備忘の都 2002 APRIL

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あめんさん、結婚するリゾートな夜

 リゾートな夜  2002/4/27(Sa)


唐津から今度は高速に上がらずに、国見有料道路経由で1時間半程かけて佐世保入りする。
目指すホテルは、弓張の見晴台の傍にあるというので、急勾配な上にやたらと道幅の狭いワインディングロードをいつ来るとも知れない対向車にびくびくし乍ら(大型トラックや観光バスが来た日にゃ間違いなくアウトだわ、とその時は思えたのだった)登っていく。不慣れな道だわ、薄暗くなってきたわ、小雨がぱらつくわ、本当にこんな山深い場所にリゾートホテルなんかあるのか。

唐突に視界が開ける。降ってわいたようなリゾートな施設と電飾に彩られたツリー。
今宵の宿はミュゼアリゾート「弓張の丘ホテル」

時間もないので早々にチェックインする。予約した部屋は単なるツインだったが、案内された部屋はエグゼクティヴ・ツインで、このホテルでいちばん立派な客室であった。リビングとベッドルームの二間続きで各々にテレビが置いてあり、テラスも二間ぶん広々と取ってあって眼下には視界をはみ出すほどのオーシャンビューが広がっている。此処だけの話だが、会社の福利厚生サービスを使ったので、夫婦で素泊まり8,000円である(本来は通常期で28,000円。しかも数日後に控えた5月の連休時は34,000円に跳ね上がるらしい)。何だか申し訳ない気さえしてくる。

休む間もなく、夕食は奥さんが予め予約しておいた「中国料理 チャイナテラス」で晩餐と洒落込む。
あいにく雨が降り始めたので、本当はロビーから屋外経由で店に行く処を、コンシェルジェの案内でガラスの丘美術館の脇を擦り抜けて、屋内の遠回りコースで店に向かう。幼児がいる気遣いからか、夜景が一望出来る迫り出したガラス張りの、いちばん奥の席に通された。
この現実感の無い店の雰囲気はケニアのコテージを思い出させると奥さん。
確かに「リゾート」というキーワードでケニアと佐世保のホテルは地続きらしい。
事前の調査では美容と健康をテーマにした「佐世保美人(\5,000)」を頼むつもりだったのだが、通常のコース料理(3種類)しかないという事で(後で調べたら「佐世保美人」は5月からだった)値段的に真ん中の「創作料理 珊瑚(\5,800)」を試してみる事に。
以下が、そのメニュー。

1.春の彩り前菜
2.ハマグリとフカヒレ入り茶碗蒸し風スープ
3.花切りイカのナンプリックパオ炒め
4.捲き海老と帆立のウーロン茶蒸し
5.牛バラ肉の醤油煮込み
6.アスパラの蟹肉あんかけ
7.もち米の蓮の葉包み蒸し、スープ
8.特製デザート(薔薇茶のアイスとプーアル茶のゼリー)

特筆すべきは「3」のイカの夢のようなやわらかさ。出来るならあれだけまた食べたい。
「2」「6」は普通。ていうか、あの順番で「6」は余計だった気も。
「4」はフィンガーボールに水が張って出てきたので厭な予感がしたのだが、やはり蒸籠で湯気を立てた海老が出てきた。昔、香港の水上レストランでもこのパターンに手を焼いたものだが、熱い上にちと面倒くさい。手も生臭くなるし。ま、これが趣向なんだと云われれば、返す言葉もございません。たれも美味しかったが(パオズが食べたくなった)、マヨネーズも欲しかった。悠都には帆立だけ刻んで与える。
「7」のスープ(具はキヌガサダケとナメタケ)もちと味が濃いものの、ちょっと人に話したくなる美味しさだったり。
「8」のアイスは昼間のばらソフトつながり。プーアル茶の苦味と合わせて食べると絶妙のコンビネーション。

個人的には一日車を運転してくたびれていたのと(とりわけ高速には気を遣うもので)、昼に伊勢海老づくし(刺身にテルミドールに味噌汁)に鯛の舟盛りに牛フィレ肉のパイ包みと、しこたま披露宴料理を食べ尽くしていたので、万全の体制とまでは行かなかったのだけれど、奥さんが出産以来久し振りのコースディナーに満足してくれたのと、悠都が1時間余かかった晩餐に、水の入ったグラスを1回倒すだけで済んだのだから(彼はほぼ毎日夕食毎に湯呑みを倒して、ママに怒鳴られている)これは上出来と云っていいのではないか。

