備忘の都 2001 −JUNE−  ◆

洗濯物干しなんぞに大切な人生を浪費してはなるまい。
人生は短いのだ。

林望「くりやのくりごと」


196.6月8日といえば197.戸畑会談198.矍鑠
199.魅惑のプリン・ア・ラ・モード200.路上教習

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 196.6月8日といえば

2001/6/8(Fr)

今日は奥さんの誕生日。
先々月うっかりして(うっかりするな)結婚記念日を忘れて苦境に立たされたが、今日こそは大丈夫(何がァ?)。

バースデイケーキは奥さんが自作する事になっていたので、「そうだ、蝋燭を買って帰ろう」と思い立ち、以前ケーキを買った時に、火を点けた間だけバースデイソングを流すキャンドルを売ってた「エスプリ」に直行するも、キャンドルは品切れしていたおり、とは云え手ぶらで店も出にくかったのでシュークリームとプリンを買って帰る(旨いからいいんだけど)。オレは何しに「エスプリ」に行ったんだか。

家に帰ると、犬山のおかあさんとウチのハハと長妹からプレゼントが届いており、やはりこうゆう事は女性の方がマメなのらとしみじみ。
奥さん自作のバースデイケーキは白桃のケーキ。彼女にとっては会心の膨らみ具合だったようで、次の課題はスポンジのきめの細かさだとか。別立てでタルトも焼いて、下の階の、彼女と同じ今日が誕生日のちーちゃんに持って行ったらしい(お返しにお赤飯を貰って帰っていた)。

夜は僕が彼女にプレゼントしたDVD「朝比奈隆 ブルックナー/交響曲第五番ロ長調(ハース版)」の鑑賞会。
御齢90歳を祝う記念コンサートだ。ご本人は「卒寿なんて、何かから卒業するみたいで」と収録のインタビューで苦笑されていたけれども。
尤も、悠都が寝なくて聴衆のコンディションが余りよろしくないのと、夜遅いのと演奏自体が長いのとで「第二楽章アダージョ」までで今夜はお開き。しかし、朝比奈翁の矍鑠とした棒さばきにはただただ頭が下がります。いや、恰好いいおじいちゃんである。



処で、PARCOの秋公演、三谷さんの新作のタイトルが明らかになった。

「バッド・シチュエーション★グッド・タイミング」
出演:沢口靖子/生瀬勝久/久野綾季子/伊藤正之/八嶋智人/角野卓造/伊東四朗
2001年10月7日〜11月11日 PARCO劇場にて。

こないだの日経のホテルを愛でる広告ページで、次の新作はホテルに2つ並んだエレベーターを巡るコメディですとインタビューに答えていたアレだ。伊東さんが出るのは去年から告知済みだったからいいとして、その他の出演者も沢口さんを始め、三谷さんらしい豪華で多彩なチョイス。ああ、久々にコメディエンヌ沢口靖子を堪能したいものである。



夜、右團治さんから新潟日報に載ったコラムがファックスで送られてくる。
添え書きによると、携帯を水に落っことして携帯メールが使用不可能になってしまったそうだ。
ううむ、「右團治画報」あやうし!

今日までに読んだ本:保阪正康「三島由紀夫と楯の会事件」(角川文庫)
三谷幸喜「仕事、三谷幸喜の」(角川文庫)、「みたにのまど 映画『みんなのいえ』三谷幸喜の撮影日誌」(ぴあMOOKS)



 197.戸畑会談

2001/6/10(Su)

昨日、中間で「みんなのいえ(2001・日)」を観ている間に、あめんさんから電話があった。
うっかりしてたが、あめんさんは今帰省中で週末から大分方面を行脚しているのだった。自分で連絡してねと念を押してこのザマだ。
という訳で、昼下がり、小倉駅で会う筈が、こちらの都合で戸畑方面まで出張ってもらって急遽、戸畑会談。
愚にもつかない話、あれこれ。あめんさんは旅の不摂生がたたって季節外れの風邪に苦しんでいたので、そっと悠都を引き離す(笑)。
GWの名古屋会談同様、後半はベビールームで子供たちの喧騒の中での鼎談。ホント、毎回ご迷惑をおかけしますです。

