備忘の都 2002 AUGUST

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謎の新曲プロモDVDオトナ買い赤いひと、あらわるリターナー

 謎の新曲プロモ  2002/8/11(Su)


よく分からない夢を見た。
大きな書店の洋書コーナー(PARCOブックセンター臭い)らしい一角で画集をめくっていると、「来たわよ」と脇にいた女性に耳打ちされる。
振り返ると、オーラを一般人並みに抑えた種ともこがお忍びで現れた。
どうやら僕も周囲にいた5、6人の客も彼女が来るのを待ちかねていたようで、わらわらと種ちゃんの周りに集まった。種ちゃんは開口一番「今度の新曲のプロモーションビデオを作らなきゃならないんだけど、皆んな考えてきてくれた?」とのたまう。
一斉に腕を組んで考え込む僕ら(これは昨日の昼間、水族館で観たアシカ・ショウの影響かもしれない)。
「はい、其処のくらたくん」と種ちゃん。て、手も挙げていないのに。
僕は仕方なく「えーとですね」と、思いついたままに喋り始める。

「──今回の新曲は、『信じられないほど絶対的な信頼感』がテーマですから(そ、そうなのか)、何組もの恋人たちが口移しでチューイングガムを渡しっこするさまをスローモーションで繋いでいこうと思います。ただキスさせたんじゃ、ウォーホルの「Kiss」と一緒ですので、今回は自分の噛んだチューインガムを恋人に食べさせるというシチューエーションを徹底させるつもりです(つもりです、っておまえが撮るのか)。スタンダードに口移しで渡すもよし、一旦手のひらにとって丸めてから彼氏に食べさせてあげるもよし、ポッキーゲームみたいにお互いに引っ張りっこしあうもよし、そのへんのヴァリーエーションならすぐに20や30は思いつきます(凄いな→オレ)。クライマックスでいよいよ種ちゃんが登場、ふたりのお子さんとの微笑ましいガム・バトルが繰り広げられます。種ちゃんがスタイリストさんにばっちり決めてもらった髪を子供たちに掻き回されて、ガムでべちゃべちゃのぐちゃぐちゃになった処で『みんな、愛のせいね』と感動のフィナーレを迎えます」
「しかも出演者は口パクで歌ってるんだよね。──うん、イケるかもしれない」
「更に(ガム)だけに『愛はかげろう』と、決して永遠に続く事のない愛の儚さも合わせて表現したつもりです」
「それ、もらった!」と種ちゃん。
「良かった、これ徹夜で考えたんですよ」と出まかしを云った処で目が覚めた。

ビデオデッキは2:45を示していた。成程、徹夜で考えていたようだ。
トイレに行って、クーラーの設定温度を上げてとっとと寝る。明日からまた仕事だし。

どうやら僕は種ともこに飢えているらしい。

本日の映画:「釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪(2002・日)」

 DVDオトナ買い  2002/8/28(We)


今月はとにかく映画を観ていない。
昨年秋から「映画のタマシイ」の更新がストップしているが、それでも映画鑑賞はどうにか月10本程度のノルマをこなしていたのだが(尤も最近は最低限の鑑賞記録さえ怠けてるので、もはやいつ何を観たんだか、それすら怪しい)、それが今月は鑑賞数自体、「ナショナル7(2000・仏)」「青い春(2001・日)」「釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!(2002・日)」の3本きりだ。これは我乍らスゴい。仕事の夏休みならともかく(取れてない取れてない)、映画の夏休みをいただく事になるとは。

ま、原因は仕事ばかりでもない(大半のウェイトは占めるけど)が、別に此処でその分析はしない。
そのかわり、という訳でもないが、今月は我が家にしてはDVDを買いまくったというお話。

まず、「マリリン・モンロー・ダイヤモンド・アルバム」からのワイルダー作品バラ買いで、
 (1) 「七年目の浮気(特別編)(1955・米)」
 (2) 「お熱いのがお好き(特別編)(1959・米)」

「ヒッチコック・コレクションBOX II」(「BOX I」は先月買いまちた)。
 (3) 「鳥(1963・米)」
 (4) 「マーニー(1964・米)」
 (5) 「引き裂かれたカーテン(1966・米)」
 (6) 「トパーズ(1969・米)」
 (7) 「フレンジー(1971・米)」
 (8) 「ファミリー・プロット(1976・米)」
 (9) 「めまい(1958・米)」

あと今、悠都が毎日2〜3回は繰り返して観ているらしい、
 (10) 「となりのトトロ(1988・日)」

そして、普段自己主張しない奥さんが珍しく購買を熱望した「私立探偵 濱マイクシリーズ BOX」。
今のTVシリーズの話は別に譲るとして、第1作目「我が人生最悪の時」は公開時期が丁度僕の上京日程と重なった為、当時神奈川でOLをやっていた奥さんとわざわざ黄金町の横浜日劇まで出かけて観た思い出の作品である(平日で客が少なかった事もあって、二階の探偵事務所のセットを見せてもらえたのもラッキーだった)。奥さんはこれに味をしめ、残りの2作も横浜日劇まで出かけたという後日談が付く。