食事を終えた頃には、雨もやんでいたので、外回りで部屋に戻る。
奥さんがしきりにこの部屋の真下にある展望浴場「彩海」に行く事を勧めてくれるが、気力がわかず内風呂で済ます。
悠都は前回の犬山でよそのお風呂を克服したと聞いていたが、洗い場なし、湯船で体を洗うのと(いきおいのある)シャワーに慣れてないのとで、裸で僕にしがみついたまま「怖い」を連発して大いに泣き叫ぶ。ま、一日で200kmも車移動したし、色んなひとにも会ったし、知らない処にも来ているし、さすがに疲れたというのもあるだろう。

23時頃、奥さんがYさんと連絡を取って明日一緒にランチする約束を取り付ける。
明日は雨が上がるとは云え、足許も悪いかろうと長崎バイオパークはまたの機会にする。
リゾートホテルでのんびりする為だけに佐世保まで来る、たまにはそんな贅沢もありだろう。

いつもと違う夜に興奮した悠都が外のきらきら(彼はまだ夜景と星の区別がつかない)を見たがるので、夜中に息子とテラスに出て、眼下に広がる九十九島せんぺいの包み紙夜景モードを暫し味わう。ドック付近のオレンジ色の光の連なりが星座のように見える。
雨が降る寸前のそこはかとない蒸し暑さも、気だるさと相俟ってこれまたリゾートのうちか。



 あめんさん、結婚する  2002/4/27(Sa)


連休初日にして、あめんさんの結婚式。ついでに我が家の結婚記念日でもある。
今日の予定は唐津であめんさんの披露宴に出席した後、佐世保に移動して自分ちの結婚記念日を祝う手筈。
悠都を初めてディナーのフルコースにつき合わせるという点で今夜が今後の家族旅行のスタイルの試金石とも云える。

朝、本やタウンで注文したジョン・スタウバー、シェルドン・ランプトン/栗原百代訳「リスキー・ビジネス」(角川書店)をU-BOOKで受け取った後、黒崎ICに入る。北九州都市高から九州自動車道へ、約1時間強走って基山PAでトイレ休憩にする。奥さんがネットで仕入れた情報によると、此処でしか食べられないという「天瀬ばらソフト」がたいそう旨いというので、眠っている息子のお守りに奥さんを残し、単身探索モードに。屋内売店に一般のソフトクリームと並べて「新発売」されているのを発見する。「天瀬町特産ばらの花びらエキスをバニラソフトにブレンドした当店オリジナル」は250円とちょっと割高だったので、お試しに1本だけ買って車に戻る。クリームはほのかなピンク色。薔薇の花粉の匂いがこれまたほのか。処が口に含むと口中、薔薇花粉の芳香が炸裂してとてもほのかどころの騒ぎじゃない。封を切ったばかりの新しい石鹸を口に放り込んだ、とでも云えばいいか。昔初めてジャスミンティーを呑んだ時のカルチャーショックに近い衝撃をを受ける。ソフトクリームの味自体はじつこくない甘さで上品な感じ、土台のウエハースもケロッグのコーンフレークのような味で悪くない。奥さんは大絶賛していたが、この「石鹸頬張り体験」は万人に好まれる味ではないかも。でも一口食べて「うむむむ」となるものの、これが一時するともう一口石鹸を頬張ってみたくなる不思議な麻薬効果。吉と出るか、凶と出るか、皆さんも基山PAに行った折には是非お試しの程を。

鳥栖JCから長崎自動車道に移って多久IC(あめんさんに「タク」というのも何か因縁めいている)にて下車、国道204号線から唐津を目指して50分弱(途中、狭い路地を通った折に「軒先注意」の道路標識を見つける)。
正午をちょっと過ぎた処で披露宴会場のからつ城内閣(本当に唐津城の傍にある)に到着。
城内閣第3駐車場の傍に労働基準監督署があるのだが、入口に藤岡弘が変身ポーズを取って「更新!!」と決めた労働保険のポスターが貼ってあった。去年のキャラクターは米倉涼子だったらしいが、当然僕的には東京サンシャインボーイズ「罠」にも(名前だけ)出てきた藤岡さんの方が好みである。