中途、つぶらな瞳をした4〜5歳くらいの女の子が、僕にハム太郎のぬいぐるみを差し出すのはいいのだが、くれる訳でもじらす訳でもなく、あたたかい笑みで僕を見つめるので、困ってしまう。

「これ、ハム太郎なの?」
「(こくり)」
「僕にくれるの?」
「(困った顔で小首をかしげて微笑)」
「あ、違うの?」
「(こくり)」
「そっかァ(困惑)」
「(にっこり)」
「(困惑)」
「(いよいよ、にっこり)」
「ハム太郎なんだァ」
「(ゆっくり、力強く頷く)」
「はははは…」
「(にっこり)」
「(誰か助けて)」
「(こくり)」
「ハムちゃん、ハムちゃん」
「(こくり、にっこり)」

この間、この女の子のぬいぐるみを抱いた腕はずっと僕に差し出されたままだった。でも、自慢してる風でもなかったんだよなァ。
その後、悠都には貸してくれたから、僕も強くお願いすれば貸してくれたのかも。それにしてもかわいい女の子であった。
新幹線に乗るあめんさんと別れてから、ベスト電器で「シャフト(2000・米)」のDVDを購入。



夜、右團治さんから新メールアドレスによるスケジュール情報が来て、ほっと胸を撫で下ろす。
そこまでは良かったのだが、肝腎のメールアドレスが化けていて返信しても「Unavailable address」で帰ってくる。
明日にでも、電話で正しいアドレスを聞かなくちゃ。




 198.矍鑠

2001/6/12(Tu)

6月8日の日記を読んでいた奥さんに「これ何て読むの?」と訊ねられた。
指を指された箇所を見ると「矍鑠」とある。
「かくしゃく、だよ」と答えると「こんな漢字よめない」と苦情を云われた。
いいじゃんかよお、ちゃんとJIS水準なんだし。
というのはぐっと呑み込んで、「そうね、何でも漢字で書けばいいってもんじゃないね」などと妥当な線で落ち着かせとく。

それじゃ問題。「冪」は、何て読むでしょう?
ヒント:決して「がま(蟇)」とは読みません(って、まるでヒントになってない)。

…答えは「べき」である。べき乗の「べき」。累乗の事ですね。
でも、「冪乗」を検索エンジンで引っかけるとこれが結構出て来るから怖い。
皆んな、「冪」くらい読めて当然という前提なのだろうか。まあ、文脈から判断すれば判らなくもないけど。



帰りに中間に寄って、或るDVDを購入後、書店で見つけた「映画館へ!2001年7月号 三谷幸喜全1巻」(宣伝会議を即決で購入。
その夜のうちに読了。僕が「映画のタマシイ」で書いた「みんなのいえ」感とほぼ同様の感想(「ラヂオの時間」との類似性)を、和田さんとの対談の中で、オールラッシュの後、或るスタッフに指摘されてショックだったという三谷さんのお話。そっかァ、本人はやっぱり意識してなかったんだ。

今日の読書:「映画館へ!2001年7月号 三谷幸喜全1巻」(宣伝会議)



 199.魅惑のプリン・ア・ラ・モード

2001/6/17(Su)

巷で策略的に流行っている365日バースデーテディだが、ちょっと「さる」掲示板で、奥さんの誕生日に6月8日生まれのテディベアをあげようとコンビニを3軒ハシゴしたが、ついに見つける事が出来なかった話をしたら、星野さんがわざわざ熊本から6月8日生まれのテディベアを贈ってくれた。彼女のおかあさんが近くのスーパーで探してきてくれたんだそうで、おふたりの親切には誠にいたみいる。

テディには一体一体にきちんと名前があるようで、6月8日のテディの名前は「ムヤ」。
どうにかならないのかね、このネーミングセンス。俺なら先の喜劇王に敬意を表して「ロッパ」と名付けるが(どちらにしたって)。
ちなみに11月11日は何と云う名前なんだろう(単に純粋な興味です)。

奥さんは早速、PHSのストラップに採用した(それまでのトトロの奴は悠都にがじがじに齧られた)。
星野さんちには、そのうち、何か付け届けいたしますんで、はい。

午前中は、奥さんを中間の映画館に送り出して、自分は息子と色々遊ぶ。
奥さんの育児日記を読むとかなり羨んでいるようなので、何をしたかは此処にも書かない事にする。
しかし、彼女は分かり易い嫉妬をするひとである。