 (11) 「我が人生最悪の時(1994・日)」
 (12) 「遥かな時代の階段を(1995・日)」
 (13) 「罠 THE TRAP(1996・日)」
 (14) 「REPORT(特典ディスク)」

これに加えて「彦馬がゆく」の支払いを既に終えているので、まるでボーナス月のような豪気さである。
ボックス買いが2つあった、というのがポイントか。無論、さすがに毎月こうは行かない。行く筈がない。
来月はワイルダー作品が「情婦(1957・米)」他数本出るとか、「ベテイ・ブルー」の無修正版が出るとか、「猫」が出続けるとか話題には事欠かないが、財政は事欠く訳で、まあ各々にプライオリティーをつけてぼちぼちやっていきますよ。ええ。



 赤いひと、あらわる  2002/8/29(Th)


遅い帰宅が続いて、久々に悠都が起きている時間に帰宅すると、興奮するせいかなかなか寝つかない。
明かりを消してもダメ、「眠いか」と聞くと必ず「眠い」と答えるのだが、話しかけてきたり、独り言を云ったり、歌い出したり(これがまたよく歌うのだ)と全然きりがない。普段彼と格闘を続けている奥さんは早々に匙を投げてPC部屋に退散し、結果的に僕が就寝(修身?)役を任されたが、彼女がやるように(こういう事書くとまた怒られるな)脅すしかない。

曰く、「寝ないなら、パパあっちの部屋に行く」「寝ないと赤いひとが来るよ」

赤いひと、というのは以前N山くんが中国物産展だか何だかに行った時にくれた(ごめん、ディテール忘れた)お土産の京劇の赤ヅラの面で(「變臉 ─この櫂に手をそえて(95・中香)」で朱旭が演じた変面王の、あの面の隈取を想像してもらうと分かり易い)、奥さんが命名した。我が家では、ナマハゲみたいな位置付けにある(歯磨きの躾の際に創作された「トンボが口の中に入ってくる」というシュールなネタもある)。元々は玄関口に何げに下げてあったが、悠都が異様に怖がるので、押入れに封印した(尤も、お仕置き用にいつでも取り出せるようにしてある)。

脅した直後は「こわいよう」とひとまず僕に齧りついてみせるが、最近きゃつの「こわいよう」も伝統芸能の様式みたく、その場限りのおあいそでしかなく、舌の根の乾かぬうちに「ボヨヨンロック」を歌い出したり、「ぱぱ、あいすくりーむ買ってよ」などとほざく始末だ。
小一時間ほど、悠都につきあっていい加減ダレてきた処に、台風15号のせいでサッシがカタカタと音をたてたので、「ほーら来た!」と一言かましたら、痛いくらいしがみついて本気で泣き出した。不思議なことにウチの子は「本気で」怖がると程なく眠りに落ちるくせがあって(イヤな事は忘れる、という本能的なリセット行為なのかもしれない)、今夜もそれから数分で寝息を立て始めた。

暫くして明かりをつけると、戻ってきた奥さんが一言。

「あら、この子鼻血出してる!」
「鼻の下、掻きむしっただけじゃねーの」
「そんなことないって、ほら」

と僕のタンクトップの肌着の胸許をつまんで指し示す。あ、軽い血しぶきが。
我が子の寝顔を見ると、鼻の左穴の周りに小さく血がこびりついている。
「あたしも子供の頃、よく鼻血出してたから」と奥さんは彼のオムツもまさぐるなり「あ、おしっこもしてる!」。

あまりの怖さに鼻血出して、失禁して、寝込んでしまったらしい(さすがに気を失った訳ではない)。
おいおい、今后は脅かしも禁じ手ですかい。
しかし、鼻血出したまま寝ついている息子を見ると……思わずひとの親である事を意識せずにはいられない。
──悠都、ごめんな。

処で、来月12日に3年振りの長編小説となる村上春樹「海辺のカフカ」が発売される。
それまでの助走にとふと思い立って、量も手頃な「スプートニクの恋人」を半分読んでから寝る。
此処数年小説の再読などしなくなっていたが、村上フレーズの連打に暫し酔う。



 リターナー  2002/8/31(Sa)


休日出勤。平尾台方面まで出っ張って現地試運転。
土曜だろうが台風だろうが今日のチャンスを逃すと次の実施可能日は3週間后になるってんで、すがる妻子を振り払い(ウソつけ)、泣く泣く家を出たが、さすがに都市高でタクシーに受けた横風は怖かった。元西鉄バスを運転していたというおじさんは無類の話好きでインターチェンジをひとつ乗り過ごす。決してそういう牧歌的な状況じゃないんだが。
やったぶん課題は出てきたものの、休日出勤しただけの甲斐はあったなあという感じで、14時過ぎ現場、15時退社。