今回、大学のSF研究会からの出席者はI田さん、S濱さん、E藤さん、瀬戸口くん、N友くんに僕の6名。これだけのメンツが一同に会すのは実はウチの結婚披露宴の2次会に準ずる(ウチの時は白濱さんが欠席されたが、更にはるさんと女性部員2名という大所帯だったからなあ)。
という訳で暫し大同窓会状態。しかし集まった皆さんの年齢は34〜37歳なのだが、こうやって並べてみるとスーツ姿なのも相俟って、成程30代半ばのおっさんの集まりなのに改めて愕然としたり(まだ観念していないのか、オレは)。時の流れは無情である → 特に衛藤さんに(おいおい)。

城内閣のフロントには、公平を期して(笑)大原宮田と二社の松露饅頭が置いてあった。
個人的には福岡空港でも福岡市内でも簡単に手に入る大原老舗のものよりも、唐津に来ないと手に入らない宮田の松露饅頭が「買い」(実を云えば宮田のは食べた事がないので、一度大原と食べ比べてみたいと思ってた)。結局買い損ねた事が悔やまれる。現在横浜在住の稲田さんは果たして宮田の松露饅頭を買って帰ったのだろうか。

披露宴は13時開始16時終了、3時間の長丁場(内、1時間強はカラオケ大会であった)。
妻子を待たせてあったので、2時間過ぎたあたりで気になって新郎に直接訊ねてみる。

「処で、披露宴はどれくらいあるんですか?」
「2時間だと思ってたんだけどね」
「キャンドルサービスもこれからなんでしょ?」
「うーむ、て事は3時間くらいあるのかな」

て、あめんさん自身も正確なプログラムを把握していなかったらしい。
以下、時系列無視で、備忘メモなど。

▼最初の新郎新婦の入場に純白の羽織袴で現れたあめんさんは貴乃花そっくりであった(おちょぼ口付近など特に)。意外な発見だ(そりゃあめんさんの和服姿など誰も見た事が無かったし)、などと瀬戸口くんらと話していると、来賓祝辞で新婦の元上司の方が「初めて新郎を拝見しましたが、貴関そっくりのいいオトコで」などと宣い(褒めている、というより見たまんまである)、友人席(のみ)大いに沸く。
I田さんが友人代表でスピーチを頼まれているというので、この際、僕ら全員、熊大の相撲部(熊大にそんな部はない)OBという事にしては、と提案すると「それがいい」とS濱さんがノる。何しろ当のS濱さんとN友くん以外のメンバーを見渡すと、悲しい事にさほど違和感が無かったり。相撲部主将のI田さんの紹介で、お色直しであめんさんは化粧まわしで登場、弓取り式をやってもらうのはどうか、とか。勿論両脇にはE藤さんと僕が控えているのである。SF研を標榜して、ワケの分からんコスプレをするより(誰がするか)いっそ田舎のひとのウケはいい筈である。

▼N友くんは時々この日記を巡回しているらしい。

▼I田さんのスピーチは、前回I田さんの披露宴スピーチであめんさんが話した事の返歌であった。
万人受けしようがしまいが、借りたものはきっちり返すというI田さんのスタンスは大学時代からちっとも変わらない。

▼ホテルの脇は河口になっていて、披露宴の間中、どういう訳か鳶が群舞しているのだった。披露宴会場となった瑞兆の間はホテルの4階にあって、ブラインドが上がると会場の半分がガラス張りになって唐津の町が一望出来るのだが、其処を数羽の鳶が思い思いに飛び交うさまはまんまヒッチコックで、ティッピ・ヘドレンが味わったであろう同様の恐怖さえ体感する。というか一同カラオケそっちのけで盛り上がる。窓の傍まで来ると直滑降で、引き潮の砂州に向かってエサを捕獲に行くさまは、水族館のイルカショウに匹敵する。そのうちカラオケ大会に飽きた客が窓を開けて、刺身を投げる始末。却って鳶が群がってきたりして。
この鳶とホテルの共存関係は、かつてナイロビで経験したレストランと猫たちの関係に似ているなァと思い至ったり。宴が引ける頃にはすっかり鳶もいなくなっていた。

▼カラオケと云えば、当初予定になかった新郎の美声を披露する事に。
友人一同、ウルトラマン「故郷は地球」を所望してやまなかったのだが(旭日新聞でも瀬戸口くんがネタにしていたし)、結局は小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」に落ち着く。ま、ふたりの馴れ初め的にも合っていたし、楽曲の一般への認知度及び無難度、且つあめんさんお得意の高音部を何気に披露出来るという意味ででも非常にあざとい選曲であった。しかも歌の最中にキーを上げさせた上に、新婦の顔を覗き込んだままサビまで見事に歌い上げた。
ま、角界には歌が上手なひとが多い事だし。

