生する程、ヤワな脚になった。
4.自覚も無く、激しい運動を行なっている。

…ううむ。どれを採っても、トシ、って事ですか。しくしくしく。




 165.いつのまにか、春

2001/3/28(We)

週の真ん中で年休を取って、銀行へ行き通帳を更新したりなどする。
成程、通りの桜が四分咲き五分咲き、樹によっては七分咲きまで行く。
昨日までの通勤では全然気付かなかったのに。
いつのまにか春になっている。

お昼は久々に「ブッフドール」でランチなど。
店の奥さんが気を利かせて、2階の座敷を使わせてくれるも、悠都のワガママは留まる処を知らず、これが1階のテーブル席だったらと思うと、生きた心地がせず。とりあえず泣く、ってのをやめてくれんか。俺が泣きたくなる。こないだのココイチの時にも感じた事だが、やはり暫くは外食を諦めざるを得んか。少なくとも、きゃつが或る程度人語を解すようになるまでは。…でも、「ポルタ・ロマーナ」には行きたいぞ(意志薄弱)。

前菜で出たグリーンピースのポタージュが美味しい。色も春めいた緑色。
奥さんの話だと、もっと目の細かいシノワが無いと、我が家で芋類豆類のポタージュを拵えるのは厳しいそう。
折角デロンギのフードプロセッサがあるのだから、少々高くてもシノワは購入すべきだよなァ。
メインディッシュは桜鯛のポワレ。白味魚で新鮮で柔らかいので、悠都にも食べさせる。

午後は家でくつろぐ。
奥さんはチーズケーキを焼き、僕は「平さん」を更新したり、本を読んだり。
永らく積ん読モードだったキャメロン・クロウ/宮本高晴訳「ワイルダーならどうする?」(キネマ旬報社)が面白い。
何しろ、B5版ハードカヴァーという図鑑のような上製豪華本なので、気軽に持ち運べない。
読むからには、家で腰を据えて読む他無いという困った本である。そのくせ面白い。…タチが悪い事この上ない。
ま、ある種の芸談本である。自身も監督であるキャメロン・クロウが、クリエーターの後輩として、また一ファンとして殿堂入りの名匠ビリー・ワイルダーに映画作りの数々のエピソードや神髄を聞き出す対話集とでも云えばいいか。しかもキャメロンは愛情をこめて、ビリー・ワイルダーの会話術やウィットを丁寧に拾い上げているから、彼の皮肉屋乍ら、小粋で、暖かい底意の垣間見えるテーブルトークをも体感出来るすぐれものの本でもある。
年明け早々に観た「三谷幸喜からビリー・ワイルダー」のお蔭で、ワイルダー翁の声をつい永井一郎で読み替えてしまうクセが(別にいいんだけど)。しかし90過ぎているお爺さんの語る内容じゃないね。ただただ驚嘆、そして至福。

夕食は奥さんにリクエストして、ケンタロウ・レシピのトンテキ、きのこソースをこさえてもらう。
安い豚肉を使ったそうだが、胡麻油が効いていてとても旨い。タリアテッレのクリームソースもなかなか。



中間のレイトショウから帰った後、神戸に住む須賀くんから電話を貰う。
こないだ僕が送った結婚祝いが届いたので、そのお礼と近況報告。
結婚式は奥さんと二人だけで、イタリアのフィレンツェで挙げたとの事。
絵葉書の写真はフィレンツェの教会だったか。「色々面倒臭かったから」ってのが如何にも須賀くんらしい。
確かに双方の実家が兵庫と大分では何かと不便なのは経験者としてよーく分かる。
久し振りだったので、ちょっと長く(1時間くらい)話し込んだ。
直接電話でコトバを交わすのは2年振りくらいか?
本当はとっくに関西弁の使い手になっている筈だが、相手が僕なのでちっとも尻尾を出さない。ちィッ。
でも、キャラが大学時代と寸分も変わっていないのが、何より嬉しい。

今日観た映画:「初恋のきた道(2000・米中)」


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