台風は停滞しつつもコースをそれ始めたらしく、朝ほど風はひどくなくなったので、帰り途、これまでずっと気になっていたパティスリーでケーキを買って帰る。
八幡西区紅梅1丁目パティスリー・エスメラルダ
店内はショーケースだけでいっぱいいっぱいの狭さだが、こじんまりと可愛い感じ。
とりあえず一見(いちげん)の試金石、モンブランと、妻の喜びそうなフルーツのショートケーキに、チーズプリンを2ケ。

ケーキは2つともたいそう洋酒が強いものの、おお、と唸る程度には美味。
新しいお店を一軒開拓出来たという感じですか。
でも、本気で旨かったのは夜食で食べたチーズプリン170円也だった。
これは誰かにお奨めしたい。強く強くお奨めしたい。

夜、中間にて20日振りに映画を観る。今日封切りの「Returner リターナー(2002・日)」
これで映画鑑賞数月3本という不名誉からはかろうじて逃れる(4本とナニが違うのかと問われれば返答に窮すが)。

デビュー作にその作家の全てが詰まっている、とか、作家は自作の模倣を繰り返すなどとよく云われる事だが(ちなみに本作は山崎貴が脚本・監督、それからVFX)、これはまさにバディ・ムービーのかたちを借りた「ジュヴナイル」であると云い切ってしまおう。
「侵略者から地球を守る為に、未来から助っ人がやってくる」という基本フォーマットの上に、色々今回なりの付加価値を足していると思ってもらえばいい(ジャンルは違うが、安彦良和が自分で創作し始めた頃、どんなに異なる設定で物語を始めても結局全てのオチは外宇宙の知的生命体を起源に持つ……てな着地ばかりであった。「巨神ゴーグ」然り、「アリオン」然り、「クルドの星」然り)。また前作は設定とストーリーの大枠が「ドラえもん(とネットで広まったウワサの最終回)」を借り物にした作品だったが、今回もさまざまな映画のパッチワーク的作業が目立つ(「ターミネーター2」から持ってきた、車道のシーンは余りにロコツな剽窃にすぎる気がする)。これはもはや山崎映画の作風と云っていいのだろう。ミヤモトの部屋に見覚えがあると思っていたら、そうか、チョウ・ユンファの「リプレイスメント・キラー」に出てきたミラ・ソルヴィーノのオフィスだったか(映画の出来自体は洗車機のアクションくらいしか記憶の残らない、香港スター主演のハリウッド進出作にありがちな不幸なシロモノ)。
尤もいつか何処かで観た映画のハイブリッド体だとしても、映画単体として作品が成立していればそれでOKな訳です。で、このひとはドラマとVFXのハイブリッド体職人としての腕で観客をねじ伏せてしまう力技を持っているのだな。今回は加えて、アジアン・ジャンクな美術のディテールが秀逸。謝(樹木希林が旨いのはもはやデフォルトですね)の店然り、廃発電所に中国語の看板を散りばめて拵えたオイル・リグの見事さ然り。ハイブリッドという事で云えば、山崎監督は、映画は決して監督個人のものではなく、個々のスタッフのプラスアイデアをいかに旨く取り込めたかで作品の成否が決まる事を熟知している。
ハイブリッドである事の利点とは、つまりそういう事なのだ。

それから、山崎作品特有の激甘加減も個人的にはポイントだったりする。
本作のサプライズ・エンディングには正直膝を叩きました。タイトルのダブルミーニングも此処で明らかに。
山崎監督は真正ロマンティストであるらしい。僕ァこういう作家さんが大好きなんです。

余談だか、金城武はアクションはともかく日本語映画には不向きな人材である。
このひとに日本語を喋らせると何故か棒読みっぽく聞こえるのだ(かつて鷲尾いさ子がそんな感じでした)。
いっそ高橋昌也みたく広東語で喋って字幕を入れた方がうんと自然な気もしたり。

最后にもうひとつ。悪漢・溝口の突き抜けた凄みをフィルムに焼き付けたのは岸谷五郎個人の手柄だと思うが(それでも岡元夕起子の胸元をまさぐって、顔をべろんと舐めたのにはさすがに引いたけど。此処だけ映画のテイストが違うと思う)、でもこういうキャラが跳梁跋扈する(というか、そんなキャラだけで成立した)世界を構築した、三池崇史の「殺し屋1」はやっぱり凄いよね。
とまるで関係ない事を思ったのだった。

本日の映画:「Returner リターナー(2002・日)」


 
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