▼ウエディングドレスで現れた新婦を見た瀬戸口くんが、新聞用に送ってもらった写真素材より実物の方がうんと綺麗だと僕に真顔で耳打ちする。
そりゃそうだろう、取るものもとりあえず、あめんさんは新婦に一目惚れしたんだから。

▼E藤さんの潜伏先はこの4月、岐阜から長崎へ移っていた。

▼キャンドル・サービスの選曲はあろう事かチャカが歌う「ひまわり娘」だった。
今朝、息子に「大きなのっぽの古時計」を聴かせる為に同曲が収録された「うたの引力実験室」を聴いたばかりだったので、その西手新九郎に呆れ返る。聞けば、新婦も同じアルバムを持っているらしい。

▼大体において披露宴のメインイヴェントは両親への花束贈呈にあるものだが、今日の贈呈も非常に感動的だった。
これについては色々書く事をやめにする。

▼披露宴の終わりに出口で新郎新婦が列席者をお見送りするのだが、少し遅れて僕らが顔を出すと、新郎は悠都を抱いて、口々に「そのお子さんは?」と質問攻めにあっていた(ちょいと奥さん)。親戚の子供たちによるメッセンジャーボーイ、ガールと記念写真を撮っている時にも思った事だが、つくづくあめんさんは脇に子供が居ても違和感がない。実際、明日からでも即日パパをやれるのではないか。

披露宴終了后も、1Fロビーで談笑しつつ、控室から新郎新婦が降りてくるのを待つ事1時間。
姪っ子と遊んで子煩悩に目覚めた瀬戸口くんはしきりに悠都をあやしてくれるのだが、普段人懐こい悠都が珍しく彼には懐かない。全員スーツ姿だし、一種異様な空気だから緊張しているんだと説明するが、同じスーツ姿でもI田さんにはきゃっきゃ馴染んでいるので、脇で静かに落ち込む瀬戸口くん。I田さんには「子供は人を見るから」と云われてしまうし。それにしても何が悪くてああも態度が違うのかは、両親にも分かりませんでした。これに懲りず、次回も息子を可愛がってやってください → 瀬戸口くん。

S濱さんの奥さんにも初めてお会いする。何だか「SF研メンバーの奥様としては」場違いな(いい意味で)弾けた印象の女性であられたが、手に池波正太郎「鬼平犯科帳」の文庫が握られているのを見て、妙に納得したり。ま、S濱さんも云われなきゃ、見た目は全く普通のひとだしな。いや、僕も見た目は普通のひとのつもりなんですが…(口を開くと保証の限りではない)。

新郎新婦が降りてきたので揃って記念写真。
新郎新婦はこれからご実家でお披露目の宴とのこと。田舎は色々と段取りがあるものである。
このまま帰るE藤さんと瀬戸口くんを唐津駅まで送って、僕らが第二の目的地・佐世保に出発したのが、17時15分をすこうし廻った処。

余りにも長大化したので、佐世保以降は別項に続く。



 シークレット・クラブ  2002/4/20(Sa)



本日の映画:37.「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大作戦(2002・日)」
本日の観劇「atsuko takaizumi presents ─ シークレット・クラブ」


 マサユキ前線  2002/4/13(Sa)



本日の映画:35.「ムッシュ・カステラの恋(2000・仏)」、36.「ヒューマン・ネイチャー(2001・米)」
本日のライヴ「マサユキ前線」


 親旧  2002/4/7(Su)


井筒屋で買い物をするという妻子を黒崎井筒屋アネックスで降ろし、土曜に引き続き、AMCなかまで「友へ チング(2001・韓)」
ポイントカードを溜めた映画招待券で観たのだが、利用者名簿の僕の前に会社のNさんの名前があってつい口許がゆるむ。
時間的に「ビューティフル・マインド(2001・米)」のようだ。彼女とはよく映画館でニアミスをするのである。
公開初日(翌日だけど)特典で「辛(シン)ラーメン」を貰う。
そう云えば「カル(1999・韓)」でも貰った気が。