昼、奥さんを拾ってからいつもの高須コース。
給油帰り、久々に「プチ・トリアノン オーロラ」へ寄ったら、何だかカフェコーナーが盛況だったので、家族してふらふらと空テーブルに腰を下ろす。周囲のテーブルはパフェ系で盛り上がっているようだったが、敢えて奇をてらってプリン・ア・ラ・モード(600円)など注文してみる。

バナナボートのような細長いガラスの器などではなく、シンプルな白いお皿に、焼きプリンがふたつとこってりバニラアイスにカスタードクリームがたっぷりかかっていて、それを取り囲むように生クリームがカッパドキアの遺跡をなしている(何だ、その比喩は)。其処に絨毯爆撃的に惜しげもなく散りばめられた各種フルーツ。苺に、洋梨、パイナップル、ピンク・グレープフルーツ、黄桃、キウイフルーツ、それからメロン。あきれたボリュームに、これで600円ははっきり云って莫迦安である。また庶民的でお高くとまっていないのがいい。尚且つ、掛け値なしに旨い。これじゃますますファンになるっきゃない。

帰りに、思わずダックワースを追加買いする奥さんであった。



犬山のおかあさんから電話。
父の日に犬山へ送ったDVDのお礼と、絵本の原作を丸々一本書いてくれと謎の依頼。
おかあさんはゼッタイに僕を買いかぶっている。
此処でこうして書いている駄文と、絵本としての文章書きは180度違う。
ただでさえ、瀬戸口くんから夏コミの原稿をかなり切羽詰まって催促されているし、会社は会社で(以下、差障りがあるので60行削除)。
そんなに色々頭は回らない、というか、皆んな、僕を買いかぶってるって。

で、瀬戸口くんへの義理を果たそうと(何か云い訳がましいな)、パソコンに向かおうとした絶妙のタイミングで会社から召喚されて、そのまま22時半まで。子供を風呂に入れて、食事して、子守りしたらもう25時である。明日は朝から会議だし、こうなったらもう寝るしかないではないか。
(って一体、誰に向けてこの日記を書いているのだ、オレは)

今日までの読書:村上春樹「村上ラヂオ」(マガジンハウス)



 200.路上教習

2001/6/30(Sa)

僕は天神〜博多駅間の移動には必ず西鉄の100円バスを使うのだが、今日乗ったバスは新人研修(しかも路上教習)らしく、運転席の脇にバスガイドよろしく、もうひとりイジリー岡田似の人の好さそうな運転手が居て、つきっきりで新人さんを教育しているのだった。
イジリー岡田は常に笑顔を絶やさずに、あちこち指さして新人さんに話し掛けているのだが(殆ど世間話をしているだけのようにも見える)、返って危なっかしく感じたりして。

バスに乗った当初は全く気にしていなかったんだが、路上教習中だと分かった途端に、新人さんのぎこちない動きが一挙手一投足気になってしまう。福岡三越の前は思い切り道路工事をしていて、道路をせり出した処に臨時バス停が設営されているのだが、新人さんが一旦入ったバス停からなかなか本線に戻れないのにまで、はらはらする。普段は半ば強引なバスの割り込みに苛立つ僕も、これ程まったり進入待ちしているのを見ると、それはそれでじれったいものなのね。車内アナウンスは意外にそつがなかったんだけど。
あー、気付くんじゃなかった。知らなければ全然平気だったのに。

イジリー岡田の笑顔は終点まで変わらなかった。それがせめてもの救いか(そうか?)。

夕方、英ちゃんに逢って一緒に「陽炎座(1981・日)」を観る。
彼はそのまま「夢二(1991・日)」に突入したけど、さすがに戦線離脱。
昨夜、3時過ぎまで息子すら寝入っているのに、つい宮本輝の新刊を貪り読んでしまったのが不味かった。だって、面白かったんだもの。寝不足気味の惚けた頭で鈴木清順を2本続けて観る事自体、我乍らかなり無謀であった。海より深く反省。

今日までの読書:小林聡美「マダム小林の優雅な生活」(幻冬舎文庫)、宮本輝「森のなかの海(上)」(光文社)
今日観た映画:「ツィゴネルワイゼン(1980・日)」「陽炎座(1981・日)」


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