さて、映画の感想。
まず、絵づくりが市川崑翁の「銀残し」のような色調を抑えた準モノトーンみたいで、それが前半の「少年時代」のノスタルジーと後半のノワールな物語づくりにとてもマッチしている。韓国映画としては「情け容赦なし(1999)」で受けて以来の映像カルチャーショック(ちなみに前年観た「ミステリー・オブ・ザ・キューブ(1999)」はさほどでもなかった)。何と云うか80年代までの韓国映画と比べるとてうんと垢抜けたなというか。
筋自体は少年時代から続くジュンソク(ユ・オソン)、ドンス(チャン・ドンゴン)ふたりだけを取って見れば(「友へ」ではこれに堅気の衆の親旧が2人加わる)、実は阪本順治「新・仁義なき戦い。(2000・日)」のトヨエツと布袋を彷彿とさせる事に思い当たったり。高校生から10年くらいを同じ役者が演じるのだが、サンテクとジュンソクは無理がありあり(竹内力と哀川翔が詰襟を着て出てくると思えばいい)。あとサンテクとドンスの奥さんになった女子高のアマチュアロックバンドのボーカルだったジンスク(キム・ボギョン)とのエピソードもヤク中になったジュンソクの処で尻切れトンボに終わるあたり、もっとドラマの隅々まで目をこらしてもと思わないでもないが、物語終盤の、友情だけではどうにも出来ない「すれ違い」と、不幸な結末へのジュンソクなりの落とし前のつけ方は極めて韓国的というか正調「恨(ハン)」的な作劇であり、かの国の記録的な観客動員も頷けるというものだ。

面会室でのジュンソクのヤクザに託した云い訳も、ドンスのいまわの際の台詞も、ラストの少年時代回想で未来の彼らとオーバーラップさせた「遠くまで来過ぎた」も、それはそれで確かに旨いのだけれど、かつての東映任侠路線を観馴れたひとには真新しさはないかもしれない温故知新映画。(僕も含めて)若い世代にはいっそ新鮮だというのはあるだろう。でも、巷はちょっと絶賛しすぎだよ。

処で、映画によると韓国では刑務所を出る時に清めの豆腐を1丁手渡されるらしいが本当だろうか。

黒崎で買い物を終えた妻子を拾い、高須方面で給油、「オーロラ」で夫婦思い思いのケーキなど買う。
久し振りに「金龍」にて遅昼。やみカレーセット(700円)を頼む。
何だか学食のようなカレーなのだが、このB級さ加減がまたいとおしい。

夜は悠都の相手をし乍ら、「ラヂオの時間」のDVDを「ひとりで観るさみしい夜のために ─笑い声つき音声チャンネル」で観る。
室内劇だからやれるワザか。「みんなのいえ」でやるとちょっと違和感があるもんなあ。
此処で笑わしたいという制作側の思惑が見えるのも新たな発見があって愉しい。

福岡の父母に電話して、悠都の誕生祝いの礼を云う。
「じーちゃん、ばーちゃん」を云わせたので喜ぶと思いきや「ばーちゃんじゃなくて、あーちゃんでしょ」とハハ。
あーちゃんって何の略だよ。

本日の映画:34.「友へ チング(2001・韓)」

 エド・ハリス、大人の仕事  2002/4/6(Sa)


先週に引き続き中間で朝イチ、レイトと2本映画を観るコース。

朝イチの部は「ビューティフル・マインド(2001・米)」
本年度のアカデミー賞で主要4部門(作品、監督、助演女優、脚色)を獲った話題作。映画は非協力ゲーム理論の基礎を拵え、アダム・スミスの経済理論をひっくり返した数学者ジョン・フォーブス・ナッシュ・Jr(ラッセル・クロウ)がノーベル賞を獲るまでの苦闘の道程を描く。

で、以下に思い切りネタばらしするので、映画未見の方は読まないように(文字を反転させて読んでください)

ナッシュの悲劇は彼に与えられた天賦の才が、精神分裂とワンセットだった「デンパさん」だった事にある。
「天才と狂気は紙一重」の譬えを待つまでもなく、彼は自身の才覚にシャム双生児のようにぴたりとくっついた妄想を振り払う(というか共存する、手なずける)ために数十年もの遠回りと死闘を繰り広げる事になる。
ナッシュの妄想中人物は諜報部員パーチャー(我らがエド・ハリス)、ルームメイトのチャールズ(ポール・ベタニー)、チャールズの姪マーシー(ビビアン・カードーン)の3人。彼らはそれぞれ仕事面、生活面からナッシュの精神を、誇りを支え、癒し、あちらの世界に連れ去るべく奔走する。多重人格の各人格に横つながりがあるように、後半、3人の妄想中人物がとっかえひっかえ娑婆で更生しようとするナッシュを説得するさまが面白い。精神的な拠り処として自分自身が創造したという意味では多重人格も妄想中人物もさほど変わらないと思うのだがどうか。妄想と分かっても尚、頑なにナッシュの目の前に在り続ける処とか。そういう意味ではナッシュの闘うさまの哀しさはコメディと紙一重だったりする。いや、エディはまたひとつ僕らの記憶に残る仕事はしてくれた(何しろ、エディを観にこの映画に行ったようなものなので)。

それにしても、ジェ二ファー・コネリーはすっかり大人の女性になりましたね。
「フェノミナン」の頃のぴちぴちした若さは今いずこ。
でも、キレイキレイなばかりではない女優さんになりました。
それでいて美貌自体は全く衰えていないあたりがポイント。

妻子と共に「浜勝」で遅昼。
前半、悠都は僕の胸の中でぐっすり眠っていたので食卓は比較的平穏に済んだ。
しかし、ウチの奥さんは何故に此処まで「浜勝」が好きなのか。
彼女はカネ持ちになったあかつきには、自宅に「ふきや」(じいちゃん専属)と「浜勝」をこさえるのがユメらしい。

レイトの部は「シッピング・ニュース(2001・米)」
世紀末あたりから毎年コンスタントに、飛び抜けた傑作はないものの半端に良作を量産してしまうラッセ・ハルストレムの新作。
でも半端な良作の量産する監督ってのはいっそ映画作家としてはタチが悪い。妙な期待が拭えないから、こちとらも切るに切れないし。
でも、本作は近年の中では「林檎小屋の掟」よりも「ショコラ」よりも完成度が高い気がしませんか。と万民に問うてみる。

本日の映画:32.「ビューティフル・マインド(2001・米)」、33.「シッピング・ニュース(2001・米)」

 天使の分け前  2002/4/2(Tu)


4月に入ってから(まだ2日しか経っていないが)何しろ忙しい。
この忙しさはおそらく恒常的なものなので、ペース配分が掴めるようになるまで、日記書きもおぼつかない。
(実際、この文章を書いているのは4月21日の深夜である)
暫くはこのサイトのキモとも云える映画や観劇や読書感想文に終始する事になりそうだ(しかも相当のタイムラグを置いて)。

それはそれとて、この27日にめでたくも華燭の典をお挙げになるあめんさんの為に瀬戸口くんが作成している旭日新聞(僕の結婚披露宴がその第壱号だった)の祝辞を遅れ馳せ乍ら書き上げて、原稿を送ったので、今日はその原稿を此処に無断で転載する。
瀬戸口くんから課された制約は

「裏面の新郎側エリアは、総文字数1920文字です。四人に書いていただくとして、一人480文字(12桁x40行)、見出しに三行として446文字です。」

というもの。昔映画の感想文で培った字数制約がこんな処で役に立つ。
ま、これもまた備忘の一環である。

 お酒好きの人であれば「天使の分け前」という言葉はご存知でしょう。
 樽貯蔵したウイスキーは熟成時に毎年樽の外へ数パーセントずつウイスキーを揮散します。樽の中のウイスキーは外気を吸う代わりに、揮発成分を吐き出しているのです。十年寝かせると樽の四分の一が蒸発するそうです。一樽にウイスキーが一五〇キロ入っていたとして、十年で一寸大き目の十歳の男の子ひとりぶんのウイスキーが空に消えた勘定になると言えば少し出来過ぎでしょうか。昔のウイスキー職人はこれを天使の分け前(エンジェルズ・シェア)と呼びました。
 あめんさんより一足早く結婚した身としては結婚が人生の墓場だとは思わないものの恋愛と結婚が全く違う事には激しく同意します。仮に結婚生活が丸ごと恋愛から出発したとしても、恋愛感情は時間の経過と共に夫婦の外側に揮発していくのは確かです。時折、過去を懐かしまないと言えば嘘になりますが、どうやらそれが本物の家族になる過程のようです。天使の分け前も気まぐれに子供になって戻ってくる事があります。
 尚、余談ですが、熊本の陽氣酒造には同名の米麦焼酎が置いてあるそうです。
何か祝辞というよりはコラムの類である。でも、落とし処としては一般論がいちばん差し障りがないのだ。
それにしても酒が呑めない人間に限って酒の薀蓄を語りたがるというのはどういう事であろうか。




 
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